それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
ドタバタと司令部を走り回る音が響く廊下、何事かと戦術人形たちがそっちを見ればものすごい形相の【WA2000】とそれに追われているのに余裕たっぷりの表情で逃げている【P7】
廊下は走るな、と言うのが決まりなのだが割と守られてないこの司令部ではよく見る追いかけっこである、まぁ追う側は毎回違うが逃げる側は殆どがP7であることが多い
「待ちなさいこの悪戯シスター!!」
「はっはっはっ、待てと言われて待つ人形が居る訳ないでしょ!」
反省の色が一斉見えない態度にプチンと切れかかるWA2000、だが此処で怒りに身を任せればあの下手人の掌で踊ることになるのは過去の経験から分かってるので押さえ込み捕縛を優先する
対してP7も乗ってこないのは予測済みのようで逃げる足を止めるどころか更に加速させて目的の場所にルートを定め走り続ける、そこに差し掛かった所で彼女の視界に予想通りの人物が、P7は笑みを隠さずに更に速度を上げてその人物に飛び乗り背中に回り込んで
「うわっとと、P7ちゃん?」
「助けて指揮官、わーちゃんに追われてるの!」
「何が助けてよ、アンタがジュースとか言ってハバネロ混ぜたトマトジュース渡してきたのが悪いんでしょ!と言う訳でこっちに引き渡して頂戴、指揮官」
二人からの板挟みにえぇっとと困りながら、チラッとP7を見れば小動物のようにプルプル震える姿にふぅと息を吐いてからWA2000と向き合い
「WAちゃん、私からも言っておくからさ、許してあげてくれないかな?」
「……はぁ、指揮官、その子が前の司令部でどんな扱いを受けてたかは聞いてるし知ってる、だけどねだからって甘やかしすぎるのもどうかと思うわよ」
「そりゃ勿論ダメだとは思う、でもさ、そこまで怒らないでP7ちゃんはちょっと距離感と付き合い方が分からないだけだから、ね?」
未だ背中に隠れてチラッと顔だけだしてるP7を見てからWA2000に片目を閉じて両手を合わせ困った感じの笑みを浮かべ、駄目、かな?などと言われれば流石のWA2000も強くは出ることが出来ずにそっとしゃがみ込んでP7と視線を合わせる
「……分かったわよ、今回は許すわ。それとねP7」
「っ!」
手を挙げられ目を閉じるP7だったが次に来たのはフワッと乗せられた感触と続けて撫でられる感触、目を開ければ仏頂面はそのままなのだがどことなく優しい雰囲気のWA2000
「その、遊んで欲しければ言ってくれれば暇な時なら付き合ってあげるわよ。だからこういった事はやめなさい」
「あ、わ、分かった、それとごめんなさい」
謝れるなら良いわよ、なら今度からはそうしなさいと一言付けてからWA2000は去っていく、それを見送ってから指揮官はP7に視線を合わせてそっと頭を撫でるとまだちょっと震えてるのを感じギュッと優しく抱きしめてあげればP7は驚くが直ぐに落ち着いた感じになる
「P7ちゃん、WAちゃんの言う通りだよ、ここの皆はいい人なんだからキチンと言ってくれれば付き合ってくれる、大丈夫だよ」
「うん、ごめんなさい……」
「私は気にしてないけどね。そう言えば執務室にまだお饅頭残ってたっけ、食べる?」
「食べるわ!」
ニコニコな彼女、P7だが実は他の司令部のとは違い元の性格を形成するはずのメモリーがごっそりと抜け落ちており演じてはいるものの少々違う性格となっている。と言うのも彼女は元々は他の司令部に居たと思われる戦術人形であり、そこではM1895達の推測ではあるが言葉にするのも憚れる扱いをされた挙げ句、最後は作戦中の死亡、つまりKIAという形で作戦エリアにボロボロで放置されていたのを偶々この司令部の部隊が発見保護した
それを聞いた指揮官は珍しく怒り彼女は絶対に此処で保護すると宣言、ヘリアンとペルシカまで使ってその司令部から権利を分捕ったほどと言えばどれほど怒ってたかが分かるだろう、余談だがその司令部はその後消滅したらしい
保護された彼女は直ぐ様治療されて指揮官が責任を持って身体を拭いたり服を着せてあげたりして目が覚めるまで側に居続けてあげていた、そして目が覚めたのだが当初は全てに疑心暗鬼であり誰に対しても怯えながら敵意を向けてくるのでM1895含め司令部でどう接したものかと悩んでいたのだがそこは最近、一部の戦術人形から人形誑し言われる指揮官
「多分、誰にも優しくされたことなくて戸惑ってるだけだよ、気長に接していこ?」
と有限実行、根気よく、そして優しく接し続けて数週間経てば司令部に馴染み笑うようになりその中でも指揮官とはこうやって戯れついたり少しイタズラを仕掛けてみたりと懐いて、皆も安心したとさ
とここで終わればいい話だったのだが彼女は前述の通り、元の性格に当たるメモリーがごっそりと抜け落ちており司令部に馴染みだした頃からその抜けた空白を指揮官で埋め始める
だが当初はそれが何なのかは分からずだけど指揮官が好きだからなのだろうと気にしてなかった、がある日カリーナのデータベースで自分の元の性格を演じるための資料を読み漁ってた時にふとカリーナが呟いた言葉で歯車が狂いながら噛み合ってしまう
「P7ちゃんと指揮官様って何だか親子みたいですよね」
「おや、こ?」
「はい、差し詰めイタズラ好きの娘に甘いながらもキチンと厳しい若いお母さんって感じですわね」
お母さん、その一言がP7には水面に広がる波紋のように、否、甘美な毒のように彼女を侵していく、純粋無垢の白に狂愛と言う赤が混ざる
彼女はこう思い込んだきっと母親を求めていたんだ、それが指揮官なんだと、そして司令部一の
彼女の司令部中に仕掛けられた
(
無垢な狂気に染まったメモリー、だけどそれを知る者は副官を除いて誰も居ない。だって知られたら
その司令部は何で消滅したんやろなぁ(
P7
ルピナス(但し裏側所属だけど表には絶対に出ないのでコードネームも殆ど出てこない)
この司令部のP7は本編でも書いたように元の性格を形成するメモリーが無いので資料で元の性格を演じているだけなので他の司令部のP7と合わせるとかなりキャラ違ってます、なので前半余裕な感じでしたが指揮官を前にしたら皮が剥がれて凄く弱気になったって感じです。
筆が滑りに滑ったら司令部一番のやべーやつが生まれた不具合、でも何となしにP7ってこういうキャラも行けそうだなって思ってしまったんや……
それと全くの余談ですがもしこのP7の本性を指揮官が知っても彼女、それ引っ包めて愛情を注ぐらしいっすよ?