それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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伸ばした手に感謝を告げつつ


フェアリーリリース Session11

首謀者であるヨゼフ・アルブレヒトの死亡、それによって残るは彼が遺し、計画の要とも言える衛星兵器群だけとなった。

 

作戦開始と同時に打ち上げられたミサイルの数は凡そ10、その後に打ち上げられたという報告は聞いていないがそのミサイル一つの何人ほどの核となるクローンが入っていたかが分からない以上、衛星軌道上にどれほど浮かんでいるか、そしてそれがいつでも撃てるようになっているのか、もし撃てるのならば、次の標的はどうなっているのか等など、不安要素が大量に出てくる……が

 

「とは言ったがこれより先は指揮官の仕事じゃ、わしらが出る幕はもう無いのぉ」

 

作戦の大半が終わりなんとも間の抜けた声に戻ったナガンの言葉が全てである、現在、この先の部屋に向かいユノのサポート及びヨゼフが残したという世界を救済を可能とする技術のデータを吸い取りに向かったアーキテクトとその護衛としてゲーガー以外は先程の戦闘が行われた部屋で待機しつつ、負傷者はそれぞれ処置を受けていた。

 

「あぁ、副官動かないで下さい、まだ処置が終わってませんから!」

 

かすり傷じゃろうてこんなんと思いながらM4から右目の処置を受けるナガン、正直に言えば右目は既に機能を完全に消失しており、半分ほど視界が見えないという状態である。それでもナガンにとってはかすり傷と同程度であり、それよりも大丈夫なのかと言いたいのは壁により掛かる形で座って、アナから処置を受けているエゴール、彼はアーマーなどを着ているが中は人間である、それだと言うのにそれを貫通する攻撃をノアを庇う形で受けてしまったのだ。

 

「おい、おっさん」

 

「……君が、彼女の忘れ形見、か」

 

自分を守るために負傷したエゴールを心配するようにノアが声をかければエゴールははっきりとした声でそう聞いてくる、その質問に頷けば彼は穏やかな表情をしからまた視線を外す、その態度に何だこいつと思いながら

 

「あのよ、何でアタシを庇ったんだ?あと、このくらいの傷じゃ死なねぇからなおっさん」

 

「分かっている。庇ったのは、彼女の忘れ形見に傷を着けたくなかっただけだ」

 

「んだよそれ、アタシはもう傷だらけだっての、それよりも母さんとはどういう関係なんだよ?」

 

それは少々気になるなとキャロルが近寄ってきたタイミングで処置を終えたナガも寄ってきてからエゴールの顔を見て、それから端末を一つ取り出して画像を表示させる。

 

写っていたのは一組の男女、無論そういう仲の写真ではない仕事終わりの記念撮影と言う形に近いそれ、そしてそこにいる人物は非常に見覚えがあった、何故なら写っているのは【レイラ】と【エゴール】なのだから。その写真を見た時、彼の目が見開かれた、残っているとは思ってなかったという表情に呵々と笑ってから

 

「レイラが持っていたペンダントに入ってたのじゃよ、この様子だとアヤツは割と気になってた可能性があるが、どうなんじゃ?」

 

「まさか、そんな素振りなんて見せなかったぞ」

 

驚いたようなエゴールの声、ほんの少し前の惚れてた女の夢のためだと聞いていたアナはそこでこの手の話に鈍いはずだと言うのに今回は閃きが走った、走ってからそれはつまりとなってハハッと乾いた笑いを零す。

 

その様子にナガンもあぁと納得し、キャロルとノアは何だ急にと言う表情を晒す、最後に周囲はというとSOPを除いて理解していた模様。そんな空気が流れる中、その先の部屋に向かったアーキテクトはと言うと機械を操作しそれから小さく首を横に振ってから中央に安置されるように機材に座らされているネーヒストを見つめて

 

「駄目だ、この娘をこっから切り離したらそれだけで死んじゃう」

 

「生命維持装置という事か、ナデシコ聞いてたか?」

 

《そっか、あっと指揮官は今は手が離せないというか……多分、そっちのナデシコに接続して侵入してると思う》

 

オモイカネの言葉は決して比喩などではない、過去にキャロルがプロトタイプのナデシコと接続し侵入してきたことをヒントにならば向こうも似たようなのを使っているのなら出来るのではと閃き実行、これにはオモイカネ始めとする大多数から反対されたが意地でも退かなかったが故に決行されているので多分無事に戻ってくれば説教だろう。

 

どうであれ、アーキテクトもサポートを出来るかと思ったがどうしようもないと判断、ならばとヨゼフの研究成果を覗いてみれば声を上げ、それから

 

「狂ってなかったら、多分世界を救ってたのはこいつだと思う」

 

「そんなにか」

 

「うん、悔しいけどアタシじゃこの領域に行くまでもっと掛かってたと思う、だけどこれがあれば……よし、データの吸い出し完了、此処で待機してるね」

 

頼んだよ、ユノっち。届かないだろうけどそれでも声援を送ってから近くに椅子に座りハァと息を吐く、ゲーガーも座り同じ様に息を吐いてから大型モニターに映されている衛星兵器【ゲイボルグ】の稼働状況を見る、その数は30、今は主に重度の汚染地域の上に待機しているらしい事を見つめつつ事が進むまで待機することにしたのであった。。

 

そしてユノは電脳空間で遂にネーヒストと対面していた、だがその様子は虚無という感じであり感情は殆ど見られない。

 

「ネーヒスト、ちゃん?」

 

声を掛けるが反応は返ってこない、だけど彼女は慌てずにネーヒストに近寄りその手を両手で包んで握ってから集中する。恐らくはこれが最後の支配者(ルーラー)の能力の使用、これを使い彼女たちを縛っている拘束全てを解除していく、途中軽度の頭痛が彼女を襲うがこれでもナデシコ側で三人がサポートしてくれていてこれなので無かったら絶対に出来なかったと感謝しつつ作業を進め、最後の拘束を解除したところで手を離してみれば

 

「……ルーラー?」

 

「あ、良かった。うん、私だよ、でもユノって名前だけどね、そこはまぁ良いんだけど、えっと、お話しに来たんだ」

 

「状況は、理解してます。貴女が何をしに来たのかも」

 

ネーヒストは洗脳もされていたし、そうであれと作られていた。だがあの短くもない稼働時間は一番オリジナルに近い形で作られた彼女に感情を生ませ、封じられながらも自我を持ちデータリンクによって今日までの事柄全てを理解している。

 

自分たちがどういった目的で作られ、そして自分たちがどれほど危険な存在になってしまっているのかすら

 

「なら、話が早いね。あのね、救えないのかな、生まれてこんな形で終わるなんて駄目だと思う」

 

「ルーラー、貴女ほどなら分かる筈です、もう私達は救われないのだと、いいえ、それ以前にここからもう出れないのですから」

 

だからこそ目の前のユノをベースにしながらも彼女よりも大人びた容姿のネーヒストははっきりと続ける、姉の気持ちを痛いほど分かると思いながらそれでも事実を

 

「私の、私達の最初で最期のわがまま、聞いてくれませんか?」

 

「え、さ、最期って、駄目、駄目だよ!!!」

 

「ありがとうお姉ちゃん、こんな私達でも、感情一つで人類を消せてしまいかねない危険物でもそうやって人間扱いして、生きていると教えてくれて」

 

「そんな事言わないで、まだ手段が、そうだルーラーをもう一度」

 

諦めの悪い姉に穏やかに笑いながらネーヒストはさっきとは逆に彼女の右手を両手で包んで微笑む、そもそもにして

 

「もう、貴女はこれ以上無茶してはいけない、子供を不幸にしたいのですか?」

 

「え、そこまで知ってるの!?あ、じゃなくて、じゃあ、えっと……」

 

「それに私達の存在は容易に残ってはお姉ちゃん達に迷惑をかけちゃいますから、自分たちの技術データ全てを此処ごと消滅させなくちゃいけません、それを行うためにも私は残らないと」

 

そう告げる彼女の眼には悲しみは一切ない、穏やかでありながら確固たる決意に満ち溢れていた。生まれてからまだ一週間あるかないかという彼女だがその心は確かにユノの妹なのだと思わせる物が見えていていた。

 

だからだろう、ユノはそうなっては退かないと自分だから理解できるから顔を俯かして肩を震わせる、救いに来たと言いながら、彼女自身も分かっていた、どうしようもないと

 

「でも、諦めたくない」

 

「はい、だからありがとうございます。その気持ちだけで私達は救われてます」

 

今度は優しく抱擁してから、そっと離れる。離れてから最後にもう一度ユノへ向き合い、告げる

 

「大好きです、お姉ちゃん!」

 

「馬鹿、バカバカバカ!!お姉ちゃん言うんだったら私の言うこと聞いたって良いじゃん!」

 

「それとこれとは話が別ですね、えっと、あ、スペクターお姉ちゃんにも妹達を解放してくれてありがとうって伝えておいて下さい!」

 

「……うん、ごめんね」

 

「謝らないで下さい、じゃあね、お姉ちゃん」

 

それだけを告げてからユノを強制的にナデシコへと押し戻し、それからそっと振り向いてから衛星兵器になった妹達に号令をかける、自分たちを自爆させる前に少しだけ、迷惑かもしれないけどヨゼフの所為にしつつお節介を焼こうと

 

「さぁ、私達の最後のお手伝いを、始めましょうか!」




Q エルダーブレインとエージェントどうしたん?

A 明日出すから待ってて

次回、フェアリーリリースSession FINAL!

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