それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
ガングニールを一時的に解除した姿でアーキテクトが佇む、ついさっき聞いたゼーレからの話、それを聞いた彼女は得も言われぬ感情が渦巻いていた。
愛するわけでもなく、ただ利用するために娘たちを利用し最後には……その話を聞いて浮かんだのはユノのクローンたち。
「……」
次に浮かんだのはアイソマーたちのこと、どちらも誰かの勝手で命として生み出され、愛されることもなく使い潰された存在。確かにアイソマーの方は全てではないと言え救えた、けどユノのクローンたちは……
今でもその事は彼女の中では大きな後悔として根付いている。自分の知識では届かなかった手、それを少しだけ見てからゼーレを見つめていると
「アーキテクト?」
「っ、何かなアナっち?」
「いえ、私はギルヴァさん達と同行しようかと思いまして」
【ここまで来て盛り上がりそうな宴に参加しないのは勿体ないからね】
自分の中から脳天気な事を行ってくるティアにアナは思わず額に手を当ててため息を吐き出す。一応、もう一人の自分とも言える存在だというのにその口調はひたすらに軽い、本当に私の一部なのかこいつとすら思ってしまうくらいに。
「それで、アーキテクトはどうしますか?正直に言うならどちらに来ても貴方では役に立てるか分かりませんよ?」
それはそうだろうとアーキテクトは待機状態のガングニールを手に取って苦笑する。思った以上に悪魔という存在が強かった、ここに居るのがゲーガーならば話は変わったのだろうけど、だが
「いんや、あたしは毒親を相手にしてくるよ」
「……今の話聞いてました?」
勿論聞いてた。そう頷いてから、ガングニールを再展開、相変わらず見てくれだけは立派な姿、だが実力が伴っていない。
その状態で『お母様』と呼ばれる存在と戦おうなんて、アナからすれば無茶も良いところだと言いたいのだ。けどアーキテクトは不敵な笑みを浮かべ、その胸元に指をさし、アナもそこを見て思わず驚愕の表情を晒してしまった。
そこにあったのは見覚えのある赤い水晶で出来た装置、だがあれはと口にしようとした時、向こうから
「あ~、これは流石にアナっちが使ってたのよりも抑えてあるよ。RFBにも渡すつもりだし」
「抑えたって、それでも……」
「科学者はまず、自分で実験をするべきだ。他人を使うのはもっと安全性を確保してからにするべきなんだ」
その装置の名前は『イグナイトモジュール』アナが死ぬ思いをして適合した強化装置を彼女は自身のガングニールに搭載してきたのだ。
一応、アーキテクトが今回装備してきたイグナイトモジュールはアナから得たデータを元に改良、性能は彼女が使ってたのよりも落ちてしまっているが代わりに適合時の反動を大幅に軽減に成功。
とは言っても、適合時に痛みはあるにはあるし、完璧に、誰でも適合できるわけではないという課題点も残ってる代物ではある。が今回の戦い、及びこれからの『お母様』との戦闘では発動しなければアーキテクトは前に立つことすら出来ないだろう。
「なぁに、死ぬつもりはないさ、ユノっち達を悲しませちゃうからね」
「ならば良いのですが……」
【あ、ちょっとこれから裏ボスってのと戦うのよね。身体借りるわ】
は?とティアの突然の言葉に反応するよりも前にアナの意識は気付けば、和風な部屋の中に居た。え、なにこれはと困惑するも自分の感覚からこれは精神世界だと即座に理解、それから
【ちょっと、何をやってるんですかティア!?】
「んっく~、やっぱり実体ってのは良いわね。あ、初めまして、アーキテクト、知ってると思うけど私はティア、まぁアナのもう一つの人格とでも思ってくれてかまわないわ」
「え、あ、ども」
アナの中にもう一人の彼女が居るのは話には聞いてたがまさか意識の主導権を変えることまで出来るとは聞いてなかったのでアナと同じく困惑するアーキテクトに挨拶をしてから、【モデラート&ラルゴ】をガンホルスターから抜き出してからクルクルと同時に器用にガンスピンをしてから構えて満足だという笑みを浮かべて
「うんうん、良い感じだ。私は主人みたいに接近戦得意じゃないのよね」
【つまり、本来の戦術人形としての機能が貴方に?】
「とは違うけど、まぁその辺りを含めてギルヴァに話しておきましょうか。じゃあね、アーキテクト、生きてまた再会しましょ?」
【モデラート&ラルゴ】をガンホルスターに戻してからヒラヒラと手を振り、ギルヴァたちの方へと歩いてくティアを見送りつつ、思ったことをただ一言
「いやぁ、性格違いすぎでしょっと、あたしも合流しとこ」
いや、その前に少しだけやることがあるなと彼女が向かったのはゼーレのところ。彼女は自身のことと『お母様』の事を話してから意気消沈したように俯いていた、そんな彼女にアーキテクトは側に寄ってから
「やっ、ゼーレちゃん。おっと、自己紹介が先だね、私はアーキテクト、よろしく~」
「?えっと、よろしく、お願いします」
さて、声を掛けたは良いけどどう話を広げていこうかと今更ながら悩むアーキテクト、ことが事なので下手に触れれないし、かと言ってここまで来たのに何も言わないのもなぁと思考を回転させてから
「あっと、なんか難しいこと科学者のくせして言えないんだけどさ……」
「……?」
「生きるのを諦めちゃ駄目だ、話は聞いた、辛い目にあったのも、だからこそ君は生きるんだ」
かつて、それを願いながらも世界のために自身を全て捧げた親友の妹達が居た事を、詳細は避けつつもゼーレに話していく、向こうから反応は返ってこないが決して聞いてないというわけではない。
「君は幸せになれるよ」
「……なれる、のかな」
「なれるさ、いや、私達がそうする。誰にも愛されなかったとかあって良い訳がない、私だって科学が世界を壊したけど、その科学で世界を幸せにするつもりだし」
にししと勝ち気な笑みをゼーレに向ける。もう、ユノのクローンたちのような存在を出させはしない、それがアーキテクトの中にある数ある信念の内の一つ、だから目の前の絶望に打ち拉がれた彼女だって救うつもりだ。
それから出撃となるまでゼーレに話しかけて、少しでも彼女に前を向いてもらおうと会話を繰り返した。お陰かは分からないが少しだけでも立ち直ったような気がした、だからこそ
「ゼーレ、見ちゃ駄目!!」
『お母様』いや、あんなのを『お母様』呼ぶのも烏滸がましい、言うとすれば『母ヲ名乗ル者』がゼーレに向けて行った仕打ち、それを見たゼーレの絶望の表情を見て
「ざっけんなよ、悪魔……!!」
アーキテクトはキレた。少しでもあの毒親を懲らしめれば直るだろうとか考えた自分が嫌になった。悪魔という存在をとことん軽く見ていた自分を許せなかった。
何より、ゼーレの気持ちを徹底的に叩き潰すような事をした『母ヲ名乗ル者』に対しての怒りが、改良型イグナイトモジュールを使わせる事を躊躇わせなかった。
「あったまに来たから!!徹底的にブチのめしてやる!!!」
「チッ、五月蠅いのが多いものだ。そもそも貴様に何が出来る、この場で一番足手まといとも言える貴様に」
まず手始めにシャリテの一撃で部屋の隅に吹き飛ばされるも、それでもダメージはないとばかりに立ち上がりアーキテクトに挑発とも言えるセリフを向ける。
どうやら先の戦いでも見てたのだろう言葉にアーキテクトはニヤリと笑みを返す、自分も相手を甘く見ていたが向こうもどうやら自分を低く見ているらしいと。
舐めてもらっては困るとアーキテクトは顔を上げて『母ヲ名乗ル者』を見据えてから胸元の装置に手を掛けて
「その足手まといに一発入れられるって、言うのはどうかな?イグナイトモジュール、抜剣!!」
刹那、アーキテクトの身体を漆黒の影が包み込み、その中からくぐもった激痛に耐える声が漏れ出る。誰もがアーキテクトが無茶なことをしているとすぐに理解でき、駆け寄ろうとするがそれを止めたのもまたアーキテクトだった
「だい、じょうぶ……!コレくらいの痛み、ゼーレの心や、ユノっち達が今まで受けた現実に比べれば、かるい、もんさ」
「強がりを、何が出来るという……っ!?」
パンッ!と影が弾ける音、それと同時に『母ヲ名乗ル者』が増大した嫌な予感に従い顔を微かに横に動かすと同時に漆黒の槍先が頬を掠め、『母ヲ名乗ル者』の視界の先には先程と姿が大きく変わっているアーキテクトの姿があった。
見えなかった、確かに不意打ちだったからというのもあるがそれを差し引いても直感での回避がなければこの一撃で頭に刺さっていたかもしれないという事実に驚愕する。
取るに足らない存在だったはずだと、その驚愕の表情を見て笑みを浮かべつつもアーキテクトは回避されたことに舌打ちをし、飛び退いて
「使うつもりはなかった奥の手ってやつさ。これでも非常識な存在とは何度も出会ってた、その対策を科学者たる私が立ててないとでも思ったのかい?」
サイドテールは解け腰まで掛かる黒のストレートを靡かせ、ガングニールの装甲は禍々しい棘が生えており、その槍は悪魔をも貫かんとする神槍と言えるほどに変化させたアーキテクトが神槍ガングニールを絶対の悪に向けて不敵に笑う。
これでもう足手まといとは言わせねぇからな。言葉にせずともアーキテクトはそう『母ヲ名乗ル者』に告げ、この悪魔との戦いが幕を開けるのであった。
アーキテクトちゃん、遂にダインスレイフになる。
因みに更新が滞ってたのは新作の日刊を始めたからです、すみません……
アーキテクト(改良型イグナイトモジュール状態)
アナのデータを元に改良したイグナイトモジュールを使い変化した姿。
容姿は本編参照で、性能としてはアナのイグナイトモジュールには劣るがそれでも元々鉄血のハイエンドモデルであるアーキテクトがダインスレイフになることで彼女に迫れる性能の確保を成功している。
制限時間もまた999秒となっており、彼女はコレをRFBのガングニールにも搭載するつもりでいるらしい。
【ティア】
アナから身体の主導権を譲ってもらう、もしくは今回みたいに勝手に交代することで表に出てくることが可能。
その際に、戦闘スタイルがアナとは違い銃撃と魔力主体となる。
簡単言えば、アナが【ソードマスター】でティアが【ガンスリンガー】と【トリックスター】と言う感じ。
戦闘中でもノータイムで切り替わることが出来るので今後はかなりトリッキーな戦闘が可能とのこと。