それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
タリン内のパラデウス殲滅及びアブノーマルの消滅を確認、これにて大規模救出作戦の終了が通達された、だがとガングニールを解除した姿のRFBは自身の目の前の光景に拳を強く握りしめる。
ナデシコからの話によれば、今回の作戦で救えたアイソナーは九割、パラデウスとアブノーマルの介入を考えれば九割も救い出せたのは誇るべきことだろう、だが
(救えなかった……)
自分の、今回の作戦に参加した全員の力を合わせても零れ落ちてしまった【一割】のアイソナー達、その遺体が丁寧に運ばれ建物の中に安置されている、損傷が酷すぎる個体も居たらしく全てではないが……勿論、彼女だって全てを救い出せるなんて甘い現実は無いというのは頭はでは理解できている。
現実というのは何処までも厳しいものだと、それを相手取って大勢のアイソナーを救えた、これは何ものにも変えられない自分たちの努力の成果なのだと、考えても
「ごめん……」
私がもっと強かったら、この両手がもっと広げられたら零れ落ちないで済んだかもしれない命があったかもしれない、そんな後悔とも自身に対する怒りとも取れる感情を絞り出すように呟いた言葉に、偶々近くで聞いていたノアが
「あまり、引っ張られるなよ」
「え?」
「確かに救えなかった奴らも居る、だけど救えた命だってそれ以上にある、それを誇れ、だけど犠牲を忘れるなってことじゃねぇ、ただそれを必要以上に背負い込んで後悔に変えるな」
行き過ぎれば、いつかそれは自分の暴走に変わっちまうからなと言うノアの言葉には確かな重さがあった、そしてRFBは思い出す、ノアも自分が弱かったから失った妹達のことを後悔し続けて生きていたことを。
きっと彼女はこう言いたいのだろう、死者に心を埋め尽くされるなと、いや、これは違うかなと笑ってから
「隊長ってさ、なにか伝えるの苦手だよね」
「んだよ突然」
「いや、そう思っただけ……私はもう少しだけ彼女たちに手を合わせてる、そういえば副隊長は?」
作戦終了が告げられたあたりから見てないなと思い聞いてみれば、ノアが指を指したのは廃墟の崩れた壁に何かを考えるように座り込んでいるアナの姿、その様子は間違いなく悩んでいるという姿に
「はぁ、オメェと言い、あいつと良い、なんで今日はメンタルが不安なんだか」
「あ、あはは」
いや、隊長も少し前までは割とメンタルは不安定でしたよねとは彼女は言わなかったのは優しさか、ともかくRFBは自分が同行できる感じではないからと犠牲になってしまったアイソナー達に今度は後悔からの気持ちではなく、どうか安らかに眠ってほしいという感情で手を合わせ始め、ノアはやれやれという感じに息を吐きだしてからアナの元へと歩き出す。
その彼女は、幻影を取り出して徐に鞘から抜いて刀身に映る自身の顔を見る、なんとも酷い顔をしていた、作戦中だったので仕方がないとは言え顔中は血の跡がはっきりと残っており、口の中にも未だ血の味が残っている。
もっと言えば、今になって身体は内外から痛みを訴え始め、この場の誰よりもボロボロではなかろうかという有様に自嘲の表情を浮かべた所で
「何深刻な顔してんだ、アナ」
「っ!?あ、つつ……だ、大丈夫です、隊長」
「いや、どう見ても大丈夫なわけねぇだろそれ」
良いから座ってろと立とうとして痛みに軽く悶える彼女の肩を抑えながらノアは隣に座り、それから
「まぁ、アタシからはあれこれ言うつもりはねぇよ、どうせ基地で婆ちゃんたちからこってり絞られるんだろうしな」
「……実はもう先客がいるんですよね」
「ギルヴァとかだろ、丁度いい絞られてきやがれってんだ」
他人事だし、今回のはノアも看過出来るものではないと思っているので軽いノリでそう告げればアナも自身の今回の行動は宜しく無かったということは理解しているので何も言わずに、ただ一言だけ
「すみませんでした」
「謝れるだけまだ良いんじゃねぇの、それにヘカトンケイルの腕、あれはお前のお陰だってのもあるし」
「しかし、その結果、私は重要な場面であのような醜態を……」
リーダー格との戦闘、その時は自身が前を張り続けなければと言う感情から反動から回復しきれていないというのに戦い、蒼の忠告すら無視し、結果、一秒でもギルヴァの介入が遅かったら死んでいたという場面に繋げてしまった。
未熟が故の結果、だがあの無茶は己の力を過信したわけでもない、慢心も無い、焦りとも違う、つまりは
「分からないのです、あの時の私自身が、そして今のこの感情が」
渦巻く感情の渦が強すぎるのか、アナの電脳ではそれに答えが出せずに居た、故に先程までの悩んでいるという姿に繋がる、いや、こうして話している今もこれに対する答えを悩んでおり、故に
「……少し一人にしてもらって宜しいでしょうか」
「ん、だけど一人で抱え込みすぎんなよ、相談くらいは聞いてやるからさ」
「その時は、頼ります」
ノアに笑みを浮かべながら答えれば向こうは背中越しに手を降ってから撤退準備の手伝いに向かう、その背中を見送りながら彼女は自身の身体に視線を落としてから
(人形である己にはあれが限界、だとでも言うのだろうか)
もし、もしそうであるならば、人形が故にあの壁を突破できないと告げられるのならば彼女は願う、それは諸刃の剣でもある願い
(なれば、人形を超えてみせよう。幻影、貴方が持てる全てを私に、全て!)
願いながらグッと幻影を握りしめれば答えるように淡い光を放つ刀身、これが何を示すのか、それが分かるのはいつなのだろうか、もし今この場で分かるとするならば幻影を渡した彼か、もしくは彼女の身体に一度は入り込んだ彼か……
一方その頃、ナデシコではキャロルがリヴァイブに通信を繋げていた、この少し前、リヴァイル自身が己の墓場まで持っていきたいと思われる秘密を明かしたことにキャロルが感化、ならばと
「あぁ、そちらが誠意を示したとなればこちらも示さないというのは無礼だと思ってな、流石に通信でというのは難しいから後日時間があるときでいい、直接会って話をしたい」
「にしても兄弟とは言え、腹違いのそいつが起こしたことの責任を取ろうというのは、義理堅いと言うべきか、なんというか」
キャロルとリヴァイルの通信での会話を聞きながら、向こうには拾われない程度の声で私には理解ができんなとウロボロスが口にするが、それに対してオモイカネがこう答える
「腹違いでも兄弟だから、かな。きっと、身内が起こしたがそれによって世界がこんなになってしまったっていうのが大きいんだと思うよ」
「だからこそ、元に戻すために己を投げ出す勢いで、か……」
人間というのは中々どうして難儀な生き物だなと彼女は言うが、未来で自身の生き方を悩む事になるとはこの時は思っていなかったらしい。という余談は置いておき、通信の最後にキャロルはふと思い付いたことをリヴァイルに提案した、それは
「もしアイソナー達に常識などを教えるというのならばウチに教師見習いが居てな、実践経験を積ませたいから使ってやってくれないか?」
なるほどそれはいい考えだとウロボロスが呟き、基地にてルキアと散歩していたユノが可愛らしいくしゃみを零したとか何とか。
こうして今回の大規模作戦は終了となる、だがとオモイカネは今回の作戦の結果を纏めながらボソリと呟いた
「いやぁ、ラーニョの修理代って結構高いんだね」
「……言うな」
ラーニョチーム、割とガンガン前に出してはいるが高価なチームなのである。
という事でこれにてこちらでの大規模救出作戦編は終了でございます、一話挟んでから後日談を書こうかなと思ってますけどね。
え、アナさん?まぁほら、魔力とか幻影とか今回で蒼の悪魔由来の魔力も使ったからね、多少は何かが起こせても不思議じゃないやろなぁって。