それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
エリザとエージェントの失踪と言うとんでも事件から幕を開けたP基地の一日、勿論即座に事情聴取が始まりヴァニラから何がどうしてと聞くが向こうも
「いや、朝見たら忽然と、としか……ごめん、指揮官、副官」
「お主を責めてるわけではない、問題なのは誰にも悟られずに消えたということじゃ」
「警備組も何も見てないって、でも……」
そんな事不可能の筈だしと思っていると今度は彼女の通信機が鳴り響き、何かと思って出てみれば相手はアーキテクト、だが彼女は冷静ではないようで繋がると
《ゆゆ、ユノっち!!!!あ、あたしのラボが荒らされてるんだけど!!》
「え!?な、何か無くなってたりしない!?」
《え、えっと……ってあれ、【いまここちゃん】だけだ》
彼女的には失くすとヤバいものを無くしたと思っていたようなのだが蓋を開けてみると自身の現在地を表示させるだけのそれだけ、それと追加で分かったのはキャロルがメインで開発を進めていたテレポート装置の試作機が一度動いた痕跡があるということ。
が、寧ろそっちの方が大問題であるとユノとナガンがラボに向かえば、そこにはゲーガーとウロボロスも来ていて状況を確認していたので、二人も聞いてみれば浮かんだのは
「もしかして、エリザちゃん達が?」
「無理だよ、二人にはゲスト権限しか与えてないからこのラボに侵入することは出来ない、もし出来るとすれば誰かが開けただけど……」
「私とアーキテクトは勿論していない、寧ろこっちとしては久し振りに鉄血のエージェントを見て驚いたくらいだからな」
「あたしなんか見るのは基本的にD08のエージェントだからなぁ、じゃなくて、後可能性があるのなんて、おう、さっきから我関せずで黙ってないで答えろよウロボロス」
消去法で残るのは先程から会話には参加せずにアーキテクトの発明品を眺めているウロボロス、他にも容疑者は居るだろうと思われそうだが鉄血二人にそのようなことをする人物となるともう彼女しか残っていない。
お前なんだろと言うアーキテクトの視線がウロボロスに刺されば、此処で漸く自分に話題が振られていることに気付いたのかウロボロスが振り向き、そして
「何だ、私を疑っているのか?なんとも素晴らしい洞察力だなアーキテクト殿、おう、私が犯人だ」
「お前、自分が何したのか分かってるんだろうな」
「奴らが作戦前に戦力を整えたいと言ってきたのだ、安心しろあれはもう人類をどうこうしようとは考えていないだろうな、それよりも自分をコケにしたアイツラに報復してやるとしか考えていない、それにナデシコがあれば直ぐにでも見つけられるだろうて」
反省の色が全く見えないウロボロスにゲーガーもアーキテクトも呆れ気味にため息を吐いて、ナガンも軽く頭を抑える、最後にユノは確かにそうだけどと呟いてから、どちらにせよ一度試運転で自分が接続するつもりだったということで特殊戦術室に向かい、カリーナ、ヴァニラ、PPSh-41がスタンバイした所で接続を開始
次に目を開けた時には久し振りのナデシコ内部の光景、それから自分の体の調子を見ていると
「やっほ、指揮官、はぁ出来れば生まれるまでは来て欲しくなかったんだけどな~」
「あはは、ごめん、でも今回のことだけは譲れないからさ、うぅむ、お腹に重さを感じるのに大きくないという物凄く気持ち悪い感覚だ」
だが逆に言えばそれ以外は正常であり、モニタリングの数値も問題なし、それからメインモニターにてオペレーターも動員してエリザ達の行方を探れば直ぐに見つかった。
その位置は過去にウサギ狩り作戦が行われた時のイントゥルーダーの本拠地、彼女たちはそこに留まっており、見れば鉄血の自律人形の反応も少しずつ生まれている。
「此処で兵力を整えてるって感じだね、とりあえずオペレーターには監視をさせておくよ」
「うん、大丈夫だとは思うけど……」
《指揮官、すまぬが通信が届いた。相手は、ヘリアンじゃな、繋げるぞ》
このタイミングでヘリアンからというのは確実に世間話ではないということ、そしてそうではないとすれば出される内容は自ずと導き出される。
通信が接続されて新たに出されたモニターに映し出されたヘリアンの表情はとても固い物であり、思わずユノも緊張してしまう。
《ヘリアントスだって、ユノ、君が繋がっているのか!?》
「あ、えっと、まぁ?それで、ご用件は?」
《事を考えればこうなるか……本題だったな、ペルシカから聞いたぞ、何をやろうとしているのかお前達は理解しているのか?》
でっすよね~なんて軽い言葉がオモイカネから出てくる、向こうが言わんとしていることはこの場全員が分かっており、それと同時に一つ間違えれば全てから敵対認定される綱渡りだということも。
だが彼女たちは止まるわけには行かない、打ち上がった場合の危険もあるが、それよりも自分たちが生み出されたあの技術でこれ以上、悲しい出来事を生み出さないためにも止めなければならないのだ、だからユノはヘリアンの顔を見て決意に満ちた声で答える。
「分かってます、でも私達がやらなくちゃいけないんです」
《そうか、はぁ、分かった。実を言えばそのことでクルーガーさんから話を預かってきた》
《クルーガーからじゃと?》
《あぁ、ユノ・ヴァルター特務指揮官、及びS09早期警戒管制基地へ、どのような手段を用いてもヨゼフ・アルブレヒトの計画を阻止せよ、これはG&Kからの特務任務である……以上だ、まぁ簡単に行ってしまえばグリフィンとしても衛星兵器なんてものを打ち上げられては困る、故に君たちにその阻止を【本社】から依頼するということだ》
要は今回の彼女たちの作戦をグリフィンは認知し、咎めないというものである。だが同時に特務と出されてしまったのでこれ以上の援軍は難しくなってしまったが元より今回の作戦は彼女たちでやるつもりだったので問題ではない、そしてまだ話は続くようでヘリアンが何処かへ繋げると今度は
《国家保安局のアンジェリカだ、昨日ぶりだな》
「アンジェリカさん、どうかしたのですか?」
《少しばかり正規軍の方で面白い話が出てね、今ちょっと向こうはガタガタでその隙きにとAK-12に探らせてみたら、どうやらヨゼフ・アルブレヒトはクーデターの首謀者という事で切り捨てに掛かっているらしい、あまりに早い動きで驚いたけど、これがカーターが前もって仕組んでいたか、それとも誰かが動いたか、どちらにせよ奴は孤立状態になってる、これ以上にないチャンスよ》
仕組まれているものも感じないわけではないが、現状のこのチャンスを不意にする理由にはならないとアンジェリカが締めれば、ユノも分かっていると頷いてから
「はい、ではP基地は今日の深夜、作戦を開始します」
《了解した、武運を》
《じゃあこっちも一旦切るわね、また会いましょう》
通信が終わってから息を吐き出すユノにオモイカネが大丈夫かと側に寄れば笑みを笑みを返してから大丈夫だと伝える。
「にしても、一気に状況が好転したね」
《本当にそうですわね。まぁあれだけのものを打ち上げた上で個人が管理しますっていうのはどこも頭が痛い話ではありますけど》
《指揮官、少し休憩を挟みましょう、数値は安定してますが念の為です》
PPSh-41の言葉に一度頷いてからナデシコとの接続を解除、現実に戻って椅子からヴァニラの手を借りて降り、今の彼女用の楽に座れるソファに座れば、そこでナガンから今作戦の名前はどうすると聞かれ、ユノは軽く悩んでからこう告げた
【フェアリーリリース】と。そして全てが寝静まる深夜、作戦開始数分前のF10地区上空にヒポグリフを始めとした数機のウィンダムが現れる、全てを終わらせるために。
最後に笑うのは何時だって前を向き続けるやつなんだよ!
さぁ、始めよう、P基地大一番の作戦を!