それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
「それにしてもだ」
この基地の騒がしさにも早めにこの娘達にも慣れてもらおうということで日課としている散歩、今日は農場兼牧場エリアの方面にユノとクフェアはルキアとクリスを連れて向かい、今は休憩中のときに同じく作業を一時中断して休憩にはいっていたゲーガーがポツリと呟き、二人がどうしたのかと向けば
「赤子の育児は大変だと聞いている、特に夜泣き等はお前達の睡眠時間を削るほどだろ?」
「あ~、でもこの娘達が私達に何かを伝える方法って今はそれしか無いし、健康的だっていうのも分かるからそんなに大変とかは思わないかなぁ」
「そうですね、どっちかと言うとノアが夜泣きの度にすぐに起き上がって慌てるくらいですよ、その御蔭でクリスの方がすぐに落ち着いちゃったりもするんですよ?」
クフェアの言葉通り、深夜などにクリスが夜泣きをすれば誰よりも先に起きてあやし始めるのはノアである。この基地に来る前は音に敏感にならなければならない生活だったからというのも相まってか泣き始めた、というよりもそれより少し前のぐずりに似た声の時点で目を覚ますのでクフェアとしては助かるのだがあの人の寝不足が酷くならないかが心配でということらしい。
『んぎゃああああ!!』
『お、おい、どうしたクリス?湿ってるっ感じじゃねぇから、えっと』
『ノアが慌ててどうするんですか……』
こんなやり取りが毎日のように行われているとか何とか、だがこれにはユノ夫婦も似たようなものである、がそこはユノという少女なのか夜泣きに対しても慌てず騒がずに乳をあげたり、ただあやしたりと向き合ってきている。
なのでノアのような反応を見せるのはクリミナである、流石に彼女ほどに慌てたりはしないがそれでも最近のクールな感じの彼女ではなく、この時には始めの頃の若干ポンコツと多大なヘタレが入ってた頃の彼女が表に現れるらしい。
「まぁ分からなくはないけどね~、始めの頃はどうして泣いてるのかが上手く分かってあげられなくて困ったりもしてたし……でも今は大丈夫、慣れたのもあるし、ドリーマーさんが開発してくれた物もあるからね!」
「スチェッキンが向こうから仕入れてきた物だったか、あいつも母親をしていると思うと不思議な感じになるな」
そう言いながらルキアに指を伸ばせば彼女は差し出された指に迷いなく掴み、キャッキャと笑みを浮かべる。その様子に微笑みながら今度はクリスの方に指を向けてみれば不思議そうに見つめてからそっと掴み、また不思議そうにゲーガーを見つめる。
「しかしだ、此処まではっきりと性格の違いがもう現れるとはな……ルキアなんかは何に対しても触りに行きそうまであるな」
「お義姉さんに似て好奇心旺盛なのかもしれませんね、クリスはなんだか落ち着いてて、ノアは私によく似たって言うんですよね」
「うーん、でもルキアって私が食べてる物にもキラキラした眼で見つめてくるから困る時がある、まだ食べれないよって伝えても手を伸ばしてくるし」
あぁうん、ユノの子供だと二人が口に出さなかったのは奇跡に近いだろう、このルキアの反応はどのような食べ物でも適応される、恐らくは食べてみたいとかではなく母親が食べてるそれが気になると言うだけではあると思われるが。
そこでふとクフェアが思った、この対象的にも言える二人が育っていったらどういう関係になるのだろうかと、この事をゲーガーとユノにも聞いてみれば
「きっとクリスちゃんの事を引っ張っていくかな、遊ぼうって感じに声を掛けていくと思うな」
にしし~と笑いながらユノが答えルキアにもだよね~と声を掛けているのを見つつ、だがゲーガーには違うビジョンが見えていた、確かにルキアがクリスを引っ張っていく光景もあり得るだろう、だが何と言うかクリスはただ大人しいだけの少女に育つとは思えなかった。
無論、悪い意味ではない、クフェアのように大人しくも芯のある少女になるだろうことは分かるし二人が曲がった育て方はしないだろうというのは確信すら持てる、何だったら自分達P基地の面々が許さないだろうとすら思う、では何が浮かんだのか、それは
『クリスちゃんクリスちゃん!!今日は何して遊ぼうか!?』
『うん、ルキアが楽しいことでいいよ?』
『あ、クリスちゃん!こっちに綺麗なお花があるよ!』
『ルキア、あまり花壇に近すぎすぎてコケないでね?』
『クリスちゃん!!ねこが居るよ、丸い、すっごく丸いねこ!!!』
『多分、大福だと思うよルキア』
とひたすらにはしゃぐ成長したルキア、そしてそれを少し離れたところで澄まし顔で見つめ彼女の言葉に反応していくクリス、その光景は確かに仲の良い友人や親友というのもあるだろう、だが見る人が見ればこう思うだろう。
「……子犬と飼い主」
「へ?ゲーガーさん、どうしたの?」
「いや、何でも無い、ただまぁきっと親友同士になるだろうなと思っただけさ」
「そうですね、もしかしたらゲーガーさんとアーキテクトさんみたいな関係になるかもってどうしたんですかゲーガーさん!?」
クフェアがそのようなことを呟くと同時になるほど先程の未来予想図はそういう意味なのかと思い至りついつい笑いだしてしまうゲーガー、その初めて見る様子に驚くユノとクフェアを見てもゲーガーの笑いは止まらず、そうとなればスリーピースの面々も何事かと現れて彼女の姿を見れば驚きに包まれる。
農場エリアがそんな空気に包まれている中、医務室、そこではナガンとPPSh-41が会話をしていた。とは言っても難しい話をしているわけではなく暇を持て余していたナガンが丁度、暇をしていたPPSh-41と雑談をしていると言うだけだが。
「ほぉ、人形同士の子供が」
「まだですが、お二人が覚悟を決めたと言う話はペルシカさんから来ましたからね、ともすれば近い将来に形にはなるでしょう」
「D08とも、そしてP基地とも違う形の子供か、呵々、段々と世界が変わっていくのぉ」
会話に出ているのは少し前に救出作戦にも協力したDG小隊で結婚もしているカップルの話、その一組が子を為す覚悟をしたという話をペルシカからPPSh-41に来たという内容。
卓上理論であれば人形同士であろうと子を作るのは可能である、そして五体満足に生まれるということも、だが
「理論と感情は別ですからね」
「不安、恐怖、そういったモノか……その様子だとお主は動くらしいな」
「それが私達、医者の仕事ですから、ペルシカさんには既に手紙を送ってますし、あとは向こうからのを待つだけですけどね」
「仕事熱心なようで何よりじゃよ、だが無理せんようにな。さて、わしもそろそろ動くかの」
グッと立ち上がり例の右目部分を黒くしてあるメガネの位置を直してからそんな事を呟く彼女にPPSh-41が何方へ?と聞けば
「少しな、例の作戦のお陰で此処数日は情報規制で繋がりがある者達にこの基地のことは伝わっておらんじゃろうし、近況報告をわしが買って出る訳じゃよ……手始めに隣のB基地かの」
「あぁ、確かにD08からも音信不通で心配だったという話がありましたからね、必要かもしれませんけどお気をつけて」
PPSh-41の言葉に手を振りながら医務室を後にするナガン、その背中を見送った後、彼女はふと気付いたことがあった。
もしかしてあの眼で愛車であるミニ・クーパーを運転するつもりなのかと、が本人は既に居ないし恐らくは向こうだって理解してるだろうから平気かと考えるのであった。
ふふ、日刊終えてから週刊にしたけど腕が落ちてますねこれは……
次回は考えてない、何処かとコラボかもしれないし、☆が付いてる話かもしれない