それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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イグナイトモジュールの初陣


大乱闘ドールズフロントライン! Session9

リバイバーからの一時的な同盟の通信が来るよりも前、ランページゴーストの二人であるアナとRFBはリバイバーが鉄血本拠地に向かっている間にこの場にて新たに現れた敵性集団の足止めの為にと構えたのだが

 

「副隊長、こいつら」

 

「えぇ、少なくても普通ではないのは確かですね」

 

フード付きマントに身を包み、だがその気配は少なくとも人間のそれではないと思われる集団は彼女ら二人を認識する。次に襲いかかるのは明らかな敵意、ここまで来るのに強化型の鉄血ユニットが居たはずだと言うのにそれらを踏み潰すが如く進んできた存在となれば自然とアナの手は胸元のイグナイトモジュールへと伸び

 

「マキシマム、行けますね」

 

「勿論、全力で行かないとマズイのは嫌でも感じれるからね」

 

見れば、ノアは未だ航空戦力とドッグファイトを繰り広げながら地上のそのフードの存在にも攻撃を与えている、となればこちらに援護に来る余裕はないだろう、互いにそれを確認してから

 

「制限解除!!」

 

「イグナイトモジュール、抜剣!」

 

刹那、RFBのパワードスーツは光り輝き、アナは一瞬だけ漆黒に囲まれたと思えばあの禍々しく攻撃的な装甲に身を纏い腰に掛けた幻影を抜き構え、腰を落とし

 

「参る」

 

「行くぞぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

静かな宣言と己を鼓舞するような叫び、それに答えるように相手も動き出し互いに拳と刃が向こうの得物とぶつかり合うのだが二人の顔が驚愕に染まる。

 

今この場での自分たちの最高戦力を使って、更には慢心も何もなしに攻撃を仕掛けた上で彼女たちはこう相手を評価した、強いと

 

(嘘でしょ!?これでも今まで以上に全力だってのに!)

 

(イグナイトと幻影を使って、やっと!?いや、それでも!)

 

だが勝てない相手ではない、気持ちをそう持ち直してまず互いに一体、アナは続けて襲って来たのも何とかいなし、流れる形で近くの一体を斬り捨て、RFBは敢えて受け止め全力で拳を振り抜けば嫌な音とともに吹き飛び動かなくなる。

 

相手は出来ている、がそれはパワードスーツの制限解除とイグナイトモジュールを使用している前提でのこと、しかも全てを抑えられるわけではないので既にそれなりの数がリバイバーたちを追ってしまってもおり、しかしそれを止めることも自分たちが手一杯の状態では叶わない。

 

だけど焦るなと自分に言い聞かせながら幻影を振るい、時にRFBを助け助けられながら戦い続けるが流石に一分と言う時間は無慈悲であり、そしてそれは数十度目の剣戟から飛び退いたと同時に、アナの身体から黒い装甲が溶けるように消えた。

 

(時間切れ、だがまだ30秒ならば振るえる!)

 

「副隊長、下がって!私はまだ時間が残ってるから!」

 

「いいえ、30秒だけならば幻影を使えば戦えます、貴女は……「副隊長、前っ!!!!」っ!?」

 

一瞬、ほんの一瞬だけ、いや、ダインスレイフ状態の感覚から戻しきれなかったが故に反応に遅れアナの目の前に敵が、即座に幻影を振ろうと力を加え……るよりも前に向こうの得物が無慈悲に、的確に彼女のコアを貫いた。

 

「がっ、あっ……」

 

「副隊長!!!!!!クソ、どけぇぇぇぇぇ!!!」

 

RFBが彼女に駆け寄ろうとするが相手がそれを許すわけもなく囲まれ対処を余儀なくされる、対してアナは武器が抜かれ、ゆっくりと倒れていく最中、ぼんやりと

 

(ここまで、か)

 

守れなかった、幻影という名刀を授かり、イグナイトモジュールと言う呪いとも言える力を己の物にしたというのにここで倒れるのか、暗闇に落ちていく自身の意識に彼女は後悔をしながら、そして

 

(すみません、レイラ指揮官……私は、貴女の教えに応えることが……)

 

『バーカ、まだアンタはやれるでしょ?』

 

パシッと落ち行く自分の手を誰かが掴んだ感覚がはっきりとし、眼を開ければそこには死んだはずのレイラ・エストレーヤの姿、彼女はこの暗闇の世界ではっきりと存在しアナの手をしっかりと握り笑みを投げかける。

 

だが今の彼女にはそれが心苦しかった、だって

 

「私は……」

 

『ねぇ、アナ……ここでそれを終わらせていいと思ってるの?』

 

「……そんな訳、ない」

 

『でしょ?それに今の貴女には私が託した以上のものが胸にある筈よね』

 

そう言われ、彼女は自覚した。力を求めていたのは確かに彼女との約束を、託された頼みを叶えるためだと、そして二度と自分の目で誰も死なせないと。それも確かだろう、だが今はそれが全てではなかったことに彼女は気付かされた。

 

自分は……そう、自分は、グッと自身を掴んでいるレイラの手を力強く握り返し、はっきりと彼女を見つめ

 

「私は、彼女が、彼女達が作り出していく未来を見届けたい、輝くその未来を!」

 

『よく言った、んじゃここで寝てる暇は無いよね?』

 

はい、と向こうが引き上げてきたと同時に身体を起こしてみれば、そこには白い空間に漆黒の霧のようなものの中央に独りでに浮かぶ幻影、そしてその隣にレイラが

 

アナは一瞬驚くも近くまで歩き、幻影を掴む前に一言

 

「すみません、私は貴方達の力を己の物にしようと躍起になりすぎてました」

 

『まぁそこはアンタの過去もあるから仕方ないでしょ、それにその様子だと気付けたようだし』

 

レイラの言葉に頷いてから幻影の方へと向き合い、覚悟を決めた表情と眼ではっきりと伝える、自分だけではどうしようもないと、だからこそ

 

「幻影、イグナイト、私と共に、その力を貸してください」

 

言葉に幻影が応えるように淡い光を放ち、霧はアナの周囲を渦巻く、この光景を見てから一つレイラは頷いてから彼女の側まで向かい、その背中に体を預けながら

 

『んじゃ、私も力を貸そうかね』

 

「レイラ、指揮官……ありがとう、ございます」

 

『良いってことよ。じゃあね、アナ、アンタのこれからの未来、しっかりと見届けなさい』

 

優しい彼女の言葉とふわっと消えていくような感覚を感じるアナだったが振り向くことはせずに幻影の柄を握り締め、力を込め……そこで現実世界に異変が起きた。

 

突如として風が吹き荒れ、倒れ伏したアナの身体の周りに赤い霧が渦巻いたと思えば中に浮かび上がるではないか

 

「ぐっ、ううう!!??」

 

驚きながらも吹き飛ばされないようにするのがやっとのその風にRFBは動くことも出来ない、それは謎の集団も同じようで、そうこうしている内に今度は幻影が独りでに動き出し、イグナイトモジュールがある箇所に突き刺さった。

 

声に出せないほどその光景に驚くRFB、武器が動いたのもそうだがその武器が主を刺したと言う事に理解が追いついていないとも言える、これでどうなるのと疑問に思うよりも先に彼女に突き刺さった幻影が強く光を放ったと同時に赤い霧が更に濃く、アナの姿を隠すように逆巻き、そして深紅に染まった幻影よりも長さを感じさせる太刀が霧を切り裂いた。

 

「……」

 

「副隊長?」

 

思わずRFBがそう聞いてしまうのも無理はない、そこに居たのは確かにアナだろ、だがその姿が余りに変わりすぎていた。まず髪の色が真っ赤に、そして腰まで届くのではという長さに。次に服装は黒のスーツパンツのように見えるそれを履き、上半身には黒のシャツに赤いライダースジャケットを前を開けている状態で着ており、腰にはシューティングスターがあるので彼女がアナだとRFBが判断したのはそこである。

 

そんな彼女は自身の姿を見てから、その手に握られている深紅の太刀を見て、次に自身を一度は殺した敵を見据えてから

 

「これは、ちょっと扱い切るまで時間がかかりそうですね」

 

「へ?」

 

RFBの素っ頓狂な声が響く、それもそうだろう、ついさっきまでかなりの距離の先に居たはずのアナが次の瞬間には自身の真横に居り、彼女が通ったと思われる道には血煙だけが上がっている。

 

血煙が上がっている場所に居たのはフード付きマントの集団の一部なのは確かだ、あれはロボだと思う存在なので人工血液込みでもそうはならんやろと場違いなツッコミがRFBの電脳を駆け巡ってしまうが

 

「RFB、呆けてないで構えなさい」

 

「あ、ああ!とりあえず考えるのはあとだ!」

 

「ええ、正直私もよく分かってないので。さて、覚悟は良いな、悪いが我が刃、止められると思うなよ」

 

私要らない気がするこれ!などとは口が裂けても言えないRFBを知らずにアナは動き出したと同時に冗談じみている速度とその太刀【絶刀・天羽々斬】の一振りで敵を血煙に変えていく、半ば蹂躙とも言える反撃を行っていると、この作戦を開始してから漸くと言う時間黙っていた通信機からリバイバーの声と、そして

 

《お前ら!現在未確認のフードマントの勢力が乱入し、鉄血含めて被害が出ている!そこ!!この俺リバイバーが鉄血と独断で交渉して一時同盟を組んでジャミングを解除してもらった!勝手を承知だが、こうするしか道が無かった!各員鉄血と敵対行為をやめ、フードマントの勢力の迎撃に当たってくれ!奴らは下手を打てば万能者並の力と思われる!無謀と思うが、ここで奴らを退けなくては俺らは助からない!頼む、鉄血と協力してそのハイエナどもを蹴散らせ!》

 

この通信に、笑みが溢れる二人、ジャミングが消えたそれはつまり、彼女たちを阻んでいた障害が消えたということ、そしてこれが意味することは

 

「やっと繋がった!!!こちらS09P基地、ナデシコ支援AIのオモイカネ、諸々の事情で指揮官は手が離せないから私が情報支援及び、ルーラーによる全体強化を行うよ!!!」

 

「キャロルちゃん、今しかない!」

 

「分かっている、AK-12、合わせろ!」

 

「やっと来た好機だ、逃すわけには行かない!」

 

漸くジャミングが消えたタイミングでオモイカネが通信が回復したらしたらで混乱している現場の情報を纏め上げて味方に報告を上げている後方で、三人が権能を完全解放を再開、一人でも支配者(ルーラー)により味方への支援能力は十分だという強化になる、それがもし【三人分】となればどうなるか、その答えは単純。

 

「全戦術人形のシステム介入、ナデシコをメインサーバーに、通信経路を確立、システムの完全復旧を確認」

 

「味方のシステムの強化開始、ダミーシステム及び戦闘システムブースト、自律兵器再稼働、行動開始」

 

「システム【サンクチュアリ】作動、正常稼働を確認、敵性勢力に対するシステム介入開始、介入成功」

 

量と質、その2つが十二分以上に揃ったとなれば状況は一気に好転を始める、そもそもにしてルーラーに介入がした時点でこれ以上の悪化はさせないというのもあるだろう。だけどとオモイカネは後ろを見る、現在はルーラーの権能解放中であり、B指揮をする余裕はない、ならばとオモイカネが行ったのは

 

「B基地のレン・ワイズマン指揮官!そっちに頼み事が!」

 

《丁度良かった、こちらも頼み事があります》

 

「《現場指揮を執って貰えませんか?》貰えないかな!?」

 

……え?という二人の声が重なる、今ここに、新たな危機が生まれた瞬間であった。とりあえず互いに状況説明を行えば確かに指揮を頼めないかと言ってくるのも無理はないと理解する、理解した上で

 

「ど、どうにかならない?」

 

《ハッハッハ、ご無理を仰る、こっちも指揮車だけでの統括は難しいですよ》

 

「でもこっちの指揮官もちょっと難しいんだよね……うーん、あ、そうだ、スユーフ!」

 

とここで呼び出したのはオートスコアラーのリーダーであるスユーフ、オモイカネは彼女に通信を繋げてから事情を説明、ならばと彼女がワイズマン指揮官に渡したのはナデシコによる介入で全ての通信機への接続が可能な特殊通信機、それと戦場のマップを全体的に表示できる端末。

 

「それがあれば全体指揮は出来るはず、私がサブとして情報を統括、貴方に渡したそのもう一つの端末に流すからそれを元に指揮をお願いできない?」

 

《仕方が有りませんか……その代わり、貴女には馬車馬の如く働いてもらいますよ》

 

「どんと来いってんだ」

 

盤面は揃った、さぁ反撃を始めよう。

 

《あ、早速なのですが、オートスコアラーの整備の許可頼めますかね?なんかちょっとウチの整備士と揉めてて》

 

「へ?あ~、彼女たち基本的にキャロル指揮官にしか整備してもらったこと無いからそれでゴネてるのか、ういうい伝えておく……おいこら人様に迷惑かけてんなよ」




ルーラー三人分の大強化バフ、受け取りな!!!

イグナイトモジュール君の扱いが酷いって?ハハッ、一分間の強化でどうにかなる相手じゃないからしゃーなし。え、なんで幻影をアナに一度刺したのかって?そりゃお前トリガー発現には必要な儀式だからな(様式美

そしてこれを書いてる最中にガンスミス兄貴の所から指揮を投げられましたがこっちも現状指揮官ズがこんな調子なのでと投げ返すという失態、すまぬ、スマヌス……その代わりオートスコアラーの指揮権とか渡すから……

あと、このコラボ終わったらノアちゃんに丑柄のビキニタイプの水着を着せる話書くから

【イグナイトトリガー】
とある状況下でのみ使用可能のアナの最後の切り札、通称【赤い霧】、切っ掛けは今まで幻影を握り鍛錬を積んでいたことでそれ自体の魔力が体に馴染んだことが主な原因で、発現時に幻影がコアとイグナイトモジュールに融合、結果生まれた。

今回の発動に関しては悪魔三人組によるデビルトリガーにより魔力が戦場に十分な量分散していたこと、そして彼女自身が力を見つめ直したことで発現、容姿等は本編参照。

本編のように敵を鎧袖一触出来るほどに能力の大幅強化や武器が幻影とアメノハバキリが融合した【絶刀・天羽々斬】になり、更には魔力を操り斬撃を飛ばしたら魔力の剣を使いSAKIMORIの技を繰り出したり出来るようになっている。

因みに【絶刀・天羽々斬】はイグナイトトリガー状態限定であり、通常時にはアメノハバキリと幻影に分かれる

また幻影は彼女と融合したので今後は腰に挿しておらずアナの意志一つで手元に現れるようになったので、イグナイトモジュール起動時にはそっちを相変わらず握っている。

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