それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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基本的に基地で警備任務と雑務とかが殆どらしいぞ?


エゴール大尉のある日

「食材は、ここで構わないか?」

 

「ん?あぁ、そこに置いといていいわ、後はダミー使って冷蔵庫に入れるから」

 

ある時はネゲブの手伝いで大食堂の調理場に大量の食材を運び込み、因みにかなりの量とは書いたがそれでもこの基地では一月分らしい。

 

「すみません、態々手伝ってもらってしまって」

 

「気にしないでくれ、いくら人形と言えこの量の酒瓶はキツイだろうしな」

 

またある時は、スユーフの手伝いとしてBARに大量の酒瓶が入った木箱を、その重さに驚きつつも特に表情を変えずに運び込み。

 

「これで大体どのくらい持つんだ?」

 

「そうだな、今の鶏の数だと一週間といったところか、これでも増えれば牧場に送り返してたりするがまぁそのくらいだ」

 

時には牧場の鶏やヤギなどの餌を運ぶのを手伝ったり、と基地での雑務を幅広く手伝っているのは誰であろう、エゴールであり、その姿にはルキアと散歩として牧場エリアに来ていたユノが、同じく付き添いとしてきていたナガンに

 

「ねぇ、エゴールさんって正規軍の人で大尉、なんだよね。雑用させて大丈夫なの?」

 

「とは言っても向こうからの申し出だから問題ないんじゃなかろうか」

 

「こけこー!」

 

実を言うとエゴールの扱いに関しては指揮官であるキャロルは未だに頭を悩ませている案件である。

 

と言うのも彼の話では確かに言い渡された【パラデウスの報復を警戒したP基地の防衛任務】が最優先事項ではあるには間違いない、しかし基本的にはP基地の指揮系統に従え、とも言われているらしい。

 

だからと言って迂闊に外回りなどの任務は使えず、いや、使えないことはないが本来の任務と矛盾してしまう、故に基地の警備に留めていたのだが、その日の内にエゴールからならば雑用でもさせて貰えないかとなって今に至る。

 

「と、言うか気になるなら本人に聞いてみたらどうじゃ」

 

「確かにそうだね、エゴールさん!」

 

思い立ったが吉日とは彼女のことを指すのではなかろうかという行動の速さでエゴールに呼んで、ついさっきの事を話してみれば向こうは、その質問はされるということを予想してたようで直ぐに

 

「何もしない、と言うのは申し訳ないと思ってな。それと体を鍛えるという部分もなくはない」

 

「あ~、農業とか身体使うもんね~」

 

ユノの言う通り、エゴールはスリーピースの農地エリアでも手伝いを行っており、彼の中では畑を耕したりが一番、身体を使っているという感じがするらしい、また理由はそれだけではなく

 

「それに外部者の私にもこれだけ待遇を良くしてもらっている手前、この基地の雑務くらいはやらせてもらえんと釣り合わないというのもあるな」

 

「お主らしいと言えばらしいな、っとほれほれルキア、それは鶏のご飯じゃ、お主には食べられんぞ?」

 

「……あい!」

 

「いや、わしが欲しい訳ではないのじゃが……」

 

どうやらナガンが欲しいと勘違いしたのかルキアが笑顔で鶏のエサを差し出す光景に全員が笑ったりした一幕がありつつエゴールは、その日も特に何もない平和な一日を過ごし……

 

「まさか、そちらから呑まないかと誘われるとはな」

 

「寧ろこの基地に来てから数日経ったと言うのにまだBARを利用してなかったほうが驚きじゃ」

 

時間にして夜、夕食も終えてユノ達は恐らくは既に寝ているだろう時間、エゴールはナガンからの誘いでBARに来ていた。

 

聞けばどうやら彼が言ったようにこの基地に来てから数日、こういった場に顔を出したことがなかったようでナガンがならば呑むぞとなったのが今の光景らしい。

 

「ここは基地の憩いの場とも聞いていたからな、部外者である私が入っては悪いと思って来なかったのだが」

 

「呵々、そんな事を一々気にするような奴はおらぬよ、さてマスター、わしはコニャックを、お主は?」

 

「では私もそれを貰おう」

 

「お、エゴールココに居たんだってお婆ちゃんもいるじゃん」

 

注文をしたタイミングで、レイが現れる。様子から見るにエゴールを探していたようで、ただ向こうとしてはココに居るとは思ってなかった感じの様子にナガンが事情を話せば

 

「なるほどね~、そういうことなら私も同席しようかな、えっと……マスター、エゴールのと同じの頂戴」

 

「酒の名前を知らぬのに来たのか」

 

「いや、だって呑んだことねぇし……」

 

言われるとナガンも今の今までの彼女の暮らしを思い出して、あの地域に酒は珍しいとかいうレベルではなかったかと納得したところで注文したコニャックが三人分並び、それぞれが手に持ったところで

 

「では、そうじゃな……こうして酒を呑めることに『乾杯』」

 

「かんぱーい!ほぉ、これがお酒……えいっ!」

 

躊躇の欠片もなくグイッとグラスを仰ぎ、コニャックを一気に呑んだレイの行動にナガンもエゴールも驚いた顔になるが、当の本人は中身を空にしてから

 

「ん~、何とも不思議な味?でもまぁ嫌いじゃないかな、強いて言うならちょっと喉が焼けるような感覚になれるまで気持ち悪いかもってだけだし」

 

「……思えば、レイラもコニャックをわしと付き合いで呑んでた時も、どのくらい飲もうと酔わんかったな」

 

「絶対適合体質の所為だろう、軍に居る時もそうだったからな……ふむ、美味いな」

 

味わいながら呑む二人の横でお代わりを要求するレイ、暫くは普通の雑談を交わしながら酒を楽しんでいたのだが、ナガンがいい感じに酔いが回ってきた頃、丁度その時にレイラの話をしていたときの延長線からの会話だった。

 

「してじゃ、お主は何時まであやつのことをズルズルと引き摺るつもりなのじゃ」

 

「……」

 

「まぁさ、確かに難しいかもしれないけど、今日までに他に女がとかって、あぁいや、一途言ってたから無いか」

 

「いや、実を言うと結婚の経験はある……彼女のことを振り切ろうとしてな」

 

その言葉にナガンもレイもエゴールに驚きの視線を向ける、まさか本当に他に女性が居たのかとか、一途言ってたのに結婚まで行けたのかとか、もっと言えば

 

「なんじゃ、ならばこの基地で住み込みというのは中々に酷じゃろうて、連絡先さえ貰えれば手紙くらいは……」

 

「もっとも、一年で離婚してしまったがな」

 

「ありゃりゃ、そりゃなんでさ」

 

見れば彼もまた酔っていたのだろう、ともかくエゴールはレイからの疑問にコニャックを一口呑んでから、こう返答をした。

 

「共に暮らしていて、初めの頃は問題なかった、相手も人が出来た女だったからな、だが一月、二月と時間を過ごしていく内に、『彼女』とだったらと考えが生まれてしまった」

 

それが生まれてしまえば、段々と影を生み出し、幻を見せ始め、ここでエゴールは理解してしまった、自分はどうあがいても

 

「彼女を、振り払えないのだなと……それでこのままでは相手に失礼だと思ってな、一年経ったところで私から切り出した」

 

「揉めたじゃろ?」

 

「いや、それが向こうも私の様子に気付いていたようで、やっぱりかと言われたよ……とことん、私には勿体なさすぎる女性だった」

 

もっと言えば、その時エゴールと結婚した女性は正規軍のオペレーターだったらしく、しかもレイラとも知り合いだったという話を聞けばナガンはげんなりした顔で

 

「あやつめ、とことん関わりが広すぎるじゃろうて……」

 

「なぁんか、その話聞かされると私どうしようもなくね?」

 

何杯目かはわからないコニャックを呑みながら愚痴るようにレイが呟くも、エゴールは曖昧な笑みを浮かべ、ナガンはだから言っておるじゃろうてと容赦なく切り捨てる。

 

そしてBARでの呑みも解散となった後、エゴールは一人屋上に居た、酔いを覚ましたいというのもあれば、少々話しすぎたかもなという事で頭を冷やしていると、背後の扉が開き、振り向こうとするよりも前に

 

「あっと、振り向かないで頂戴、そのまま話をしない?」

 

「っ!?」

 

この基地では、時にこの手の奇跡もといオカルトが起きるものである。




え、こっから再来週の私に文字数稼げと申すのですか!!??(驚きの無計画)

あ、本編にも書いたようにこの作品のエゴールさんは現在はバツイチです、原作じゃ既婚者のままなのにね、レイラさんが悪いよレイラさんが

次回予告
舞台は13年後の日本、北海道。そこで一〇〇式、モシンナガン、式自は現在の生態系及び奥地の現状の調査に向かうのだが、そこで彼女たちは……

「デッカ!なんなのこのヒグマ!?」

因みに作者が最近一気買いして読んだのはゴールデンなカムイだったりする

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