それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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のんびり老後生活中


☆ ナガンの一幕

とある日のいつものガーデン、その住宅街にある一つの二世帯住宅の玄関が開かれ出てきたのはコートを着込みマフラーをしている二人の少女、手に持っているのはスクールカバンと言われるそれなので学生だろう彼女たちは外に出てから玄関の方を振り向き

 

「じゃあ、行ってくるねお婆ちゃん!」

 

「行ってきます、お婆ちゃん」

 

とまぁ、ぼかして書いても仕方がないのでさっさと答えを言ってしまえば、そう告げたのはルキアとクリスであり、ならば二人が【お婆ちゃん】と呼ぶとすれば二人しか居ないのだが、片方はかれこれ3日ほどラボに籠もっているのでこの場には居ないので、とすれば残っているのは

 

「うむ、気を付けて行ってくるのじゃぞ」

 

右目のレンズをつや消し黒で染めた眼鏡を掛け、背丈だけ見れば金髪のロリっ子だがその中身はこの一家の中で一二を争うくらいには老婆であると自覚している元戦術人形で現在は隠居の民生人形を自称している【ナガン】、彼女である。

 

そろそろ学校は冬休みに入るだろうという季節の本日は平日、なので朝から仕事や学校に出ていく者たちを見送った彼女はルキアとクリスの姿が見えなってから一度家に戻り、グッと背伸びをしてから

 

「して、今日はどうするかのぉ」

 

本日は、隠居と題してガーデンにて余生をのんびり過ごしてはいるのだがいい感じに暇になり始めて少し悩み始めているみんなのお婆ちゃんことナガンの一幕を眺めてみよう。

 

因みにだが、ユノ一家とノア一家の家はいつの間にか二世帯住宅という事で合体した、とは言っても別々であることには変わらない、ただ間に皆で集まれるような大広間のようなものが増設されたという話なのだが、と余談は置いておき、ナガンはそう呟いてから、ふと一角に視線を向ければ、寒くなってきたのでと室内で過ごしている【きなこもち】の姿、向こうはナガンの視線に気付くとイソイソと室内用の犬小屋から出てきてリードなどが掛かっている壁に近づいてから

 

「ワンッ!」

 

「ふむ、まずは散歩じゃったな。この後のことは考えながらとするか」

 

ほれ、行くぞと告げれば、きなこもちはもう一度鳴いてから口でリードや小道具が入っている手提げ袋を加えてナガンに持ってくる、その姿に彼の頭を撫でつつ

 

「お主、やはり微妙に阿呆のフリをしておるだけじゃろ?」

 

とは告げてみるが向こうは理解できないとばかりに小首をかしげる姿に、その行動が証拠じゃよと呟いてから散歩に出かける。

 

だが彼女の散歩というのはいつも決まったルート、と言うわけではない、確かに大筋はあるのだが細かな部分を微妙に変えて行く、理由は特にない、強いてあげるのならば、このデータ犬と呼ばれていた【きなこもち】がどれほど道を覚えているのだろうかという興味本位だったりするのだが

 

「……お主、道が違うことを理解しておるのか?」

 

「?ワンっ!」

 

「やはり、本当に阿呆なのかこいつ……?」

 

よく分かんないけど反応しておこう、という感じの鳴き声に改めて悩むナガン、しかし考えた所で犬だし意味がないかと打ち切り、その後ものんびりとたっぷり時間を掛けて散歩を続ける。

 

道中では勿論、街の住人とすれ違ったりする度に挨拶をし、時には雑談を交わしたりしつつ、公園にて休憩がてらドッグランスペースできなこもちを自由にし、遊んでいる姿を眺めつつ、同じく愛犬を遊ばせに来ていた近所の老婆と世間話をしている最中、結構冷え込む風に一度身震いをしてから

 

「しかし、今日も冷え込むのぉ」

 

「そうねぇ、お昼は温かい物にしようかしら」

 

「温かい物か」

 

彼女が呟いた言葉に、ナガンは何かを思い付いたらしく、ならばそうするかと呟いてから、きなこもちを呼び戻して老婆に別れの挨拶をしてから一度家に戻れば、あんなに楽しげに遊んでいたと彼と言えど寒いものは寒かったらしく一目散にウロボロスが起動させていたストーブの前に陣取り丸まる、その姿に

 

「おい、そこに居られると私に当たらぬではないか」

 

「ワン」

 

「いい度胸だ、犬畜生、私の快適ゲームライフを邪魔しようというのならば、グワッ!?」

 

「ワン!!」

 

ええい勝ち誇るように鳴くな!と自分の顔面にダイブしてきた、きなこもちを退かそうとするが向こうはその前にロリボロスから降りてまたストーブの前に陣取るという行動にナガンは

 

「遊ばれておるのぉ、っととウロボロス、わしはこれから昼食を食べに行くがお主はどうする」

 

「む?いや、私は今日は外に出るという気分ではない、それに昼はつい先程、食べてしまったからな」

 

「そうか、ではわしだけで行ってくるか、留守を頼むぞ」

 

あぁ任せておけおいこら犬畜生!!!とまたきなこもちに遊ばれているロリボロスの言葉を背にナガンは財布をコートの内ポケットに仕舞ってから目的地へと歩き出す、そこは大通りから少しだけ裏に回った場所にある。

 

【テンカワ】と書かれた暖簾を潜り扉を開けて店内に入れば、出迎えたのは青いロングヘアーの女性、彼女はナガンを見るや、人懐っこいのがよく分かる笑みを浮かべ

 

「いらっしゃい、お婆ちゃん!あ、そう言えばVectorさんも来てますよ」

 

「む?何じゃお主も来てたのか、まぁよい、店主、特製ラーメン一つ頼む」

 

「あいよ!」

 

「驚いた、ナガンもこの店を知ってたのね」

 

カウンター席、店主の奥さんでもある彼女が言ったようにそこにはまるで旅から帰ってきましたという姿をしているVectorがラーメンを食している姿にナガンは驚きながらも隣に座り、それから

 

「まぁな、一二年ほど前に偶々入ったのじゃが、それ以降はちょくちょく食べに来ておる、お主こそ、まさか居るとは思わなかったぞ?」

 

「私はもっと前ね、旅してる時に彼女が誘拐されそうになったのを店主と助けたのよ、それからの縁」

 

「はい、特製ラーメンお待ち!いや、あの時は本当に感謝してる、じゃなかったらもっと大変なことになってたかもしれないしな」

 

「頭弄くられて五感でも失うかしら?」

 

冗談にもならんことを言わないでくれよと答える店主に、ナガンは一体こいつ何者だと疑問に思ってしまうが、Vectorが笑い話にしているということは解決しているだろうことなので考えるだけ無駄かとラーメンのスープを一口。

 

冷えた身体に広がる暖かさ、そして

 

「美味い、これはG36達には出せぬ味じゃ」

 

「P基地の料理自慢とスリーピースですら再現できないって言わせた一品だからね、毎日でも食べに来たいくらいよ」

 

余程気に入っておるのじゃなぁとVectorにしては珍しいくらいに口が動く様子に、そう思いながらラーメンを食べ進めつつ、Vector達との会話を楽しむのであった。




☆世界線のVectorさん
P基地所属なのは変わらないが基本的には基地にはおらず世界中を気ままに旅している模様、そして気まぐれにガーデンや基地に戻っては、またふらっと居なくなるらしい。

因みに最後に出てきたラーメン屋の夫婦のネタ元は某機動戦艦だぞ。劇場版展開はキャンセルだ!!

ではこれにて今年最後の投稿となります、え?クリスマスとか元旦は無いのかって?季節ネタはね、もう品切れなのよ……ではでは皆様、良いお年を~

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