それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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たった一つの後悔、誰もが仕方ないと言えどそれを彼女は引きずり続ける


追憶

入浴後、珍しくM1895から今夜話があるから自室に来るように言われていた指揮官は扉をノックすれば少し間が空いてから

 

「開いとるぞ」

 

「失礼するよ、それで話って?」

 

「まぁ、とりあえず座ると良い、長くなるからの」

 

普段と様子が違うM1895を不思議に思いながら座り彼女が差し出したコーヒーを受け取る、それからM1895は椅子に腰掛けて息を吐く

 

「おばあちゃん?」

 

「分かっとる、話というのはな……お主の母親のことじゃ」

 

突如出された母親と言う単語に、指揮官は不思議と動揺が無かった、と言うより響かないといったほうが正しいかもしれない

 

その反応にやはりか、と分かっていたかのように呟けばコーヒーを一口飲む

 

「えっと、うん、あれ、お母さんのことだよね」

 

「記憶にも無いというのならばその反応は仕方あるまい」

 

「でも、それがどうしたの?」

 

それ、そう言葉が出てしまうことにM1895の顔が後悔で歪んでしまう、だが直ぐにいつもの表情に戻して

 

「何、記憶がなくとも母親の最後は聞いておくべきじゃろうと思ってな、と言うのも」

 

先程まで響かなかったM1895の言葉、だが次の言葉には指揮官は動揺を見せた、神妙な顔つきで彼女はこう告げる

 

「お主の母親であり、わしの前の指揮官だったあやつは、わしが殺したも同然なのじゃ」

 

「……え?」

 

これより語られるはM1895の過去、彼女の初めての指揮官、彼女との追憶の話

 

M1895が彼女の下に配属されたのは製造されて間もない頃、出会った当初の印象としてはこの世界でよくまぁ曲がらずに生きれたものじゃ、だったそれほど彼女は正義感が強く、弱きを助け強きを挫くを地で行くような人間だった

 

それでいて正規軍上がりだったらしく腕っぷしも強くまた諜報活動も得意というハイスペックであり性格も良好と非の打ち所がない存在であり、これにはM1895もわし必要なのかと思わざる負えなかった

 

逆に言えば何故そんな人間がグリフィンに居るのかと聞いてみれば

 

「子供が居るのよ、ほら可愛いでしょ?」

 

「ああ、わかったわかった、それとグリフィンが何の関係があるのじゃ」

 

「ここなら街が近い司令部だしあの子も預けられる場所があるから、それにクルーガーに誘われてたのもあってね」

 

彼女は既婚者で娘が一人居た、だが夫とは死別してるらしく女手一つ育てるとなるとこっちの方が融通がきいたのでグリフィンに来たと笑いながら話す、因みにだがかなりの親バカであり事あることにM1895に写真を見せては彼女を困らせていた

 

仕事も早い彼女は何時も定時には業務を終え、娘を向かいに行き親子で遊んだり、時たまM1895も巻き込まれたりもした、そうやって時が過ぎ彼女とM1895は無二のパートナーといった信頼関係になりグリフィンでも有名になりだした頃、彼女が今日まで後悔し続ける事件が起きた

 

何時も通りに業務を終えて帰ったはずの指揮官から通信が鳴り出てみれば彼女らしくないほど焦燥した声、とにかく落ち着かせ何があったかと聞いてみればM1895も驚くことを言われる

 

「子供が、家に居ないじゃと?」

 

その日は何時も預けている場所が駄目で、仕方がないので家で留守番をさせていた、彼女の子供は非常にしっかりしていたのは知ってるし親が帰ってくるまで外に出たり誰かが来たからと玄関を開けるとは思えない、が帰ってみれば家はもぬけの殻

 

直ぐに手が空いてる人形も動員して街中を探すが一切の手がかりはなく、一旦彼女と合流したM1895が見たのは平時の彼女の面影は殆ど見られない深刻な顔の彼女だった

 

「すまぬ、こちらも手がかりはない……」

 

「大丈夫、ナガンが悪いわけじゃないから、町の人達も見てないっていうことは玄関先で攫われた?」

 

「誘拐と言いたいのか、確かに最近ここらで多いとは聞いとるが、指揮官、あまり思い詰めるな」

 

「心配してくれるの?大丈夫だって、こっちも友人達に声かけて情報集めてもらう、今日は一旦解散しよう、明日ね」

 

「そうじゃな、では明日な」

 

その日は解散したが事件が起きた翌日から彼女に異変が見られた、しきりに何処かに通信を取り、業務を終えてからは家に帰らずグリフィン本部に向かってはデータベースに入り浸り、街では情報を集めたり、とにかく休まずに娘の手がかりを集め続けていた

 

「……指揮官、お主本当に無理してはおらんな?子供が心配なのは理解できるがだからといってお主が無理して倒れたなぞ笑えんからな」

 

「ん、平気平気、でもそうだねちょっと休まないといけないか」

 

グッと体を伸ばす彼女を本当に理解しとるのかと言う視線を送るM1895に心配性なお婆ちゃんだなぁと笑う、笑えるなら平気かと仕事に視線を戻すが、その一瞬、彼女が笑みの中に陰りのあるものを見せたことM1895は見逃した

 

その日も業務を終えた彼女が執務室を出ようとした時、やはり心配になったM1895は再度

 

「休めよ、子供の安否は気になるとは思うが」

 

「もう本当に心配性だな、大丈夫だってそれに私の娘よ?簡単に死んだりするものか、じゃ『明日』ね」

 

「……ああ、『明日』な」

 

それだけ言って二人は別れる、だがM1895はこの行動を後悔する、もっと釘を差すべきだった、何だったら共に帰るべきだった、彼女を一人にするべきではなかったと

 

彼女が帰ってからふと、机を見れば何時も大事にしてるペンダントが置きっぱなしだった、何やっとるのじゃあやつはと思いつつ疑問に思う、いつも肌身離さず付けてたこれをなぜ外したと、それから急激に彼女の中に嫌な予感が増幅し気付けば駆け出していた

 

(なんじゃこの予感、指揮官に何かがあった!?)

 

消えない嫌な予感を胸に数分、彼女の家が見えノックも何もせずにバンッ!!と扉を開け室内に入ればM1895は言葉に詰まる、そこには

 

「な、ナガン……?」

 

「指揮……官?」

 

壁に寄り掛かりながら座り込み腹部からもはや致死量の血を流した指揮官の姿、虫の息の彼女はM1895に気付くと申し訳なさそう笑う

 

それを見て我に返るM1895、直ぐに彼女に駆け寄り血に汚れることも気にせず怪我の具合を見るが

 

「(貫通しとる、致命傷は避けとるがこれでは……!)何があった指揮官!!」

 

「はは、ちょっと深追いが……過ぎちゃって」

 

深追い、そこで今までの指揮官の行動が彼女の中で繋がった、同時に怒りが溢れ出る

 

「馬鹿者!!何故一人で、いや、なぜそれらを相手にした!!」

 

「ごめん、でもあの娘が、ゴフッ」

 

「喋るな!くそ、直ぐに医者を……」

 

兎に角彼女の治療が先だと通信機に手を掛けた時、その手を指揮官が止める、その目は諦めが籠もっていた

 

既に助からないと分かっているのだ、そんな事M1895だって分かるだが、だからと言って諦められるかと言葉にしようとした時

 

「ナガン、一ついい、かな」

 

「やめろ、聞かんぞ、わしは聞かんからな」

 

子供のように顔を振り、今にも泣きそうな目で指揮官を見つつそう告げる、そんな彼女に優しく微笑みながら

 

「あの娘は生きてる、だからさ」

 

「聞かんと言ってるじゃろ!!まだ諦めるな、助かるはずじゃ!」

 

「会えたら……」

 

よろしくお願いね、ナガン。M1895の頬に手を添えニコリと笑いそう告げ、次の時、ストンと手が力なく落ちた

 

状況が飲み込めないM1895はただ徐々に冷たくなる彼女の手を握り、身体を揺すり何度も呼んだ、叫んだ、だが答えが、声が返ってくることはなく、彼女の慟哭だけがその場に響いた




(やっべ、詰め込みすぎて思ったより話進まんかった……)

もう少し、真面目が続くんじゃよ(精神消耗7割)

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