それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
合流地点から三人がスノーモービルを走らせて約2時間半とちょっと、周囲も暗くなりだし雪が降り出してその勢いが少しずつ強くなり始めた頃に一〇〇式が設営したという野営地まで到着した。
木々が林と言えるくらいに生えている中に丁度良く広がっている空間、そこの中央には一〇〇式が作ったのだろう、近くの針葉樹の葉などで作られた手製の円錐型の小屋がポツンと存在している。
「ふぅ、何とか天候が落ち着いてる間に到着できたわね、それにしてもこんな丁度いい空間があるなんて、外からじゃ分からないわよ」
「ここが野営地?って言ってもこの小屋?しかないけど」
「はい、お世話になってる所で教わった簡易的な小屋です。手持ちのお手軽テントを一々使うよりも自然的で気に入ってるので、それにあれ、結構展開時の音が大きくて周りの動物が逃げちゃったり警戒しちゃったりするんですよね」
お手軽テントとはアーキテクトが【社長】をしている会社【みらくるふぁくとり~】の商品の一つで正式名称は【ファーストキャンパー】、スイッチ一つで大人が4~5人ほど入れる大きさのテントが展開できる優れものらしい。
と、そこの余談は置いておき主に一〇〇式は狩りなどをする関係上、音が響くこれをあまり好まなくなっているようで最近は殆ど使ってないとのこと、そんなこの生活に染まった彼女らしい理由にモシン・ナガンと式自は納得しつつ小屋の中を見れば
「結構立派ね、私達が入っても余裕があるくらいだし」
「驚いたけど結構、風とかも防ぐわね。じゃあ今日はここで一晩、明日の朝早くから集落へ向けてって感じにするけど、ここからだとどれくらいかかる?」
「午前中には着きますのでそれで問題ないかと。じゃあ、私ちょっと罠を見てきます、獲物がもう掛かってると思いますから」
「獲物?あ、夕食の?」
その言葉にはい!と元気に頷いてから、一〇〇式は二人にここでゆっくり待っててくださいと告げてから罠を見に森林の中へと消えていった。人形であり最近ではMOD化に近い改良が施されたお陰で暗視も備わったとは言え迷いのない足取りに
「あの娘、このあたりの地形を徹底的に覚えた感じあるわね」
「本当に活動範囲なら覚えてそうだし、何だったら動物の分布とか大体の行動範囲とかも怖いわそれ、あぁ、でも一〇〇式なら十分にありえるか」
実際、覚えているのを知るのはまだ先の話である。ともかく、待っていてくれと言われてしまえば二人が出来ることとすればいつでも火を起こせるようにする準備くらいなもので、あとはただ待つしかなくなるものである。
とは言いつつも基本的にS地区勤務だったモシン・ナガンと日本での活動が中心となっていた式自、活動拠点が違うということで雑談の種は尽きないので退屈にはならずに済んだわけで、十数分くらいが経ち寧ろ二人がどこまで行ったのだろうかと小屋から顔を出して彼女が向かった方角を見たとき、丁度良く一〇〇式が帰ってきた姿を確認。
向こうも二人の顔を見ると笑顔で両手に持っていた『獲物』を掲げ、それを見た二人は表情こそ変えずに絶句する。
「あ、お二人共、やりました!大量です!!」
ご満悦と言うのはああいう表情を言うのだろうと二人は思いつつ、彼女が手に持っているそれを改めて見る、その動物は何も初めて見たというものではない、寧ろ見慣れてるからこそ絶句したとも言うのだろう。
大量と言うだけあって両手に合わせて4匹のそれ、だがもしかしたらと一〇〇式に気づかれないように式自はモシンナガンにアイコンタクトを飛ばし
(あれって、あれよね、似てる種類とかよね)
(多分、そのものだと思うよ)
できればそこは同意して欲しかったと式自は表情を変えないまま誰にも聞かれないように呟いてる間にニコニコ笑顔の一〇〇式が小屋に戻ってきたので中に入り、調理の道具を並べて準備している彼女に意を決し聞いてみることにした。
「ね、ねぇ、一〇〇式、一つ聞いていいかしら」
「はい、何でしょうか?」
「それって……『リス』よね?それが、夕飯のおかずと言うか材料なのよね?」
「そうですよ?あ、安心してください、味は保証しますから。リスって木の実しか食べないのでお肉がすごく美味しいんですから」
味を語った時の一〇〇式の表情はご馳走なのですというのが言わずとも伝わるものであり、式自はどう受け止めるべきなのだこれはとなる。
彼女が言うのだから美味しいのだろう、それは疑いようもないことである、あるが彼女の中ではリスは割りと愛玩動物に近い存在、いや、とそこで彼女は頭を振る、ここは北の大地であり生きていくには食べなければならない、ともすれば
(狩りやすいリスは格好の食料ということか)
「ねぇねぇ一〇〇式、これってどう調理するのかしら、丸焼き?」
「いえ、先ずはこうして毛皮に切れ込みを入れてこうやって皮を向いてっと」
慣れた手付きで切れ込みを入れてからぐいっと皮を引っ張ると服を脱がすように簡単に剥ける、中々お目にかかれない皮を剥かれたリスに思わずおぉうと声を漏らしてしまう式自。
だが食べるということはこういうことなのだと納得させてる間に、彼女は内蔵から胆嚢は取り出して、内容物をしごきだしてきれいに洗ってから、ナラを輪切りにしたのを取り出して下処理を行ったリスを置いた所で、あっと忘れてたと言う感じの声を上げてから
「折角ですから、二人に食べて貰いたい物があるんです」
「何かしら?」
「これからこのリスを頭からこの山刀で叩いて骨ごとひき肉にするのですが、その際に脳みそも勿論そうします。でも実は脳みそもそれ単品を生で食べても美味しい珍味なんです」
一〇〇式らしい無邪気で無垢な笑顔のまま発せられた言葉に式自は当然ながらモシンナガンも流石に固まった。
今しがた目の前の同僚はなんと申された?え、なに、脳みそを生で食べる?と彼女の言葉を電脳が復唱した所で
「え、たべ、食べる?」
「えぇ、ちょっと待っててくださいね、こうやってっと、はいどうぞ」
綺麗に開かれたリスの頭、そして軽く塩を降られた中身もとい脳みそ、きちんと二人分、いや、今しがた自分の分として三匹目を開いて塩を降り指で摘んで一口で食べて、やっぱり美味しいですねと頷きながら咀嚼する。
その様子を見てから二人は手元の頭を開かれたリスを見る、何度見ても変わりようがない脳みそ、だがここで拒否なんてしたら怒られたりはしないだろうが物凄く落ち込む一〇〇式が出来上がるのは火を見るより明らかであり、彼女を悲しませるのはそれは違うだろうと言うのもある。
つまりは、選択肢なんてものは初めから無いのだと最初に動いたのはモシンナガン、同じように指で摘んでから一瞬だけ躊躇し、口に運んで噛み締めていけば
「お、あぁ、これ意外と美味しい。あ~、ウォッカ呑みたい、オツマミとして最高よこれ」
「確かに日本酒なんかとも合うかもしれませんね、えっと、式自、無理に食べなくても大丈夫ですよ?」
「え、あ、そんなんじゃないわよ、えぇ、いただきます(南無三!)」
モシンナガンもああいうのならば味は保証されているのだろうと食べてみれば、言葉にするのは中々に難しいが、なるほどこれは確かに
「熱燗に合うわね、でも新鮮な物じゃないと食べれないとなると難しいか」
「まぁ〆てから時間が経ったものじゃ難しそうよね」
「ですね、これから作る料理も本来であれば叩いてひき肉にしたのを生で食べていたらしいですから」
とは言っても物凄く昔の話らしいですけどとトントンと小気味良い音を響かせてリスをひき肉に変える作業を始める。
二人も流石に任せっきりは悪いということで手伝いに入り、お陰でさほど時間が掛からずに終えて、小屋の中心、焚き木の火に当たるように下げられた、囲炉裏の自在鉤と同じ役目の棒に掛けられている鍋に先程のひき肉を団子にしたのと山菜の一種であるニリンソウを干したものを入れて煮たせる
「とは言っても、これはニリンソウに限りなく近い山菜ですけどね、ですがこれを入れることでお肉の味が倍近く美味しくなります!」
曰くこの辺りの食べれる山菜やキノコなども徹底的に覚えたらしく、それにプラスして動植物の分布や狩りの方法を会得した彼女が居れば山とかで遭難しても生きていけそうと二人は思わず言葉にする、が
「いえ、その考えは危険です、私と言えど危険があることには代わりありませんからね、特にヒグマなんかは非常に危険です」
「熊か、確かに危険よね、ごめんなさい気を引き締めなければね」
「時期的にそろそろ冬眠から覚める個体も出てくる頃合い、とすれば気が立ってたりしててもおかしくないわね」
何が起きるか分からないのがこの北の大地、改めてそれを自覚しつつも今は楽しい夕食の時間だと丁度良く鍋が煮立ったようで蓋を開けてみれば美味しそうな匂いが三人の鼻を擽り、一〇〇式が全員分をお椀に装ってから
『いただきます』
出来立てで熱々の肉団子を食べてみれば、口に広がるのは意外にもほんのりとした甘み、これにはモシンナガンが驚いたように
「おぉ~、あ、リスって木の実しか食べないからこういう甘みが出るのね」
「うん、木の実の香りも悪くないし骨ごとひき肉ってのが気になってたけど、丁度いい感じの食感になるのがいいわ」
「ハフッハフッ」
初日の夕食は好評のまま幕を閉じ、あとは後片付けをしてからナビに周囲の警戒と念のための交代で見張りを立てつつ北の大地での初日の夜は明けていくのであった。
そして翌日、早朝から起きて朝食は持ち込んだ携帯食料を手早く食べてから、一〇〇式の案内のもとスノーモービルを走らせて、数時間後
「着きました、ここが私が今お世話になっている集落です」
「集落っていうか、ほぼ村ね」
「活気に溢れてていい感じじゃない」
三人は午前中に集落に到着するのであった。
一〇〇式からだからこそ無碍にすることが出来ない式自とモシンナガン、彼女たちは今後どのくらいの北の大地の食材を食べることになるのだろうか……
それとお知らせなのですがこの『北の大地にて』が思ったよりも長くなりそうという感じがし始めたので暫くはこのSessionを続けて書くことにしました。
なので来週もこの話の続きとなります、スマヌス