それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
集落と聞いていたからというのもあるので本当にその程度の規模だと思っていたのだが来てみれば、前話の最後に式自が呟いたように村と言えるほどの規模があり、建物も木材が中心ではあるが中にはコンクリートのものも見える。
とはいってもこれは恐らく前からあったものを利用しているだけだろうと二人は思いながらスノーモービルから降り、押しながら一〇〇式の後ろをついていき村の入口に近づけば門番として立っているのだろう一人が彼女に気づき
「お、【鈴】ちゃん、戻ってきたのかい?」
「はい、只今戻りました!えっと後ろの二人は私の仲間ですから安心してください」
「まぁ嬢ちゃんがこうして案内してる時点で害はないってのは分かるけどな、お二人さんも遠路はるばる、ようこそ」
向こうからの言葉に二人は挨拶を返してから、正門を抜けて、またスノーモービルを押しながら一〇〇式がお世話になっているという家へと向かう途中で先程の会話で気になったことをモシンナガンが聞いてみることに
「ところで、さっきの【鈴】って言うのは一〇〇式のこと?」
「そうですね、私としては【一〇〇式】のままでも良かったのですが、ここにも私と同型の人形も来ることがある、その時に同時に反応しちゃったりもあったので、ならということで村長さんに付けてもらいました」
「街とか村とかで過ごすようになってる人形たちは、みんな名前を考えてたりするからそういうのと同じね」
因みに名前の由来は一〇〇式の声が鈴を転がすような声をしているからとのこと、どうやらこの娘はこの一ヶ月という長くもないが決して短くもない時間でこの集落の人々から気に入られ、仲間の一人として迎えられているらしい。
その証拠に、こうして歩いている間も子供たちや大人たちから、帰ってきたことを喜ばれたり、怪我はないかなどの心配をされたり、時には今日採れたという山菜を少し分けてもらったりと人気者っぷりに感心しつつ、目的の家に到着すると
「鈴さん、戻ってたのか」
「【小蝶辺】さん、そちらも狩りの帰りですか?」
スノーモービルを一〇〇式が指定した場所に停車させたタイミングで、彼女に小蝶辺と呼ばれた男性の声に三人がそちらを向き、先ずは一〇〇式がそう返している間に二人がその人物をよく見ることに。
格好は迷彩柄の軍服なのを見るに恐らくは元は自衛隊の人間だったのだろう、装備自体もそれ関連の一式なのを見るに間違いないと判断、声は穏やかではあるが初見の自分たちを見てから一瞬の警戒を挟んだ辺り出来る人間らしい。
とは行っても一〇〇式が連れてきたということで直ぐに警戒を解いて、今日までの間に平穏というのが無かったのだろうという傷が目立つ顔でありながら、険しさというものを感じさせないくらいには穏やかな表情で
「それじゃ、後ろの二人が鈴さんが行ってた今回の調査のために仲間、か。おっと、はじめまして【
「モシン・ナガン、よろしくお願いね」
「64式自動小銃よ、呼ぶ時は式自で構わない。一〇〇式がお世話になってるわね」
「いや、寧ろ世話になってるのはこっちだ、彼女のお陰で子供たちをヒグマから守れたこともあったからな、それよりも上がってくれ、婆さ、村長が待ってる」
あ、貴方が村長じゃなかったのねと思ったが口には出さずに三人は佐二の案内で家へと入る、中はそれなりに大きめに作られており、間取りや飾りなども村長の家らしさというものを感じるがあまり飾るのを嫌う性分らしく、本当に最低限という印象を感じさせた。
そして居間に案内されれば、そこに居たのは一人の老婆、どうやら彼女が村長らしく一〇〇式と式自、モシンナガンを見ると
「帰ってきたようだね、鈴から聞いてるとは思うけど村長の【
「フチ?」
「【おばあちゃん】と言う意味を持つ言葉さ。さて、折角だからお昼を食べて行くといい、孫が鹿を取ってきたようだからね」
言うが早いか、老婆とは思えないほどに軽やかな足取りで台所へと向かっていき、入れ替わるように佐二が入ってくる、二人としては妙に余所余所しい様子にもしかして歓迎されてないのではと思ってしまうが、それを察した一〇〇式と佐二が
「婆さんの様子なら気にしないでくれ、これからここで君たちの任務の話をするから気を利かせてくれただけだ」
「それと、フチは料理をお客に振る舞うのが好きなので、今回みたいな感じは逆に張り切ってるとも言えます」
「なるほど、なら安心したわって、任務の話を知ってるの?」
「と言うよりも、今回は俺から鈴さんに話した部分もあるんだ」
真面目な表情と声でそう告げる佐二の様子に、どうやら今回の調査はただ見てくるだけで終わるという感じではないなと二人は察し、早速ナビを呼び出して先ずは今回の調査の部分の確認を始める。
基地から二人に与えられた指令での調査の範囲は現在地から更に南東、昔の地理で合わせるのならば千歳や苫小牧と言った場所、北の大地は大きすぎるが故に自然こそ回復しているが、調査のほうが現状間に合っておらず未だにそこも未調査部分が残っているというのがキャロルの言葉。
「私達の任務は数日を使って旧千歳、及び苫小牧に赴きナビによるスキャンを開始、現状の生態系などのデータを採集するというものよ」
「そのための案内役して一〇〇式ちゃんを頼りにしたって感じ、本当なら基地のナデシコを頼れたら良かったのだけど、中々難しいからね」
モシンナガンが言ったナデシコを頼れないと言うのは、単純に彼女たちは他の任務でキャパが一杯だという話であり、別にシステムが不調というものではないという余談は置いておこう。
ともかく、二人に与えられているのはそれだけである……というのが実は表の理由、キャロルが敢えて伏せた本当の理由が佐二の言葉から話された。
「ふむ、そこまでしか聞いてないってことはそっちの指揮官は通信でこれを話して傍受されるのを危険性を考慮したってことか」
「みたいですね、指揮官らしいといえばらしいです。実は、キャロル指揮官には私から話していた事があるんです」
「態々、伏せてたってことは相当な理由よね、何かしら」
「丁度、今回の調査範囲にある、ここだ。ここから旧千歳の真ん中から西に進んだところ、そこで不審な集団を見たという話がこの村の狩人たちから出ている」
曰く、武装しており数は多くはないが約7人ほど、だがその時はその人数だっただけかもしれないということ。しかもその日だけではなく、同じような場所で二週間ほど前から目撃されているらしい
初めこそは密猟者のグループでは?と一〇〇式も思ったらしく、話が出てから一人で数日掛けて張り込み調査を開始、そこで分かったのは
「密猟を目的とするには武装が過剰だったのです。狩猟用のライフルとかではなく、軍用のアサルトライフルや狙撃銃、散弾銃にサブマシンガン、明らかに対人などの戦闘を目的としたものでした」
「そんなので撃てば目的してる毛皮とかなんてボロボロになってしまうってことか、じゃあ確かに密猟目的のグループじゃないわね」
「っていうか、何しれっと一人で危険なことしてるのよアンタは」
式自のごもっともな指摘にうっと言葉を詰まらせてから、しばし目を泳がせてからゴホンと誤魔化すように咳払いをしてから
「そ、それで指揮官に通信を入れまして、何か情報をもらえないかと話してみたら、その集団が目撃された付近には地下研究所があったという記録が存在してたのです」
「地下研究所?まさか【旧パラデウス】の残党が?」
「そうか、だから指揮官は本来の理由を私達に伏せて、生態系の調査っていう尤もらしい理由でここに送り出したってことか」
【旧パラデウス】と書かれるように現在のパラデウスはDG小隊の一人『リバイバー』がウィリアムを潰してトップに立ち改革、現在では平和維持及び除染活動の組織と言う形になっている、だが現パラデウスが掃討を行ってるとは言え【ウィリアム派】の残党が残っており、今回目撃されたのはそれではないかとキャロルは睨み、今に至る。
物凄い大物がここで見つかるとはと言う感じの空気に、黙って聞いていた佐二が
「もしかして、かなりやばい連中が?」
「そう、ですね。もし指揮官や私達の推測通りだと、放置してはいけない集団なのでは確かです」
「……作戦を考えるわよ、ナビ、その周辺の地形を出して、小蝶辺さんもデータにないこの辺りの地形に関する情報があったら教えて下さい」
気を引き締めるように式自が仕切り始めれば、そこから村長が昼食を持ってくるまで入念な情報交換と計画の話し合いが始まるのであった。
お、急に大事になりだしたな?
因みになのですが、パラデウスに関しては【NTK】様の作品【人形達を守るモノ】から【Extra-Code 平和な未来の子供達】の話を参考にしてます、これ勝手に使って大丈夫だったかな……駄目だったらこう、何とか明日の私が頑張るんじゃないかなって(土下座の準備
え、小蝶辺佐二とか小蝶辺未来とかは誰なのかって、不死身そうな人とかリスのチタタプが好きな弓の名手の子孫かもしれないってだけだよ。