それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
キャロル達がウサギ部隊の稼働を停止するよりも少し時間を遡り地下施設ナガン組、ではなく地上組の入り口を死守している反逆小隊の二人とAR小隊の二人はぞろぞろと迫りくるウサギ部隊を相手に応戦を続けていた。
始めこそは正規軍の自律人形と兵器もあるからなんとかなるだろうと思っていたのだが、基地の外の戦況が若干怪しくなれば兵器はそちらの援護に回され、自律人形も向こうの攻撃に晒されれば長くは持たずに撃破されてしまう。
そんな状況下で彼女たちはそれでもと入り口の死守を続けていた、自身の武装コンテナをシールド状に変形させてそこから隠れながら射撃を続けているM16はリロードをしながら
「へへっ、良いねぇ。この盛り上がりの祭りは久しぶりだ」
「軽口を叩くのは良いけど、ちょっと余裕がなくなり始めてるのも事実よ」
反逆小隊のAN-94が同じくリロードをしながら言うように段々と弾薬にも余裕がなくなり始めており、自律人形に至っては3割がやられている。
だがM16は笑みを崩さない、彼女は信じている、そして何よりもと視線を外に向ければ奮闘を続けるヤークトフントやエアレーズング、唯一地上に残ったランページゴーストのRFB達を見て
「後輩共が張り切ってるってのに私達が諦めちゃ駄目だろ?」
「アンカァァァァァクロォォォォォ!!!へいへい、お喋りし過ぎてると全部わたしが倒しちゃうよ!!」
「それは困るわね、撃破数で報酬が上下しちゃうからね」
そんな話聞いたこと無いのですがとAK-12の言葉に返すAN-94、M16はと言うとマジかよじゃあもっと頑張らないとなと攻撃を再開しつつRFBを見る、彼女は知っている、P基地のRFBという人形は誰よりも臆病ながらもそれでもと戦う人形だと、だからそんな彼女が戦っているというのに自分が手が抜けるはずがないだろうと。
「てりゃああああ!!!」
そんな件の人形、RFBはと言うとナデシコからの情報を頼りに人形たちの援護にそのパワードスーツを駆っていた、機甲部隊を除けばこの場で誰よりも俊敏に動ける盾であると自覚しているからこその行動、だがそれ以上に隊長なら、ノアなら絶対に誰も見捨てないだろうと知っているから、自分もそれに習うんだという気持ちもある。
だからだろう、彼女に憧れ、彼女の行動を習っている部分もあるRFBは若干士気が下がりつつあったこの基地の人形たちに向かってウサギ部隊を蹴散らしながら
「諦めるな!!!死ぬかもとか思うな!!生きるんだって、前をむくんだ!!!大丈夫、皆の運命は、私が守るから!!!」
(オイオイオイ、無意識天然誑しの系譜だわあの人形)
ノアの過去の言動からこうすれば士気が上がると誤解しているRFBは何の恥ずかしげもなくそれを叫んだ、だが戦闘に集中しているので背後の彼女たちを見ていなかったRFBは気づかなかったが、一部の人形の向ける視線が憧憬……では説明がつかないようなものを送っている。
これには戦闘をしながらもM16が苦笑いを浮かべてしまう、だがそれどころじゃねぇなと意識を戻して迫りくるウサギ部隊に攻撃を……という所で異変に気付いた。
いや、彼女だけではない、反逆小隊もSOPも、外の面々もそれにすぐに気づいた、何故ならば
「止まった……?」
「そう、みたいね。少なくとも戦闘音が急に止んだのは確かよ」
「おーい?」
全員が警戒する中、SOPが動かなくなったウサギ部隊の一人を突けば、何の抵抗もなくコテンと倒れてしまう、それはつまり機能が完全に停止したということ、それと同時に
《こちらオモイカネ、朗報だよ皆、キャロルがウサギ部隊の完全停止に成功したよ!》
《あらあら、急に動かなくなったと思ったらそういうことなのね、ケケ、まだ食べれたのに》
「怖いこと言ってんなよヤークト3?にしてもそうか、じゃあ残るは」
ウサギ部隊の稼働停止によって湧き上がる人形たちを眺めつつ、ふと地下への入り口に視線を移す、まだ地下では彼女たちが戦っている、自分とSOPは見た感じまだ余力があるので向かうべきか、そんな事を考えていると、急に寒気が襲った。
言葉に出来ない、嫌な予感というべきか、ともかく自分も今すぐ向かうべきではないかという予感が電脳で騒ぐ、気付けば
「SOP、付いてこい!!ナデシコ、私とSOPも地下に向かう、副官達の現在地を寄越せ!!」
「ふえ?え、あ、ま、待ってよM16!!」
足が動き、SOPに指示を出して階段を駆け下っていく、後ろでは反逆小隊のAN-94が何か叫んでいるが彼女の耳に届く前に扉は閉められる。
場面代わりナガン達はヨゼフの元に警戒しながら向かっていた、が途中防衛戦力らしい敵と全く出会っておらず、弾薬の消耗などは一切ない、その状況にノアが口を開く
「全く出てこないとか逆に不気味だぞ、ウサギ部隊だけが頼りだったってことか?」
「さてな、しかし防衛機構も無いとなると本気でそうだったのかもしれぬな……」
「ですが、相手がそんな甘い考えをする方でしょうか?」
クリミナの言葉も理解できるとナガンが頷く、此処まで用意周到に動いていた相手が防衛戦力をないがしろにするだろうかと、無論、自分たちが攻めるのが予定より実は早く体制を整えられなかったという可能性もなくはない、だがそれにしてもあまりに静かすぎるのだ。
続いてゲーガーがこの空気と雰囲気に感じ取った事をポツリと口にする、この長い廊下が大蛇の口のように思えてしまったのだ、故に
「まるで、招いてるようだな……」
「ふふっ、強者の余裕ってやつかしらね」
「うーん、科学者がそんな肝の座り方するかなぁ、するか、じゃなきゃこんな大それた事できないか」
長い長い、無駄に長い廊下を進み続けて数分後、漸くそれらしい扉の前に辿り着いた、ナデシコに聞けばその先が大広間のような空間になっており、また複数箇所の部屋に続く扉のようなものがあるがどれも行き止まりであるとの事。
ともすれば此処が終着点、この部屋に居るか、その奥の部屋に居るかは不明だがヨゼフ・アルブレヒトを、全ての首謀者を追い詰めたということであり、ナガンが全員に視線だけで覚悟を聞けばそれぞれが力強く頷く、それを確認してから部屋に入れば
《見事だ、まさか此処まで攻め込まれるとは正直想定してなかったよ》
「ほぉ、それは有り難い、一度問うぞ、投降しろ。エゴールも下っておる、素直に言うことを聞けば楽に死ねるかもしれぬぞ」
絶対零度に近い声の呼びかけにヨゼフは軽く笑う、まるでまだ自分は負けていないとばかりのそれに怪訝な表情を隠さないナガン、それから
《すまないがまだ負けていないよ、私には最後の切り札がある……まぁこれを切ることになるとは思ってなかったがね》
「はん、どんな切り札が来たって楽勝だっての!」
《それはそれは大した自信だ、では紹介しよう……》
彼女たちの目の前の扉が開き、ゆっくりと現れたのは身の丈大剣、M82A2を突撃小銃にしましたというそれを片方ずつ、腰まで掛かりそうな茶髪、顔は金属の仮面で見えないが体型から成人女性と思われる彼女はナガン達を見据えるように顔を上げれば目の部分を紅く光らせ
《これが私の最後の切り札【赤い霧】だ、存分に楽しみ、そして死んでくれたまえ》
「来るぞ!構え……」
ナガンが指示を飛ばすよりも前に赤い霧は彼女の前に現れ、その刃が無慈悲にも……
泣いても笑っても、ラスボス戦はっじまっるよー!