それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:鮪薙

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彼女は基本的に無害である、それだけは真実をはっきりと伝えたかった。


教会の怪異なるモノ

あの日から殆ど変わらず、傷も汚れも何一つ存在しないP基地の名物建築物になりつつある『教会』の一室。

 

間取りは基本的な個室でありテーブルにベッド等など一般的な家具しか無く、少々殺風景とも言える部屋のベッド脇の椅子に座っているのは【M82A1】、パッと見ただけならば絵になるようなキレイな姿勢で座ってただ休んでいるように見えるだろうが実際は違う。

 

座っているとは書いたが目は何故か大きく見開かれ、しかも光が無く、呼吸も、身動ぎ一つもなく、その目に仮に光が当たろうと反応が全く無い、つまり今の彼女は機能が停止しており、このままでは大騒ぎになるのではないかと言われそうだが彼女に関してはこれで正常である。

 

その証拠に、カチッと時計の針が7時を指し示した瞬間、急速に目に光が宿り、そして

 

「……『返して』ですか、不思議なことを言いますね」

 

そう意味深な事を呟いてから彼女は微笑みを浮かべる、何時ものような感情を感じさせない貼り付けたような穏やかな微笑みを……今日はP基地の中でもとびっきりのイレギュラー個体である彼女を少しだけ眺めてみよう。

 

起床?した彼女はゆっくりと椅子から立ち上がり、そのままの足で部屋を出て居住スペースから礼拝堂へ、到着してみればそこには既にG3とHMG21が祈りを捧げている姿、挨拶でもしようかとも思ったがこれを邪魔すると物凄い剣幕で睨まれるので、自身もユ ノ(かの者)へ、祈りを捧げ、終わったタイミングで

 

「おはようございます、お二人共」

 

「えぇ、おはようございます」

 

「おはよう、貴女も祈るのね」

 

HMG21からの意外だという感じの声に、はて祈らなかったことがあっただろうかとなりそうになるM82A1だったが、あぁとその理由に思い至る。

 

とは言っても単純な話であり、彼女自身がこの時間帯に起きてきてともに祈るということをしたのが初めてだと言うだけ、本来であればもう一時間ほど早くに起きて既に祈りを捧げ終えていたからである。

 

「何時もならばもう少し早く起きて祈りを捧げているのですが、本日は少々、起きるのに時間が掛りまして」

 

「……寝坊?」

 

「そういう事にしておいて下さい、ね、G3」

 

「話を振られても困りますから」

 

それよりも掃除を始めますので貴女は外をお願いしますと淡々と告げられれば、これでも元とは言え貴女にも崇められていたのですがと思いながら箒を用具室から取り出して、教会前でのんびりと清掃を開始する、因みにこれも手を抜くと例え彼女が相手でもG3は物凄い表情で睨みつけてくる。

 

が、M82A1も別段手を抜くことも考えていないし、ただ崇められていたあの頃と違い、こうして自身で働くということは割と憧れのようなものを抱いてもいたので寧ろ楽しげに行っていると

 

「あ、おはようM82A1」

 

「おはようございますM82A1さん、こんな朝早くからお掃除ですか?」

 

「えぇ、G3に指示されまして。おはようございます、ユノ様、クフェア様、お子様も元気そうで何よりです」

 

一旦清掃を中断して、二人に近づいて挨拶を返せば、近寄ったからだろうかユノに抱かれているルキアが彼女に反応して挨拶を返すかのように声を上げたと思えば

 

「だぁ、あぶっ!」

 

「おっと、どうしたのルキア?なにか、追い払ってるみたいか動きだけど」

 

M82A1に向けて何かを払うように手を動かすルキアに彼女自身もはてと思い、ルキアの視線の先、自身の肩上の方に目を向ければ確かにそこには『ナニカ』が存在していた。

 

とは言っても表情があるとかそういうレベルのものではなく、ドス黒い塊がM82A1に取り憑かんと蠢いているだけ、なので慣れた手付きでパッと払えばそれは霧散……否、もし今の光景が見えてるものが居ても霧散に見えるだろうが実際は吸収であるが、ともかく消した後に彼女は何時ものような微笑みを浮かべ

 

「これでもう大丈夫ですよ、ルキア様」

 

「クリスは静かだったから、見えてたのはルキアちゃんだけなのかな?」

 

「いえ、恐らくはクリス様にも見えていたでしょうね、反応はなくともしっかりと見ていましたので」

 

「うーん、もしかしてそういう物が視えやすいのかな」

 

と語るユノだが、忘れてはいけない彼女も彼女で『映像越し』であれば今のようなナニカを見ることが出来る少女であるということを、なのでこの場ではっきりと見えないと断言できるのはクフェアだけである。

 

そんな一幕を終えてから二人は散歩の続きをしてくるとM82A1に挨拶をしてから去っていき、彼女自身も掃除の続きを行っていると、教会の正面扉横に置いてあるベンチに基地で保護している猫が丸まって寝ている姿が。

 

ここで一つ、実を言うとM82A1は小動物が好きな人形?である、最も崇められていた頃は外にも自由に出れる立場ではなかったので窓から野良猫等を見ることしか出来なかったのだが、今は違う、なので少しばかりウキウキ気分で傍に近寄った時、猫が急に飛び起きて

 

「フゥゥゥ!!!シャ-!!!!」

 

「……え、えっと?」

 

「フシャァ!!!!!」

 

まるで自身の天敵が現れたとばかりに物凄い勢いで威嚇をされたと思えば、その勢いのまま逃げ去っていく猫を呆然とした感じに見るM82A1、固まる周囲の空気、暫くこのままかと思ったが猫の物凄い威嚇の声が気になったのか教会からG3が出てきて

 

「何珍しい表情をしているのですか」

 

「猫に、逃げられました」

 

「まぁ、そんな『ナニカ』を纏っていればそうなるでしょうね」

 

情け容赦無い言葉にM82A1は、そうですよねとこの基地に来て初めてまともに感情を見せたのではないかとG3に思わせるほどに落ち込みを見せ流石のG3もこれ以上は下手に触れないほうが良いかと教会へと帰っていく、再び流れる悲しみの沈黙、だがそれを察してなのか、はたまた偶々そのベンチが日課の日向ぼっこの場所だったのか、大福が現れ彼女を見れば

 

「にゃ」

 

「あ、あら、逃げないのですか?」

 

彼女からの問に答えるように目の前でお腹を出して寝っ転がる大福に、恐る恐る触れればモフモフの感触が手から伝わり、微笑みを漏らすM82A1、だが撫でるのに夢中になりすぎて掃除が止まってたのをG3に見つかる怒られる事になるが、今日も彼女は教会を中心に一日を謳歌するのであった。

 

さて、ここで話を終わらせても構わないのだが今朝方の彼女の言葉を覚えているだろうか、『返して、ですか不思議なことを言いますね』と、どういう意味なのか、その答えはその日の深夜、例のパイプオルガンを回収した教会にあった。

 

そこにM82A1はスチェッキン達と出会った時同じ姿で霊体で存在し、視線の先にはかつての己のボディ、もはや見る影もないほどに腐敗ししているはずの頭がギギギと微かに動いて

 

『カエ……シテ……』

 

「フフッ、何時も言ってますが、貴女が要求した事に答えただけですよ?」

 

『カエシテ……』

 

「まぁ、安心して下さい、貴女の分までしっかりとか の 者(ユ ノ)の為に働きますからね、どうかこの場で貴女が望んだように最後まで神として崇められていてください」

 

『カ……エシ……テ……』

 

言葉にはそれ以上に答えずにM82A1は姿を消す、残されたのは腐敗したボディとそれに縋るように群がる『ナニカ』だけであった……




よし、平和な教会のお姉さんだな!!

あ、因みに最後の状況は言うとすれば魔女の家の主人公と魔女の関係ですね、はい
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