それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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え、決め手それなの!?


ウェルカムナンバー0

その日、彼女は何時ものようにELIDを適当に屠って回り、一旦休憩でもするかと拠点の廃研究所に戻ってきたタイミングで上空から聞き慣れないスラスター音に見上げてみれば彼女(ノア)が居た。

 

対してノアもまさか一発目で当たりが引けるとは考えてもいなかったが故に少しばかり言葉と反応に困っている、が彼女を見ているとふとこんな感情を抱き、同時に向こうも同じものを感じ取ったようで

 

「不思議なモンね、アンタとは会ったことあるような気がするのよ」

 

「奇遇だな、アタシもだ」

 

写真でしか、シミュレーションルームの再現データでしか見たことがないレイラの姿を確かに若くしたらこうなるだろうなとノアは思いつつレイラのクローンを見据え、ここからどうするかと思考を巡らす。

 

今のやり取り的にはキャロルの言葉とおり、敵対などはするつもりはなく、会話も普通に成り立つのは分かる。

 

(ともすりゃ、下手にあれこれ考える必要は無い……か?)

 

「それで、何か用なんでしょ?いつまでも空を飛ばれてると、面倒な奴らを呼び寄せかねないからさ、拠点で話さない?」

 

向こうからの思いも寄らない提案にノアはキャロルに指示を仰ぐ、対してキャロルも今の言葉には驚きつつも彼女の言い分はご尤もだとして

 

《乗ってやれ、どちらにせよ腰を据えての会話が可能ならばそれに越したことはないからな》

 

「了解。って事だ、付き合うぜ」

 

じゃあ付いてきてよとバイクを押しながら歩き出す彼女の隣に着地して、同行するノア。その間では会話らしい会話もなく、廃研究所に付いてみればまず思ったのは想定以上に小綺麗だという事、それから

 

「電源生きてんだな」

 

「ありがたい事にね、お陰で【ブラックサレナ】、あぁ、このバイクのメンテナンスや暇つぶしも困ってないもんよ」

 

答えている間にも端末を操作し、網膜スキャンや生体認証を終えて扉を開いて入っていく彼女に、ノアも続くように拠点に入る。

 

内部もまた割りかし綺麗ではあった、が一人という事と必要なとき以外は使っていないというもああるのだろう、掃除が行き届いているという感じはなくよく使用する場所だけを綺麗にしてありますという感じである。

 

その中で案内されたのはバイクのメンテナンスなどを行うであろうガレージ、もっとも研究所であることを考えれば開発室というのが正しいのかもしれないが、ともかくそこに案内されたノアは勧められるままに近くの椅子に座り、向こうも座ったタイミングで

 

「さてと、んじゃま自己紹介、からか。私はパラデウスの【スペシャルカラー計画】で生み出されたレイラ・エストレーヤのクローン【№0】でそうだな、【レイ】と呼んでよ」

 

「S09P基地、ランページゴースト隊、隊長のノアだ。つか今決めましたって感じだなおい」

 

「そりゃまぁ、今考えたんだし。でもお似合いでしょ、あいつ(レイラ)の欠片で、№も0、だからレイ」

 

言葉だけを聞けば後ろ向きな感じがしないでもないが、ノアからしてみるとそう言っている彼女、レイに悲観している感じもなく、大真面目にこれが似合ってるでしょと言っていることが伝わってきた。

 

「で、態々S09地区なんて遠路はるばるから私に会いに来たのは……君たちがあの子(ユノ)のクローンで、私があいつ(レイラ)のクローンだから?」

 

「外れちゃいねぇ、ただまぁ、あたしもキャロルって言っても分かんねぇか、えぇっと、まぁ基地で指揮官してるアイツも、ちょいと事情があって一人を殺そうとしてた時期があってな」

 

「なるほど、私もそうなんじゃないかと警戒してってことか」

 

初対面に物凄く失礼なことを言ってるのは理解してるのでノアは、悪いと頭を下げればレイは別段気にしてないと手を振り、それから

 

「そだ、何か飲む?確かまだ、何か合ったと思うんだけど……」

 

「それなら、能天気バカが昼飯と紅茶を持たせてきてる」

 

「能天気バカ?」

 

何とも酷い渾名だと思いながら聞き返せば、ノアは能天気バカは能天気バカだと答えつつ背負ってたカバンから箱と魔法瓶と紙コップを取り出し、中身を注げば湯気と紅茶の良い香りが部屋に広がり、蓋を開ければ

 

「おぉ、おぉ!?え、なにこれ、めっちゃ高そうじゃん!」

 

「……忘れがちだったが、普通に卵やらハムやらのサンドイッチが出てくるのってこういう反応されるんだったな」

 

《俺達は今の生活に慣れすぎたというやつだな……》

 

これ食べても良いわけ!?とキラキラした顔で聞いてくるレイの姿、そこにはついさっきまであった何処か読み切れない感じの傭兵の女性という感じはなく、見た目相応の少女、これにはキャラ変わりすぎだろと思わず苦笑しつつも

 

「寧ろ、オメェが腹を空かせてるかもって持たされたんだ、食べてくれなきゃアタシが困る」

 

「へへ、んじゃま、いっただきま~す!」

 

言葉に出すよりも早くサンドイッチを一つ手に取り一口、モグモグと先程までのテンションが嘘みたいに静かに口を動かし、無言のまま手に取ったそれを食べきってから

 

「ゥンまああ~いっ!!!は、え、なに、アンタ毎日こんなの食べてるの!?」

 

「え、あ、まぁ、肉は人工的に本物同然に作り出すとかの計画で作ったやつらしいけど……」

 

丁度、鶏肉(食糧班制作の人工肉)の照り焼きのサンドイッチを食べてるレイにノアが戸惑いながらそう答えれば、食べ終えて紅茶を飲んでから

 

「これ人工物!?言われなきゃ本物と分からないでしょ、食べたこと無いけどさ!え、ちょっとまって、じゃあ野菜は?」

 

「そっちは、基地で栽培してるし、他の地区でも栽培してるのを買ったり、してるやつだが……」

 

「おぉう、え、これ、え、あんたらの所に行ったら毎日食べれる、と?」

 

「いやまぁ、仕事さえすりゃ、喰えるが」

 

え、何こいつ急にキャラ変わりすぎて怖いんだけどとノアが珍しく恐怖を覚えている間に、レイは箱に詰められていたサンドイッチを食べ進めていき、綺麗に食べ終えてからノアの方に向き直し

 

「私、あんたらの所に行くわ」

 

「は?」

 

「だから、あんたらの所に行くって言ってるのよ。勿論戦力として好きに使っていいわ、これでも最強と謳われた奴を完璧に模倣したクローン、ELID相手でも十二分以上に働く、ここの資料も持ち出せるだけ持ち出して構わない、罠とかウィルスとかの類は無かったと思うし」

 

「待て、待て待て待ってくれ!お、おいキャロル!」

 

食べ物一つでここまで釣れるとは思ってなかったんだがおい!と滅茶苦茶に慌てながら通信で聞いてみれば、向こうは向こうで急展開に困惑していたようで、少し待てと返される。

 

待てと言われたら待つしか無いのでノアは急に湧いて出た頭痛に頭を抑えながら、食後の紅茶を感動しながら楽しんでいるレイに

 

「つかよ、良いのかよ、ここらの奴らから頼りにされてんじゃねぇの?」

 

「されてはいるけど、居なくなっても彼らは上手くやるよ。そもそも弱くないし、時間稼ぎしながら生きて逃げるってのに慣れてるからね」

 

私がやってたのは勝つための戦い、自分が居なくなればまた生きるための戦いに戻るだけだと。割とドライな答えにノアは良いのかよと改めて思うが、そうではない。

 

この汚染地域ではそれがルールなのだ、レイはただ気まぐれにそのルールに穴を開けてただけ、更に言えば彼女が救えるのはほんの一部であり、大部分の生活には影響を与えてはいない。

 

だから、彼女がこの地域から消えたとしても誰も気に留めない、何処か違うところに行ったか、或いは死んだか、そう考えるだけだろう。

 

「そういう事だから、私がそっちに言っても無問題ってわけよ」

 

「逞しいなおい……っとと、ほい、キャロルが話したいだってさ」

 

どうやら結論出たらしく、ノアが通信機をレイの方に向ければ映像が表示され、ナデシコ内部に居るキャロルの姿、彼女はレイを見据えてから

 

《S09P基地、指揮官のキャロル・エストレーヤだ。話は先程から通信機を通して聞いていたが、先程の提案は本当なんだな?》

 

「おうさ、嘘偽りなし、ただ量があるからヘリが欲しいかなってのはあるけど」

 

《……分かった、直ぐに向かわせよう。それと、レイと言ったな、こちらとしても歓迎はしたいと思っていた》

 

「そう言ってもらえるとありがたいわね」

 

ニシシという感じの笑顔で答えるレイに、キャロルは母上の若い頃はこんな感じだったのだろうかと思いつつヒポグリフと念の為の第一部隊の出撃準備を指示、こうしてレイを迎える準備がう進められていくのだが、ただ思うのは

 

「決め手がメシなのが、なんだ、遺伝なのかこれ……」

 

「美味しいご飯に罪はない、うん」

 

何だかなぁとノアは思いつつ、ヒポグリフが来るのを二人で待つのであった。




メシ!メシ!メシ!エストレーヤ家として恥ずかしくないのか!!!

レイさんの詳細資料ページは今週中には上げたい、武器とかの解説を再来週分に打ち込めるか分からんから

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