それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
「クリミナ!恵方巻きの材料はー!?」
「今詰め終わりましたわ、すでに切ってありますのであとは向こうで巻くだけです」
クリミナの言葉に流石と答えるユノ、二人の側にはそれらを詰めた保冷バッグなどの荷物の数々、中には二人が確認したように大豆と恵方巻きの材料が詰まっている。
と書けば何の日であるかは分かるだろう、本日は節分である。なので今日はこの材料を持ち寄ってレイディアントガーデンにて節分イベントを行うことになっている。そのため、向こうは大丈夫だとは言っていたが流石に人数が集まると分かっているのに手ぶらはちょっととユノとクリミナは勿論、ノアとクフェアの方も思ったので材料を持ち寄ることにしたらしい。
「そう言えば、今年の鬼役は誰が行うのか聞いてますか?」
「えっと……確かKS-23とイングラムだったかな」
「どうして最凶の鬼を用意したのですか!?」
言わずと知られたヤークトフント部隊の鉄砲玉と狂犬という組み合わせに思わずクリミナが叫ぶが、あの二人はああ見えて子供が好きなので鬼役には徹し、豆を当たられればキチンとやられてくれるので安心である、もっとも登場時が一番鬼してて怖いともいい意味で評判になっている。
因みにだがヤークトフントは13年後の現在ではとある事情で解散しており、部隊員だった彼女たちは今ではガーデンの警邏部隊に所属、日夜街の平和のために働いていたりする。ともかく、そういう事なので問題ないとユノが伝えれば、クリミナもあの二人の子供好きは知っているのでそれもそうですわねと納得、そこでそろそろ向かわなきゃ間に合わないとなり、二人は荷物を持ってレイディアントガーデンへと向かうのであった。
一方その頃、鬼役になった二人はと言うとレイディアントガーデン内に用意された待機場所にて雑談を交わしていた、思えば解散後はあまり話が出来てなかったなとKS-23から切り出したのが始まりだとか何とか。
「今年のレイディアントガーデンでの鬼役は私達なのね、去年は誰だったかしら」
「VSK-94とカルカノ姉じゃなかったけか、まぁ盛り上がったってのは聞いたな」
この選抜には子供好きでそれなりの身長がありという条件こそあるが毎年ランダムで誰かしらが選ばれることになっており、去年はその二人だった。その時はカルカノM1891はそれはもう楽しげにやられたーとか言いながら豆を当たられたのだがVSK-94の方はと言うと
『……ぐ、ぐわー?』
『おねえちゃん、楽しくないの?』
『いえ、そんな事はないですよ?』
仏頂面、無口、子供好きではあるのだがどう接したら良いのかわからないのコンボによってこんな感じだったとか、それを聞いたイングラムはククッと笑ってから
「なら、今年は強烈に残るくらいに楽しい感じにしてあげないといけないわね」
「あぁ、とびっきりに印象に残る鬼をやろうぜ」
クケケ、へへへッ。互いに別段怖がらせるつもりは一切ないのだがそんな会話と待機場所から少しだけ聴こえる笑い声に偶々通りかかったフトゥーロが苦笑を浮かべつつ、扉を開いて
「お願いですから、トラウマに残るようなのは止めてくださいよ?」
「ん?おう、勿論だぜ」
「えぇ、平和になった世界だと言うのにトラウマを植え付けるような無粋な事はしないわよ」
何当たり前のこと言ってるんだと言う感じの声に、あ、いい人たちだこの二人と申し訳ない気持ちになり思わず頭を下げる、がこの釘刺し、実は少しばかり有効であり、ソレがなかったら登場時にそれは物凄くイイ笑顔で現れた若干のトラウマを子供たちに植え付けてしまう所だったりした。
という事で数分後にはユノ達もレイディアントガーデンに到着、子供たちとロペラとフトゥーロに挨拶していれば子供たちと遊んでいたルキアとクリス、そして見守りのつもりだったのだが気付けば巻き込まれているノアが
「おう、やっと来たのかって服を引っ張んなっていってんだろ!?」
「ノアママ、それは木の枝」
「あ、お母さん!今来たってことは……恵方巻き!」
「材料を持ってきたから、豆撒きの後で皆で作って食べようね、フトゥーロさん、材料は調理場の冷蔵庫で?」
「わ、こんなに沢山ありがとうございます、はい、調理場にお願いします。それとナガンさん達が大豆を炒っていると思うのですが、あとどの位かかるか確認してもらっていいですかね?」
分かりましたと答えてから調理場に向かえば、割烹着姿のナガンとクフェア、どうやら聞くまでもなく丁度良く終わったところだったらしくユノとクリミナを見ると
「おぉ、丁度良い所に来たな、これを小分けにするのを手伝っては貰えぬか?」
「思ったより多くて、ごめんなさい手伝ってもらえると助かります」
「勿論!あっと、じゃあクリミナはこの事をフトゥーロさんに伝えてもらえるかな、多分そんなに掛からないとは思うけど」
「畏まりましたわ、では恵方巻きの材料を入れてから向かいます」
お願いねとクリミナに伝え、ユノも近くにあったエプロンを借りて炒った豆を枡に分ける作業を手伝い、そして……
「おめぇら、豆は貰ったな!」
『もらったー!』
「よぉし、そろそろ鬼が来るからな~」
「……なんであいつが仕切ってるにゃ」
「まぁ、ノアは子供たちに人気ですから」
そういう問題かにゃ?とIDWが言うが今更なことでもあるのでそれ以上は考えずに鬼役の二人に合図を送れば、バッと木の陰から現れたのは鬼のお面を付けたKS-23とイングラム、二人は
「悪ぃ子は居ねぇか!!??」
「居たら、食べちゃうわよ、クケケッ」
(イングラムが食べる言うと全く冗談に聞こえんのが困るのじゃ)
だがしかし、鬼が出たとなればあとはやる流れは毎年のこと、子供たちは枡に入った豆を握ってから振りかぶり
『おにはーそとー!』
『ふくはーうちー!』
「ぐわぁっておい待て!なんか一部本気で投げてるやついるだろ!?」
「これは……ルキアね、良いフォームだこと」
「感心してる場合じゃ、いったい!?」
何やらKS-23が少しばかり被弾が多い気がするが盛り上がりを見せる豆撒きをユノは見つめているとナガンが傍に来てから
「鬼は外福は内、お主の中の
「っ!?し、知ってたの?」
「呵々、伊達にお主の祖母を長年やっては居らぬ、そもそも元旦の日にアーキテクトから来るまで気付けなかった時点で嫌でも勘付くわい」
その指摘にあははとなんとも気まずい笑みを浮かべてから、まぁねと答える。何時からなのは分からないが彼女の中から
「うん、実を言うと昔みたいに鉄血とか人の反応を視ることはもう出来なくなってる、多分ナデシコと接続しても無理じゃないかな」
「そうか、いや、喜ぶことじゃろうな、しかしまぁ何でそんな事が起きておるのじゃろうな」
「直接的な原因はアーちゃんもペルシカお母さんも分からないって、でも言ってた、私の中の不幸をルーラーの力が吐き出したからじゃないかって」
だからこそ、私は今こうして幸せに過ごせているんだと、正に鬼は外福は内という感じの内容にナガンは相変わらずペルシカは妙にロマンチストじゃなぁと笑ってから
「では遠くない未来に、
「あ、ソレはないと思う、あくまでルーラーとしての力だけで、電脳だったりハイエンド化だったりは変わらないと思うし……」
中途半端な抜き方をしよるのルーラーはと呆れ気味な声にユノはでもお陰で日常が楽だしなぁと答え、気付けば白熱し始めている豆撒きに視線を向ける、どうか、この娘達の未来には福が多いことを祈りつつユノ達は節分を楽しむのであった。
遅刻はしましたが節分です、お納め下さい。本文でも語ったようにユノっちはルーラーとしての能力は☆世界線だともう殆ど失ってます、まぁキャロルとかAK-12居るから問題ないと言えば無いんですけどね。
え、ヤークトフントはどうしたのかって?それはいつか語りたいね