それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
佐二も含めた作戦会議、念入りに行われた結果だが今この場にいる全員が厄介な、だがこの大地では切っても切り離せない問題に直面していた。
一人は難しい顔を崩さずに、一人は成るように成るしか無いでしょと言う表情に、残りの二人は対処を間違えなきゃそこまで怖くなはないんだけどと言う表情を。
それぞれがそんな表情を晒す問題、それが
「ヒグマ、かぁ」
「しかも一匹や二匹とかじゃない、となると遭遇率は高いわよねこの地域」
「ですが大半がまだギリギリ冬眠中です、巣穴を不用意に覗いたり、騒がしくしなければ大丈夫とは思われます」
「とは言っても、中には冬籠りをしそこなって気性が荒くなってる個体もいる、油断はできないがな」
ヒグマ、野生の鹿を仕留めることができる程の瞬発力と持久力を持ち、その爪と巨体の通りの腕力から繰り出される一撃は命というものを軽く屠る。
10年以上まであれば絶滅危惧種とも言われ遭遇するほうが稀と言われていた存在、だが今では全盛期とまでは言わずとも数は増えており、それこそ大昔のように山を歩いていたら熊とばったり、そしてそのままなんて話が無いわけではないほどにある。
が、一〇〇式が言ったようにこの時期であればまだ冬眠している個体が殆どであり、冬籠りしそこねた個体も数が極端に多いというわけではない、なので
「とりあえず、警戒はしつつって感じにするしか無いか」
「ナビも警戒してくれるから、不意の遭遇はないと思う。よし、じゃあ現地についてからの流れはそんな感じで、今日中には着けるように動くわよ」
「なら、その前に食事にするといい、丁度出来たところだからな」
声と同時に入ってきた村長に案内され隣の和室に移動すれば、中央の囲炉裏にはグツグツと煮立っている鍋があり、そこから空腹を誘うような匂いも漂っている。
思えば朝食は手速に済ませられる携帯食料だった三人、これを嗅いでしまえば食べずに行動なんてことが出来るわけもなく、お言葉に甘えてと座り、お椀によそってもらったそれを受け取ってからモシン・ナガンがポツリと
「思えば、昨日の鍋はリス、これはさっき言ってた鹿肉よね?」
「あぁそうだ、鹿肉にニリンソウ、そして行者にんにくを入れて栄養たっぷりの鍋だ。これからまた任務に行くと言うならこれを食べて英気を養ってくれ」
「リスもまぁ美味しかったから割と気に入ったけど。いただきます」
「ハフッハフッ」
「ングっ、やっぱり美味いぜ」
この大地に来てから二度目の現地の食事、自分たちで狩り、捌き、食べる、当たり前のことではあるが故に忘れてしまうサイクルで生まれたこの鍋を食べながらふと式自が
「それにしても、一〇〇式がここで上手くやれてるようで安心した、一ヶ月前とは顔つきも比べ物にならないくらいに穏やかになってるし」
「そう言えば私は聞いてないんだけど、なんで急に北海道に行くことになったの一〇〇式は」
モシン・ナガンはこっちでの勤務ではないので知らなくても当然なので聞いてみれば、一〇〇式は少しばかり遠い目をしてから
「いや、ちょっとその……本島勤務の時にやらかしちゃいまして」
「とは言っても原因は複雑なものでね、汚染から逃れるために北海道に逃げた政府と汚染された旧東京に残ってた人間とそこで出来た新政府のいざこざと言うべきか、物凄く根深い溝と言うべきか、ともかくその両者で未だにギスギスしててね」
ほぼ毎日のように彼女たちが出動するような小競り合いが起きたり、中にはテロや、下手をすれば再度紛争に起こり得る危険性がある集団を検挙したりなどが続き、元々感受性が豊かな一〇〇式がストレスを段々と貯めていってしまったようである日、遂に爆発、曰く
「一〇〇式があそこまでブチギレたのは初めて見たって感じよ。いやぁ、なんかもう喧嘩両成敗と言うか、ともかく私と62式、それとPM-9の三人がかりで止めなかったら血の海が出来てもおかしくなかったってくらいの暴れっぷりだったわ」
「うぅ、なんともお恥かしい」
「なるほど、だから鈴さんがこの村に来た時は凹んでたってわけか」
なお、彼女がブチ切れた内容は至って正論であり、それ自体はキャロルも問題視しておらず、彼女をここに送ったのはストレスの軽減及びこっちのほうが合ってるだろうという気遣いである。
という事があり来た当初はやらかしてしまったという罪悪感から凹んでいながらも、そこは真面目な一〇〇式という人形、この村で出来ることの手伝いを、そして気付けば村長に気に入られ狩りの手伝いをとなり、今こうして村の人気者の一人として扱われるようになったとか。
「鈴のお陰で色々と助かってる、彼女がこの辺りの生態系の調査とかもしてくれたおかげでヒグマとの遭遇率も下がってるからな」
「少し前までは割りと命懸けというか神経をすり減らしながらだったからな、本当に助かってる」
「い、いえ、私は出来ることをやったまでで、ハフッ」
村長と佐二からの掛け値無しの褒め言葉に照れながら鍋を食べる一〇〇式、その様子すら本島の時には見れるような姿ではないので式自も安心したように見つめ、モシンナガンは彼女らしい反応に
「その真面目さが一〇〇式よねぇ。っと、5人とは言え、あっさりと食べ切れるとは、恐ろしいくらいに箸が止まらなかったわ」
「ごちそうさまでした、本当に美味しかった。あ、後片付けの手伝いしますよ」
5人で食べるということで少し大きめの鍋一杯に入っていた具材は気付けば空になっており、三人はそれぞれ後片付けの手伝いに入ったり、食後の休憩を挟んでから、今は村長宅前のスノーモービルを止めてある場所に移動していた。
これから移動を開始すれば、丁度日が落ち始める頃には目的地には到着、そこで野営をし翌日に周辺調査及びその不審な集団の捜索を始めるという流れになっている。
「鍋、ごちそうさまでした。お陰で温かい身体のまま向かえそうです」
「食後に出た鮭のルイペもデザートみたいで美味しかった~、任務が終わったらまた戻ってくるね!」
「そうか、なら今度は鹿じゃない動物の鍋も用意しておこう、直ぐに帰るというわけではないのだろうからな」
因みに、村長は今も現役で狩りに出ている、更に言えば一〇〇式に弓の扱いを教えたのは彼女である。という余談は置いておき、その一〇〇式はと言うと
「では行ってきますね、小蝶辺さん」
「あぁ、そうだ。えっと、あったあった、これ持ってってくれ鈴さん」
彼が懐から出したのは一つのお守り、どうやら手作りだというのがよく分かるそれを受け取りつつどうしてと聞いてみれば
「いやまぁ、今回の任務はもしかすると銃撃戦もあるんだろ?だから何かあったらこの村の人達も悲しむからな、その為のお守りさ」
「そうですか、はい、確かに受け取りました、ですがご安心下さい、私はきちんと無事に戻ってきますから!」
彼の言葉に笑顔で答え、受け取ったお守りを首から下げて懐へ仕舞い込む、それからスノーモービルを正門前まで押してから乗り込み、スロットルを回して、改めて
「行ってきます!」
「美味しい鍋、また期待してるからねー!」
「じゃあ、飛ばしていくわよ」
三人のスノーモービルは南東へと進路を向けて走り出す、その姿を村長と佐二は見送るのだがその時に
「……自分で前日に貴女のために作ったお守りだって言えないのか?」
「土壇場で小っ恥ずかしくなって」
そんな会話があったとか無かったとか。
まぁ長くてもSession10は行かないやろ!