それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
平和な世界になった今、昔のように個人個人が携帯端末を当たり前に持つくらいには復旧し、過去にように誰でも気軽にネットワークに接続できるようになった。
ともすれば、その当時に存在していたSNSというものも復活、中のいい友人でグループを作りその中でチャットを行うというのも最早当たり前の光景となっている。
なぜ、今それを語ったか、簡単である。時刻にして早朝5時30分、ルキア達の女友達で作られたグループチャットにてピコンと言う音とともにメッセージが届いたからである。
黒猫のアイコン、友人の一人であるキャルからのメッセージ、本人としては誰かが起きてからでも適当に反応してそこから会話が広がればいいなと言う考えからだと思うのだが予想とは反して即座に既読が付けば
【部屋が蒸し暑くて起きちゃった……って流石にこの時間じゃ誰も反応はないわよね】
【おはようございます、キャルさん。随分と早起きですね】
【あんたに言われたくはないわよ!?】
返信してきたアイコンはノアが好んで生やす飛行ユニットをイメージした翼、つまりはクリスである。チャットしてから数秒としない内の返信にキャルは思わずメッセージ内で叫ぶがそこでハッとなり
【……バカンスに行ってるのよね?】
【はい、アーキテクトさんの島に招待されて】
【まさかだと思うけど、そこでも何、やってるわけ、ルキアは】
【いつもと違う環境で修行が出来るって5時から朝ごはん前の運動と言うことで山をジョギングして、今は砂浜でマラソンしてます】
折角だから映像を共有しますとビデオ通話が開かれると映像には確かにマラソンと言うには少々疑問符を使わざるを得ない感じで走っているルキアとランページゴーストの面々とシャフト達、そして
【え、見間違えじゃなければヴァルター先生も走ってない?】
【今日は一緒って昨日から言ってたから、ユノさんって結構強いんだよって知ってましたっけ?】
【知ってるわよ、一度見てるしってそれ考えたら一緒に特訓しててもおかしくないわね……】
一度見てるし、この言葉の意味はそのままであり、ユノは先生になってから暫くして付近に現れたという不審者を伸している、その際に襲われていたのはキャルであり彼女曰く小さい体で大男をぶん投げるその姿に大層驚いたとかなんとか。
それからマラソンを終えて、ストレッチを行ってから次に彼女たちが初めたのは組み手、そう、何を考えたのか今回は組み手を選んだようだ。しかもルキアが選んだのは母親であるユノ、どうやらここ最近は出来なかったから久しぶりにやろうということらしい。
【うわ、映画みたいな動きしてる】
【それでもユノさんはかなり手加減してるみたいですけど】
【正直私は見ただけじゃ分からないけど、クリスが言うってことはそうなんでしょうね】
慣れないはずの砂浜の上、だと言うのにルキアはその小さな体だからこその機動力で勢いを付けて蹴りにより連撃を中心に攻め立てるが、ユノはその全てを冷静にいなして行く、どうやら指揮官という立場を離れて更に13年経ったと言えど鈍らないようにと暇を見ては鍛錬は続けていたらしい、が
【でもノアママが言うには昔よりは弱くなってるらしいです】
【まず基準をノアさんにするのは色々と間違ってると思うのよ私は】
【それは、確かにそうかも知れません】
いや、真面目に答えないでよと思いながらもそれがクリスらしいのでまぁ良いかと言うタイミングで、クリスの方では朝食の準備ができたとクフェアが呼びに来たらしく
【あっ、朝食が出来たみたい】
【もうそんな時間?って本当だ、二度寝しようと思ったけど起きちゃうか、そう言えばそっちのご飯ってやっぱり豪華なの?】
【凄かったです、いま写真送りますね】
ピコンと送られてきたのはバイキング形式の料理の数々、どれも新鮮な食材などを使って腕の良い料理人が作ったのがはっきり分かり、これにはキャルも
【……朝ごはん前に見るもんじゃなかったわ、お腹が空くのが早くなりそう】
【うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???】
【!?】
突如として叫び声のメッセージにクリスが驚くがアイコンをよく見ればおにぎりのイラスト、どうやら今起きてやり取りが行われていると言うことで覗きに来た【ペコ】が丁度良く上げられた夕飯の写真を目撃してしまったらしい。
【うぅ、羨ましいです、美味しそうです、うぅぅぅぅ!】
【あぁ、はいはい、さっさと朝ご飯食べに行きなさい、じゃあ、またね】
【はい、失礼します】
こうして朝ごはん前のやり取りは終わりを告げる、その後は朝食中にルキアにそれがあったということを話せば、鍛錬中を見られたということでユノの方が恥ずかしいねぇと答え、それに対してノアが
「いや、オメェが陰ながら鍛錬してるって結構知れ渡ってるみたいだから今更だぞ」
「え!?だ、誰にも話してないと思ったんだけど」
「あ、ごめんそれ、あたしだわ」
アーちゃん!?という感じのやり取りがあったりしつつ朝食を楽しみ、終えてから今日は山で遊ぶということで全員でさほど高くはない山に来ていた、そう、『全員』である、つまりは
「ぜぇ……ぜぇ……」
「だから無理はしないで下さいと」
「だ、大丈夫ペルシカお母さん」
「お母さん、見てみて、カブトムシ!!」
「ひゃああああああ!!!???」
汗だくになり肩で息をしているペルシカにカリーナが呆れながら介抱し、それを心配したユノが駆け寄ろうとするがルキアが直ぐ側の木から素手で掴んできたカブトムシを見せられて飛び跳ねる、うーん、地獄絵図、と言う感想をノアが抱いたのも無理はないだろう。
だがそれも彼女たちにとって夏休みの思い出の一つとなるのならば良いのかもしれない、かもしれないのだが
「ルキア~、あまりその能天気バカに虫を見せてやるなよ~」
「あ、ごめんなさい……お母さん」
「だだ、大丈夫だよ、うん、か、カッコいいんじゃないかなって」
「川、川で休憩しないかい?」
どうしてユノはそこで強がるのだろうか、クリミナが思ったが既に時既に遅し、その言葉に喜んだルキアが即座に虫籠から見せてきたのはクワガタ、しかも割と大きく裏側だったのもありまた叫びそうになり、ペルシカは遂に休憩を提案し始める。
これを見て付いてきながら山って意外と歩き難いんだなと思っていたジェイクが偶々近くに居たM16とシャフトに聞こえる声で
「……なんつうかさ、失礼承知だけどこうしてみると有名人だとか関係なしに、普通の人なんだなって思う」
「ハハハ、確かに話だけじゃ色々と超人みたいなことはあるけど、蓋開けたらこんなもんさ、全員、ただの気の良い奴らの集まりだよ」
「ま、だからシャフトも安心してるんだから当たり前か、てか朝の鍛錬?のときから思ったがシャフトも意外と動けるんだよな」
「うん、動くの、楽しいから」
「でも確か運動始めたのっておっと、悪い、これは私が悪かったから!」
M16が真相を語ろうというタイミングでシャフトにしては割と珍しい本気で起こりますよという感じのストレートを見て、なるほど、聞かれたくない理由かとジェイクは納得する、こういうことは深入りしないのが賢い生き方なのである。
とりあえず、ペルシカの提案でもあり、当初の目的的にもその川が丁度良かったので腰を下ろし、それぞれが昨日とは違う環境での遊びを楽しんだり、また眺めたりを始める、ともすればブレないのがルキア達であり、気付けば
「鮎獲った!!!」
「だからなんで素手なんだよオメェ……あ、でも串に刺して塩焼きってのは興味あるな、物あったっけ?」
「無論、代理人、準備」
「畏まりましたが、まだ数が足りませんね、私も手伝いましょう」
「クフェアママ、私、火を起こしてみたい」
「火を?うん、やってみようか」
賑やかな川遊び、それを見てナガンがただ一言
「賑やかで良いのぉ、ほれ、しっかりせいペルシカ」
「私、帰ったら少しは運動しようと思うんだ」
「腰をやるだけに賭けても良いぞ」
辛辣な、流石に私はそこまで軟じゃないさ、ペルシカがロリボロスの言葉にそう返すが実際その通りになりPPSh-41にお世話になるのは少しだけ未来のお話、因みにだがこの日だけでユノがルキアに見せられた虫の数はそこそこあった、お陰で
「暫く、見たくない」
「ですから無理はなさらない方が良いと言いましたのに」
とクリミナが言ってからこの会話の流れがペルシカと同じということに気づき、親子ですわねと笑ったとかなんとか。こうして二日目も夕食を終えて三日目……の前に、少しだけ
「あっ」
「ん?」
折角なので、この少年少女の青春みたいな夜会話を話しておこうじゃないか。
やっぱ大人数はつれぇわ……大体が空気となり始めてるわこれ、難しいねんな。
おら、二人っきりの夜会話すんだよ次回!