それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
一度目の銃声は狙撃手の男、結果は言うまでもなく一〇〇式のコアの部分に狂いなく命中し彼女は倒れた。
二発目の銃声はモシンナガン、殺さず無力化のために男の利き腕と思われる右肩を撃ち抜き、射撃の腕を封じた。
だが男は不安定になったはずの腕で三発目を撃つ、しかしそれはモシンナガンの右脇腹を撃ち抜くに留まった、これが三発の銃声の詳細である。
(クソっ)
仮に対等な状況だったら男が撃つよりも先にモシンナガンが撃ち、一〇〇式への攻撃を阻止できただろう。だが、今回はそうではない、一〇〇式の接近に気付いた時には自身は伏せており、そこから射撃体勢に入ってから狙い、銃爪を引くという3つの行動が間に存在し、対して男の方は狙い、銃爪を引くの2つの行動だけで済む。
それでも向こうが撃つのとほぼ同時に、しかも急所を避けつつも無力化出来る部位を撃てたのはモシンナガンの実力があってのことだろう、だが今の彼女にはそれはなんの慰めにもならない。
(間に合わなかった……!!)
「ククッ、残念だったなグリフィン」
男の挑発の声に射殺さん勢いの視線を向けるが向こうは聞かないとばかりに笑みを深めるだけで、意味がないとモシンナガンが思ったのか倒れている一〇〇式に向かおうと歩き出す。
村長と佐二にはなんて話せば、そんな事を思いながら重い足を進ませようとした時、ガバッとそれはもう勢いよく一〇〇式が身体を起こした、と同時に突然のことにモシンナガンは驚いてビクンッと身体を跳ねさせてしまうが
「っ!!??つぅ~!!!」
「あ、あれ、なんで倒れて、って大丈夫ですかモシンさん!?」
あまりに激痛に脇腹を抑え込んでしゃがみ込む彼女に一〇〇式がそんな事を聞いてくるが、大丈夫はこっちのセリフなんだけどと言いたいモシンナガンだが痛みが思ったよりも強く呻く声しか出ず、それを見て一〇〇式が更に慌て始める。
対して仕留めたと確信していた狙撃手の男も何事も無く動き回っている一〇〇式を見て
「なんだ、最近の人形はコアを撃ち抜いた位じゃ死なないのか?」
「へ?って誰ですかこの人!?あ、貴方は動かないで下さい、撃ちますよ!」
「いや、流石にコアを抜かれれば駄目のはずだけど」
何でこいつと普通に会話してるんだろ私と思いながらも何が起きているのは自分でも分かっていないのでつい返答してしまう。確かに彼女が撃たれた位置にコアはあり、それを撃ち抜かれたとなれば無事で済むはずがない。
だが現に今、一〇〇式は普通に動いてるし、無理をしてる様子もなく旧パラデウスの残党を所持品である縄で縛り上げている、少なくとも彼女に再起動システムやらコアが2つあるやらの話は聞いたことがない。
「(駄目だ、考えても全くわからない)ねぇ、一〇〇式、コアを撃たれたはずなのだけど、どうして無事なの?」
「コア?あ、確かにそうです、え、でも血も出てませんし……あっ」
一〇〇式も今になって疑問に思ったようで撃たれた部分を調べれば、出てきたのは任務に出る前に佐二から貰ったお守り、そしてそれが防ぐようにポロッと三八式歩兵銃の銃弾が地面に転がり、それを見ていたモシンナガンが一〇〇式が無事な理由に気づき曖昧な表情を浮かべてから
「ベッタベタな展開来たわね、流石、不殺銃」
「頭にするべきだったか」
「むむ、中に熊の頭蓋骨が、なるほどコレで助かったというわけですか」
流れる沈黙の中に響く一〇〇式のこのお守りをくれた佐二に感謝する声、この空気どうするのよと言う感じが漂う空間にまた一つ足音が届く、とは言ってもモシンナガンにはその正体は分かっていたので見てみれば予想通り、だがこの場にいる誰よりも重傷ではと思わせる姿の式自の姿。
向こうも、痛覚を遮断しているとは言えフレームにもダメージがあるために走るなどの行動ができず、この場にやっと辿り着いたという感じに息を吐きだしてから、微妙な空気になっている空間を感じて
「えっと、何この空気」
「ベタベタな展開が起きた結果かな、それよりも式自、貴女は大丈夫なの?」
「見ての通りよ、それを言うならモシンだって大丈夫とは言い難い気がするけど?」
ご尤もでと笑いつつ、この場所をP基地に報告すれば、その日の内に調査班を向かわせるとのこと、これで隠れ家と地下研究所は終わったのだが残るは残党と狙撃手の男、とは言っても残党の方は色々と喋ってもらうつもりなので基地に連行は考える必要もない、なので残りの問題は
「うーむ、すみませんが貴方は雇われですよね?」
「あぁ、ただ金で雇われただけのな」
どうやらもう抵抗するつもりはないらしいのでと一〇〇式が傷の処置をしながらもう少し詳しく聞いてみるも本当に金で雇われただけのようで、彼らがここでの目的等は知らない模様。
しかし、だからといって解放というわけにも行かないのも事実、とここでモシンナガンが何か閃いたようで一つの提案するのだがその内容に式自から出てきた言葉は
「まぁ、悪くはないんじゃないの?」
「でしょ?傭兵ってことならグリフィンで雇っちゃえばいいのよ、腕も確かだしね」
「やれやれ、まぁ金を払ってくれるなら構わないが」
「い、良いのでしょうか、まぁともかく治安維持基地に連行して式自達の修理を終えてからから集落に戻りましょうか」
こうして今回の任務は終わりを迎える、成果としては隠れ家及び地下研究所の制圧が完了、のちの調査でここでは原生生物を利用して制御可能な生物兵器と化したELIDを作ろうとしていたらしいのだが今の今まで上手く行かず、最終的にはウェンカムイと呼ばれていた個体を利用しようと捕獲。
その後はその個体で実験を繰り返すが成果が上がらない日々を過ごし、彼女たちが調査に来たという情報を狙撃手の男から報告を受け、撤収を行おうとした際にウェンカムイが脱走、そして一〇〇式達が見た通りの結末となった。
とは言ってもコレを彼女たちが知るのは後日なので今は残党の男を治安維持基地に連れていき、雇った狙撃手の男も一度P基地にて面接を行うとのことなので81式のヒポグリフに搭乗して去っていった。因みに名前は『オガタ』と名乗っているがこれは狙撃の師匠の名前らしく本名はないとか、これはまぁ余談なので置いておこう。
そして式自とモシンナガンの治療も終わり、彼女たちは集落へ帰還、村長が用意してくれたヤマシギの鍋を突きながら機密に触れない程度に今回のことを話していく、その中には当然ウェンカムイを仕留めたという話もあり
「そうか、ウェンカムイを仕留めたか」
「はい、これで少しは殺された方々の無念は晴らせたでしょうか」
「晴れただろうさ、とは言ってもこれで終わるとは行かないだろう」
「……あんな熊がまた出てくるとか考えたくないけど、出てくるんでしょうね」
それが自然と生きるということだと村長が語る、この北の大地で生きていく者達は皆、それは覚悟しており、だからこそ生きるために知恵を絞っている。
それを聞き逞しいわねと式自、そこでモシンナガンがそう言えばと一〇〇式が撃たれてだけどお守りのお陰で助かったことを話せば
「え、撃たれた!?」
「そうそう、あの時は私も焦っちゃって、だけど何事も無く起き上がってビビったわ」
「あはは、ですが小蝶辺さんから貰ったお守りのお陰で助かりました」
「私はそこに居なかったけど、相手が三八式歩兵銃だったからお守りに入ってた熊の頭蓋骨の破片に阻まれて助かったって聞いて笑っちゃったわよ」
一〇〇式がコレがそうですとお守りを取り出せば、銃弾を阻んだ部分が穴が空いており中身の厚めの頭蓋骨の破片が見えており、それを見て佐二は良かったと息を吐き出し、一〇〇式も改めて助かりましたと深々と頭を下げ、彼はイヤイヤ大袈裟だよと小っ恥ずかしそうに答える。
そんな二人のやり取りを鍋を突きながら見ていた三人は一言
「あれってやっぱりそうなの?」
「あぁ、その通りだよ」
「良いんじゃない、あ、そうだ、その流れって訳じゃないんだけど」
何かを思い出したという感じに式自が声を上げて姿勢を正す、その様子に他の面々も同じように正してから一〇〇式に向けて
「指揮官より辞令、一〇〇式にはこの集落を拠点に以後も調査任務を継続せよ。とのことよ」
「まぁ要は、今後はここの人たちと生活しつつ何かあった際に連絡、グリフィンとの窓口になってくれってことよ」
任務完了の報告をするついでにキャロルに一〇〇式の様子を語った所、本当に戻すよりもここでの活動のほうがやはり合ってるかということになり今の式自が上げた辞令になる。
「そうかい、鈴がここに残ってくれるなら大助かりなのは間違いない、そうだろ佐二」
「え、あ、あぁ助かるな」
「えっと、ではこれからもお世話になります、で良いのでしょうか?」
突如話を振られ動揺しながらも頷く佐二、その様子に何慌ててんだかと笑う村長、何故か疑問形でそんな事を言いつつもまた深々と頭を下げる一〇〇式、なんだか家族みたいなその様子に微笑ましいものを見たと食事を進める二人。
そんな感じに北の大地での物語は一度幕を閉じる……のでは少々味気ないので最後に一〇〇式のその後を短く語るとしよう。
彼女はキャロルからの辞令通りに北の大地にて調査任務を継続、自然の回復状況や密猟者の捕縛、生態系の維持などに多大に貢献、そして三年後には小蝶辺 佐二と結婚、翌年には長女を授かり、『明日子』と名付け、幸せに暮らしたとさ。
ちょっとと言うか、かなり最後はつめつめにしてしまったけどまぁエエやろ!
え、オガタなる狙撃手の男はどうしたのかって?P基地に就職してエゴールとコンビ組んでるよ(適当