それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
鈍い風切り音が響き、次に聞こえたのは数人の着地音、それから嵐のような銃撃音を響かせながら、その一人であり複合トンファーの【レ・ザネ・フォルド】で射撃を行っているダラーヒムが
「冗談きついでしょ!!あのデカさで速いし、接近どころか向こうからの攻撃一発アウト、本気で不利だよこれ!!」
視線をその対象、キャロルからは【推定C級ELID】と呼ばれる大型のELID、下半身は見当たらず移動は強靭な前足の二本のみだと言うのにその速度は想像以上に俊敏であり、皮膚も並の銃弾は通さない、更には下半身はないがその代わりに背中からサソリの尻尾のようなものを生やしており、そこから繰り出される攻撃は当たるたびに廃墟が無残に破壊される所を見るに彼女たちが被弾しようものならば一撃でお陀仏だろうと考えるまでもなかった。
「そもそもにして、私とあなたの銃弾と口径では当たったところでダメージすらなさそうですけどね!」
叫び返すスユーフの得物である【レイテルパラッシュ】は確かに銃撃も出来るのだがあくまで牽制や通常兵器、人間といった存在への攻撃手段、本命はやはり接近戦なのだが、ここで相手のもう一つの特性が彼女たちに牙を向いた。
ELIDの皮膚をよく見ると液体に濡れているのだが分かる、これは【崩壊液】であり何の対策もなしに触れれで問答無用で汚染されると言う代物、お陰でオートスコアラーとノアを除いたランページゴーストが得意とする近接戦闘が全員封じられている。
ならばと合流をしていたアナが幻影を虚空に消してから左腕の義手をガトリングに変形させてから射撃を開始するが、その全ては避けられる、或いは命中したとしても
「っ!!弾くだと!?」
「嘘でしょ!?副隊長のガトリングでも駄目ってなったら後は……マキシマムなら、いやでも今彼女達の守りを薄くしたら」
「ノアは!!」
「航空戦力の対処に上がり、まだ時間は掛かると思います!」
状況が徹底的に悪いと悪態を付きながら牽制程度にはなるだろうと射撃は止めないダラーヒム、とここで後方からビリっと言う音が聞こえたと同時に
「だったらこれでどうだ!ビリビリキャノン!!!!」
雷鳴が響き、一筋の閃光がダラーヒムの真横を過ぎ去ったと思えば流石のELIDもこの速度の射撃は回避が間に合わなかったようで左肩部分に命中、今までであれば弾かれる結果だった攻撃は鋭く刺さったようでELIDはまるで獣のような雄叫びを上げて怯む、それはつまりジャウカーンの一撃であれば
「通用する!ジャウカーン、二発目!!」
「よぉしってうわわわ!!!向こうも雷撃を撃ってきた!!」
が、一撃で仕留められなかったのがあまりに手痛かった、向こうはジャウカーンが自身を脅かす存在だと即座に認知、彼女に苛烈な攻撃を繰り出し始めてしまう、そうなればチャージの時間が取れるわけもなく、苦し紛れにチャージ無しで撃つが雷撃は無慈悲に四散するだけに留まる。
そこでこの場にはもう一人いた事を思い出し、件の人物の方に向いて
「黒山羊、さっきから黙ってるけど手伝え!!」
「やってます、やってますが……」
言葉の通り、彼女の足元の影が伸び、ELIDの両脚に絡みつきそのまま体全体に広がろうとするのだが、異変に気付いたELIDはその場で一回転すれば影が破裂、つまりは
「力の差が激しい、今の私では全く相手にならない」
「ああもう、こんな時に役に立たない!!!」
ストレートな罵倒言葉だが黒山羊は気にすることもなく、それよりも何かを察したのかマズイなと言う表情になってから
「アブノーマルが活発になった?いえ、これは……本気で潰しに来ている?」
「冗談でしょ!?ま、マスター!!」
《こちらでも確認、動きが明らかに変わっている、本気になったというのは間違じゃないだろう》
「本気で状況が悪くなってるじゃんか!」
ふと気付くがこうやって状況に叫びながらツッコミを入れるのはトゥーマーンの役割ではとダラーヒムは思うが、本人は今は黒山羊状態なので仕方がないことである、因みに黒山羊になってなかったら叫んでた。
余談は置いておき、ともかく、この状況をどうにかできなければアブノーマルの方に行くことも出来ない、しかし決定打が決められるジャウカーンが集中的に狙われ、それを止める手段が自分たちにはない、手詰まりに近い現実にスユーフですら焦りの顔が浮き始めたとき
【突撃ー!!!】
【何が崩壊液だ、僕たちに効くと思うなよー!!!】
【撃ちまくれー!!!】
【てかデカイなこいつー!!】
【オラオラオラー!!!】
賑やかな声と同時に四輪駆動とチェーンガンの射撃音を響かせながら現れたのは防衛線の残党を相手にしていたはずのラーニョチーム、どうやらELIDの出現によりランページゴースト、オートスコアラーが苦戦していると通信で聞いて飛ばしてきたらしい。
確かに彼らの助太刀は助かる、自分たちと違い射撃戦メインであり高機動が売りの四輪駆動に移動から敵の束縛にも使える液体ワイヤー、何より機械が故に自分たちよりは汚染の危険性が低いと言うのもあり、この場での対ELIDは彼らが適任ではあるだろう、だが
「西行号の援護は!」
【許可はちゃんと貰ってまーす!】
突如現れた新手にELIDはジャウカーンに集中して攻撃をすることが出来なくなり、それでもチャージをしようとすれば的確に潰しにかかる、まだ一手足りない、だがとスユーフが
「ランページゴースト、あなた達二人はアブノーマルの方をお願いします!」
「え、でも!!」
「どちらにせよ、お二人にはこの相手は相性が悪すぎます、ここで足止めをされるくらいならば私達とラーニョチームに任せ向かったほうが戦況に影響があるはずです!!」
スユーフからの進言にアナは戦闘をしながら考える、確かに自分のガトリングも通らず、RFBに関しても愛銃は話にならずそもそもにして現在はガングニールによる近接戦闘しか出来ない、そう考えれば今ここで足止めをされる方が最悪かと思考を巡らせ
「オートスコアラー、ラーニョチーム、任せられますか?」
「勿論、あのELIDはここで仕留めてみせます」
【任せろー!】
力強い返答に一つ頷いてから牽制する形でガトリングを掃射しつつRFBに向けて
「聞きましたね、ここは彼女たちに任せて我々はアブノーマルの足止めに向かいます」
「……分かった、みんな、死なないでよね!」
それだけを告げてアナがシューティングスターを起動、RFBも彼女に捕まりそのまま飛翔をしアブノーマルの足止めへと向かい、それを見送ることもせずにスユーフは
「さて、どう攻めます」
正直に言えば、ラーニョチームが加わっても勝率がほんの少しだけ上がった程度だと彼女は考えている、というのも
「アナのガトリングが駄目だった時点で読めてたけど、ラーニョの装備でも駄目か」
【ジャウカーンがダメージを負わせた場所を狙えー!】
【速すぎて当たらないよー!】
【ぬわぁぁぁぁー!!】
ラーニョ2が尻尾で吹き飛ばされるが液体ワイヤーで空中で受け身を取り戦線復帰する、このように足止めは出来ているのだが完璧でもないのでジャウカーンのチャージ時間が取れず、かと言ってダメージも与えられていないという状況が出来上がっただけである
どうすると策を巡らすのだがこの手の役割はトゥーマーンの方が得意だったので、すぐに浮かばず焦りが再び生まれ始める、そんな時、黒山羊内部のトゥーマーンは策を閃いたのか黒山羊に向け
【私に主導権をよこせ!!】
「何を?」
急な叫びに思わず黒山羊が言葉に出してしまい、隣のダラーヒムが何だ急にという視線を送るが無視して彼女はトゥーマーンの主張を聞いてみる
【戦闘に素人のあんたよりもアタシのほうが上手く扱えるって言ってんだよ!良いから表に出せ!!】
「……私を利用しようと?」
【使えるなら何でも利用するってのがアタシの信条だ、テメェだって利用してやらぁ!】
本来であればこの空間にいる時点で狂うというのにその素振りもなく、あまつさえ自分を利用すると断言までしたトゥーマーンに黒山羊は軽く微笑みを浮かべてから
【いいでしょう、好きにやってみてください】
「言われずとも!スユーフ、ダラーヒム、ジャウカーン!!」
「トゥーマーン!?戻ったの!」
悪いけど今それどころじゃないからとダラーヒムに返してからラーニョチームとスユーフ達に策を伝える、被害こそ出てしまうが現状で確実にあのELIDを仕留められる一つの策を、そして彼女たちはトゥーマーンの作戦に適した場所までELIDを誘導をしてから
「おらこっちだ!!」
ダラーヒムが真っ先に躍り出て射撃を開始、無論その全ては弾かれ、反撃の尻尾を飛び避ける、続けてスユーフが反対側からレイテルパラッシュによる射撃を行いつつ、彼女が反撃を受ける前にラーニョチームがELIDを囲むように動き回ながら攻撃を加える。
ダメージは無いが無視できないほどの攻撃にELIDは苛つくのかラーニョチームを破壊しようとするが彼らのほうが更に素早く、攻撃は全て回避されおちょくるように反撃をされる、とここでELIDの本能がそうさせたのかグルンと急に振り向く、やつの視線の先、そこには自分を命を脅かす光が集まっていた。
【ヤバっ!?】
「ジャウカーン!!」
ラーニョ4が攻撃をさせてたまるかと動き出すよりも前にELIDが尻尾を向け雷撃準備に入り、スユーフが彼女にそう叫ぶがチャージが開始されたが故に中断してからの回避は間に合わず、ELIDの雷撃がジャウカーンの胴体を撃ち抜き、崩れ落ちていく姿……がピシッとまるで鏡のように罅が走り
「これだから好きよ、単細胞の相手ってのは」
パリンと割れた先に居たのは右手に例の宝石を手にし黒い影を展開しているトゥーマーン、では本物のジャウカーンは何処に、その答えは
「雷は上から落ちるものだよ!」
声が聞こえELIDが見上げれば廃ビルの最上階に近い位置にラーニョ1に捕まりながら両手を構えてチャージを完了させているジャウカーンの姿、ならば避けようと動くがその脚は影によって拘束されている、勝ったとトゥーマーンが笑った時、ピシリと自身の手から嫌な音が響く
嘘だろおいと見れば宝石に罅が走り、そして無情にも割れた光景、力の源たるそれが割れてしまえば影は溶けてなくなり
「や、やば……」
【逃さないぞー!】
【逆の脚は任せろー!】
【何だったら尻尾も拘束してやる!ジャウカーン、僕たちごと撃てー!】
ラーニョ2、4、5が即座に液体ワイヤーで両足と尻尾を拘束し動きを阻害、間違いなく巻き込まれる距離だが状況的に逃げることも出来ないと判断したラーニョ5がジャウカーンにそう告げれば、なんと彼女は一切の躊躇もなく
「アニメみたいな展開だこれ!んじゃ行くぞー、ドッカーン!!!」
【一切の迷いがないー!!!!】
直後、至近距離に雷でも落ちたのかという音と衝撃が辺りを襲う、それも一撃ではなく大容量バッテリーのリロードも利用した数発が、ELID(と拘束に入ったラーニョ2、4、5)に命中、そして
「……ざ、ザマァ見なさいってのよ」
「トゥーマーンのミスがなければ減らなくてもいい戦力が合ったんだけど?」
「ごめんな、ラーニョ2、4、5」
「こちらオートスコアラー、ELIDの撃滅を完了、したのですがラーニョ2、4、5が機能を停止、すみません」
そこには外部だけではなく内部まで焼き尽くされたELIDと黒焦げになっている3機のラーニョ、だが彼らに関しては確かにこの場では機能を停止したが
《ナデシコからも確認した、それとラーニョは気にするな、既にこちらに帰ってきている》
【やっほー!】
【経験値沢山だー!】
【雷に打たれる経験って必要ー!?】
電脳体が即座にナデシコで復活する、前回のように通信阻害でもされなければ彼らは基本的に不死身である、こうしてELIDを倒せたのだがその代償は小さくはなく、ラーニョチームの半壊、ジャウカーンも全力で雷撃を撃ったがために反動で復活に時間が必要、トゥーマーンもまたあれ程の実物に近づけたホログラムの生成のために黒山羊の力も利用したが故に電脳の限界を少し超えてオーバーヒート寸前でありこれにも回復に時間が必要。
つまりはオートスコアラーとラーニョチームはこのまま前線で戦闘というのが難しい状況になってしまった、その事をキャロルに伝えれば
《回復にどれくらいだ?》
「見た感じですと、早くとも十数分という感じでしょうか」
《そうか、ならばオートスコアラー及びラーニョチームはアイソマー達を避難させてある場所まで撤退、そのまま防衛に入れ、ELIDがもう一体居ることを考えるとそのまま活動は厳しいだろうからな》
回復後に再行動をしろと命令に畏まりましたと告げてからジャウカーンはラーニョ1に、トゥーマーンはラーニョ3に乗せてから目的地へ移動を開始するのであった。
そしてランページゴーストの二人はと言うと、シューティングスターの機動力があり直ぐにアブノーマル、それも今まで辻斬りで足を止めることがなかった蛮族戦士が戦闘を繰り広げている所に飛び
「!?」
黒の一撃と蒼い一閃の奇襲がそれぞれのアブノーマルに直撃、これで終わる存在ではないというのはキャロルから聞いているのでRFBはマフラーをたなびかせながら拳を、アナはイグナイトを発動した姿で幻影を構えれば蛮族戦士から驚いた様子で
「ドウイウ ツモリダ」
「少なくともこの場では敵ではない、そう判断しただけだ」
「どうもこうもないよ、貴方は誰かの、多分だけどアイソマー達のために戦ってて、私達にとってもこいつは敵で彼女たちを助けたい、なら肩を並べるってわけじゃないけど、一緒に戦えるって思った」
コイツラ強いし一人より、三人さ。決して彼の方を見ずに、だがそれは蛮族戦士を見たくないというわけではなく、その存在を少なからず信頼しているからという行動、それを感じ取ったのか、向こうはそれ以上は何も言わずに戦闘を再開し、二人も続く、倒すことは出来ない、だが足止めをすれば好転すると確信しつつ
何とか倒してみました(被害中)
現状整理
ラーニョチーム ラーニョ2、4、5が大破してアイソマー達の防衛に
オートスコアラー トゥーマーンとジャウカーンがオーバーヒートと反動から回復中待機しつつ同じくアイソマー達の防衛に
ランページゴースト アナとRFBが蛮族戦士と共同戦線を展開しつつアブノーマルの足止めへ、ノアは航空戦力と戦闘中
黒山羊さん 宝石が壊れたので戦場から完全撤退
お、なんか思ったよりも損害が出始めてきたなこれ。
……あ、蛮族戦士の下り、問題あったら言ってください、その場合はただ二人で別のところで足止めに変わりますんではい