それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
次のユノが目を開ければ、いつものナデシコの電脳空間だった。ギュッと手を握り、それからネーヒストの包んでくれた手の暖かさを、彼女の声を、彼女の姿を、全てを忘れないようにと心に誓っていると
「指揮官……その様子だと、駄目、だったみたいだね」
「うん、駄目とは違うけど、あの娘達の決意が強かった、もう誰に似たんだろうねあんなに頑固なのって」
「ツッコミ待ちか?ならばやらんからな、それよりもまだ仕事は残っているだろう?」
「ふふ、まぁ確実に指揮官たちなのは確かだと思うよ」
AK-12の言葉にそうだねと答えてから先ずはアーキテクトに通信を繋ぐ、向こうは戻っているとは思ってなかったのか少し驚きながらもユノの言葉を聴いて何処か納得したような感じに答えていた。
そのアーキテクトは現在は椅子から立ち上がり吸い出したデータを懐に大事にしまい込んで眠るように座っているネーヒストに
「君たちは、その選択を取るんだね。強い娘達だ、そう考えると本当にユノっちのクローン何だなって思うよ、何がどうすれば此処まで芯の強さと割り切りの良さが遺伝するんだろ」
「分からないが、それが心という部分ではないのか、行くぞアーキテクト、このまま地下施設の自爆に巻き込まれたくはないだろ」
「そりゃ勿論って、おい?おいおいおい?なんかゲイボルグ稼働してるんだけど!?」
叫びを聞きゲーガーがモニターを見れば確かに全ての衛星兵器が攻撃準備と表示されている、まさか此処でヨゼフが罠を!?とアーキテクトが即座にコントロールを司る機械に駆け寄り操作を始めようとしたところでモニターにネーヒストが写って
《あっと、ごめんなさい。その決して人間への攻撃ではないので大丈夫です》
「お前はネーヒストか、と言うよりも衛星兵器が動くだけでも大事なんだ」
《……あっ、あぁっと、あれですこれも全部ヨゼフの所為って事でお願いします、それで今から妹達全員で自壊するまで崩壊液に汚染、それもELIDの巣となってしまっている重度汚染地域に向けて攻撃を開始します》
勿論ながらそれで全ての汚染地域がどうにか出来るとは思っていないのだがそれでもただ自爆するよりは何かの役に立ちたいと気持ちからの行動らしい、規模の違うお手伝いに思わずゲーガーは頭を抑え、アーキテクトは苦笑いを浮かべてから
「それで、君はどうするんだい?」
《私は、皆が逝ったのを確認してからこの施設ごと対消滅反応を起こして自爆します》
「なんて?」
《え、対消滅反応を起こして自爆します、ですけど……?》
何とか思考が停止しないように努力しながら更に詳しく聞いてみればヨゼフが万が一の際に証拠隠滅の為に用意してあったものらしく、ネーヒストは自爆はこれしか無いということらしい、のだがその範囲がこの地下施設だけで済めば良かったのだがどうやら地上の基地もバッチリ範囲内らしい。
つまりは、彼女たちが攻撃を開始し自壊するまでの数分とちょっとで此処から脱出、更にはF10基地から離脱まで済まさないといけない、ということである。
「……とりあえず言うけどさ、私達が完全に離脱してくれるのは待ってくれるよね?」
《そ、それは勿論ですよ!?》
「あぁ良かった、元が元だからてっきり忘れていないかと思ったよ」
《ねぇ、さっきから聴こえてるからね二人共?》
これから悲しいお別れだと言うのにそうとも思えない空気にそれぞれが笑ってから最後に二人はモニターに映っているネーヒストに別れを伝えてから直ぐにまだ待機しているナガンたちの所に戻ればそこには例のケルベロスよりも大きなダイナゲートことドリドリちゃんが封鎖でもされていたのだろうか、扉をぶち壊し現れて、エルダーブレインとエージェントが丁度降りてきた所だった。
二人、特にエルダーブレインはキョロキョロと周囲を見渡してから元が人間だったとは思えない姿の遺体になっているヨゼフ・アルブレヒトを見つけ、それから
「終わってる……」
「そう言えばお主等はどこに居ったのじゃ」
「我々は途中で防衛システムに阻まれまして、足止めを行っておりました」
どうやらその間に終わるとは思っていなかったらしいエルダーブレインはそれを見つめつつ、興味を失ったのか小さくため息を吐き出す、そのタイミングでアーキテクトが今から起こることを説明、となれば即座に脱出せねばなとナガンが号令をかけて準備に入ったところで、ドリドリちゃんの背中に掴まりもう帰りますという空気を醸し出しているエルダーブレインにキャロルが
「待て、お前らはこれからどうするつもりだ、まだ戦うというのならば此処で終わらせてやるが」
「不要、敗北確定、これからは、未定」
「そうか……ふむ、だったら俺もまだ見つけられていない難題があるのだが興味あるか?まぁお前でも解けないと思うがな」
「話せ」
あっさり乗せられてるじゃねぇかとエゴールに肩を貸そうとするが身長が足りずにアナに変わってもらったノアが呟くが悲しいことにそれが彼女の耳に届くことはない、そして乗ってきたのを確認したキャロルはエリザをしっかりと見据えてから
「世界を識れ、お前がただ壊そうとしかしなかった者達を識れ、俺の……姉上から託された命題だ、お前に解けるか?」
「……疑問、識れとは?」
「それすら分からん、だからこそ一時期は旅をしていたが未だ分からん、でもまぁ、貴様もそこから始めたらどうだ」
そう、結局キャロルも今日まで分からずじまいだったその命題、恐らくは人生全てを使ってもわからないそれをエリザに託すことにした、人間を殺すことしか考えなかった彼女へ、過去にそうだった自分をアルアジフが救ってくれたように、今度は自分がと。
「了承、行くぞエージェント」
「畏まりました、では皆様、これにて」
それがエリザにどう伝わったのかは分からないが彼女はキャロルにはっきりと答えてからドリドリちゃんの背中に掴まり、エージェントも礼を一つしてから続くように掴まればドリドリちゃんはその場で反転し来た道を帰っていく、そこでアーキテクトがポツリと
「あれ、私の設計したのなんだけど」
「今更じゃろうて、こちらナガンこれより地下施設より脱出する!」
《うん、迎えのヘリはもう用意してあるし、他の皆ももう離脱してるから残りはナガン達だけ、気をつけてね》
ユノの言葉に頷いてから静まり返った地下施設を戻り、その間、全員はそれぞれ会話を挟んでいた、特にエゴールはこれからどうするのかというノアからの質問に彼は少し悩み、どうであれと挟んでから
「私は、正規軍にて裁かれるだろうな」
「将軍殺し、確かにただでは済まんじゃろう、しかしお主を殺すにはあまりに惜しいな……ふむ、任せよ、今回のことで少々手があるのでな」
何を考えているのかとエゴールがナガンに聞くが笑って誤魔化される、そうこうしている内に地上へ、そして基地前の広場に行けば既にヒポグリフとウィンダムが待機しており、乗り込もうとしたところで何がなく振り返ったM4があっと声を漏らし、全員が釣られてみれば、空から光が降り注いでいた。
間違いなくゲイボルグからの照射、ならばもう時間がないと全員が乗り込み、発進、注いでいる光を、そして段々と弱まり最後には光の柱が消えていくさまを機内の全員が見つめているとふと誰かの耳に何かが届いた。
《ね、ねぇオモイカネ、何か聴こえない?》
《別に、いや、待って聴こえる……これって、歌?》
【ぼーくらはみんな生きている】
それは歌だった、声からすれば間違いなくネーヒストが、そして実際に彼女はあの電脳空間で自壊し、その破片が流れ星のように空で燃え尽きていくのを一つ一つ見つめながら偶々、ついさっき知った歌というものを、そして自分たちにぴったりじゃないかなと言うその曲を口ずさんでいた
「いきーているから、かなしいんだ」
自分たちは確かに生きていたということを覚えてほしくて、忘れてほしくなくて、でも生きれないという悲しさを
「ぼーくらはみんなーいーきているー」
どうか、この世界の今を生きて、未来を生きていく人たちの助けになることを祈って彼女は歌う
「いきーているから、嬉しいんだ」
私達は、こんな生まれだったけど、こうであれと生み出された理由は唯一つ、こんな形だったけど私達は
「いきーているから、愛するんだ」
でも、もし許されるなら、もしまた生きることが許されるのならば、知り合う人たちにこう伝えたい
「みんな、みんな生きているんだ、友達なーんだー」
最後の妹が照射限界を超えて自壊、最後の流星となって地上に落ちていくのを確認してからネーヒストは投影端末を操作し、こんな自分たちでも手を伸ばしてくれたお姉ちゃん達を思い出しながらそっと、最後の操作を……
ヒポグリフとウィンダムに衝撃が襲った、これだけ離れているにも関わらず機体が大きく揺れ、だが機内の誰もがその揺れを気にすることなく対消滅していく基地を見つめ、気付けば涙を流していた。
こうしてフェアリーリリース作戦はヨゼフ・アルブレヒトの手によって本拠地だった地下施設を含んだ全てが自爆、衛星兵器も全基が汚染地域に攻撃をしてから自壊と言う形で終え、作戦は成功という形で幕を閉じることになった。
生まれて良かった、皆と出会い、通じ合えて。
次回 エピローグストーリー
『神様も知らない
(多分、これもSessionシリーズだよ)