それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
(思えば、汚染地域から外って出たことなかったなぁ)
ブラックサレナを走らせながらレイはそんな事を思う、あの研究所で覚醒してからELIDが蔓延るあの汚染地域で、そこに住まう人々を自身の内側にあるレイラの欠片と顔も声も知らない妹達の想いで助け続ける生活をしていた。
基本的に衣食住は研究所で事足り、時には助けた人々から自分たちだって余裕がないだろうにお礼だと言ってチョコレートバーを貰ったりしていたので補給の為に他の地区へと言うこともなかった、だから今回が初めての遠出とも言える。
そんな初めての他の地区、汚染地域とは命名されていないきちんとした管理下にあるここを周りの景色を見ながら、彼女が抱いた感想は
「長閑だなぁ」
《長閑って……いや、オメェが居たあそこに比べれば断然に長閑か》
「比べるまでもないっしょ、ここまで走らせてELIDに絡まれないとか、これを長閑と言わずに何を長閑と言うのさ」
力強く断言するレイではあるが、ここまで来るまでに数度、未だ敵対してくる鉄血や野盗などに絡まれては鎧袖一触で蹴散らしている。
しかし彼女にしてみればあの程度ならば可愛いものである、寧ろ
「人間が人間襲うって健全よ、健全」
《あ~、まぁ汚染地域でそんなことすりゃELIDの餌だろうからなぁ》
「そうそう、つまりここの人間はそれを行う余裕があるってこと、平和なもんよ」
なるほどなぁと思わず納得の声を出すノアだったが、すぐにそれはそれで平和とは言わねぇんじゃねぇかなぁと考えを改める、この手の話題に関しては恐らくレイを当てにしてはいけないということを学んだ。
勿論ながらレイは本気でそう答えてはいるが向かってくるならば全力で迎撃しており、この数度の襲撃ではその野盗に向けてグングニルをぶちかまし、哀れ遺体すら残らずに葬り去り、これにはノアも容赦ねぇなおいと呟いたりした。
《こちらノア、そろそろ見えてくるぞ》
汚染地域から移動を始めてどれほど経ったのだろうかというところでノアから通信が入る、その内容に視線を前に向けてみれば確かに見えてきて、鉄血との最前線【S09地区】にあり、だがレイからしてみれば長閑なこの地区の
《あそこが、そうだな……この地区で最も長閑な基地だ》
「ハハハッ、最もって言えるのは中々じゃん、でもまぁ確かにそんな感じがするけどね」
【S09早期警戒管制基地】、なんていう仰々しい名を与えられながら、レイの耳には基地から鶏やヤギの鳴き声を確かに拾えば思わず笑みが溢れる。
見れば一足先に到着していたヒポグリフがヘリポートに着地しているので、今頃は持ってきた資料などを忙しくなく運んでいるんだろうなと他人事のように思いながら正門前までブラックサレナを走らせて停車、そのタイミングでノアも隣に降りてきてから、本日の門番係の【Six12】に
「キャロルは?」
「もうすぐ来るかと思います」
「今来た、思ったよりも早かったな」
声の方に二人が見ればキャロルと副官のFive-seven、流石にファーストコンタクトで変な印象を与えたくないということで運ばれてはいない、と余談は置いておきキャロルはレイの前まで向かってから
「ようこそS09早期警戒管制基地へ、指揮官のキャロル・エストレーヤだ」
「副官のFive-sevenよ、遠路遥々お疲れ様、中々大変だったでしょ?」
「ご丁寧にどうも、レイよ。それとこの程度だったら楽しいハイキング、苦でもないわ」
Five-sevenの言葉にそう返しながらキャロルから求められた握手に応じたとき、レイの目が一瞬だけ見開かれ
「……なるほどね」
「そういうことだ、珍しいことでもあるまい、さてお前に会わせたい奴がそこそこ居てな、時間が惜しいからすぐに案内したい」
「了解、っとブラックサレナは何処に止めればいい?」
「だったら、あの車庫でいいと思うわよ、誰も使ってないはずだから」
ブラックサレナを車庫に止めてから、四人は目的地へと向かう、道中ではこの基地の案内と特徴、それから自分たちのことを簡単に説明しておく、でなければ今から会う人物を前に何も知らない状態では流石のレイもフリーズするだろうという考慮である。
というよりも、今した説明だけでもレイは驚愕に思考が染まっているのだから正解だったのだろう。
「は~、今ってそんなに世界変わってたのね、人形と人間の、同性の、はえ~」
「まだ一部だがな、しかし何れは普通の話になるだろう」
「面白い顔してんぞあいつ」
「そりゃそうでしょう、でも直ぐに慣れると思うのよね、この娘」
これはFive-sevenの言葉通りだった、ということでここは中庭、キャロルはとある人物を呼んでくると居なくなったのだが、当のレイは基地に立派な農場やら養鶏場やら養蜂場やらがあるとは聞いていたが中庭も立派とか何だここと何度目か分からない衝撃を受けていてそれどころじゃなかったりしたが
「こんにちは、あ、違うか、はじめまして」
「はーじまして」
一人の少女と幼子の声にレイが意識を戻し、視線を向ければユノと彼女の足元でニコニコ笑顔を浮かべてレイを見つめているルキアの姿、また少し距離を離した所には芝生の上に座っているクフェアと見知らぬレイの姿に警戒して彼女の側から離れないクリス。
何とも微笑ましい光景、もしこれで事前説明を聞いてなかったらここで保護してる子供かなからのユノが自分とクリミナの子供だよとなり、追撃の因みにあの娘はノアとクフェアの子供だよからの宇宙猫表情を晒すことになっていただろう。
だが、そうはならなかったのでニコリを笑みを浮かべてから
「はじめまして、レイって言うわ。アンタ……貴女がユノちゃんで、その娘がルキアちゃん、で良かったかな?」
「うん、であっちの娘がってあらら」
「大丈夫だよクリス、怖い人じゃないから」
どうやら人見知りが少々強いらしいクリスにクフェアが優しい声でノアも近くに居るから大丈夫と告げるが、嫌だと首を横に振り続ける。
まぁ急に知らない人が現れればそういう反応になるよね~とレイは気にしていないのだが、ならそれはそれとしてと自分の足元に近付いてから自分を見上げてきて
「だっこ!」
「君に警戒心ってのは無いのかい?」
「ルキア~、だっこならママがしてあげるよ?」
「ママ!!」
やれやれ、面白い娘だなぁとこの基地に来てから浮かべ続けている笑みのレイだったが、ふと感じた気配、そして
「……君が、そうなのか」
「不思議ね、本当に不思議、何で初対面のはずのアンタの顔を見て妙な安心感を得てるんでしょうね」
キャロルが連れてきた人物、エゴールの姿を見てレイはそう呟く、だがその声はノアたちが今まで聞いていた【レイ】としてのそれではなく、【レイラ】の声色に近かった。
☆話を書こうと思ったけど浮かばなかったという、しかもこっちはコッチで予定よりも話が伸びていると言うね、どうするんだよお前……
あ、来週もどうなるか分かりません、はい