それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
それはレイと言う彼女の欠片を持っていた少女が居たからだった、かつて彼女が相棒と言っても過言ではないほどに愛用していた武器を持ち込んでいたというのもあったのかもしれない、そして今日が満月というのが噛み合った結果なのかもしれない。
ともかく、今この場にて奇跡が起こした現象があった、この基地だからこそ起こり得る事とは言えエゴールが知っているわけもなく、背後から聴こえた声に驚きの表情をしつつ
「……君、なのか」
絞り出すように、だが振り向いてはいけないと彼女に言われたからなのもあるが、本能がそれをやってはいけないと思っているからか外を眺めていたそのままの体制で問いかければ
「残り火よ、とは言えまぁ、アンタから見れば私なんでしょうけどね」
「そこまではっきりしている残り火があるものか……久しぶりだな『レイラ』」
前半は呆れ気味に、後半は心からこうして話ができることを喜ぶような声で言えば、レイラは扉横の壁に背中を預け笑みを浮かべながらエゴールの背中に向けて
「えぇ、まさかこうして、また話ができるとは思ってなかったわ」
正直に言えば彼女自身もまだ驚いている、死んだはずだという自分がこうして現実に、しかも会話ができるレベルで存在していると言うことが。
もっともこれが何度も起きるような都合の良い奇跡な訳がないというのは理解している、だからだろう
「んで、何時まで昔の、しかも死んだ女のことをズルズルズルズル、自分を責め続けるのも大概にしたら?」
「……再会早々に耳が痛い事を言ってくるのは、お前らしいな」
「茶化すなっての、なんかもう私がここに居るのアンタの所為じゃないかすら思ってるんだから」
「私の後悔が、君を縛り付けている、と?」
レイラとしては冗談として放った一言だった、寧ろ後悔で縛り付けているとすればエゴールもそうかもしれないが、アンジェリカも、もっと言ってしまえば彼女を看取ったナガンやその手で殺したVectorたちの方が縛り付けていると言えるだろう。
だが、今のエゴールには自分が原因と突きつけられたと同然だった、だからこそ罪悪感を含んだ声で聞き返してしまい、それを聞いたレイラは思ったよりも重症な想い人の様子にため息を一つしてから
「バーカ、アンタ一人の後悔でこうして出てこれるなら、ナガンたちの感情すら利用して実体を持って現れること出来るっての……ほんと、引き摺りすぎよ、昔からだけど生真面目すぎるっての」
「その言葉も、久しぶりだが何度言われたのだろうな……すまない、変えられる性分ではなくてな」
そんな事は分かっているとレイラは思わず口にしそうになる、そんな生真面目で何処と無く放っておくと折れてしまいそうな弱さに惹かれたのだからと、無論そんなことを死んだ後の自分でも言えるわけがないので言わないがと誰にでもなく言い訳をしつつ
「あの日、アンタは自分ができる最善手を行った、それ以上のことは出来なかったし、その後に死んだのは私のミスよ、誰も後悔する必要なんて無いくらいのどうしようもないミス」
暗にエゴールも着いていくと言っても断っていたと告げる、その後のことは他人を頼らなかった自分のミスだとも、彼女なりの励ましでありもう後悔を、自分が死んだことを罪だと思って背負うなと言う言葉、それがエゴールにどのように響いたかは分からない。
彼女から彼の顔は見えないのだから、だけどさっきまでの何かとてつもなく重いものを背負っていた背中ではなくなったような気がしていた。
「君は、昔からだが励ますということが下手なのだな」
「なっ!?へ、下手ってどういうことよ」
「他人を励ますのに自分を卑下することが、だ」
相変わらず表情は見えないが今は間違いなく笑っているエゴールにレイラは人が励ましてやってるのにこの男はと顔をひきつらせるが、つい先程までの重い雰囲気は幾分か消えたのでまぁいいかと感情を落ち着かせる。
それから暫く流れる沈黙、互いに話題を探しているという部分もあるが、特に語り合わなくとも別にいいのではないかという感情もあったが
「思えば、こうして会話をできたのは正規軍を抜ける直前が最後だったか」
「えぇ、その辺りが最後ね、んで後はまぁ知っての通り、色々と迷惑をかけたわね」
「私が関わったのは最後の最後だけだ、寧ろあの娘達に向けて言うべき言葉だろうそれは」
ご尤もでとバツの悪そうな表情を晒す、それは言われなくとも分かっていることなのだが、今日みたいなことがナガンの前で起きるとは思えないので難しいだろう。
そう、二度目があるとは思えない、こうして会話できるのは今日が最後と考えるべきだろうとレイラも、エゴールも分かっていた。
「……ね、ねぇ」
先程までとは違う、どこか弱々しい声に思わず振り向きたくなるのを堪えつつ沈黙で返事をする。その反応にレイラもありがたいと思いつつ、呼吸を整えてゆっくりと
「アンタは、今でもさ……その、あ~、いや、ごめん忘れ「あぁ、好きだよ」てって!?」
「今でも、そしてこれからもお前が、好きなんだろうな」
一度はレイラのことは割り切ろうと結婚をした、だが出来なかったからこそエゴールは察した、自分はもう死ぬまで一人の無鉄砲で、気高く、この世界で似合わないほどの正義感を持ち合わせた一人の女を好きで居続けるのだろうと。
例えそれがもう成就しない恋だとしても後悔はないと、それを感じさせる力強い言葉にレイラは顔を真っ赤にさせつつ固まり、やっとの思いで出せた言葉は
「し、死人に告白とか馬鹿じゃないの!?」
「そうだな、大馬鹿者と言われても否定はできないだろう、だがそれほどまでに君に狂わされたのだよ」
「急に吹っ切れてんじゃないわよ……あ~、もう」
彼の耳にガシガシと髪を掻く音が届く、彼女が緊張したとき等に落ち着かせる時にやる行動に彼女は死んでも変わってないのだと安心したような表情を浮かべる。
勿論、彼女のその行動が確認したいがための言葉ではない、心から生前の彼女へ伝えられなかった言葉を告げたかったという感情からの言葉であり、それをレイラも理解しているからこそ落ち着かせようとしたのだろう。
気付けば満月が真上まで来ていた、昼をも欺くと言われる月明かりが二人を照らし、同時にそれがリミットだと察した彼女は嬉しさを交えた声で
「私もよ、誰よりもアンタを好き、だからこれだけは呪いみたいに告げてやるわ」
浮気なんて許さないから、思わずゾッとするような声色の言葉と同時にエゴールが振り向くもそこには誰も居ない、だが幻でも都合の良い幻聴でもない、彼女は確かにそこに居たのだ。
そっと、懐からタバコを取り出す、その銘柄は彼女が愛用していた誰が吸っても不味すぎて吐き出すそれに火をつけ、一口吸ってから
「知ってるだろ、私は一途な男だと」
今知ったわそれ、そんな幻聴が聴こえた気がしてまた笑みを浮かべながらエゴールはタバコを吸うのであった。
ここまですれ違ってやっと両思い完了したけど、冷静に見ると死人に一生縛られ続けることになるんだよなエゴールさん……(他人事
次の話どうすっかなぁ