それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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向こうからコラボ来たからね、お返しはしないとね!


モハビとP基地

「双方、そこまでじゃ!!」

 

もう一歩、ほんの一瞬だけでもあればこの不届き者の首を刎ねれる筈だった蒼い刀身、アナの【アメノハバキリ】はナガンの一声でピタリと止められる。

 

彼女への絶対の忠義と信頼、そして彼女自身に長年染み込んでいたナガンからの命令への反応速度が織り成した技ではあろう、だがそれは無意識下で行った行動であり、彼女の命令に理解を示したというわけではない、故にどうして止めたと言う視線をアナはナガンに送っていた。

 

それは彼女だけではない、基地総出で不届き者、何時だったかこの基地からの警告を軽く無視してSuperSASSの狙撃を受けながら平然と逃げ遂せた人物【運び屋】と呼ばれる男を始末しようとしていた全員が同じように思っている。

 

「祖母上、どういうことだ」

 

「どうもこうもない、それ以上は止せという話じゃ。それともなにか、貴様らは客人を殺すつもりか?」

 

「あぁ?こいつが客人とか婆ちゃんでも冗談きついぞ。だったらなんで潜入してきたんだよ、しかもアタシらの部屋にピンポイントで」

 

「お主の部屋に来たのは偶然じゃろうて、ソイツの連れのCZ75が言うには前回の狙撃でお気に入りのヘルメットを凹まされた意趣返しではないかということらしいな、にしても面白いくらいに特徴がない顔じゃのぉ?」

 

あまりにあんまりな理由を聞きノアが言葉が出ないという表情を晒しているのを気にする素振りも見せずにキャロルのダウルダヴラによるワイヤーによって雁字搦めにされている運び屋の顔を覗き込みそう一言告げる。

 

本人が気にしているとすれば相当な暴言に近いのだが幸いにも運び屋は気にしてないのか、特に反応を見せることはなく、寧ろこの状況をどうにかしてくれという視線をナガンに送る、各地から流れる化け物じみた話を持つ運び屋のと言えどここまでされると辛いらしい。そんな感じのことを彼女に伝えたのかナガンは右目部分が見えないように黒くつや消しが施された眼鏡の位置を調整しながら

 

「呵々、馬鹿を言うな、あの場で止めなかったらお主とて本気になり、今頃もっと面倒事になってたじゃろうて」

 

「……あれだけのことをしてまだ本気ではないと?」

 

ナガンのその言葉にアナが驚愕の声で問い掛ける、RFBに至っては安全圏にまで下がっているが誰も彼女を責められないだろう。だが冷静に考えてみればこの運び屋は基地の実戦部隊は勿論、ランページゴースト、ヤークトフント、暗部組、キャロルとオートスコアラーの苛烈とも、個人に向けるには過剰とも言える攻撃からボロボロでありながらも五体満足で生き延びていると言うことを踏まえてみれば、彼が本気を出していないという推測は正しいと思えてしまう。

 

暫し流れる沈黙の後、もとより運び屋には敵対の意思がないこと、こちら側に(ルピナスとトゥーマーンが設置した罠の部品が盗られた事を除いて)被害がないということで彼女たちは矛を収めることにした……というのが数日前の出来事。

 

「本当に、あの時はも、申し訳ございませんでした」

 

「いや、まぁそれは良いんだけどよ……」

 

後日、騒動を起こしたはずの運び屋はM3と共に基地に現れていた、これにはノアもどういう神経してんだこいつと呆れてしまいながら、当の本人が謝らないからなのか変わりに謝罪を繰り返すM3に苦労してんだなと同情の念を送ってしまう。

 

「えっと……キャロルちゃんは今は手が離せないらしいから、とりあえずカフェでお茶飲む?」

 

「なんでこいつと茶をしばかなきゃいけねぇんだよ」

 

『キャンディー タベル?』

 

「食わねぇよ!!!」

 

「ルキアはまだ飴とかは食べれないんですよ」

 

「んなこと分かって……なんで知らなかった見てぇな顔したんだよオメェは!!!」

 

ああもう、能天気バカしかいねぇのかここには!と思わず叫びたくもなったがなんかどっと疲れた感じがしたノアはそれだけを叫んでから深い溜め息を吐き出す。

 

しかし基地の前で漫才みたいなやり取りしても仕方がないというのも確かなので場面移してカフェ、本日は平日なのでイベリスは部隊を率いて任務に出ているのでマスターとして立っているのはスユーフであり、彼女もあの時の騒動で出撃している身なので突如現れた運び屋に思わず警戒してしまうが即座に営業スマイルに戻したというのは余談だろう。

 

それから自身が注文したカフェオレを一口飲んでからノアが一言

 

「んで、ここで何話すんだよ」

 

「え、いやまぁ、せっかくだから親睦でも深めようかなとか?」

 

「……はぁ、聞いたアタシが馬鹿だった」

 

『キャンディー タベル?』

 

「だから食わねぇって言ってんだろうが!!てか、それしか音声はねぇのかよ!?」

 

半ばヤケクソじみたツッコミの叫びに運び屋はゆっくりと頷けばノアは更にツッコミを加速させる、カフェは静かにというのがルールのはずなのだが今回ばかりは仕方がないのかもしれないとスユーフは思いながらそう言えば連れのM3はどうしたのだろうかと見れば

 

「前来た時も思ったけど可愛いですね、はぁ、なんか癒やされるなぁ」

 

「えへへ、良かったねルキア、可愛いって褒められたよ~」

 

「きゃ、あう」

 

日頃のストレスから癒やされようとルキアと戯れていた、その表情は全てから開放された穏やかなものであり、それと同時に彼女の日常がどれほど胃にダメージを与えているのだろうかと他人ながらも心配になるスユーフは、ふと何かを思いついたのか静かに何かを作り出し、完成したフルーツタルトをそっとM3に差し出す。

 

向こうは勿論注文してませんよ?となるのだがスユーフはニッコリと笑顔を浮かべてから

 

「これはサービスです、どうかゆっくりとしていってください」

 

「あ、ありがとう……」

 

優しさが心に染み、思わず泣きそうになるのを堪えつつM3はお礼を伝えてフルーツタルトを一口、ふわっと広がるフルーツの程よい甘さが不思議と彼女のメンタルを癒やしていく感じがしてまた涙が出そうになってしまう。そんな彼女の様子をノアが見てから運び屋を見据えて

 

「なぁ、もう少しアイツに優しくした方が良いんじゃねぇの?……って言っても無駄か、そうだよな」

 

「うーん、でも運び屋さんってちょっと変わってるけど悪い人って感じはしないよね」

 

「え、あ、そ、そうかな、そうかも」

 

「この能天気バカの言葉を真に受けんなよ、てかお前のほうが一緒にいるのに何でコイツの言葉を信じてんだよ」

 

奇妙なお茶会が始まって数十分、向こうも長居はするつもりはなかったようで、ついでに言えば現指揮官であるキャロルに話をするつもりだったが向こうの事情でそれも難しいとなりそろそろ切り上げるかとなり、見送りのために正門に出ていくとそこにはルピナスとトゥーマーンが待ち構えていたという感じに立ち塞がっていた。

 

どうしたのかとユノが問いかければ、ビシッとルピナスが運び屋を指差して

 

「罠の部品返して!!!」

 

「あれ結構高く付いてるんですよね、だから返せ、ほら、まだ持ってんだろ返せよ」

 

刹那、運び屋は反転し基地内を逃亡を開始、それを二人が追い掛けていき、M3はまた謝罪を繰り返し始め、ユノは困った感じにだけどまぁ良いでしょという笑みを浮かべて、最後にノアが

 

「……あぁもう、好きにしやがれよ」

 

早く部屋に帰ってクフェアとクリスに会いたい、騒がしくなった基地を見ながら彼女はとてもとても疲れた表情を晒すのであった。




という事でWarBoss様の作品『FALL OUT GIRLS』からコラボのお話が来てたので軽い後日談的なお話でした。

因みに冒頭のあれは多分アナさんが切ろうとしたら何やかんやで回避されてカウンター受けてたと思うんですよね

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