それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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先月は【風林火山】


書道少女一〇〇式

宿舎の一室、第一部隊の部屋で【一〇〇式機関短銃】が真剣な眼差しでなにか作業を行っており、それを少し離れた所で【FAL】もそれを見ていた

 

ググッと絶妙に力を入れて慎重かつ大胆に動かしていけば筆から黒い軌跡が半紙に描かれる、彼女が今行っているのは書道、毎月ごとに、その月の指針を立てておこうと一〇〇式が始めたことである

 

今月は二枚用意するんです!と意気込み朝から始めてたこの作業も漸く終わりを告げ、フンスと満足気な顔で書き上げたそれをおかしな所などは無いかと確認していく

 

「完成したの一〇〇式?」

 

「あ、FALさん、はい完成しました、これが今月の作品です!」

 

一〇〇式の様子から完成したと判断したFALが近づき作品を見れば、そこに書いてあったのは【百発百中】と【無病息災】の四文字熟語

 

無病息災はまだいい、指揮官は人間だから病気もするかもしれないし、自分たちだって怪我とかと無縁というわけではないのでそういった意味ではこの指針はあってるだろう

 

問題は【百発百中】だ、言わんとすることはFALだって理解できる、と思っているがもしその通りだとしたら少々無理があるのではと思いつつ

 

「えっと、百発百中っていうのは?」

 

「はい、最近、私自身の実戦での命中率も気になっていましたので此処で一つ、弾を無駄にしないという意味も込めましてこの言葉にしました」

 

「……サブマシンガンとかマシンガンも?」

 

「ええ、確かに難しいかもしれませんが出来ないはずではないので!」

 

説明を終えてから鼻を鳴らし気合の入った感じの表情でFALを見つめる一〇〇式に若干固めながらも何時もの笑みを浮かび返す

 

返してはいるが現在彼女はここからどうするべきかで本気で悩んでいた、素直にそれはどうなのかと言うべきなのか、とりあえず同意して褒めてしまうべきなのかと

 

と言うかサブマシンガンやマシンガンは弾薬をバラ撒いて当てるような銃である、確かにばら撒くにしても無駄弾を撃つようなバラ撒き方は駄目だろうが彼女、一〇〇式が言う百発百中は間違いなくライフルとかの領域の話をしていると感じ取れる

 

揺れる天秤、困るFAL、尚も自信満々の表情を崩さない一〇〇式、そして結論が出た

 

「……え、ええ、良いと思うわ」

 

「ですよね!良かった、ではこれを掲示板に貼ってきますね!」

 

FAL、基本的に子供のような無邪気さを持ってる人形にはあまり強く出れない彼女は若干引き攣った笑みで褒めてあげれば一〇〇式はその目をキラキラさせて喜び、テキパキと書道道具を片付けて作品を大事に持ち部屋から掲示板に向かっていった

 

「まぁあれよね、向上心があることは良いと思うわ、ええ」

 

足から登ってきたフェレットを構いつつ、誰にでもなく呟くFAL、第一部隊の末っ子みたいな扱いの一〇〇式に何だかんだ弱いお姉ちゃんである

 

場面、掲示板に丁寧に作品を貼る一〇〇式。今月の指針と位置づけられた場所に二枚を貼ってから少し距離を離して曲がってないかなどを確認して

 

「良し、満足です」

 

「む、一〇〇式って事は今月のが出来たのかにゃ?」

 

「あ、IDWさん、はい自信作です!」

 

おお、それは見てみるにゃとIDWが見れば、彼女も固まる、FALと同じ理由だ

 

「無病息災は分かるにゃ、うん、何だかんだと皆無茶するからそういった指針は大事だにゃ」

 

「最近では指揮官も過労で倒れましたし、皆さんには身体を大事にして欲しいですからね」

 

「で、百発百中ってそういう意味にゃ?」

 

突然のIDWからの質問に小首を傾げる、百発百中の意味なんて一つしか無いのだからつまりそういう意味だと一度頷けば、マジかにゃと小さな呟きが溢れる

 

その呟きは一〇〇式にも聴こえたがどうしたのかと再度小首を傾げる、そんな様子の彼女に

 

「一〇〇式、私達の武器は理解してるにゃ?」

 

「勿論です」

 

「百発百中って意味も、まぁ理解できてるから書いたわけだとは思うにゃ、それでその二つを合わせてみるにゃ」

 

「……?」

 

本気でわからない一〇〇式、もしかしてコイツ実はアホの子なのではと仲間として数カ月ぶりに発覚した新事実に目を丸くするIDWはもう単刀直入に言ってしまおうと結論を出して

 

「弾を基本的にバラ撒く戦い方する私達が百発百中なんて出来るわけ無いにゃ」

 

「え、やれますよね」

 

「本気で言ってるのかにゃ!?」

 

IDW渾身のツッコミが響く、無理もない一〇〇式の顔は本気でそう言ってるとしか思えない表情をしているからだ。一方の一〇〇式もIDWが何を言いたいのかと思えばそんな事で少々拍子抜けだと言った感情を抱いていた

 

彼女からしてみれば、出来るできないでは無くてやらねばならないという事であり、日頃から無駄弾はしないようにと心掛けている、まぁそれでも命中率はよろしく無いので今回の指針になっているわけで

 

「資源は有限なんですよIDWさん、あるから使っていいではなくてあるからこそ大事にして行かなきゃ駄目なんです」

 

「それは分かる、非常によく分かるにゃ。そうかお前が偶に銃剣突撃するのはそういう意味だったのかにゃ」

 

「え、だって撃つより刺したほうが早くないですか?」

 

「……お、おう、そうだにゃ」

 

遂にツッコミを放棄したIDWが(形だけの)同意として頷けば、ニコニコの笑顔で掲示板の記事を見始める一〇〇式

 

大和魂って凄いにゃ、IDWは静かに悟るのであった




一〇〇式って真面目に考えた上でネジが飛んだこと言いそう、言いそうじゃない?

因みに他の国の人形が四字熟語とか分かるのかと思いますが、こう、分かるんだよ電脳は凄いからなって事で一つ

70話ですって!当初予定してた話数の十倍書き続けてる事に少し感動を覚えます、これも読者の皆様のお陰でございます故この場を借りてお礼を申し上げます、そしてこれからもこの司令部をよろしくお願いいたします

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