それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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終わることを、恐れずに生きよう

それが次の、また始まりの風に

※ 最終話だからって事で物凄く長いです、うん、分ければ良かったねこれ


神様も知らないヒカリ(きせき)で Session2

フェアリーリリース作戦から13年が経ち、私達やP基地の皆は勿論、世界も大きく変化が起きました。

 

私達のことは後にして、先ずは世界を。あの作戦の最後、ネーヒストと妹達が文字通り身を犠牲にして行った照射攻撃は世界各地に巣食っていた重度汚染地域を厄介だったELIDを巣を含めて全てを焼き払い、完全ではないとは言えその地域での活動を可能に、まぁ狙いはそれではないのだけど、あの光の柱とその後に流れてきた衛星兵器の、妹達が自壊した時の破片の流れ星は世界の各地で目撃されて人々の、もちろん全てがそうではないけど、希望に繋がったらしい。

 

らしいっていうのは私達もそれを把握していないから、流石に基地一つで世界の全てを見れるわけではないのだから当然なんだけどね。でも分かる範囲では確かにそんな話が増えたような気がした、だからかな、アーちゃんがあの作戦の時に吸い出していたヨゼフ・アルブレヒトの研究成果を元にあらゆる汚染を完全に除去できる物を作るんだとプロジェクトを発足、これにはペルシカお母さんも、そして繋がりがある基地で腕に覚えがある人たちにも集まってもらって日夜試行錯誤が繰り広げられていたことを覚えている。

 

結果、世界はと言うと成功を収めた。そう、アーちゃん達はやり遂げたのだ、その時の喜びようは今思い出してもこっちが嬉しくなるほどでっとと、ここから今日までの皆のお話になるけど、最初はそのアーちゃん。彼女は私がやりたいことがあるって夢を伝えたら大喜びで応援してくれて、今でも変わらずの大親友の一人、そんな彼女は今は世界各地の汚染を除去、新たなエネルギーの開発、既存のシステムの改良、と言う感じに大忙しな日々を送っている。

 

かつて人類に反旗を翻したハイエンドモデルでありながら、今では世界を立て直した立役者の一人、でもアーちゃんが言うには世界のためじゃなくて

 

「アタシが今日まで頑張れたのは、いつか語った夢があったからだよ、覚えてる?ユノっちやその子供たちに綺麗な海を見せてあげたいって、それのお陰なんだよ」

 

うん、覚えてるよ。だからこそアーちゃんは開発に成功したと同時に真っ先に行ったのは海の除染、周りには海路を広げたほうが手っ取り早いとか何とか言ってたみたいだけど本当は私達に汚染がない海を見せたかっただけって、らしいなって思ったよ。

 

ああ、そうそう、そんな多忙なアーちゃんだけど、その傍らには88式が付いてきている、これは少し前に聞いたんだけどあの娘はアーちゃんが好きで、でも向こうが全くそんな素振りは見せなくて、それで良いのって聞いたら

 

「私は、主任が笑顔で居るのならば満足です」

 

そんな風に語ってた時の88式はとてもキレイな笑顔をしていた、彼女はあれで満足しているみたいだ。次にアーちゃんの相棒であり親友でもあるゲーガーさんはと言うとアーちゃん達が除染した地域で、本当に安全かどうかの確認も兼ねてそこで牧場を開いている、一度だけ行ったことあるのだけど物凄く、と言う訳ではないがそれなりに大きな牧場で、牛飼い姿の彼女が動物の世話をしている姿はこっちも元々人類に反旗を翻していたとは思えない光景だったな。

 

「……ふぅ、今日も元気そうだなおまえ達は」

 

多分、こんな事を口にしながら汗を拭って作業に勤しんでいるんだと思う、週に二度ほど牛乳と卵が送られてきてるから軌道にも乗ってるんだと思う、凄いよね。

 

それで次にP基地の皆についてかな、鉄血との戦いは終わってそれでもP基地は治安維持部隊としてやっぱり忙しい日々を送っているらしい、え?なんでらしいって言い回しなんだって?

 

ふふん、私は実はもう指揮官ではないのです。まぁ正確には指揮官補佐、と言う形ではあるのだけど……そこら辺はもうちょっと後、ともかく今P基地の指揮官をしているのはキャロルちゃん、アーちゃんの時と同じ様に叶えたい夢があると言ったらなんだか優しいほほ笑みを浮かべ

 

「ならばこの基地のことは俺に任せておけ、妹の夢を応援するのは姉の務めだからな」

 

そう言って快く指揮官を変わってくれた、でもお姉ちゃんは私では?なんてことを伝えたら物凄く微妙な顔をされたんだよね、あれ絶対に私を未だ姉として認めてない顔だよ、うん。ともかくキャロルちゃんが指揮官としてP基地は今日も稼働している、因みにだけど副官を務めているのはFive-Sevenだったりする、きっと上手くやっているのだろう、あぁでも

 

「……何度言えば気が済むのかしら?キャロルは、私の、指揮官なの」

 

「そっちこそ何を言ってるのですか、キャロルちゃんは私と一緒に居るべきなんです、貴女みたいな汚れきったメンタルの人形と居たら駄目なんです」

 

「俺は貴様らのものになった記憶はない!!!」

 

新しく配属した人形と仲が悪いとか聞いたけど……まぁ、大丈夫かな。えっと、次はヴァニラさんとイベリスかな、って言ってもあの二人は変わらず仲良し、仲良しなのは良いんだけど3年くらい前にやっと同棲を始めたって聞いた時は思わずのんびり過ぎるよ!!って叫んじゃったな、いや、私は悪くないと思うんだ。

 

「クシュン!誰か、いや、これはユノちゃんが噂してるな?」

 

「もしかしたら風邪かもしれませんよ?此処最近は少しばかり冷えますし」

 

他にも色々と語りたい人達はいる、ペーシャちゃん達は相変わらずP基地の医療スタッフとして活動、リベロールちゃんだけはG11を射止めたみたいで惚気けながらお昼寝してるってソーコムが話してたな。

 

諜報部や広報部の皆も変わらずに働いているし、スチェッキンも商売に性を出している、寧ろ世界が平和になったことで売りに行ける地域が増えたとかで生き生きしてるってトンプソンが言ってた。

 

それと開発部門は今は89式が主任として稼働している、アーちゃん達についていかなくて良いのかって聞いたら

 

「馬に蹴られて地獄には落ちたくないですし」

 

困った感じの笑みを浮かべながらもそう答えられると私も納得するしかなかったね、でもよくやり取りはしてるみたい。

 

忘れる所だった、P基地と言えば代表する存在、アイドルグループのスリーピース!まぁ活動内容的には変わらないのだけど、海が綺麗になって生態系が整い始めたってことで何と

 

「という訳で私達も漁を行うことになりました!!」

 

「イエーイ!!!お魚一杯捕るぞー!」

 

「アイドル、アイドルとは、いや、今更なんだけどさ」

 

「あはは、でもほら、楽しそうじゃないですか」

 

やっぱりアイドルは大変だけど凄いんだなって、クリミナ達に夕食の時に話したら曖昧な笑みを浮かべられた、なんだろう、私はこのままで居てくださいみたいな顔だったよあれ。

 

他にと言えば、アナさんも忘れてはいけない、彼女は作戦後、赤い霧として利用されていたレイラお母さんの遺体をお墓に眠らせてから墓前で今日までの事を報告、それからはランページゴーストの副隊長として働いている、それとそこに追加する形になるのだけど、あの戦いでカーターっていう将軍を裏切り暗殺したエゴールさん、本当ならあの後に正規軍にて裁かれるだけ、だったのだけどお婆ちゃんとアンジェリカさんが何やら動いたらしく、何とグリフィンに雇入れ、しかも

 

「こちらエゴール、この辺りの鎮圧は済んだぞ」

 

《こちらシンデレラ、こっちも無事に終わりました、マキシマムも無傷です。楽勝も良いところですね》

 

「それはまぁそうだろうな、まぁいいランページゴースト、帰投するぞ」

 

P基地に引き入れてランページゴーストの隊長代理として働いてもらっています。一応、あの人とも話をしていてレイラお母さんと互いが互いに両片想いになってたと聞いた時は驚いたけど、今では偶に家に来てお話をしてくれる良いおじさんみたいな感じで、ルキアも結構懐いてるんだよね。

 

AR小隊はP基地を本拠地にしながら今では世界各国に飛び回って活動しているらしい、任務が終わるとこの家に来て話を聞かせてくれるのは良いのだけど偶に補佐の立場じゃ聞いちゃマズイのではという内容も主にSOPが話そうとするから油断ならない、本当に。

 

次に、ヘリアンさん達かな、と言ってもこっちも大きな変わりが……あった、何があったのかって?一番大きなのは、やっぱり

 

「ふふっ」

 

「なぁに写真見てニヤついてるのですかヘリアンさん、はい、これが今日の分でございます」

 

「カリーナ、君は慌てなくて良いのか?」

 

「喧嘩なら買いますが?」

 

ヘリアンさんに春が来たみたいです、そりゃもうカリンちゃんから聞いた時は驚きの余り固まっちゃったよね、いや、ヘリアンさんに春が来てもおかしくはないと思ってたけど、その、ねぇ?

 

因みにカリンちゃんは今はP基地ではなくて本部のヘリアンさんとペルシカお母さんの補佐になってる、なので現在のP基地での後方幕領は64式自を初めとする何人かで分担しているらしい。寧ろ人形で分担する作業を一人でこなしてたカリンちゃんって何者なんだろ……

 

そしてペルシカお母さんはアーちゃんと共同し日夜研究に没頭している、しすぎて偶に私やカリンちゃんが強制帰宅という事で家に招かないといけないくらいに没頭している、でもそれは私達の、もっと言えばルキアやクフェアちゃんとノアちゃんの子供、クリスちゃんの未来のための研究だって知ってるからありがとうと思うのだけど、だからといって倒れそうになるのはどうかと思うよお母さん……因みに今日は家に帰宅させてる日です、なので

 

「あぁ、フカフカな寝具はやはり良いものだね……」

 

なんて言いながらベッドに沈んでると思います。えっと後は……あ、エリザちゃんの事も話さないとね、あの作戦の後に消息不明だったのだけど、此処最近になって世界を旅してるってことが判明したの、証拠は月に一度の形で私の端末に送られてくる風景の写真、この間はエベレストって山を登ったからと頂上からの写真が送られてきてた、多分エージェントさんが撮ったのだと思うけどドリドリちゃんの背中に座っている姿は可愛らしいと思った。

 

それでそろそろ私達のことを話さないとね。先ずはノアちゃん達かな、普段なら彼女たち家族は私達の家と真隣に住んでてノアちゃんはP基地でランページゴーストの隊長として大黒柱してるのだけど、一週間くらい前から兼ねてからの予定だった家族での旅行に出ている、平和で、綺麗になった世界を確か電車を使っての旅行だって言ってたな

 

「やっと、帰ってこれたな……電車ってのも悪くはねぇし風景はまた違って見えるから楽しかった、なクフェア、クリス?」

 

「うん、何処も綺麗な光景だったね」

 

「とても綺麗でした、でもノアママは途中でちょっと飽きてた」

 

「そ、そんなことねぇし、それよりも早く帰って能天気バカの所行くぞ」

 

でもそろそろ帰ってくるかもしれない?ナガンお婆ちゃんはフェアリーリリース作戦の時の右目の負傷が崇って引退、ってことになってるけど本当はお婆ちゃんが言うには

 

「わしはもう戦う理由が無いからの、これからは次の奴らの時代じゃ……老兵はあとは隠居してたいのじゃよ」

 

という事で我が家でルキアやクリスちゃんのお婆ちゃんとして日々を過ごしてます、でも偶にやっぱり少し動こうかとか言ってるから、もしかしたらガーデンで自警団を率いるかもしれない、いや、やりかねないから怖いんだけどこれ。

 

また、この家には私達やナガンお婆ちゃん、ペルシカお母さんの他にももう一人、オモイカネもナデシコをウロボロスさんに任せて離れ一緒に過ごしている、今ではすっかり皆のお姉ちゃんという感じの立ち位置になっててのだけど、どうして急にと聞けば

 

「あたいもさ、これからの未来ってやつをこの目で、実体で見てみたいって思っちゃったんだよ、まぁウロボロスに呼ばれたら何時でもナデシコには戻れるんだけどね?」

 

《気にするな、私とて暇つぶしになるのだから変わってやったのだからな》

 

「いやぁ、マジで有り難いよ、うん」

 

頬を掻きながらそう語るオモイカネ、もしかしたらもっと前からそんな事を考えていたのかもしれない、でも毎日が楽しそうな彼女を見るのは私としても嬉しいのもである。

 

最後に、私達ヴァルター一家の事を。クリミナはノアちゃんと同じ様にP基地で働いている、ガーデンの自警団でも良かったのだけど実入りを考えるとそっちらしい、まぁ確かに分からんでもないのが現実である。

 

ルピナス、ステアー、シャフトの三人はそれぞれガーデンで働いている、ルピナスは自警団、ステアーは街の整備士さんのお手伝いを、シャフトはP基地のIDWが昔手伝いに入っていた孤児院の二人【ロペラ】と【フトゥーロ】が経営している孤児院【レイディアントガーデン】の手伝いをして、毎日が楽しそうに過ごし、成長している、勿論その中にはアニス、ビビ、クレア、ディアナの四姉妹も入っている、あの娘達はあの娘達で働いているから凄いよね、かわいいよね。

 

そして、我が愛娘ルキアは今ではクリスちゃんと同じく13歳、立派に成長し見た目は私に、でも髪とか顔つきはクリミナに似た彼女は今日も元気一杯で、でも私の血が濃いのかなと思うのは誰にでも笑顔で別け隔てなく手を差し伸べて友だちになってしまう、クリスちゃんはと言うと全体的に見ればノアちゃんの血が濃く、性格や髪の色にはクフェアちゃんが濃い、ルキアとは裏腹に物凄く大人しい性格の娘だけど、一つスイッチが入るとノアちゃんをそのまま入れたかのような暴れっぷりを見せてくれる。

 

あれは凄かった、まぁそういう時は大体が苛められている子を見たとかそういうときなのだけどルキアも一緒に立ち向かうものだから女の子なのに傷を作ってくることもしばしばであり、私やノアちゃんが苦笑いを浮かべることも多々ある、ナガンお婆ちゃんは元気で良いなって笑ってるけど。

 

で、最後に私、ユノ・ヴァルターはと言うと、グリフィンが新たに始めた事業の一つである民間学校、その中でも初めにガーデンに作られた学校【リディアン】の教師を務めています、そう、何時だったか見たあの夢の私のように、皆に教わって今の私があるように今度はそれを誰かにしたいと思ったから……今でこそ平和になりつつあるこの世界だけど、また何かの拍子に争いが起きないとも限らない、儚い平和かもしれない、だけどそれを少しでも長くしたいから教える、この世界は様々なことがあったということを。

 

「ユノ、そろそろ行きますわよ」

 

「おかーさーん!早くしないとノアおばちゃんが遅いって怒るよー?」

 

「おっと!?ごめん、向かう!!」

 

今日はレイラお母さんの命日、その日は決まって皆が集まって墓前で祈りを捧げることにしている、だからペルシカお母さんも帰宅させたんだけどね、そして少々祈りを捧げる時間が長すぎたようだ、私はしゃがんでた格好から立ち上がり、もう一度レイラお母さんの墓石を見つめる。

 

まだまだ語りたいことや報告はあるけど、それはまた今度来た時にするね、だから最後にこれだけは伝えよう、レイラお母さん……私はね

 

「幸せだよ、これまでも、そしてこれからもずっと、だから見守っててね……」

 

「おい、まだなのか能天気バカ!!」

 

「私は報告することが沢山あったの!!」

 

早く行かなければいよいよとなるとノアちゃんのドロップキックが炸裂する、そんな事を思いながら振り向いた時、私は気づかなかったが墓石の前に一人の女性と二人の少女の幻影が立っており、それぞれが穏やかに笑ってから消えていった。

 

思わず振り向けばもうそこには誰も居ない、でもきっと見ててくれるんだと分かれば、思わず口から自然と言葉が出た

 

「……じゃあね、レイラお母さん、お姉ちゃん、ネーヒストちゃん」

 

今度こそ背を向けて皆の元へ歩き出す、私達はこの世界で出来ることをしながら生きていく、今日も世界は、色んな人の努力のお陰で平和です。




これにて【それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!】の『本編』は終幕とさせて頂きます、非常に、本当に非常に長い間、ご愛読いただき本当にありがとうございます!!

コラボ等をして下さった方々にも頭が上がりません、お陰でユノっち達はこのような最高の最終話を迎えることが出来ました、ありがとうございます!!!

とは言いつつも、ある程度フェアリーリリース作戦の前後の展開が変わってる形でコラボや、思い付いた話などを番外編と言う形で書くかもしれないのでその時はよろしくお願いいたします。

なんだかうまいこと言えずに申し訳ございませんが、最後に改めまして長期間のご愛読、本当に、本当にありがとうございました!!!

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