それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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例えそうでなくとも、彼女は自分を許すことはない


彼女の十字架

星空がよく見える屋上、何時もならばこの時間帯に誰かが居ることはないのだが今日は珍しくM1895が柵に寄り掛かり景色を眺めていた

 

そんな彼女の手にはジッポライターと煙草の箱、ジッポライターの方は手の込んだ作りで値が張りそうな感じの物だが煙草の方は味も良くない街でも格安で買えるとりあえず吸いたいという客用の物だ

 

「……またこの日が来たのう」

 

誰に言うわけでもなく小さく呟く、その声は何処か悲しみを籠もらせているように聴こえた。箱を開け煙草を一本取り出してから咥えて慣れた手付きで火を付け、煙草から出る紫煙を吸い込み、少し味わってから吐き出す

 

味は値段通り、一度や二度ではないので既に分かってはいるのだがやはりこの味は一言

 

「不味いのじゃ、あやつはよくこんなの吸えたものじゃのう」

 

これが好きなのよ、いつかの声が彼女の頭の中に響く、あれが強がりだったのか、はたまた本気だったのか、今となっては確認のしようがないがもし本気だとしたら味覚音痴じゃったかも知れぬなと含み笑いをする

 

一本、それを吸い終えたら帰る、それがこの日の決まりなのだが今日は違った。と言うのも屋上の扉が開かれ【M16A1】が来たからだ、向こうは他に誰かいるとは思ってもなかったようで驚いたように

 

「副官?こりゃ珍しいこともあるもんだ」

 

「殆どこんな時間には此処には来ないからのう、してお主は何用、と聞くまでもないか」

 

「そりゃまぁ、こんな時間に此処での用事なんて一つさ、寧ろ副官が吸うことに驚きなんだが」

 

M16はそう言いつつM1895の隣に行き煙草に火をつける、それを横目に見つつ、M1895は呟くように

 

「この日だけじゃ……吸うのは決まってこの日だけと決めておる」

 

「何か、大事な日なのか?」

 

「わしの、前の指揮官の命日じゃ」

 

何となく予想してはいたがまさか本当とは思わなかったM16はうおっと、悪いこと聞いたなと居心地が悪そうに煙草を咥え直して景色に視線を移す

 

対してM1895はさして気にする様子もなくふぅと息を吐いてから空を見上げる、それから少ししてM16が口を開く

 

「その、一つ聞いていいか?」

 

「なんじゃ」

 

「副官はどうして指揮官の元に就こうと思ったんだ?」

 

「そりゃあ、向こうから誘われたからのう……って言っても通用せぬか」

 

だからそんな質問をしてきたのだからのう、M1895は苦笑いを浮かべつつに彼女に視線を移した時、M16は驚く、どんな時でも余裕な振る舞いであり常に自信に満ち溢れている目はその時、籠もっていたのは悲壮感、それ以外の感情がなかった

 

その反応に満足したのか微笑を浮かべ一本と決めていた煙草を二本目に火を付けてから

 

「さて、そうさな、年寄りの独り言に少し付き合ってもらおう」

 

それから語られたのは、M1895の昔、そしてM16も、それどころか副官である彼女とペルシカしか知りえない指揮官の真実、とある事件から始まった悲劇、そしてM1895が背負うべきと思っている十字架

 

それを聞いたM16に渦巻いたのは怒りと組織に対する不信、何かを堪えるように拳を握りしめ口を開く、が言葉には怒りしか乗らない

 

「それは、事実なんだよな」

 

「ああ、事実じゃ」

 

対してM1895の言葉には感情が乗らない、乗せるべき感情はとうの昔に枯れ果てたと言わんばかりの声である、彼女は言ってから煙草を咥え息を吐く、その目は先程と同じように悲しい目をしていた

 

沈黙が支配する、それほど先程の彼女の昔話が強烈で、はっきり言えば知るべきではなかったとまでM16は思った、理不尽だ、不条理だ、何故そんな事がまかり通った、湧き出てくる苛立ちを押さえつけるように煙草を咥えようとするが既に燃え尽きている、それに気付き次のを出そうとして舌打ちをする、あれが最後の一本だったらしい

 

「ほれ、全くお主が苛立ってどうする」

 

「悪い……ってまず!?」

 

「呵々、子供の小遣いで買える値段の煙草じゃぞ、味なぞ保証できるか」

 

味の悪さに驚くM16に笑うM1895、先程までの重苦しい空気が幾分かマシになる、互いに煙草を咥え一口吸ってから吐き出してM16は柵に背を預けて空を見上げて

 

「今更じゃねぇけどさ、この世界って狂ってるな」

 

「ああ、狂っとるよ……だがそれでも真っ直ぐなやつは出てくるものじゃ」

 

「だけど、そういう奴はスグに死ぬ」

 

それもまた真理じゃな、今度は感情が乗った声でM1895が答える、それから申し訳なさそうに

 

「すまぬな、あまりにつまらぬ昔話じゃった」

 

「馬鹿言うな、聞けてよかったよ。副官、あんたもデカイもん抱え込んでたんだな」

 

「あやつの今までの境遇よりはマシじゃ、わしはただ約束を果たしてるに過ぎん」

 

約束、ね。M1895はそう言っているがM16には呪いに近いものに感じた、それを果たすためにこの見た目小さな副官はその全てを捧げているように見えた

 

だが、だからといってM16が止めれるわけでも、掛ける言葉がある訳でもない、もはや手遅れなのだ、もしどうにか出来るならそれこそタイムマシンでも無ければ無理だろう

 

「……ままならないな、ったく」

 

「ふん、この世界、ままなった試しがあるものか」

 

副官が言うと重さが半端ないですわと脱力気味に言えば、経験者だからのうと得意げに笑うM1895、数分後M16は煙草を吸い終えるとそろそろ戻ると一言告げ屋上から去ろうとする、そして去り際

 

「……副官、この事は指揮官は」

 

「知ってるはずなかろう、知ったところでどうしようもないしな、分かっとるよな」

 

「はいはい、言える訳が無いさ、こんなの知らないならそれでいい、特に指揮官はな」

 

じゃあなと扉が閉まりM16の姿が無くなる、それを確認してからどうせ二本吸ったんじゃと三本目に火を付け

 

「じゃが、いずれは言わねばな……」

 

お主の母親はわしが殺したも同然だということをな。懺悔にも似た呟きは夜空に吸い込まれ、煙草の紫煙がゆっくりと立ち込めていた




十字架の内容とか昔に何があったかはまた別のお話で、いつかになるかは分かりませんが、少なくとも100話までにはそれらしい話を書くと思います

最後、わしが殺したも同然と言ってますがまぁその辺りはよくある後悔の所です、何時だったか抱え込んで壊れるなって話をしたのはこの過去から来てます

フライングぶっちゃけすれば鉄血とグリフィンが悪いよって話になる(定例)(いつもの)(この世界なら大丈夫とでも?)

それはそれとしてM16姉貴が本当に煙草吸ってるか分からない、この司令部では吸ってるって事で(震え声

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