それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
想定以上にややこしい状況になったな、それが作戦終了を見届けた後、ナデシコとの接続を解除してその椅子で深い溜め息を吐いているキャロルがいの一番に抱いた感想である。鉄血支配下の資源地帯攻略作戦、敵の推定戦力とこちら側の不安要素を加味しても問題なく遂行できる戦力である、そう考えていたはずの今作戦だったのだが、
「(最後の最後で現れた正規軍の戦術人形、鉄血もこちら側も見境なくの行動であるという点から鉄血が用意した戦力ではない、そして)奴らの仕向けたものでもない」
《そう言える理由は?》
「簡単よオモイカネ、私達があの戦場で戦ってる以上、正規軍は敵対行動は取れない、そういう契約をフェアリーリリース作戦後に結んでる、でしょキャロル?」
副官であるFive-sevenの言葉にキャロルが何も言わずに頷けばオモイカネも思い出したようであぁと言う声を漏らす、そう彼女たちは襲撃してきた戦術人形が正規軍からの差し金であるとは殆ど考えていない。
確かに正規軍がその気になれば自分たちと結んだあの契約は破棄できるかもしれない、だがその場合のデメリットは【ラビットプロトコル】による被害からまだ完全に立ち直れていない彼らからすれば無視できない大きなものであり、更に言えば
「破棄なんぞ、良しとはしないだろう……っと噂をすれば影というやつか」
とりあえず作戦後の息抜きは終わったとキャロルが椅子を座り直したタイミングでオモイカネが通信が来たと知らせが入る、その相手の名前を聞いた彼女は想定通りだと笑みを浮かべてから映像を出せば写ったのは少々久しぶりと言える顔、正規軍のエゴール大尉、彼はキャロルの顔を見て自身の行動が読まれていたかと察してから、それにキャロルは想定していたというのもあるが実はあの戦術人形が戦場に現れたタイミングでP基地からアンジェリカを通してエゴールに知らせていたというのもあったりする。
《繋げてくると分かっていたか、こちらでもその戦術人形を確認できた、確かに所在不明の個体はあるが、我々からは何も行っていない》
「だろうな、貴様らとて今このタイミングでこちらを裏切るメリットがあまりに無さ過ぎる、ともすればこちらとの関係に亀裂を走らせたい誰かの仕業、と考えたいのだが」
《そうと考えるには動きが派手すぎる、話を聞けば双方の人形を鹵獲しようという動きだったとも聞いている、溝を作りたいモノの動きとは言い切れん》
敵の正体を探るには情報があまりに少ない、あるとすれば戦場から撤退するための戦闘でアナがどの個体にも小さく正規軍のエンブレムがあり、その戦闘力は非常に高かったということ、また地下ルートの面々と合流していたノアが撤退の際に例の謎のハイエンドモデル【万能者】が救援に入ってくれたということの3つ。
「溝云々ではなく、単純に鹵獲するためにコチラ以上の性能の個体を利用した?あぁ、駄目だ全く分からん」
《それはこちらも同じだ、ともかく今後も情報は集め、流せるものは長そう》
「あぁ、P基地としても何とか集め、またアンジェリカを通して渡すようにしよう、ではな」
と通信が切れたのを確認してからキャロルはまた深いため息を突きながら目を瞑り、また背もたれに体重を預ける。彼女とて疲れる時は疲れる、特に今日は想定外のことが置きすぎて若干頭も熱を持ってしまっている幻覚すら覚えるほどだ、それと同時に彼女は当たり前のことを忘れていたと誰に聞かせるつもりもなく呟く。
「P基地の、俺達の問題が終わったとしても世界に残る問題が終わった訳では無かったな」
「そうね、ユノちゃんたちを取り巻く問題も放置すれば世界規模の問題だった、でもいざ解決してしまえば残酷なほどに世界の一角の問題、まだまだ燻っている大きな何かが蔓延してるわね」
「……これは、気を入れ直さないと駄目か。オモイカネ、今後暫く監視地域の強化は出来るか?」
言葉にはしてないがこれにはP基地に火の粉が降りかかるのを防ぐ狙いもあるが同時に繋がりがある基地も守りたいという考えもある、となるとS地区だけではなく今回の資源地帯とは遠い地区、D08地区も混ざっているのはそういう理由になる。その指令にオモイカネは電脳内で端末を操作しながらいつもの表情で
《それくらいなら問題ないね、でも安定を取るなら誰かを一人付けてほしいかも》
「ならば後でAK-12とウロボロスに話を通しておこう、俺を含めた三人体勢ならば問題ないだろ?」
《寧ろお釣りがたんまりだ、んじゃそれでよろしく~》
調子のいい声を聞きながら、だが頼りになるのは間違いない彼女に頼んだと告げてからキャロルとFive-sevenは特殊戦術室を後にする、ああは言ったが今日は流石に一旦休息を取らなければやってられないのである。
という事で彼女たちは今は
「何だか、大変なことになってるんだね」
「まぁな、だが気にするな、お前達には火の粉が降りかかることはないからな」
自信満々なキャロルの言葉にいやまぁそうも行かないと思うんだけどなぁと考えているのはユノ、その隣にはクフェアも居り、当然ながら今回の作戦に出来事は指揮官補佐という立場上聞いてもいる、その中で彼女が気になったのは
「バルカンさんの妹、ミニガンちゃんだっけ、どうして感染が治っても戻らないんだろ」
「これは俺の推測でしか無いが、記憶がなかったという事から考えるにチーフというハイエンドモデルがその状況のミニガンに刷り込んだ、と言うことだろうな」
早い話がヨゼフが姉上のクローンたちにやった手段だと言えば少し憂いを帯びた表情をしてからルキアがそんな母親の表情を見たからなのか急に泣き出してしまい、ハッとなりあやしながら
「ああ、ごめんごめん、怖い顔しちゃったけどルキアにじゃないからね~」
「ルキアちゃん、誰かの表情に何だか直ぐに反応を返しますよね」
「あら、だったらクリスちゃんもかしら?ねぇ、ってあらら?お、お姉さんの指は振り回すものじゃないわよ~?」
Five-sevenが指を差し出したところ、なぜか掴んで上下に振り回す、しかも表情を変えずの行動に流石の彼女もどういう事なのと困惑する。
それから暫くして帰投してきたノアも合流、そこでキャロルは本当に何気なく、もし、もし互いの大切なパートナーがそうなったらどうすると質問を投げかける、少しは悩むかと思われた内容なのだが二人は合わせたわけでもないだろうというのに、声を揃えてこう答えた。
「「取り戻す」」
二人の共通認識、記憶が無くなると言うことはない、だって彼女たちには心があるのだから、科学じゃ証明できない奇跡は手を伸ばし続ければ起きると知っているから。だからもし、そうなったとしても二人は諦めないだろう、そしてきっと
「バルカンもミニガンに手を伸ばし続けりゃ、大丈夫だろ」
「なるほどな、お前達らしい……だ、そうだぞペルシカ」
突如出てきた名前にへ?とユノが声を出すと同時にキャロルが右手に隠すように持っていた通信機から投影モニターが表示され、映されたのはペルシカ。どうやら少し前から繋いでいたらしい、そして今の質問は彼女から何気なく聞いてくれないかと言うことだったようだ。
《奇跡、か。そうだね、君たちが起こせたのならば誰もが起こせるかもしれない、フフッ持つべきものは娘かな、バルカンにも伝えてみるよ》
「まぁ、この能天気バカの場合、諦めの悪さが異常だから起こせてるってのもあると思うがな」
「酷くない?」
「ぶぅ!」
ユノの言葉に反応するように声を出したルキアに周囲に笑いが溢れるのであった。最後に余談なのだがあの作戦の最後の撤退戦でアメノハバキリを白刃取りされ、反撃をもらったアナだったが、その直後にその場の全員が視認できない速度で手元から投げられた高周波ナイフが敵を貫いていたらしい。
『いくら強固な装甲でも、隙間は完全に無くせないですよね?』
どうして完全不意打ちで殴られたのに投げナイフで倒せてるんですか?とRFBの声が響いていた。
アナさんは多分その内エクスキューショナーさんの要領で斬撃を飛ばし始めると思う。
と言うことで『破壊の嵐を巻き起こせ!』の大規模コラボこちらも終了となります!いやぁ、本当にコラボは毎回楽しいですね!!
また何か出来れば良いなと思います!