それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:鮪薙

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ただ、断ち切るのみ


大規模救出作戦 Session6

不死のアブノーマルを斬り捨ててこれで何体目だっただろうかと考えが一瞬過るアナだったが、そもそもにして復活してくる相手にそれは無意味だと思考を断ち切り、状況を冷静に見極める。

 

蛮族戦士は語るまでもなく、本気になったはずのアブノーマル相手でも手間取る様子もなく四肢を切り落としていく、対してRFBは決して余裕というわけではないが迫ってくる攻撃には的確に防ぎ反撃を繰り出し、受け切れないものはきちんと回避をして囲まれないように動いているのを見るに問題はないだろう。

 

更に言えば、先程通信でノアが援護に向かっているとのことなので少しすれば更に楽になるだろう……などと考えたのが良くなかったかと彼女にしては珍しい事を思いながら目の前の新手に幻影を構える。

 

「まさか、こっちで当たりを引くとはな」

 

「でも、他の誰かが当たるよりもここの方がマシだったかも?」

 

RFBの割と本気でそう思っているという言葉に確かにと頷いてから新手、推定C級ELIDを見据え、さてどうしたものかと思考を巡らせて、居たのが数分前の出来事、端的に言えばそこから状況が更に動いた、それも彼女が望む一番の状況に

 

今この場には暴風が辺りを襲っている、風に乗って流れてくるは赤い霧、それを見たRFBはすぐに気付いた、これは間違いない

 

「まさか、あのときと同じ、えっと……イグナイトトリガー!」

 

叫びと同時に霧が勢いよく霧散、そこから現れるはあの鉄血相手の大規模作戦と同じ【イグナイトトリガー】を引いた姿のアナは幻影とアメノハバキリが融合したこの姿限定の得物【絶刀・天羽々斬】を構え、動き出したのをRFBは認識できなかった。

 

出来たのはELIDを除いたアブノーマルが血煙に変わっている光景、相変わらず馬鹿げた速度だと思う彼女だが、当の本人はと言うと

 

(まだ、まだ速く!!)

 

―おいおい、何処まで速くなるつもりだい?

 

ホォ イイキハクダ ゼヒトモ タタカイタイ モノダ

 

「今は駄目だからね!?いや、あとでも駄目だけど!!」

 

などとコントが起きているが蛮族戦士はふと自身の右手の一体化している大剣を構えると同時にELIDの脚が消えた、誰がというのは聞くまでもない、アナが断ち切ったのだがその直前に彼にアイコンタクトを送っていたのだ。

 

トドメは任せる、と言う内容のそれを蛮族戦士は見逃さずに突然の攻撃と消えた脚の痛みに雄叫びを上げるELIDに突撃、そして

 

「い、一撃、本当に規格外なんだなぁ」

 

タシカニ カテト サセテ モラッタ

 

もしかして私達はこいつの強化を手伝ってしまったのではとRFBは思ってしまったが考えなかったことにした、うん、多分大丈夫と言い聞かせてまだ残っているアブノーマルと戦いを再開、蛮族戦士もそれに続くがアナだけは視線を背後に向ける。

 

映ったのは映画の世界かここはという巨大ロボ二体による戦い、どうやら安全第一と至る所に貼られているロボが味方とナデシコから通信が来たが、ヘカトンケイルと呼ばれるパラデウス側のロボの攻撃は決して無視できる規模のものではない、だが

 

「空間消失、あらゆる攻撃も消失さえ、逆にそれで攻撃も行ってくる……」

 

《現場からの話、そしてこちらからもスキャンできるだけの範囲だが、ヤツの周囲数mで確認されている、下手に近づけば助からんだろうな》

 

ならばこのまま放っておくべきだとも考えたが、万が一味方側のロボがやられた場合を考えると正直に言えばどうにかしたいとアナが考えるが、流石のイグナイトトリガー状態でも

 

―流石に防ぎきれるかは分からねぇな

 

(でしょうね)

 

返答はしたが蒼は気付いた、なにか企んでいる声だと、そして実際にアナは一つの考えがあった、確かにあの空間消失防御は無敵だ、だがそれは無条件に張り続けているというわけではないと、攻撃だけを的確に潰すとなれば間違いなく自動認証かは分からないが判断はしているはずだと。

 

ならば答えは簡単に出ると、つまりは速く動けばいい、速く、速く、何よりも疾く、決まったと

 

「ガングニール、貴方はこのままアブノーマルの足止めを、そして隊長と合流してください!」

 

「え、りょ、了解!だけど副隊長は!!」

 

「ちょっと、お節介と検証を」

 

主語が足りなさすぎている言葉だけを告げてトリガー状態のシューティングスターをフル稼働、一瞬で上空に上がった彼女は【直角】に曲がり二体の巨大ロボ大決戦の元へと突っ込んでいく

 

ーお、おいおいおいおい!?何考えてんだ嬢ちゃん!!

 

(ヘカトンケイルの腕を全て断ち切る!)

 

無論、このまま突っ込んでも自殺になるだけ、故に彼女は一体化している幻影、イグナイト、蒼が運んできた悪魔由来の魔力、自身の全てに訴え続ける。

 

今の速度じゃ足りないと、もっと、もっと疾くと、何よりも、誰にも認識されない速度でと心の中で吠え続ける、が距離はまだ数十mはあるが飛来する彼女に気付いたヘカトンケイルから激しい対空攻撃が展開、それに対してアナは物理法則も合ったものじゃない直角の回避運動(ゲッター機動)と切り払いで速度を落とさない、否、更に加速を上げて止まらず、だが空間消失を知っている者たち全員が傍から見たその無謀な行為にやめろと叫びも虚しく

 

飛翔した彼女は音もなくスッと跡形もなく消え去ってしまった。覚悟を決めた突貫だったそれすらも嘲笑うかの如く、無慈悲な空間消失の防御に誰もが絶望をし、せめてあの戦っている巨大兵器はヘカトンケイルを打ち倒してくれと誰もが思い、巨大兵器が右のコンクリートハンマーを振りかざし、ヘカトンケイルが防御態勢を取ろうとした時

 

「え?」

 

誰が出した声かは分からない、だがその光景を見た全員が同じような声を上げるだろう。だって、巨大兵器以外の攻撃は通らなかったはずのヘカトンケイルの六本の腕が『同時に』飛んだのだから、断面から察するに間違いなく断ち切られたと分かるが、問題は誰がそれを行ったのかが全く分からないという点。

 

ヘカトンケイル側も即座に把握しようとするが、目の前の巨大兵器と地上に居る敵以外には誰も居ない、そもそもにして把握し切るよりも前にコンクリートハンマーが直撃し倒れることになるのだが、ともかく何が起きたかは分からないがチャンスが来たのは確かだと周りからは歓声が上がる頃、一つの影が建物に音もなく着地、と同時にボタボタと口から多量の血を吐き出す。

 

「ガハッ、ゲホッ……っ!!」

 

ー大丈夫か、嬢ちゃん!!嘘だろおい、トリガー引いた上でってか、ヒデェ顔になってるぞ!?

 

吐血をした影の正体は消失させられたはずのアナ、だが姿こそ変化はないのだが、目の焦点は一切合っておらず、肩どころか体全体で、しかも一定のリズムではない呼吸を繰り返し、多量の吐血、更には鼻、目、耳と顔中から血が流れ続け、また彼女の視界では全てがモノクロの状態になってもいると異常な状態なのは言うまでもなかった。

 

(マズイですね、蒼が何かを伝えているはずなのに、聴こえない……いや、これは『ズレて』る?クソ、私のチェンネルはどれだ……これか!)

 

カチンと何かがハマる音が電脳で聞こえたと同時に視界に色が戻り、次に音、最後に五感全てが戻ってくれば自分がどんな状態なのかを漸く理解して蒼に謝罪の言葉を送り、自身の体が回復するまで休めながらあの時何が起きたのかを整理しようとするが

 

(全く分からない……ただ速さだけを求めて、突っ込んで、断ち切っただけ、何が?)

 

―嬢ちゃん、気付かなかったのか?あの時、『壁』を突き抜けて隙間に入ったんだぜ、しかも加速だけでだ、正直驚きっぱなしだ!

 

(『壁?』それは一体)

 

蒼自身も上手く説明できるわけではないがと断りを入れてからこう続ける。曰くあの瞬間、彼女自身の加速が極限にまで達し、更には別の箇所で起こった時に関する魔力の爆発の余波を幻影が吸収、結果として極限の速度にその魔力が合わさり壁を突き抜け世界と世界の隙間、そこに入り込んだらしい。

 

そこはざっくりと言うと世界にすら認識されない空間、本来であれば何かが入り込むという事はあり得ない世界と世界の隙間の次元、故に何ものからも認識されない、干渉もされないそこに気付かない内に侵入したアナは勢いそのままにモノクロの時が静止ている世界でヘカトンケイルの六本の腕を斬り、そのまま離脱し今に至る。

 

結果、現実世界では同時に腕が突如として切断されて飛んだという光景に繋がる、だがそれだけの力にデメリットが無いわけもなく空間に居たのは時間にして二秒、たったそれだけで今のボロボロな状態になってしまっているし

 

―2秒で抜けてきて助かったというところだな。3秒もあそこに居たら嬢ちゃん、今頃、消滅してたぞ

 

(ギリギリ、という事でしたか。流石にもう一度は御免被りたいですね)

 

―その体じゃ、どっちにしろ二回目は無理そうだけどな。

 

二回目を行おうものならば身体が持たないなとも続けてからゆっくりと立ち上がる、幸いにして痛みなどの現象は見られない、少しばかり顔が血化粧のようになってしまっているがまぁそこは仕方のないことだろうと割り切ることにしてから、ナデシコに状況を確認してみれば

 

「アブノーマルの、源?」

 

《があると思われる箇所だがな、アガートラームが発見し現在はアブノーマルとそのリーダー格と思われる存在と戦闘中、イチイバルとガングニールも救援に向かい合流したようだな、迎えるか?》

 

一応、自身に起きたことをキャロルにも伝えているので心配そうな声の彼女に問題ないと口元の血を拭いてから伝え、建物から飛び出して再度上空からその地点に飛び去る。

 

その現場ではと言うと、ゲーガーが久方ぶりの強敵に思わず笑っていた、彼女がそこを発見したのは本当に偶然でありアーキテクトの頼まれ事を済ませるために花畑に寄り、装置を埋めた時のことだった。

 

花畑のはずれに建物が見えた、偶々窓が見える角度だったので内部まで見えて、寒気がした、次に

 

「なるほど、貴様らがアブノーマルという物か……」

 

囲まれていた、どうやら見つかったというのがバレたらしいとそのままなし崩しに戦闘を開始、現状で言えば

 

(侮ったつもりは一切ない、その上で言うとすれば強敵だな!)

 

迫って来た刃をバックラーでいなして反撃で蹴りを放ち、背後からの攻撃を右手の逆手で持った短剣で受け流してから首を跳ねようとするが、別の方向からの攻撃を回避するのに中断させられ、一旦距離を取り構え直す。

 

一体多数は本当にキツイなと笑いながら思っていると

 

「よぉ、楽しそうなことしてんな混ぜろよ」

 

「ゲーガー、大丈夫!?」

 

「あぁ、寧ろお前たちの飛び入り参加で取り分が減りそうで残念だ」

 

ノアとRFBが合流、因みに蛮族戦士は別の箇所で暴れているらしいというのは置いておき、そこに更に現れたのはトリガー姿のアナ、だが顔はあの時のままなので思わずノアもぎょっとしてから

 

「血だらけの顔だが大丈夫なのか!?」

 

「え?あ、あぁ、いえこれはもう大丈夫です、この姿だと自然治癒が速くて便利ですよね」

 

―嬢ちゃん、実は頭のいい脳筋だったりしないか?

 

(失礼な)

 

あまりな言葉に苦笑をしつつ天羽々斬を構えれば、ノアはシュトイヤークリンゲを、RFBは拳を、ゲーガーは短剣を構えてから号令をかけることもなく各々が同時に戦闘を開始、アナはリーダー格と思われる存在と戦闘を始めたのを確認してからキャロルは

 

《こちらナデシコ、S07前線基地組へ、今しがた送った座標にアブノーマルの連絡線があると思われる、現在はランページゴーストがリーダー格含めての足止めを行っているので向かってもらえると助かる!!》

 

戦いはいよいよ終盤、だが決して気が抜けることはないだろうないだろう、なんせ残りの戦いはイグナイトトリガーを引いたアナが接敵してから

 

「この姿じゃなかったら、戦いたくない相手ですね」

 

と漏らすほどの強敵とその取り巻きが相手からの耐久戦の始まりである。




【疾風迅雷】
アナがひたすら真っすぐ速さだけを追求して発現したイグナイトトリガー限定大技、ではあるのだが言ってしまうと扱い切れることは決して無い欠点だらけの技。

現象としては極限にまで達して速度の勢いでA世界とB世界の隙間に入ることにより、世界そのものから認識されない存在になりそこからの攻撃、結果として本編のヘカトンケイルの腕のようにまるで時止めによる攻撃のように同時に現象が起きることになる。

世界そのものから認識されないが故に絶対の防御の空間消失も『A世界から見れば』攻撃が来ているという事実もないので発動しないというカラクリ。

だが発動にはトリガー状態のシューティングスターが万全な状態で稼働できて、そこから3秒以上の加速が必要。今回ギリギリまで発動しなかったのは対空攻撃を避ける際に多少減速してしまったため。

また当然ながらデメリットも存在して、1つ目が3秒以上隙間に居るとA世界に戻れなくなり消滅。
2つ目に3秒以内に収めたとしても居なかった時間を世界が修正、つまりは【ズレ】を直すための負荷があまりに大きく発動解除後は本編のような状態になってしまう。
3つ目、隙間に居る間は魔力は存在の安定のために使われるため一切の使用が不可、戻ってからも数秒は使えないこと。
4つ目、使用できるのは一日に一度、更に使用後は一週間以上のインターバルが必要(世界とのズレの修正がそれだけ必要と推測される)等が挙げられている

ぶっちゃけて言えば、ヘカトンケイルの腕を斬り飛ばしたいがためにアナさんが行った行為がなんか別の大技に繋がってしまった偶然の産物である、なので二度目は無いと思われる。

アナさん「向こうの認識よりも速く動けば斬れるのでは?」
空間消失防御に対してアナさんが出した答えがあまりに脳筋過ぎるし、成功してなかったら死んでるぞこいつ。

因みに分かりやすく言うとスタープラチナ・ザ・ワールドみたいなもん、あれを更に昇華させて世界からも認識されない空間に飛び込んで攻撃してきたって感じ

さて、これ展開的に大丈夫かね?いやほら、トリガー来たしヘカトンケイルを任せっきりもどうかなって思っちゃったし、アブノーマルも流石に放っておくのもそろそろマズそうだから大胆に行くべきかなぁって思ったし……

大丈夫かなぁこれ(遠い目
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