それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:鮪薙

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せっかく、平和な世界で恋ができるんだからさ


☆ 急がずに今を生きろ少年

シャフトがジェイクに抱いていた恋心に気付いた同日の夜、星空がよく見える時間帯のシド工房の前に設置されているベンチに腰掛け、自動販売機で買ったホットのブラックコーヒーをカシュと小気味良い音を響かせて開けたタイミングで

 

「よぉ、少年。今お勤めが終わったってところか?」

 

「姐さんがこの時間に来るなんて珍しいな、それと……」

 

「なぁんてな、知ってるぜ?シャフトの嬢ちゃんとデート行ったんだろ、なんだなんだ隅に置けないなぁ、このこの」

 

彼の言う通り、この時間帯となれば街の居酒屋で飲み明かしているはずのM16がシラフで現れて、肘でグイグイとジェイクを突くが、突かれた側はそうじゃねぇってのと呟いてから

 

「今日のはシャフトの男性恐怖症克服の訓練だっての、それで付添で水族館行ったって話」

 

「おいおい、お題目がどうであれ、男女で出かけた、しかも水族館となりゃデートなもんだぜ?」

 

「いや、それは色々とすっ飛ばしすぎだろ……」

 

呆れるようにため息を吐き出すジェイクにの反応にM16もやれやれと言った感じの態度を取ってから、店前の自販機でホットコーヒーを買い、一口飲んでから

 

「で、ユノから聞いたがお洒落して来たらしいけど、どうだったよ?」

 

「いや、まぁ、ビックリした」

 

「そんだけ?」

 

「あと、まぁ……すげぇ似合ってた」

 

追撃とばかりの言葉に、彼は少しばかり歯切れが悪い感じに感想を述べてから誤魔化すようにコーヒーを飲み、それからM16から視線を逸らすように顔を上げて星空を眺める仕草を取る。

 

対して、M16もその態度にジェイクが何らかの意識をしていたことははっきりと察しつつ、はてさてどう切り込もうかと隣に座り背もたれに体を預け、同じように空を眺め。

 

しばし流れる両者の沈黙、それを破ったのはM16だった。彼女はヨイショと体勢を直してから

 

「なぁ少年、正直な話でいいんだがシャフトの事をどう思ってるよ」

 

「え?」

 

「あぁ、向こうがとかそういうのは考えるな、私が聞きたいのはお前が、シャフトに対してどういう感情を持ってるかってことだけだ」

 

誤魔化しも嘘も聞くつもりはねぇからな、と言葉にはしていないがジェイクはそれを感じ取って、言葉に、いや、これを口にして良いのかと迷う。

 

彼の大人としての部分がこれを答えるのを邪魔している、それを感じたのかはわからないがM16は普段ジェイクと接する時のノリではなく、真剣で、だが何処と無く寂しげな表情で

 

「一昔前とは違うんだ、他人への気持ちを誤魔化したりしなくても良いんじゃねぇのか?」

 

もう、誰かが突然、それも理不尽に居なくなるような世界ではなくなったのだから、誰かを想う気持ちを圧し殺す必要もなくなったんだよ、それはジェイクも初めて聞くM16の声だった。

 

だからだろうか、それを聞いてから少しだけ間をおいてから観念しましたとばかりに息を吐きだし、そして

 

「ああもう、分かった、言えば良いんだろ、言えば!」

 

「アッハッハ!そうだそうだ、言っちまえって!」

 

「……きだよ」

 

「あぁ?聞こえねぇぞぉ~?」

 

他人事だと思いやがってと先程までの真剣な空気を霧散させて、陽気に笑うM16をジト目で見ながら小っ恥ずかしい感情が故に先程はうまく言葉が出なかった感情を、今度ははっきりと

 

「好きだよ、あぁそうだよ、シャフトのことが好きだよ悪いか!」

 

「悪かねぇよ、くっくっく、やっぱりそうだったのかよ」

 

ああ言っちまったとコーヒーを飲み干してから大きく息を吐きだす、本人に向けてではないとは言え、知り合いに、しかも誰よりも付き合いが長く向こうの性格をよく理解しているM16に言ってしまったというのは彼としては出来れば避けたかったことなのだがすでに手遅れである。

 

「んで、何時からだよ、まさか一目惚れかぁ?」

 

「分かんねぇ……気付いたらとしか、でもなんだ、昼とか一緒に食べてて、こう」

 

「家庭的な娘が好み、ということだな!」

 

まぁ、そういう事だと思うと答え、もう1缶コーヒーを購入し口にする。一目惚れ、と言われるともしかしたらそうかも知れないし、彼女の訓練のための昼食などを過ごす間に好意に変わったのかもしれない。

 

だがどうであれ、決定的になったのは今日の出掛けだろう、水族館に共に行き、感動したり笑ったり、シャフトの隣でそれを見て彼は確信した、自分は彼女が好きなのだと。

 

「あ~、って頼むからシャフトには言うなよ!?」

 

「言わねぇって、寧ろ大人ぶってた少年が昔みたいなところがしっかり残ってて安心したわ」

 

「大人ぶってたって、大人だっての」

 

「いんや、まだオメェは少年だよ……いや、少年で良いんだ」

 

フッと彼女が纏う空気がまた真剣なものに変わる、今日の姐さんは不思議だなとジェイクは思いつつも姿勢を正して言葉に耳を傾ける態度を取る。

 

「シャフトもお前も、変に大人ぶらなくて良いんだよ、思春期を飛ばして、大人になる必要はないんだ」

 

「……」

 

「ガキらしい恋の一つでもして、馬鹿騒ぎして、それで大人に向けて歩き出せばいい、私『達』はもう戻れねぇけど、お前たちはそれを拾いに戻れる時間がたんまりとあるんだ」

 

だから、気持ちを圧し殺すな、誰かを好きになったってんならそれに向き合え、優しく、だが何処か悲しい笑みを浮かべながらM16はジェイクに向けて人生の先輩としてのアドバイスにも聞こえる言葉を投げる。

 

この『達』がどれほどの人数を指すのかはジェイクには分からない、だが決して少なくない人数なのだろう、それを彼女は知っているからこそ自分の背中を押すような言葉を伝えてきたのだろうと。

 

ならば自分もしっかりと答えなければならないとジェイクは頭を掻きながら、肯定の意を示すように頷いてから

 

「まぁ、つってもどう向き合えばいいのか分かんねぇけどさ」

 

「ハハッ、それは是非とも四苦八苦しながら向き合ってくれ、何だったらいい恋愛相談窓口を教えてやるぜ?」

 

「知ってる、それIDWのことだろ、絶対にしねぇからな、変に広まったりしたら目も当てられねぇ」

 

んだよ、知ってたのかと心底残念そうな声で呟いてから温くなったコーヒーを飲み干してベンチから立ち上がり、背伸びをしてから

 

「ま、一つ言えるのはそうだな、これからも昼食は付き合ってやったらどうだ?確実な繋がりってのは大事だと思うよお姐さんは」

 

「それは、そう……だよな。あ~、え~、ああくそ、変に意識しちまいそうだぞおい」

 

「変な態度とったら悟られるから気をつけろよなぁ、あ、でもその方が好都合か?」

 

好都合な訳無いだろとジェイクのツッコミはM16には軽く流され、彼女は歩き出す、これから何処に行くんだと聞いてみれば

 

「勿論、呑みにさ、丁度いい酒の肴も手に入れたことだしな」

 

「は、お、おい待て!それ間違いなく今の話だろ!!」

 

「私に話したのが運の尽き、安心しろって暈すところは暈しておいてやるからさ」

 

そういう問題じゃねぇっての!ジェイクの叫びは止まることは叶わず、M16は行きつけのBARへと足を進める、その顔はとても充実して、幸せに満ちた笑みを浮かべ、その足取りはとても軽いものだった。

 

翌日、レイディアントガーデンにて何時ものようにシャフトとジェイク、とルピナス、ステアーも加わった昼食会にて

 

「なぁ、その、一ついいか?」

 

「大丈夫だけど、どうしたの?」

 

「まさか、昼食会を止めようとか言い出すんじゃないわよね!」

 

「はいはい、黙ってようねお姉ちゃん」

 

もはや様式美のようにステアーに諭されるルピナス、だが彼女の賑やかさには今のジェイクにはありがたく、緊張が溶けたとばかりに息を吐いてから

 

「いや、そのなんだ、これからもルピナスが言ってたのと逆だって話だ」

 

今までは特訓という建前だったが、そういうのを抜きにしてシャフトの料理が食べたい、傍から聞いたら告白に近いのではという言葉にシャフトは特に気付く素振りもなく

 

「うん、えっと、これからも宜しくおねがいします」

 

「あぁ、でもなんだ、その挨拶は少し不思議じゃねぇか?」

 

「そうかな?」

 

エヘヘと笑みを浮かべるシャフトに、相変わらず少し抜けてるよなとアップルパイを頬張るジェイク、まるで完成されたやり取りではあるのだがこの光景を外野として見ていた三人の内の一人、M16が

 

「……これまさかまさかの両片想いパターンってやつではIDW」

 

「ヘタレ成分がないだけ、遥かにマシにゃ」

 

「それでも滅茶苦茶に甘くて困るんだけど?」

 

レイはそう言うが、これはまだ始まったばかりの二人のラブコメ、ここからどうなるかはまだ誰にも分からないのである。




Q 何が始まるんです?

A 両片想いのボーイミーツガールっぽいなにかやぞ
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