それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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母は強し


最強という存在

ことの始まりは今日の朝、朝食を終えたという所でキャロルに来客が来たというところから始まった。

 

その来客とは正規軍のエゴール、どうやら昨夜にキャロルからとある資料と映像記録を送って欲しいと言われたようでそれを持ってきたとのこと、だがまさかこんな短時間でとは思ってなかったようで受け取りながらキャロルが

 

「昨日の今日で持ってきてくれるとはな。それと……これが当時の武器か」

 

「物が物だ、何時破棄されるか分からんかったからな……だがどうするつもりだ?特色部隊の資料と映像記録、あれば武器もというのは」

 

彼からの疑問にキャロルは少し試したいことがあってなと答えてから資料を軽く捲り読んでいく、中身は資料及び戦闘記録の両方とも詳細なものであり、武器の方もアーキテクトたちに言わせれば現物があるのならば解析は出来るとのこと、それならば例の計画が進められるなと頷き、同日、ランページゴーストは呼び出された。

 

そして場面が移り、ここは技術部が作ったほぼ現実と変わらない感覚であらゆる演習ができるVRシステムを利用した最新鋭のシミュレーションルーム、今日はランページゴースト隊が使用しており、キャロルとエゴールが見つめるモニターの先には電脳空間にて、とある人物と激闘を繰り広げる三人の姿があるのだがこれを見ていたキャロルがただ一言

 

「……これが対ELID部隊、部隊長の力、か」

 

彼女が呟いたときと同じ頃、そこでは凄まじい剣戟の音と援護射撃と思われる爆音が鳴り響いていた、だがそれを行っている2つの影の片方、アナの表情に余裕というものが全く見当たらず、決して力任せの一撃ではないそれを何とか往なすが精一杯と言うのが誰の目にも見て取れ、ノアとRFBが周囲から行う射撃はほぼ全て相手の生物と機械が混ざったかのような大剣から繰り出される斬撃の嵐で掻き消され、ならばと接近戦をしようにも迂闊に近寄ることすらままならない。

 

「ぐぅっ!?」

 

数度目の剣戟、遂に彼女の手から『幻影』が吹き飛ばされ、そのまま返す刀で大剣が無慈悲に彼女を襲おうとした刹那、ノアとRFBが武装を展開、方や腰部からマルチプルミサイルの射出口を、方や自身のアーマーに内蔵されている武装を全て構え

 

「乱れ撃ちだオラァ!!」

 

「これならどうだ!!!」

 

生半可な弾幕では意味がないとばかりに単体に行うには過剰とも言える火力の暴力が相手を襲い、炸裂、黒煙が辺りを漂うが二人は決して警戒を解かず、同時に『ダインスレイフ』状態のアナも合流、電脳だと言うのに冷や汗が流れてきた感覚を拭いながら吹き飛ばされた幻影をその手に再召喚して、構え直したと同時にブォン!という凄まじい風切り音と同時に赤黒い軌跡の一閃により引き起こされた風で黒煙が晴れその中心に居た無傷の存在に思わずRFBが

 

「理不尽ってさ、こういう時に言う言葉なんだろうね」

 

「イグナイトを使って幻影で戦っているのにこれです、話には聞いてましたがここまでとは」

 

「おいキャロル、確認するがあれで『60%』なんだよな」

 

《あぁ、エゴールからの資料及び戦闘記録、フェアリーリリース作戦時の戦闘、それとあのイントゥルーダーからの思考パターン、それらを使い可能な限りで再現出来たのは60%だ》

 

その言葉にノアらしくない口から乾いた笑いが溢れる、戦闘を開始してからまだ5分と経っていないというのに彼女たちの脳裏では勝利の文字が浮かばないほどにレベルの違い、いや、そんな可愛いものではない

 

「次元が、違いすぎる。これが……」

 

三人の視線に先に居るのは一人の女性、姿はイグナイトトリガーを引いた時のアナとほぼ同じようなではあるがジャケットではなくグレーのロングコートで、髪は背中ほどの長さの茶髪、そしてその手には先程も書いたように生物と機械が組み合わさったような得も言えぬ大剣が一振り握られている。

 

彼女はキャロルが上記の通り説明した、出来る限りで再現された存在、ユノもノアもキャロルも、そしてナガンですら知らない対ELID部隊『特色部隊』部隊長としての彼女の姿の『レイラ・エストレーヤ』、フェアリーリリース(あのような)の時の姿ではない、本来の『赤い霧』である。

 

と言っても再現出来たのは60%、エゴールからの話を聞いていたがそれでもランページゴーストという精鋭部隊ならば戦いになるだろう、そう考えていたが戦ってみて分かった。

 

(60%だから『戦闘になっている』に過ぎない、あの時の彼女は10%も再現してなかった存在)

 

「来るぞ!!」

 

ノアの叫び声にアナが思考の海から意識を戻した時にはレイラは自身の目の前、だがそこはダインスレイフ状態の彼女、即座に振りかぶられている大剣に向け前に出て振り切られるよりも前に幻影をぶつける。

 

もはや何度聞いたかすら分からない刀と剣が打つかる音を響かせるが、振り切りれてない筈だと言うのに自身の腕が相手の力に悲鳴を上げるのが伝わり苦悶を漏らしそうになりそうになるがそれよりも前に、身体がフワッと宙に浮かんだ。

 

何が、という思考が頭を埋めそうになるが即座に破棄、本能的にシューティングスターを起動させ迫る刃から離脱を試みるが明らかに間に合わない、だがそれは彼女が一人だった場合である。

 

「ダラッシャァァァァ!!」

 

シュトイアークリンゲの豪快なエンジン音と同時にその迫りつつあった刃に向けて炎となった刃がぶつければ剣自身の推進力にノアのブースターと力が加わったそれは大剣を跳ね上げてアナはその隙きに離脱し軽く息を整えつつ

 

「ハァ、ハァ、さっきは何が」

 

「足払いだよ、いや、速すぎて私も見えなかったけど隊長がそうだって」

 

「なるほど、目の前に集中しすぎて足元が疎かになってたということですか……」

 

「寧ろ相手が余裕すぎるんだ、隊長だって副隊長だって普通の相手なら同時になんて相手できないっていうのに!!」

 

勿論ながらこうして話している間もRFBはパワードスーツに内蔵されている武装で援護射撃を行っているが制圧射撃にすらならないその光景に、ヘルメットの内側では焦燥感を隠しきれていない表情になっている。

 

赤い霧はこちらの個人の能力は凌駕しており、それを理解しているからこそランページゴーストは連携での苛烈な攻撃を行っていた、だが結果はこのざま、連携も個人も、相手には通用しない。

 

更に言えば、ノアの未来予測すら彼女は凌駕しているらしく、本来であれば常に相手の攻撃を数万パターンと予測し、彼女の視界及び思考に写す筈だと言うのに

 

「(未来予測に現れねぇ!?)くっそ、これならどうだっての!!!!」

 

シュトイヤークリンゲを振るいながら腰部のアーマーを展開、至近距離でのミサイル攻撃をしようとするが打ち出されるよりも前に力任せにシュトイヤークリンゲを弾き飛ばしノアを蹴り飛ばすが、それでも歯を食いしばりながら。

 

「なっめんなよおらぁ!!!」

 

「疾っ!!!」

 

「合わせる!!」

 

ミサイルは迎撃される前提、ならば爆炎に混ざり切り込むとアナが飛び出し、RFBがそれを察してパワードスーツの出力を最大にして背後に回って射撃を行いながら突撃しクロスレンジに持ち込もうと動く。

 

ほぼ同時に行われた連携攻撃、並の相手ならば太刀打ち出来ずに、仮に実力者相手でも何らかのダメージは与えられるだろう攻撃に対して赤い霧からの返答は、ただ手に持った大剣を大きく構えて、刹那アナは凄まじい悪寒を感じると同時に、甲高い機械音で現実に戻されたという認識だった。

 

「演習終了だ、感想はどうだ?」

 

「理不尽」

 

「ざっけんな」

 

「あれが、レイラ指揮官の本気……」

 

キャロルからのお言葉に二人が端的に返せば、だろうなと苦笑で返され、アナは未だ残る打ち合いの感覚と最後の光景を思い出しながら呟くように答え、息を吐き出てから

 

「所であの武器は一体、なんだか生きてるようにも見えてしまったのですが」

 

「彼女は『ミミック』と呼んでいた、特色部隊に支給された試作型の対ELID兵器の一つだと」

 

「重度の感染者は銃撃どころか並の射撃武器では対抗できん、そこでヨゼフが考え出したのは時代を逆行したとも言える近接兵装、人でありながら人を辞めた者たちだけが使える武器……」

 

使用者の意志に応じて形状、切れ味を変化、単体でも複数のELIDを相手取れるように作られているらしい。先程の戦闘でも唯でさえリーチがある大剣状態から刃を伸ばしたり、柄を伸ばして薙刀のようにしたりと自由自在に変わり彼女たちを翻弄していた。

 

とは言っても武器が変形するなどは割りかし慣れたことである彼女たち、寧ろあの生物っぽいのは何だというのに対して疑問を投げれば

 

「ELIDを組み込んでいたと言えば信じるか?」

 

「……は?」

 

「特色と呼ばれた者たちは人間でありながら改造されている、それこそノアのよりも更にな深く、人間を捨てるような物がな。そして母上に施されたその内容には未完成ながらELIDを制御下に置くシステムもあったらしい、ヨゼフがそれをどのようにして成し得たのかは資料がないから不明だが、母上の武器には確かにELIDが組み込まれ、その機能により武器を自在に扱っていたらしい」

 

「おいそれって基地に置いておくのはマズイんじゃねぇのか!?」

 

「そこは安心しろ、恐らくは母上の手から離れた段階で自壊するようになっていたのだろう、システムは読み解けたが起動はしていないしELIDの反応も無い」

 

それを聞き安堵の息を吐き出すノアだったが万が一危険物だったら持ち込まれもしないかと思いつけば取り越し苦労な考えだったと今度は疲れた溜息を吐き出し、椅子に座り込み、それを見たキャロルは本日は解散を告げてから

 

「エゴール、済まないがラボについて来てくれ、少々話がある……とは言っても準備が先にあるのでな、確か祖母上も話があると言っていたから会ってくると良い」

 

「あぁ、構わないが……行ってしまった」

 

少しばかり深刻そうな表情のキャロルにエゴールは疑問に思いながらランページゴーストの案内でナガンの元へと向かい、ユノとクフェア、そしてその子供も混ぜてレイラの昔話をし、凡そ一時間後、準備ができたから来てくれとFive-sevenの案内で彼女のラボへと向かった彼を迎えたのは彼女からの特色に関する話、レイラの話、それを踏まえた上での本題、だがそれが問題だった。

 

「まぁ、詰まるところだ、生物学論上で言えば『この体』である俺と貴様は『親子関係』と言うことになる、偶然の産物ではあるがな」

 

「はい、はぁ!?」

 

「……」

 

表情一つ変えずに告げるキャロル、あまりなカミングアウトにキャラがぶっ壊れるFive-seven、唐突な話に固まるエゴール、何が起きたのだろうか、それが分かるのは次回のお話。




因みに特色とか赤い霧は某ロボトミーとか図書館からストレートに使ってたり、あのゲーム好きなんですよねはい。

え、最後の?それは再来週を待て!

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