それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
キャロルの指示と同時に飛び出したランページゴースト、とそれよりも先にブラックサレナで走り出していたレイにノアが通信越しに
《おい、いきなり突出するな!!》
「安心しなってノ……っとと、隊長殿、それよりも追加攻撃頼むよ~」
言うことだけ言ってからスロットルを一気に捻り、エンジンをフル回転させ
《え、ちょちょ、ターミネーターが移動を再開!!》
「はぁ!?万能者が撃ったあれはどうした!」
《動いたということは何らかの方法で脱出したということだろう、っ!ランページゴースト、回避行動、攻撃が来るぞ!!!》
叫びにも似た報告と同時にランページゴーストが見たのは、ターミネーターが居る方向からのこれでもかという弾幕、いや、もはやそういった言葉では収まりきらない程の攻撃を前に
「冗談じゃねぇぞおい!!??全員、散開!!!」
「チィ!」
「うわわわっ!?」
ここでノアが気付く、ランページゴーストに向かって飛んできたということは自分たちよりも先行していたレイはもう既に弾幕の真っ只中じゃないのかと、大丈夫なのかアイツはと攻撃を掻い潜りながら探してみれば
「ヒュ~、良い歓迎だこと!!」
なんと速度を全く落とさずに大型バイクであるはずのブラックサレナを巧みに操って弾幕の中を突き進んでいく姿に驚愕と曲がりなりにもレイラのクローンとして作られたわけではないという能力の高さに感心してしまう。
が、そんな呑気な思考を許してくれる状況ではないのですぐに思考を目の前に戻して、回避に集中するがノアですらキツイという感情を隠せないこれに、アナは幻影で弾いたりで回避しきれているが
(まっずいな、マキシマムの大きさじゃ避け切れない!)
RFBが直撃こそないが小さな被弾をマキシマムスーツに重ねていってしまっている、このままでも接敵までに動けなくなるということはないが出来ることならばダメージは抑えたい、そう考えた彼女は
「(だったら地上からシールドを張りながらなら!)隊長、私はレイと地上から進む!!」
「構わねぇが、無茶するなよ!!」
勿論と答えてから一気に地上へ降下、着地してからマキシマムのフォースシールドを展開しながら前進を開始、距離はもうそこまでなく、まず接敵したのはレイ。
この熾烈な弾幕を笑みを残したまま突っ切ってきた彼女だがターミネーターは特に何かを反応することもなく、その様子にレイは引っ掛かるものを覚えながら視認、そして
「行って来い、キラークイーン!」
ブラックサレナの後部、そこの射出口が開き、拳大の自走式爆弾『キラークイーン』が打ち出され、目標に向け爆走を開始、更に武装を収納してある両サイドを開き、対ELIDマークスマンライフル【グングニル】を取り出して
「さぁさぁ、ランページゴーストでの一番槍は貰うよ!!」
「おっと、それはアタシ『達』のもんだ!」
おっと?と上空を見れば少しの遅れでやってきたノアとアナ、そしてターミネーターから見て左側からRFBの姿、もう既にフルバーストの準備を済ませているとマキシマムの武装が全て展開状態になっている。
それを確認したノアも武装を全展開、一人に対しては普通であれば過剰と言える武装の全てをターミネーターに照準を合わせ、隣でアナも左の義手をガトリングに変形、実を言うとこれは前回のELIDに有効打にならなかったという反省から義手にIWSと同種の弾薬のデータを読み込ませ、コーラップス技術を利用して弾幕としてそれを撃ち出すという超が付くほどのロマン武装と変容している。
「どうせ、食い足りねぇんだろ、おかわりも無料でくれてやらぁ!!」
「マキシマム、フルバースト!!」
「今度のガトリングは今までと一味違うぞ、貰ってけ!!」
三方向からのお返しとばかりの過激とも言える弾幕、着弾する瞬間をレイが見ていたが防御体制を取ったという感じはなく、それはつまり
「(避けるまでもないって訳か、なら)ダメ押しと行こうか」
まだノア達の射撃が終わっていないというのに、その弾幕の嵐の中に突撃していく姿に、彼女はもしかしたら自分の命をかなり軽く見ているのではないのだろうかと誰しもが思う。
そんな事を思われているとは思ってもいない彼女は本当に丁度、弾幕が切れるタイミングでグングニルの射程距離、しかもELIDの確殺距離である10Mまで接近、構えたと同時に一発、が
「えっ?」
ここで彼女が初めて呆けたような声を漏らす、今まで必殺の一撃として信頼していた真紅の一撃、だがそれはターミネーターに直撃することもなく【何か】に防がれて霧散した。
しかし、伊達や酔狂でELIDと戦い続けたわけではない彼女は即座に気を取り直し二発目、三発目、四発目と腕の排熱ギリギリの痛みに堪えながら撃ち込むが、先程と変わらずに霧散、つまりは
「こちらレイ、駄目だ、こいつに光学兵器は通用しない!!!」
《バリアか!》
《って感じの反応は無かったけど!?》
ならば、イレギュラー的なものかとアナに確認を取ってみるが、返ってきたのは
「いえ、魔力という感じでもありません、ありませんが、何かを感じたのは確かです!」
つまりは原因不明ってことじゃんかと苦笑いを浮かべながらならばとブラックサレナから対ELID近接型レールガン【ロンギヌス】を抜き出して飛び上がり、刀身を展開、荷電弾を撃つが
「オーケーオーケー、こっちは素で効かないってヤツね」
やっべ、私の手札じゃダメージすら無理かよとここに来て冷や汗をかくレイ、だがまだ終わったわけじゃないんだわと直ぐにニヤリと笑みに変えた瞬間、ターミネーターの背後から
【コッチヲ見ロォ~!】
「貴様は囮だったというわけか」
しかし音声を流しては奇襲にならないだろうと背後に迫っていたキラークイーンに攻撃、爆煙が上がりこれで終わりかと言おうとしたが、彼女の耳に届いたのは無限軌道が稼働する音、馬鹿なと振り向けば確かに攻撃に直撃したはずのキラークイーンに体当りされ、そのまま装甲を削らんと無限軌道を押し付ける。
「悪いね、それメッチャクチャコスト高い分、頑丈なのよ」
敵からの攻撃を想定してあるので何とこれには超小型のフォースシールドが搭載、これにより確実に接敵からの爆発が可能という事になってはいるのだが、結果としてコストは一つでラーニョ一機になっている、などという余談は置いておいておこう。
ともかく、ギャリギャリギャリと確かに削っているような音を響かせるキラークイーンだが、実際には削れていない、正確には削れてはいるがそれよりも先にターミネーターに破壊される速度でしか削れていない、だがそれもまた予測済みとレイは右手を何かを握っているような形にして
「爆発力もまぁ大盤振る舞いな威力、味わってみ!」
スイッチを押すような動きをすれば先程の弾幕と同じくらいの大爆発がターミネーターを襲い、爆煙が辺りを包むがレイは唐突にポーズを決めて
「次のお前のセリフは『「この程度の攻撃で止められると思うな」』だ!」
「っ!?」
「そして、キラークイーンが本命じゃなかったりするんだな、これが」
「【
ターミネーターが自身のセリフを丸々と読まれたことに一瞬驚き、更に爆煙が漂う眼の前から聖詠が聞こえたと思えば出てきたのは右手を握り締めたガングニールを纏ったRFB、完璧な奇襲、勢いそのままに右手を振り抜く……が
「遅い、それに直情的すぎる」
フワッとRFBの体が舞い、だが彼女が体感したのは凄まじい衝撃と地面に叩きつけられる痛み、なんとか受け身を取りながら構え直すものの、今の一瞬で悟るのは
「レベル、違いすぎるかも」
《構わん、ランページゴーストごと撃て!イチイバル、支援砲撃が来る、着弾まで5秒!!》
キャロルの報告にノアが即座に反応、飛行ユニットから小型の長方形の放熱板をコの字に折ったものが射出、4機で一組がランページゴースト全員を囲むと同時に支援砲撃が着弾、だが
「味方ごととはな、それほど追い詰められて……いや、なるほど」
晴れる煙の先には無傷のランページゴーストの面々、あの瞬間にノアが射出したのはバリア発生装置、これを利用して支援砲撃から身を守りつつもターミネーターの足止めを行う、という作戦だったのだが
「さぁて、どうするよ隊長殿、これ思ったよりもハードそうだよ」
「やるしかねぇだろ」
「えぇ、そのための私達ですから」
「それにどうしてバルカンを殺そうとするのかを聞いてないからね」
ランページゴーストの今までの攻撃とあれだけの砲撃を直撃しながらも無傷なターミネーターに対して彼女達は覚悟を決める、勝利条件はひたすらな耐久、終わりなきマラソンが今、始まった。
前回の終わりが尻切れトンボ感満載だったのでちょいと戦闘開始しました。
というかここまで書いて大丈夫だったのかな……問題あったら明日なんとか修正します。まぁようはこんな感じに足止めやってて、ランページゴーストごと砲撃しても大丈夫だよというのが伝えたかった感じですはい。