それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
まだ日が顔を出すよりも前、周囲はまだまだ薄暗い船着き場に停泊している船の上に彼女たちは集まっていた。
「今日の天候は……あ、大丈夫みたいです、荒れることはないかと」
「なら良かった、流石に大きく揺れる船の上でってのはキツイからね」
「道具も万全、PP-90、船の調子は!」
「機器のチェックは完了、いつでも行けるよ~!」
上から、Spitfire、Gr HK45、P38、PP-90の4人組、そう13年経った今では世界規模、とまでは足りないかもしれないがかなりの有名アイドルグループになった『スリーピース』の面々である。
そんな彼女たちがなぜこの時間に割と大型の船の上に居て、しかも彼女たちの装備は釣りに行くとかでは収まらないようなくらいにガッチガチの姿をしており、船に設置されている竿が明らかに普通の大きさの魚を相手にするようなものではない物が人数分、用意されており、他にもその釣ったものを吊り上げる為の小型のクレーンのようなものも存在していると書けば凡そは分かるだろう、本日彼女たちは
「では本日の目的を確認しますね。今回はこの海域で目撃された『巨大マグロ』を釣り上げること、本来であればここの漁師さんたちの仕事なのですがどうやら歯が立たなかったようで私たちに依頼されてきました」
「ここの漁師さんたちって歴戦の人たちですよね、それでも歯が立たないって……」
「話によると放置してもいいんだけど、そうするには食欲が旺盛すぎて小魚とかを食べ尽くす勢いすらあるんだって、これかなり大きいと思うよ」
「それを想定してわざわざアーキテクトとノアに頼んで釣具一式を作ってもらったからね、いいファイトが出来そうで楽しみよ」
そもそもにして漁師が無理だったのをアイドルに頼むということが凄まじく可笑しな話なのだがもはや過去には彼女たちがやることにアイドルとはとツッコミを入れていたHK45すら慣れたとばかりにそんな反応はしないどころか、今回の釣具の調達は寧ろ彼女が率先して行っていたので染まり切ったのだろう。
と言うことで彼女たちがこの時間に集まっているのは上記の理由、巨大マグロを釣り上げることである。どうやら海の生態系が復活したのはいいのだがまだ完全ではなかったのが仇となって天敵がいない海でのびのび育ったマグロによりこの海域の生態系に崩れが生まれかねないほどになってしまったらしい。
「よぉし、じゃあポイントに向け『あさがお号』しゅっこ~う!」
PP-90の号令とともにエンジンが起動、彼女が廃船からレストアした『あさがお号』が港から出航する、しかしすぐに到着するという距離ではないので移動の間、彼女たちは雑談を楽しむことに
「それにしても、あの迷子のプロだったPP-90先輩が船を操舵するって聞いて始めは正直に言うとギョッとしましたよ」
「あはは、まぁ確かに遭難したらって思わなくはなかったですねはい」
「それリーダーにも言われたよ~」
「ですがこの挑戦のおかげで、『誰か』を乗せて『運転』している時は迷うことなく目的地に着くことができるって分かったから良かったじゃないですか」
因みにだが現在、スリーピースの面々はそれぞれが何かしらの得意なことに目覚めていたりする。PP-90は船に限らず車、重機、バイクなどの運転が好きになったようで今は81式から飛行機の操縦を習っているらしく、Spitfireは魚などの調理に目覚めたらしくマグロなどを捌くことや調理は勿論、フグなどの毒をもっている魚の下処理も完璧にこなせるようになっていたり、HK45も今回のような釣りにのめり込んでおり、暇さえあれば川釣りや海釣りなどを楽しんでいるので、今回の仕事を一番楽しみにしてたのは彼女だったりする。
最後にリーダーであるP38は彼女たちが会得しているその全てを網羅している、曰く
『やっぱり出来ることは沢山あったほうが楽しいじゃないですか』
とのこと、このアイドルグループのリーダーは最終的にどこまで行くのだろうかとはメンバーも思ってるとかなんとか。などと言ってる間に目撃されたポイントに船は到着、早速HK45が魚影レーダーで水中を確認してみれば
「……これかな、かなり大きな反応が一つあります、更にそれよりも小さいけど大きめの反応も複数あり、群れかな?」
「PP-90、水中カメラ」
「あいさー!」
P38の指示でカメラが起動、アーキテクト謹製のそれは水中の様子を鮮明にモニターに映し出し、レーダーにあった大きな反応の方向にカメラを動かしてみれば直ぐに奴は映し出された、HK45の言う通り複数のマグロが悠々と泳いでおり、そして群れの長と言わんばかりの位置に目的のマグロが、その大きさにSpitfireが
「600……いえ、今の大きさなら700近い気がします」
「700って、大昔に記録されてたマグロの最大が確か680㎏だったから、それよりもか」
想定外と言えば想定外の大きさのマグロ、だがそれを見てもメンバー誰一人も怯む様子はなく、HK45に至ってはこれからそれと戦えることが楽しみだという表情を隠そうとすらしていない。
士気は十分、そう判断したP38は全員の顔を一度見てからニコッとアイドルらしい笑顔を浮かべ
「では始めましょうか、今日は大漁にしますよ!スリーピース……」
「「「「ゴー!!」」」」
号令と共にマグロ釣りが開幕、各々が釣り糸を投げ釣りの形で海に入れ、少しの時間も置かずに
「ヒット!っとと、目的のじゃありませんけどこれでも400はありそうっていうか気性荒いですねこれ!!」
「こちらもヒット、どうやらあの巨大マグロのお陰でここらの漁が滞ってるみたいで、他のマグロが大きいのもそれが原因かと」
「ヌシが居るからみんな強気ってことかな」
「上等、だったら今日でヌシを釣り上げて解散とさせてやるっての」
通常であればこの大きさのマグロでも長期戦になるのだがそこは人形とアーキテクト及び資料を基にノアが作り出した釣具のお陰で順調に群れで海域の他の魚を食い荒らしていたマグロを釣り上げていくスリーピース、だが目的の巨大マグロは未だ掛からず、もしかして悟られて逃げたかとP38がレーダーで再確認しようとした時、試しにと小魚の群れ、通称ナブラにルアーを投げ入れて様子を探っていたHK45の叫びが船上に響いた
「ヒットー!!!って、ぐおっとと!?」
「うわわ、大丈夫HK45!?」
「大丈夫です!この引きに感じる重さ……スレ掛かりって感じでもないし間違いない、ヌシだ!!」
先程までファイトをしていたマグロとは明らかに違う引きにHK45の表情が真剣なものに変わる、ここからはヌシとの駆け引き勝負、しかも今回は趣味ではなく依頼としての戦い、ならば自然と気が引き締まるというもの
体の重心をしっかりと落とし、その強力な引きにロッドごと持っていかれないようにしながら慎重に、だが強気に巻き取っていくが
「二人に道具の制作を依頼して正解でした、これ並みのロッドやイトだったら勝負にすらならなかったまである……っ!!」
「踏ん張ってくださいHK45、スピット、銛の準備!!」
「了解!」
「私はフォローに入るね!大丈夫、私たちならこいつを釣れる!!」
全員がHK45をフォローしつつ、彼女自身も巨大マグロと一進一退の攻防を繰り広げる、今までのサイズであればここまで苦戦もせずに釣れていたということを書けば、相手がどれほど力強いのかが分かるだろう。
しかし、彼女も負けてはいない、何だったらつい最近だってカジキマグロと戦いを繰り広げ釣り上げているのだから、今回だって確かに強い、今までの釣りの中でトップとも言えるほどに強い、が
「だからって、負けてやる気がないのよっ!」
「あ、見えた!見えたってデカっ!!??」
「グッ!!??」
水面に見えるくらいに引き寄せられたくらいのところでPP-90がそう叫び、残りの二人も見てみれば確かに今までのとは段違いの大きさのマグロ、だが彼女の叫びがいけなかったのか、はたまた最後の抵抗だろうか、巨大マグロは突如として大暴れを始め、これにはHK45が思わず怯み体勢が崩れかけるが踏み止まり
「アイドル……嘗めんなぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「おおおおお!!!」
時間にして一時間は経っただろうか、その巨体によって敵はおらず、群れを成しこの海域を荒らし巨大マグロは一人のアイドルの手によって釣り上げられることとなった。
そのあまりの大きさにいつもは冷静沈着なリーダーであるP38も思わず感嘆の声を上げるほどであり、冷蔵保存しようとした際には大きめに改修したはずのあさがお号でもギリギリという形に全員が思わず笑ってしまう程だった。
ともかく、巨大マグロの他にも群れを成してたマグロを釣り上げた彼女たちが港に戻れば依頼を出した漁師たちが集まっており、その巨大マグロを見せれば大盛り上がり、あまりの盛り上がりと大きさは翌日にはテレビと新聞に載るほどだったと書いておこう。
さて、ではこの釣り上げた巨大マグロ、この後どうなったかといえば、漁師側からは依頼の報酬という形で好きにしてくれと言われたスリーピース、ならばと
「では今回釣り上げた他のマグロは全て市場に流しますので巨大マグロはありがたく受け取りますね」
「おう、しかしまぁ723㎏ってとんでもねぇデカさだが消費しきれねぇと勿体ないな、宛てでもあるのかい?」
「ありますよ、何だったら一日で十分な所がですね」
そう、彼女たちにはこの大きさのマグロでも問題なく消費しきれる宛てがある……後日、巨大マグロの半分はリディアンの食堂へ、そしてもう半分はというと
「ん~、美味しい!!」
「こんなうめぇ、マグロは初めて食った、いや、すっげーなこれ!」
「口の中で溶けるってこういうことなんだ……」
「お代わり!!!!!」
まぁ、言うまでもないだろう彼女たちの食欲にかかれば、と言うことである。
ネタどうしよう→夏だなぁ、せや未来編で海の話書こう!→そういや最近スリーピースの話書いてないなぁ→だったらマグロ釣りさせればいいのでは?←今ここ、という流れで出来上がった話ですはい。
まぁ私は釣りはしたことないんですがね!!