それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
【リムジン】そう題された貨車に乗り込み揺られるランページゴーストと銀髪が特徴的な青年【ブレイク】の四人、先の戦いでP基地が相手取ったハイエンドモデル【
その内容は
がよくよく思い出してみればP基地は一度、MSFからの依頼でモンスターと呼ばれる人智を超えた存在と戦っているのだから悪魔だろうが魔物だろうが今更驚くこともないものだろうと考えを打ち切ってゴソゴソとジャケットの内ポケットを漁ってからパスケースのようなものを取り出す。
そこに入っているのは一枚の写真、ノアとクフェアとそして彼女に抱かれている我が子、クリス、要は家族写真である。
「……ふふっ」
「隊長が写真見て笑ってる」
「此処最近はずっとですよ、事あることに眺めては笑ってます、まぁ気持ちは分からなくないですけどね」
そう、アナが言うようにその写真をFMG-9に頼んで撮ってもらい現像してもらってからというものの、作戦などで外に出るときには必ず懐に忍び込ませて暇な時に眺めては笑みを浮かべるという流れをよく行うようになっていた。出先でも家族を感じたいからか、将又幸せであることを噛み締めたいのか、それは本人に聞いたことない二人には分からないことなのだが、ノアにとっては大事なのだろうと深くは聞かないようにしていた。
そして忘れてはいけないがこの場にはまだもう一人、ブレイクが居る。彼はノアが笑ったタイミングでどうしたんだとばかりに声を掛ければ
「写真を見てただけだ、ほら」
「おぉ、ってこの赤ん坊は……?」
「クリスってんだ、あたしとクフェアの娘、可愛いだろ?」
ん?と若干空気が固まる、それからアナがあぁと理解した。確かに事情を知らないものが聞けば疑問符しか浮かばないだろうと、だがその事情を説明するには少々時間が足りるかはわからない、なのでブレイクには作戦後にでも詳しくは話すということにして、簡単に事を話してみれば
「と言うことです」
「オーケーオーケー、んじゃまノアに怪我がないようにしねぇといけねぇか?」
「あ?何の冗談だそりゃ、パーティーに来たってのに遠慮気味に踊るつもりはねぇぞ?」
ブレイクのその言葉にノアは写真をまた懐にしまってから挑発的な笑みを浮かべる、確かに怪我が無ければに越したことはないのだが向かっている先にいるであろう存在相手にそんな甘いことは言えないだろうと直感しているのだ、そしてその上で彼女はやってやろうじゃねぇかと言う意味合いを込めてそんな笑みを浮かべる。
対して、そんな笑みを向けられたブレイクも同じ様に攻撃的な笑みを浮かべれば、声を合わせて笑い合う二人にRFBが思わずボソリと
「隊長、ブレイクと仲が良いよね~」
「RFB、誤解を招くような言い方はしない方がよろしいかと」
「……って言うけどさ、隊長が浮気するような人だと思う?」
「無理だと思ってます」
あまりの即答にブフッと吹き出すRFB、その時のアナの表情が真顔だったのも手伝っているのだろう、がアナは実を言うとこの時はまた別のことも考えていた。
この終点が見えないレールの先、そこに何が待ち構えているのだろうか、ピリピリとプレッシャーにも似たそれを肌で感じながら彼女は考える。
(私の剣は通用するのだろうか)
彼女はシューティングスターに備え付けられている自身の剣【アメノハバキリ】の柄に軽く手を置きながらそんな事を考える。フェアリーリリースの時にはヨゼフを、確かに切れ味を上回る皮膚の硬度変化があったとは言え斬れなかった、その自身の剣で今度は未知の敵を斬れるだろうかと、否
(斬らねばならない)
眼を閉じ、心を落ち着かせる、思い詰めすぎては駄目だと、波を作ればそれが雑念と化して剣を鈍らせてしまう、ヨゼフの時はそうだった、いくら相手が皮膚の硬度変化を行ったとて彼【フランク・イェーガー】の教えを実践できていたのならば斬れた筈だと、赤い霧の正体を知り彼の非道を知り、その怒りに心を乱されすぎたと。
今度はそう合ってはならない、息を吸い、3つ数えてから息を吐き出してそっとアメノハバキリを抜けば曇りなき刀身が自身の顔を写す。変わらない仏頂面に近いその顔にどこか安心感を覚えながらまたシューティングスターに収める、まだその時でもないのに抜身で居るのは要らぬ緊張を生んでしまうだけである。
そんな彼女を見ていたRFBは凄いなぁと心から感心する、あれだけの動作でもう落ち着き、自然体に戻っている。それは自分ではまだ出来ない芸当だろう、更に言えばノアのように始めからああやってリラックスしつつも戦闘に備えるなんてものはもっと難しいとすら感じている。
(怖い、なんか分からないけどこの先に居るのって多分あの時と同じくらいにヤバいのだと思う)
【ハイパーマキシマムムテキドールスーツ】を着てて尚、そんな事を思ってしまうほどに彼女は若干怯えていた、だけどそれを気合とMSFとの合同任務の時の心を思い出し封じ込める、この場において何かあった時に盾になれるのは自分だけだと言うのにビビってどうするんだと。
彼女はまだ気づいていないが、RFBはその恐怖を力に変える術を会得し始めていた、恐らくは怖いけど逃げたくないという気持ちが生み出した、人間で言うところの火事場のクソ力とも言えるそれを恐怖でトリガーにして常に出せるようにしている、という感じのものを彼女は無意識の内に行い始めていた。
「副長、いざって時は私を上手く使ってよ」
「えぇ、頼りにしてますよRFB、ところで隊長、シュトイアークリンゲですたっけ、あの大剣をフェアリーリリース作戦後に使ってるの見てないのですがどうしたのかと」
言われて、ノアがあっと声を上げる。彼女の近接時の相棒でもあったシュトイアークリンゲなのだがあの日、赤い霧と戦闘の際に大剣で打ち合い、最後にはノアが全力で袈裟斬りをお見舞いしようとしたタイミングで向こうの全力の蹴りの迎撃を受けたのだが、それの所為だろう
「……あ~っと、あの噴射機構だっけか、調子悪いみたいでさ。いつか診てもらわねぇとなぁとか思ってたんだが」
忘れてた、申し訳無さそうなその一言にアナは思わず額に手を当ててしまうのであった。だが作戦は始まってしまっている、微妙な空気になってしまった貨車はただただ四人をレールの終点へと運ぶのであった。
ということであとは白黒モンブラン様にお任せします!
最後のは終わりにでも診てもらえればなぁくらいな感じです、流石のノアちゃんも内部機構までは見てないのでコーラップス技術で直せなかった的なノリです。