それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
いよいよだ、そう思ったノアはヒポグリフ機内から扉を開けて身を乗り出し、今から攻めるべき基地を眺める。あそこに全てが、自分を、ユノを、妹達を今日まで苦しめてきた元凶が居る、そう考えれば無意識にとはいえ握る拳に力が入ってしまう。
「隊長、気持ちは分かりますが機内に戻って下さい、まだバレたくはないですから」
「つっても、もうこっちの存在には気付いてんだろうよ、向こうにだってナデシコはあるんだろ?」
《一応、キャロルんが作った向こうからの目から掻い潜れる電波の発生装置を作れるだけ作って全機に配備してるからもう少しは近づけるとは思うけど》
だと良いがなとノアは扉を締めてから備え付けられた椅子に座る、機内では他にもアナが最後の装備点検を行っていたり、RFBが何度も深呼吸を繰り返して気持ちを落ち着けさせようとしてたりしている。
今回の作戦【フェアリーリリース】に参加しているのはP基地からはランページゴースト、エアレーズング、ヤークトフント、AR小隊、そして今回の作戦のために編成したナガンが部隊長の【トリックスター】の5部隊。後はアンジェリカの反逆小隊と一応エルダーブレインが率いる鉄血も数には入っているのだが
「本当にアイツラ来るのか?」
「ナデシコからの情報だと反応が途絶えているらしいです、どうやらキャロルの技術が向こうにも使われているようで」
「……裏切ったりしないよね?」
RFBの不安げな声にノアが裏切ったら的が増えるだけだと答えようとした時、特殊第一部隊のナガンから通信が入る、そろそろだったかと思いながらそれに耳を傾ければ聞こえたのは怪訝な声、どうしたのかと聞き返してみれば
《見よ、基地周辺で戦闘が始まっておる》
どういうことだよと思いながら再度扉を開けて顔を出してみれば確かに囲むように戦闘が行われている、だがさっきまでは何もなかったはずだとノアが不思議に思いながらもヘッドギアを展開して一箇所に向けて集中し見てみれば攻めているのは鉄血、そして基地の防衛側はIOPと正規軍の自律人形、そう、【鉄血】である。
思わずナデシコのユノへ即座に通信を繋げ報告を上げれば、彼女から出てきた言葉は
《何のための作戦会議だったのかなエリザちゃん!!!!》
《もしかしなくても数揃えて攻めれば勝てる、いくぞーとかそういうノリだよね》
確かに数だけを見れば鉄血のほうが圧倒的に有利である、そもそもにして敵側は大っぴらに戦力を集めたりは出来ない存在だったのでダミーである基地には最低限の防衛戦力しか無いだろう。
だがそれでも正規軍の自律人形と少数ながら兵器が混ざっているので性能差で薙ぎ払われている部分もある、一応考えているのかそれなりの数を分散して攻めることによって衛星兵器による攻撃は封じている感じはあるのだがそれでも
「合わせて攻めれば楽だろうに……」
《全くじゃ、どうする指揮官、アンジェリカ!》
《こうなったら仕方ないでしょ、予定通り陸路から反逆小隊は攻めさせるわ!》
《ではこちらも攻撃を開始しますね。よし、全部隊へ、開始前に少しだけ良いかな》
んだよとノアは思いながらも装備を展開しつつ黙って彼女の言葉を待つ、それは他の部隊の面々も同じで彼女の言葉を待てば、そんな空気を通信越しとはいえ感じたのか少しだけ緊張した感じの声で
《今回の戦い、確かに色んな人の思惑の結果止めてほしいなんて言われてるけど、私からはこれだけ、妹達を救いたいし、こんな命をなんとも思わない技術はもう止めなきゃいけない、だから力を貸して!》
「はん、言われなくてもやってやるよ……今日で、あたし達の全部を終わらせてやるんだ」
「……はい、終わらせましょう」
「よぉし、気合十分、ランページゴーストは何時でもOKってね!」
にししと笑うRFBだがよく見ればその体には若干の震えが、だが二人はそれを指摘することはなく、だが声が少しだけ震えてんぞとその部分を指摘すれば、これは武者震いだしと返されて、なら良いかと笑ってから
「ランページゴースト、スタンバイ!」
《エアレーズン、何時でもいけます》
《ヤークトフント、狩りの時間はまだかとヤークト3が五月蝿いです》
《AR小隊、出撃できます!》
《トリックスター、全員準備完了じゃ》
続々と流れてくるその報告、残るはユノからの号令だけ、彼女は一つ深呼吸をしてから、映像越しのF10火力支援基地を見つめて、そして覚悟を決めたという目をしてから
《これよりフェアリーリリース作戦を開始、全員の【生還】をもって作戦の完了とします!皆、気を付けてね》
了解!と返事と同時にヒポグリフとウィンダムの速度が上がり、F10基地に強襲を始める、だがそれよりも前にヒポグリフのハッチが開き、身を乗り出したのはノア、彼女は一度機内のアナを見てから一つ頷いて、眼を閉じたまま掴んでいた両手を離し飛び降り
「【
「なんと言うか、アニメを見せたのは私なんだけど、此処までハマってしまうとは思わなかったわけで……」
「私も見ましたが嫌いではありませんよ、験担ぎとして役に立っているようですしね」
頼むからアナはそのままで居てくださいと思いながらも最近の彼女の行動と訓練の比重に何処と無く剣士になるのかなこれという感じを匂わせてきているので多分彼女は来月くらいには胃が痛いとか言い出すかもしれない。
出だしが少々不安になるが、ここからは真剣にならないといけない場面、だからだろうRFBも、そしてアナの今の発言も恐らくは場を和まそうとしただけなのかもしれない。そしていち早く飛び出したノアはと言うと自身が出せる最大の速度でF10基地への接敵を試みるが、向こうから4つの影が飛び出てきたのを確認、その場で止まれば
「ま、出てくるだろうな。だけどネーヒストはどうした、まさか前の作戦の失敗で破棄されたとかじゃねぇよな?」
「対象を確認、これより攻撃を開始します」
「チッ、良いぜ、来いよ……オメェらから先ずは解放してやるからさ」
ガシャンと出した武器は今までの20mmバルカン砲ではない、それは無機質なボウガンとも言えそうな物、それは対ネーヒスト及びアレスにノアが考えに考えた一品、これに名はない、だってこれは今日だけの代物だから、それを二丁取り出し、彼女は構える。
「出来る限り、痛くしないで解放してやる」
そう語りかけた彼女の眼はとても優しく、悲しく、強い瞳をしていた。
戦闘を開始したアレス部隊、それをモニター越しで見つめるのはヨゼフ、彼は孤立無援であり、更には大規模部隊に攻められることになったこの状況でも慌てる様子もなく、寧ろこれもまた計画通りとも言う感じすら醸し出していた。
だが、外の戦況はお世辞にもいいとは言えない、鉄血の数に頼りながらも戦略も組み込んだ動きにいくら強力とはいえ徐々に防衛部隊は削られ、アレス部隊の方も2日ほど前とは違いノアが優位に立っている結果、他のヘリを止めることは出来ずに素通り、このままではこの地下施設に取り付かれるの問題だろう。
「……ふむ、流石だ」
それでも彼に焦りはない、その場から動かないで手元の通信機のスイッチを入れてから繋げたのはエゴール、向こうの返事は待たずにヨゼフは指示した。
「打ち上げを開始せよ、出来るな」
《可能だ、その後、私は防衛に回るぞ》
「あぁ、だが指定位置以外には行かないでくれ、彼女たちを解放するからね」
【彼女たち】その言葉を聴いたエゴールが通信機越しでその仏頂面をほんの少し動かしたのはヨゼフが知る由もないだろう、ともかく彼はそれだけを告げてから通信を切り、机の一角に存在しているスイッチを押せば彼の目の前のモニターに表示されたのはただ一文
【Rabbit Protocol】
「……【赤い霧】も動かすべきかね」
ヨゼフ・アルブレヒト、彼は人類の守護と世界の救済をと述べていたが、本質はやはりこの世界の科学者なのだ、それを知ることになるのはもう少し後になる。
因みにナガンの部隊の名前がトリックスターなのは【トリックスター】=【ロキ】であり、彼の異名が【終わらせる者】だからです
トリックスター
ナガンを部隊長に、アーキテクト、ゲーガー、クリミナ、Vectorで構成された特殊部隊、目的は唯一つ、ヨゼフ・アルブレヒトの身柄か首である。
対ディストーションフィールド武器
ノアが考えに考えたと書いたが実際はアーキテクトの助言も混ざっているボウガン型のウェポン、ボウガンなのは見た目だけで連射ができたりするが特徴的なのは射出される矢には追尾機能があり、またその速度も誘導性も馬鹿にならない。
更にはディストーションフィールドをぶち破ることを考えられているので矢はフィールドに命中と同時にRPG-7のと同じ弾頭に変形、貫き爆散という割とエゲツないものとなっている。