それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
「ねぇねぇ、シャフトお姉ちゃん」
ある日のレイディアントガーデン、いつものように子どもたちの相手をしていたシャフトに一人の少女が声をかける。
どうやら何かを聞きたいらしいと言うのは声で分かったのでシャフトはしゃがんで彼女と視線を合わせてから
「どうしたの?」
「えっとね、お姉ちゃんはジェイクお兄ちゃんのこと好きなの?」
ふむ?と質問の意図がイマイチ読みきれないシャフトは小首を傾げていると、子供ながらにこれは向こうに上手く伝わってないと言うことに気付いたのか
「だって、お姉ちゃんってお兄ちゃんと一緒にお昼を食べてる時、とても楽しそうだから、それで、えっと……」
「しかも、オメェさんが異性には絶対と言えるくらいに見せない笑顔で居るからこの娘はそう思ったって話にゃ、言うまでもなくLikeじゃなくてLoveの方だからにゃ?」
どうやらやり取りが聴こえたらしいIDWからそう告げられ、シャフトは……と時同じくしてシド工房では作業をしているジェイクと、それを椅子に座りながら眺めているM16、だったのだが彼女から
「なぁ少年、一つ聞いていいか?」
「んだよ、今見ての通り割と忙しいんだが」
「いや、シャフトのことどう思ってんのかって、単刀直入に言えばさ、好きかどうかって話だ、勿論Loveだぞぉ?」
あ?と一旦手を止めて振り向けば、笑顔のM16を見てから考えるという表情でもなく、それは丁度、シャフトと同じタイミングで
「考えたことなかったな」
「考えたこと無いかも……」
同じ内容で答えた、そしてそれを聞いた側は予想外とも言える返答と、考えたこともないと言う言葉にこれはどういうことだと真面目に疑問に思ってしまうのであった。
これはその質問から始まる、二人のボーイミーツガール……になるかもしれない一幕のお話かもしれない。
という事で場面をシャフトに戻してから、ともかく傍から見れば、そういう関係、じゃないとしても明らかに意識してても可笑しくないだろうという感じなのだがこの二人からするとそうではなかったらしい
「えぇっと、じゃあシャフトはその辺考えてなかったってことかにゃ?」
「はい、全然」
即答に近い形で返される言葉、だが無関心というわけでも嫌いというわけでもないのは二人の昼食風景を見れば明らかであり、しかし全く意識をしてなかったと言うのも今の会話からはっきりと分かる。
「えっとその、勿論嫌いとかじゃないですよ?」
「それはまぁ分かるにゃ、あ~、ん~」
「じゃあ、お姉ちゃんはお兄ちゃんのことどう思ってるの?」
あれこれ下手に考えないがゆえに切り口が直球になるのが子供であり、その真っ直ぐな言葉にシャフトは少し考えてから
「優しい人、かな。私とも嫌な顔しないで付き合ってくれれ、料理も美味しいって食べてくれて、会話も楽しいから私も楽に話せる人」
「それって、好きとは違うの?」
「え?うーん、どうなんだろ」
考えてる素振りは見せているが、かなりフワフワな感じのシャフトを見てこれは思ったよりも難しい問題かもしれないにゃ、歴戦の恋の相談窓口IDWは静かにそう思った、奇しくもそれはM16も同じことをジェイクに思っていた所でもあった。
もっと言えば、まるで打ち合わせでもしてたのかというくらいに同じような質問をして、これまた裏で通信でもしてるのかお前らはというくらいに似たような回答であり、思わず
「おめぇその、青春ってのは大事だと思うよお姐さんは」
「いや、んなこと言ったって考えたことなかったもんはしょうがねぇだろ、それに下手なこと思ってシャフトを緊張させるもの悪いってのもあるだろ」
「何ともまぁ良い心構えなんだが、男なんだしあんだろそういうのがさぁ」
何おっさんみたいなこと言ってんだろよ返し、ジェイクはまた作業を再開、その背中を眺めつつ枯れているというわけではないし、異性に対して何も思わないというわけでもないというのは夏のバカンスで分かっている、だがこの反応はと考え、同日、IDWと合流しユノ宅にて
「いえ、なぜあたくしたちの家へ?」
「そりゃオメェ、シャフトのことだからにゃ」
「二人が意識してないって言うなら、別にそれはそれで良いんじゃないかな」
ユノ的には、ふとした拍子にきっと変わるんじゃないかなと言う言葉だったのだがM16はそれに異議を唱えた、もしかしたらそれはあり得るかもしれないのだが今日のジェイクへの質問で一つの確信を得ていた、それは
「多分だが、このまま行くとあの二人は『それだけ』の関係で終わる」
「……はぁん、二人が大人すぎるってことかにゃ」
「ギブアンドテイク、程度の関係になってしまっている、ということでしょうか?」
クリミナの言葉に完璧にはなってないと思うがなと答えつつもほぼ間違っていないと肯定を示す、なのでこのまま関係は続くかもしれないがそれ以上にはならない、つまりは
「どうにか一押しないといけない状況になっているってわけだ」
「二人の自然に、では」
「話の限りじゃ厳しいにゃ、そもそもにして今日、偶々聞かれるまで考えたことなかったなんて言い切る辺り筋金入りに思えるにゃ」
とは言ってもなぁとこれにはユノも難しい顔をする、如何せん自分たちの時はそういうやり取りすらすっ飛ばして夕食時に好きみたいとか言い放ってしまっているので過程というのが全く無いのだ。
クリミナも同じであり、困りましたわねと言う表情をしている。因みにだがシャフトかジェイクの背中を押すということに関しては反対は実はしてなかったりする、折角二人があそこまで仲良くなれたのならば是非とも一緒になってくれないものかとすら思っているので。
「はてさて、どうしたもんかなぁ……」
「うーん」
「こういう時、この二人が甘酸っぱいやり取りをすっ飛ばしたのが勿体なく思うにゃ」
「い、いえ、割としてたようにも思えますわよ?」
全員がこのように頭を悩ませている時、ノア宅前にて如何にも旅、もしくは出張してましたという感じの大荷物を背負った見た目で言えば女子高生くらいの少女が立っていた。
その顔はやっと帰ってこれたという感じの笑顔であり、自身の体や茶髪の三編みが乱れていないかなどを確認してから玄関の扉をノック……する素振りも見せずに開け放ち
「ただいまー!!!!!」
「お、おかえりなさい【レイ】、もう、帰ってくるなら電話をしてくれればノアにも伝えたのに」
「いやぁ、折角だから驚かそうとね~」
勿論ながら二世帯住宅化しているのでその声はユノ宅側にも聴こえ、そしてIDWが閃いたとばかりに声を上げ、そして
「と言うことにゃ、何か案はないかにゃ?」
「ふむふむ、だったら簡単だよ」
彼女【レイ・エストレーヤ】はイエイと言う声が聞こえそうな笑顔で出した方法、なんてこと無い、現状でシャフトの異性に対する苦手意識の解消の特訓だというのならば
「お、お待たせジェイク君」
「おう、んじゃまぁ行くか」
特訓と題してデートさせちまえば良い、それが彼女の出した案であった。
という事で再来週はこの話の続きです、頑張るゾイ
……え、レイ・エストレーヤって誰だって?まぁほら、この小説でもパラデウス出てきたし、多分、ヨゼフも接触してただろうしレイラさんの事も伝わってるだろうし、何だったら向こうのほうが技術上だろうしってことだよ
つまりは、来週を待て。