それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
お昼のバーベキューを堪能し、トゥーマーンは優雅に惰眠を貪っていた、彼女の耳に今届くのは穏やかな波の音と風に揺れて葉が擦れる心地の良い音、これ以上無いほどの快適な時間、だったのだが
「なぁなぁなぁ!トゥーマーン、トゥーマーン!!」
「んだようっせぇなジャウカー……え、なにそれ」
ガタガタと寝ていたビーチチェアを揺らされ不機嫌を隠さない声でサングラスを外しながらジャウカーンに視線を向けたトゥーマーン、だが視界に入ったそれを見て驚愕し辛うじて出てきたのは上記の最後のセリフである。
そこにあったのは砂で作られた山だった、勿論それだけで彼女が驚愕するはずがない、問題はその大きさだった、トゥーマーンの目測ではあるがざっと見た感じでもスユーフの身長と同じくらいの高さはあるように見える。
「山だぞ!」
「おっきいおやま!!」
「お、おぉ、なに、え、す、すごいんじゃない?」
子供たちと一緒に作ったらしく、しかも有無も言わさずな勢いに押されて思わずそんな反応を示してしまうが向こうは褒められたという解釈をしたのか普通に喜ばれ、トゥーマーンは思わず
「今の反応で良いのかよ」
「すごいという言葉で褒められたと感じるのが子供というものだ、ところでトゥーマーン殿、指からレーザーナイフは出せるか?」
相変わらず似合いすぎて笑えてくるスク水姿のウロボロスが唐突にそんな事を聞いてくる、因みにだがこのメンバーの中では一番子供の扱いが上手いのは彼女だったりする、最もウロボロスが積極的に関わっているのではなく見た目故にルキアとクリスによく絡まれるからというのが悲しいところだが。
そんな余談はおいておき、いきなりすぎる質問にトゥーマーンも何でそんなこと聞いてくるんだと思いながら、出来ないことはないけどと答えると続けて向こうから来たのは
「そうか、ではこれに穴を開けろ」
「……なぁ、アタシの目に狂いがなければそれはヤシの実ってやつだよな?」
「あぁそうだ、大きさはこのストローが余裕を持って入れば良い、分かってると思うが貫通させるなよ、中の液体が溢れるからな」
人の機能をなんだと思ってやがるんだこのハイエンドは、そう思ってしまった彼女を責めることは出来ないだろう、だが同時に基地内ででは向こうのほうがナデシコ及び電脳管理者という立場が上というのもあり断ることも出来ないというのも悲しい現実。
なのでとりあえず、ジト目で抗議してみれば向こうは意にも介さない態度で
「何だ、そんな微調整は出来ないとでも言うのか?」
「チッ、やりますよ、ほら」
「感謝する、ふむ、中々に美味いな」
ご満悦な感じのつぶやきに対し、さいですかと興味なさげに呟いてから何気なく周りの様子を確認してみる、ジャウカーンとダラーヒムは言うまでもなく砂浜にてDG小隊の面々とその子供たちと遊んで、スユーフも変わらずドリンクの配膳などからの交流を、そして、という所でとある事に気づき隣でヤシの実の果汁を飲んでいるロリボロスに
「アナとアーキテクトが見当たらないけどなにか知ってる?」
「む?あぁ、奴なら島の動植物を見たいとかで森に消えたぞ、アナ殿はその護衛だ、流石に一人で行動させるわけにも行かないからな」
それを聞いて思わず何やってんだあいつとトゥーマーンは曖昧な表情を浮かべてしまう、バカンスに来ておいてそれっぽいことを言いつつ調査に動いたというのもそうだが、アナが付いていくと言わなければ一人でも行っていたという部分での呆れもある。
アーキテクト自身もキャロルからの辞令は聞いているはずだが、今の彼女はP基地内でもナンバー2に位置する存在になっている、なので可能な限り一人での行動は避けるようにと言う立場になっているはずなのだ、とそこまで考えてた所でトゥーマーンは自身に視線が向けられてることに気づき見てみれば、ヤシの実を持ち並んでいるジャウカーン達の姿、その後、トゥーマーンは暫くヤシの実に穴を開ける機械となるのは余談なので置いておこう。
そしてその呆れと言うべき感想は彼女の護衛として付いていったアナも同じように思っており
「アーキテクト、貴女本当に自分の今の立場というものを理解してるんですか?」
「え~、ここは安全だって言われてるし大丈夫だっておっと、これって植物の種?んじゃ採取しましてっと」
あまりに呑気な返答に軽い頭痛を覚えるアナ、目の前で呑気に動植物の調査及び植物の種子などを採取しているハイエンドモデルは上記にも書いたようにP基地でのナンバー2、世界再生の鍵となる技術の研究開発をペルシカ達と合同で行っている超が付くほどの重要人物。
もしこの場で彼女に危機が迫った場合は己の命すら掛けてでも彼女を逃さなければいけない存在、だというのに当の本人が自由奔放に未だに行動するのでアナとしても自覚を持ってほしいのですがとなっている。
「っと【ティア?】」
だが言っても自分ではあまり効果がないですよねと考えこもうとした瞬間、身体に軽い衝撃が走る、一瞬何事と思いかけたが直ぐに正体に気づき念話で問いかけてみれば
【帰ったわ、それとちょっと面白い話も持ってきたわね】
【面白い話?】
彼女が話したのはタリンでの作戦の時に渡された大剣、その元の持ち主の話、伝承とも御伽噺とも言える形で聞かされた事をそのままアナにも伝え、それから
【私は蒼がその悪魔じゃないかと睨んでるわ、勿論、だからどうしたという話ではあるけどね】
【話だけで彼がそうだと判断するのは早計では?】
【こればかりは実際に蒼の口から聞いたからっていうのがあるけど、声が御伽噺を語るそれではなかった気がするのよ、まるであれは……】
自分の体験をそれっぽく言い表している感じ、ティアの妙に自信満々な言葉にアナはふむと思考を巡らす、だが自分にしてみれば師匠であり恩人、なので
【ティア、これ以上は向こうから話してくれない限り触れないように】
【そうね、拗らせるのは私だって本望じゃないからそうするわ】
話はここで終わりと二人で結論付けてからアーキテクトの方を見てみれば、彼女は何かを発見した感じに一箇所を見ていた、どうかしたのかと聞いてみれば
「ほら、あれってギルヴァにシルエジオとネージュじゃない?」
指を差された方を見れば確かに三人の姿、これだけなら家族水入らずの散歩かとも思いたかったが、そう判断するには彼らが所持している物騒な荷物の存在がそれを否定する。
明らかに何かあったという感じで歩いている三人、アナはまずシーナ指揮官に通信で聞いてみれば
「ギルヴァさんが何かを感じ取った、と」
《はい、恐らくは悪魔と言ってました》
悪魔、その言葉がギルヴァから出たということは恐らくとは言ってもほぼ確定だろうとアナの目が鋭くなる、それはティアも同じだったようで
【一気に穏やかじゃなくなったわね、どうする】
「【考えるまでもないです】分かりました、私も彼らと合流します、いえ、あ~、ならオートスコアラーには黙っててもらえると、彼女たちは働き詰めでしたので、はい、失礼します」
通信を終えてからアナは幻影を取り出して腰に挿す、【アジダート&フォルツァンド】とシューティングスターが無いので少々不安ではあるが左腕のガトリングガンとイグナイト、最悪【デビルトリガー】もあるので何とかなるだろうと思いつつ
「アーキテクト、聞いてましたよね。貴女も戻って……」
「んにゃ、アタシも着いていくよ。悪魔ってのが気になるし」
「興味本位で相手できる相手ではないです、それに何かあれば」
「ヘーキヘーキ、武装なら今持ってるし」
ほらと出されたのはネックレス、これはRFBに渡してあるのとは別の【ガングニール】と最近開発が完了した多機能通信機【マルチフォン】、こちらは護身用として対ELIDまで想定されている拳銃型の光学兵器に変形するモノ。
その2つがあるから自分の身くらいは何とかするということだろう、その事にアナは大きくため息を吐き出してから
「危険になったら退くように、それだけは守ってください」
「その状況で逃げれたらだけどね、了解、んじゃ行こうか」
こうして彼女たちもギルヴァ達と合流するために動き出し、そこで見たのは座標した一隻の大きな船、そしてギルヴァがアナ達に気づき
「お前たちも来たのか」
「たまたまアーキテクトが歩いてる三人を見つけまして」
「うーん、パッと見た感じだと相当古い感じがするってだけしか分かんないなこれ」
バカンスの裏で、誰にも知られない調査が始まる。
トゥーマーン@ヤシの実穴あけマシーン
因みにマルチフォンのデザインはファイズフォンXです、あれすこ。