それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
という訳で番外編始まります。
注意書き
今回から番外編という事で時系列などが話しごとに変わったりします。
☆←これがサブタイ前に付いている場合は【神様も知らない
ついてない場合は【フェアリーリリース作戦】後、更に諸々の話が変わり【戻らない時計があるから進める】でノアが打ち上げられたミサイルに気付いた結果、様々なことが早まって少々被害が変わっている世界線の時系列のお話となっています。まぁざっくり言ってしまえばこっちは共通ルートということになるかと。
なのでコラボ等はこっちのお話で扱うことになります、ただ【神様も知らない
では長々と、失礼しました。ではこれより【それいけS09P基地の愉快な一日】をお楽しみ下さい。
恩人で、友人で、ママ友で
ここはS09地区にある【早期警戒管制基地】こと【P基地】ナデシコと呼ばれる大規模レーダーを使い、S地区全域と今では少しづつだが監視地区を増やしながら様々な敵からの襲撃や動きを知らせる基地として稼働している。
始めこそ無名なこの基地だったが様々な出来事を超え、そして此処最近で一番大きな軍事作戦【フェアリーリリース作戦】によって今ではグリフィン本社でも良い悪いはさておいて話題に上がることが多くなったこの基地の指揮官である彼女はと言うと、その作戦の後にグリフィンから提示された新事業の準備の為に、それ以上に出産を終えて育児のためにと慌ただしくも本人曰く楽しい日々を送っている。
「では、本日の授業はこれで終了とさせて頂きます、今回の課題は後日提出して下さいね」
「うん、いつもありがとう【SRS】」
「これくらいでしたらどうということもありません、それよりも課題、それと予習復習は忘れないように」
勿論と答えてから彼女【ユノ・ヴァルター】は基地に会議室を後にする、彼女が受けた新事業、それはグリフィンが未来を見据えて行おうとしていることの一つ、人形も妊娠が可能になり、人形同士、人間と人形、更にはこの基地のように同性同士と子供が増えていくであろうと考えた本社が将来的に学校、しかも教師の人数が足りなくなると判断、ならばと打ち出したのが新たに民間学校を始めようという試み。
そしてその教師という枠にユノが抜擢されたのだ、向こうとしては自身のそうであるようにどのような形で産まれた子供にも偏見などを持たずに接することが出来るであろう彼女ならばと言う考えだろう。そしてユノとしてもまさか自身が夢という形で見た教師という道が目の前に現れるとは思ってなかったが、それでもと手を伸ばした。
なので今の彼女は教師見習いと指揮官を兼業、と言う訳ではなく現在のP基地の指揮官を務めているのは【キャロル・エストレーヤ】であり、自身は【指揮官補佐】と言う立場に収まり前線指揮から少しだけ退いている。
「ふぅ、ただいま~」
「おかえりなさいませ、ユノ。ふふっ、貴女が帰ってくると分かったからのか少し前からルキアが起きてますわよ」
自室に戻ったユノにベビーベッドの側に居たクリミナがそう言えば、ベッドからルキアの声が、ユノが勉強に出る前は彼女から母乳を飲んでぐっすり寝ていたのだが彼女が戻ってくる数分前から起きてクリミナがあやしていたらしい。
なのでユノは即座にベッドに向かい、愛娘であるルキアをそっと抱きかかえ
「よしよぉし、ただいま~ルキア」
「それにしてもあたくしよりもユノの方に懐いている気がするのは気の所為でしょうか……?」
「そんなこと無いよ、クリミナの事だった大好きだよねルキア~?」
彼女がそう声をかければ嬉しそうな反応を示すルキアに更に笑みが溢れる夫婦。フェアリーリリース作戦から二週間とちょっとが経過、ヴァルター夫婦の子供は勿論、また別の部屋ではクフェアとノアの子供である【クリス】も伸び伸びと過ごしているこの基地は今までのことが嘘のように平穏な日々を送っていた。
その翌日、今日は勉強は休みの日、ヴァルター夫妻とノア夫妻、それとキャロルとナガンも中庭にて集まっていた、特に理由はないのだが強いて言うのならば此処で集まることが多いからである。本日の話題はフェアリーリリース作戦からそれなりに経ったねと言う話、バタバタもやっと落ち着いてきたからゆっくりと話そうかと言うのが始まり。
「まぁバタついてたの理由の大半はオメェの指揮官からの離脱と婆ちゃんが副官辞めるって話なのが殆どじゃねぇか」
「いや、私のは仕方ない部分あるし……」
「それにユノが妊娠してからは殆ど俺が指揮官業をしてたしな、そこに書類整理等が加わる程度問題にもならん……祖母上の引退は少々衝撃的だったがな」
「お義姉さんが指揮官を辞めるって時よりも衝撃が凄かったですよね……」
「呵々、流石にこの目で前線で切った張ったはもう難しいからのぉ、それに何度も言ったがわしにはもう戦う理由が無くなっておるのじゃ、後はのんびり余生を過ごすだけじゃよ」
笑いながら答えるナガンの顔には負傷した右目部分を黒くしてある眼鏡が掛けられている、これはフェアリーリリース作戦最後、ヨゼフ・アルブレヒトとの戦闘の際の負傷であり、ヴァニラ達に言わせれば直せるのだが彼女がそれを拒否、現在はキャロルが指揮官を務めるならと自身から志願してきたFive-Sevenに全てを引き継がせて絶賛、のんびり余生を暮らしている。
尚、Five-Sevenが副官に付くということをその場で知っているキャロルにノアが良いのかよと聞けば
『まぁ、俺の勝手を知ってるのはこいつだからな、その点においては副官として付くのならばこれ以上ない人材だろう』
それを聞いた彼女が無意識にガッツポーズを取ってたがまぁこれは余談だ。さて、そんな風に雑談をのんびりと交わしている中でふとユノが思い出す、子供が産まれたのならば話をしたい場所があったと、自分とクフェアがこうして子供を授かり生むことが出来た少し大袈裟かもと言われそうだがルキアとクリスのある意味での生みの親の一人とも言える存在
「D08にルキア達を会わせに行きたいね」
「そうですね、妊娠してからは通信でしか話してませんでしたし、久し振りに会いに行きたいですね」
「となるとまたアタシの定期診断の時にか?だけどクリス達も乗せてってなると定員オーバーじゃねぇのか?」
「確かに、それにDBSは子供を乗せてというのを想定しておりません、となるとジープ、でも少々厳しいでしょうか」
「ふむ、要はお主ら全員が乗れて、なおかつ安全な乗り物ということじゃな、用意させよう」
え?誰にと聞く間もなくナガンはベンチから立ち上がり目的の人物の所に向かって消えていく、その任せておけばよいという感じがこれでもかと醸し出されている背中を見つめながら残された面々の内、キャロルがそんな祖母の姿に
「なんと言うべきか、副官と言う肩書は早々に外すべきではなかったのではないか?」
「……あはは、まぁでも悪いことにはならないと思うよ、うん」
後日、ノアのD08への定期診断の日、集まれとナガンの言葉で集まった面々を出迎えたのは一台の少々大きめのキャンピングカーとドヤ顔のアーキテクト、満足げな顔のナガン、何故か既に車内居り窓から顔を出しているロリボロスことウロボロス。
これはと聞くまでもないだろう、間違いなく自分達が出掛けの際に使用することになる車だ。それにしても用意が早すぎるのではないのかとナガンに視線を向ければ
「アーキテクトに話したらな、こいつめ、既に用意してあったのじゃよ」
「こんな事もあろうかと!ってやつさ、このキャンピングカーは今後、ユノっち達が絶対に出掛けることになると思って用意しててね、装甲は生半可な攻撃どころか正規軍の一撃だって傷一つ付かないし、それでいて安定性は抜群、赤ちゃんたちの眠りだって妨げないほどに快適な操作性、しかも車内にはお世話も常に出来るようになってるし医療ロボも万が一に備えて常備、その名も……【ファミリーカー】!」
おぉとユノの感動した声が上がる、が他の面々は過剰とも言えるその防備と設備に若干引き気味である、ありがたいのは確かなのだがそんな危険地域に行くわけでもないというのにどうして正規軍クラスの攻撃を想定されたキャンピングカーを用意されなければならないのかと。
もしかしなくてもフェアリーリリース作戦の規模があり得るかもしれないとか思い始めているのかもしれない、そんなことすら考えているとウロボロスがやれやれと言った感じに
「アーキテクト殿のネーミングセンスは独特として言いようがないな……して、これからD08と言う所に行くのだろ?私も付いていくぞ、向こうの私にも興味があるからな」
「なんだか大所帯になっちゃったね……大丈夫かな」
「一応、昨日の内に今回のことはD08にも伝えてありますから問題はないと思われますが、出発前にも一度連絡を入れておきますわね」
「アタシはいつもどおり空から哨戒をしてるからな。んじゃ行ってくるからなクリス」
「気をつけてねノア、ふふ、シーナさん達、お義姉さんが指揮官を辞めて先生になるために勉強してるとか、お婆様が副官を辞めたとか聞いたら驚くかな」
「驚くと思うよ、よし、行ってくるねお婆ちゃん!」
ユノが答えつつ全員が車内に搭乗したのを確認してからクリミナの運転でキャンピングカーはD08へと向けて走り出す、久し振りの友人たちとの会話、子供のこと、ママ友としての会話、そんな事を楽しんだということは言うまでもないだろう。
そしてD08のドリーマーが妊娠してたことにはこちらが驚かされたという事も。
「ドリーマーさんの子供って想像付かないかも、楽しみですね」
「確かにドリーマー殿の妊娠は大いに驚いた、うむ、だが私としては……」
最後に、この基地のロリボロスがD08のウロボロスを見た時の反応だけを書いておこう。彼女は先ずドリーマーを見て目を見開いて驚き、それから現れたD08ウロボロスを見てその小さな体を震わせた。
彼女としては自分がこうなのだから向こうも同じ様に制限を食らっているだろう、そんな事を思っていたというのに現れた彼女は
「不平等だろ!!!!」
ペムっと言う見た目相応しい威力のビンタがD08ウロボロスのその豊満な胸を叩く、その声には悲しみというよりも世の理不尽に怒りを向けている声だった。
正直な話、D08との繋がりがなかったらユノっちの体のナノマシン問題は解決しても成長するか怪しかったし、ノアももしかしたら死亡ルートだったし、となるとクフェアちゃんとかも登場は無かったし、子供を授かるとかあり得なかったというわけで、本当に此処との繋がりは物凄く助けになってるんですよね。
作者の私からも、そしてユノっち達からもあらゆる意味で命の恩人です、これからもよろしくお願いいたします!!
……ぶん投げですまぬ、スマヌス。あ、それと多分早くても週一程度の更新だと思います、遅いと月一かも、スマヌス