それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:鮪薙

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思えば、お嬢様を好きだという感情も現実だと信じれるものが欲しかったからなのかもしれない。


【今】を認識できた日

もしかしたら、この日々は機能停止寸前の私が生み出した幻なのかもしれない。

 

そんな風に考えてしまうことが昔はよくあった、雇い主から解雇処分を言い渡され、放浪の最中にグリフィンに保護され戦術人形となりながらも記憶を維持し、お嬢様の元に異動をしたと思えば彼女の笑顔の日々を見ることが出来る、まるで出来の良すぎるお伽噺のような展開に、何度もそんな事を考えてしまうことがあった。

 

あのお嬢様の笑顔も、幸せも、その全てが幻……お嬢様とクリミナが生涯を誓い、家族が出来たのを目で見ても生まれる感情だった。もしこれを現実と見てそれが違ったらと考えた私が生み出してしまった現実逃避の感情、なんて酷いメイドなのだろうかと思いながらもこの感情を完全に消し去ることが出来なかった、あの日までは

 

フェアリーリリース作戦から数日後の早朝、その報告を聞いた私は即座に駆け出し、医務室に向かって早々に扉を開け放ち

 

「お嬢様が産気づいたとは本当ですか!?」

 

「い、医務室ではお静かにして下さい……」

 

「ああそうじゃよ、今はペーシャとソーコム、それとクリミナが側について、戦っている頃じゃろうな」

 

あの頃はまだ副官だったナガン様の言葉、いつものように落ち着きがあるその感じだったが態度には若干に落ち着きの無さが見て取れ、それが逆に私を冷静にさせた。

 

彼女とて落ち着いてはられないのだ、それを理解した私は直ぐにリベロールとナガン様、それとあのような登場をした以上当然なのだが驚いた表情のまま固まっているルピナスお嬢様たちに頭を下げてから側の椅子に着席する。

 

この基地の医療組の実力はいつかの暗殺未遂の時でもお嬢様を死の淵から掬い上げたので知っているし信じてはいるのだが最悪がどうしても頭を過ぎれば自分でもらしくないなという感じに指が、足が忙しなく動き出そうとしてしまう。

 

(大丈夫です、えぇ、クフェア様の赤ん坊も無事に生まれたのです……お嬢様だって、問題ないはずです)

 

「不安か?いや、無理もないか……わしとて不安に思わんこともないからな」

 

唐突に声をかけられて横を見ればどこか固い感じの表情を浮かべるナガン様の姿、クフェア様の赤ん坊【クリス】お嬢様が生まれた時も二人と同じくらいに喜んでいたのは彼女だった、良かったと、少し涙ぐみながらクリスお嬢様を撫でる姿は今でも忘れられない光景だ。

 

ともすれば今、新たな生命を産もうと戦っているお嬢様の事となればこういう表情になるのも無理はないだろう、先程も言ったがナガン様も落ち着いてられないほどには不安があるのだ。

 

「はい、どうしても……どうやっても悪い考えが電脳を過ぎってしまい、お嬢様のメイドだと言うのにこれでは失格でしょうか」

 

「馬鹿者、お主以上にアヤツのメイドが務まるやつが居るか。それにその気持ちは基地の誰もが抱えていることじゃよ、そこの娘たちと手同じ、何もお主だけの思いではないのじゃよ」

 

「不安じゃないわ、お母さんも、生まれてくる妹も強いもん!」

 

代表してだろうか、ルピナスがそう告げればステアーもシャフトも同じ様に頷く、なんて強い娘達だろうか、私と違って不安を感じながらも表に出さずに振る舞えるなんて。

 

若干羨ましいとも言えるそれに、なんと言えば良いのだろうか、勇気付けられたとも言えるのだろうか、その御蔭で落ち着きを少し取り戻せた私はただただ信じ待ち、どれほどの時間が経ったかはわからない時に自分の耳に赤ん坊の鳴き声が届き顔を上げたと同時に分娩室の扉が開かれ現れたペーシャが

 

「まぁ聴こえてると思いますけど、母子ともに無事です、今は3人だけにさせてますが少しすれば皆さんも対面できますよ」

 

その一言に安堵と同時に身体から力が抜けた、勿論それはこの場全員同じであり、それから少しすれば分娩室からお嬢様たちが出てきて医務室のベッドに移される。

 

横には赤ん坊のベッドに眠るお嬢様の赤ん坊の姿、その姿を見た時に私の中で何かが抑えられなくなり始めた

 

「呵々、いや、本当に元気そうで何よりじゃ、それにしてもルキアか、良い名じゃな」

 

「でもすっごく痛かったけどね、子供を生むって本当に大変なんだなって思うくらいだったよ」

 

「の割にはユノはそこまで痛みで叫びませんでしたよね、唸ってはいましたが」

 

「え、結構叫んでたつもりだったんだけど……ってG36?」

 

気付けば私はそっと、それこそ少しでも触れれば壊れてなくなってしまう何かを触れるように、何故か自分でもわからない程に震えている指先で赤ん坊の手を触れていた。

 

今思えばその前にお嬢様たちに許可をもらわなければならないと言うのに何をやっていたのだと言う行動なのだがともかく、ルキアお嬢様の手に触れ、命があると知らせる確かな暖かさを感じた時……

 

「あっ」

 

涙が溢れ流れた、自分でも驚くほど我慢することもかなわないほどにあっさりと流れたそれに周りはギョッとした顔で自分を見るが、それでも止めることは叶わない。

 

「じ、G36!?ど、どうしたの!?」

 

「あ、え、ご、ごめんなさい、あれ、なんで、止まらない」

 

ルキアお嬢様に涙を零す訳にはと下がり、涙を止めようと努力するが止まらない、なんで?という感情が渦巻き始めるとナガン様が私の側まで来たと思えばそっと、抱きしめられる。

 

「……お主、今日だけではなく今まで何かを不安がっておったのじゃろう」

 

その一言で、涙の理由が分かった。私は今やっと、今日までの日々が決して幻なんかじゃないと理解し、心の中の不安が急に消えたがゆえに感情が制御できなくなったのだと。

 

お嬢様の声も、暖かさも、基地の日々も、どれもが私の中で幻だと思わされていたのは、それを経験から知っているから、だからこそ作り出してしまっているのではという疑惑が巣食っていた、だけど今新たに生まれたこの生命は私が知らないモノ。

 

故に触れた時の暖かさが新たな経験として刻まれた時に、やっと、やっと今が現実だと、それを知ることで出来たのだと。

 

「わたしは、わたしは本当にメイド失格です……こうまでしないと、今が、幻なんかじゃないと理解できないなんて」

 

「過去を考えれば無理もなかろう、呵々、思えばお主が少し退いているのはそういう事じゃったか」

 

「申し訳、ございません……!」

 

「G36、ごめん、私が気づいてあげるべきだったね」

 

お嬢様のその言葉にすぐに違うと首を横に振る、これは自分が勝手に抱いていた疑惑、だからそのような顔をしないでくださいませ、貴女には決して似合わないんですから。

 

ナガン様に謝罪とお礼を伝えてから顔を上げる、涙は気付けば止まっていた、ただ跡とか、赤くなった目はそのままなのできっと格好は付かないだろうがそれでも私はこれを伝えなければならない。

 

「お嬢様、私は、G36はこの身が朽ち果てるその瞬間まで貴方様のメイドであることを改めて誓わせて下さい」

 

これから先、どのようなことがあろうとも私はお嬢様を、その家族を、ルキアお嬢様も、メイドして守り続けよう、だからどうか太陽のようなその笑みを常に浮かべて下さい。

 

と、言ったのですが実を言うと私は……

 

「まさか赤ん坊の世話をしたことないとは思いませんでしたよ」

 

「あ、あはは……」

 

これに関してはお嬢様たちから習うことが多かったというのは秘密である。




悩み多きP基地のメイドさんのお話でした。

次回(かもしれない)予告

G3「指揮官の子供の生誕を祝って歌いたいです」

HMG21「盛大に歌います」

FMG-9「や め ろ」

Q 何が始まるんです?
A 大惨事大戦だ
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