それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
指揮官を自室に戻し、煙草とジッポライターを手に屋上に出たM1895、命日でしか吸わないと決めているのだが今日はまぁ特別じゃと誰にでもなく言い訳をしつつ定位置に向かい柵に寄り掛かり空を見上げる
満面の星空、その中に司令部を照らすように浮かんでいる月、世界が人類が滅びの一途を向かっていようがそれは変わらず浮かんでいる
「……綺麗じゃな」
満月、にはおよそ数日足りない月だがそれでもはっきりと見え仄かな光を放つ月は見ているものを落ち着かせ、思わずM1895はそう呟いた
それからいつものようにタバコを加えて火を付け一服、値段通りの相も変わらずな味、だが今日はそれが不思議と美味く感じれた
「指揮官は、確かにお主の娘じゃよ。記憶がなくともあやつはお主の血をしっかりと受け継いでおるよ」
じゃがまぁ、孫の顔は難しいじゃろうなぁと苦笑いを浮かべながら空に向かって呟きながら報告する。それは今までは決して行わなかった事、したら翌日に指揮官を前にしたら平静を装う事ができないと思っていたからだ
だけど今日、指揮官に過去を話し、荷物を分け合い、軽くなった身であるならばこうして話しても問題ないだろうと屋上に来たのであった
彼女の娘の今まで、どの様な生活、成長、そういった今まで彼女に報告できなかった事柄を洗いざらい喋っていく、これがあの世に届く、なんてオカルトを人形である自分が語るとは何とも滑稽だと途中笑うが自嘲と言う感じではなくこれもお主の娘のせいじゃぞと言う感じの冗談混じりの笑いである
「まぁ、こんな所か。とにかく心配するな、あやつはわしがしっかりと支え成長を見届けよう、幸いわしはまだ前線を張るつもりじゃからのう」
目を閉じ微笑みながらそう告げ、タバコを加え吐き出す、吐き出された紫煙はゆっくりと空へと漂いながら昇っていく、そのタイミングでフラッと影が現れる、気配はなく突然現れたそれにM1895は特に驚く様子もなく寧ろ呆れるようにため息をついてから
「居たのならば、最初から出てくればよかったので無いか【Vector】?」
「貴女と彼女のやり取りを邪魔する程、無粋な存在になったつもりはないわ」
「なんじゃ、お主が変に真面目じゃと調子が狂うな」
現れた影はVector、神出鬼没であり出てきては良く分からないキャラで場をかき乱しては消える彼女、だが今しがた出てきた彼女が纏う雰囲気はいつものそれではなく任務中のしかも戦闘中の彼女、要は真面目な状態だ
「で、何のようじゃ?」
「そうね、月が綺麗だったから一服『つき』合おうってね、一本貰える?」
「……やはりお主の考えはよく分からぬ、まぁ、良いがほれ、味は期待するな」
ありがとと受け取り火を貰って軽く吸って吐き出す、M16の反応から相当不味いはずのそれだが彼女は顔色一つ変えずに柵に寄り掛かり景色を眺める
「反応無しとは、つまらんのう、それともそれが美味いとでも言う口か?」
「いいえ、酷く不味いわよ、でもこれはこれで悪くないものと感じた、それだけよ」
妙に真面目な空気のVectorに何かを気付いたM1895は体制を柵を背に寄りかかる形に変えて
「その様子じゃとわしが指揮官に母親のことを話したことを知っておるな?」
「ええ、部屋の前で聞いてたわ、でも私のことは話さなかったのね」
「言った所で意味がないからのう、お主はただ雇い主からの命令を遂行しただけじゃ」
「それでも、私が手を掛けたことには変わりないわ」
タバコを加え自身の右手を見つめそれから左頬を撫でる、そこには一筋の切り傷、普段は化粧で隠しているそれは指揮官の母親を暗殺した時に彼女からの反撃で付けられたもの
「消さぬのかそれ」
「人間に付けられた唯一の傷、これは忘れてはならないから」
目を閉じ当時を思い出すVector、彼女はグリフィンや鉄血、どちらかの所属ではなく報酬さえ積まれれば如何なる暗殺も行っていた今は記録すら存在しない組織の人形であり指揮官の母親の殺害も組織からの命令であった、内容はシンプルに彼女は知りすぎ更に鉄血グリフィン双方にダメージを与えかねない証拠も握った、故に消せというもの
そして決行日、ターゲットである彼女が帰宅した瞬間、既に潜んでいたVectorが音もなく現れ右手をその腹部へと貫こうとするが
刹那、気配も完全に殺していた彼女に気付き即座に振り向いてナイフを振るう、Vectorもそれには驚いたが勢いは殺さず最低限の回避を加えつつ、そして
「っ!!ゴッフ……くそ、衰え、たなぁ」
「あれで衰えた?そう、やはり殺すには惜しいほど優秀ね……だがその愚かな好奇を、恨む事ね」
Vectorの右手は彼女の腹部を完全に捉え、一撃で屠るはずだった、だが彼女はナイフが左頬を掠る程度だと即座に判断すると身体を捻り致命傷を避けた、それは人間であるはずの彼女が見せた人形である自分をも超える反応速度
お蔭で一撃にはならなかった、更に今まで傷一つ付けられずに始末していたVectorの左頬には深くはないがかと言って浅くもない一筋の傷が浮かび、Vectorは貫いた右手を引き抜きつつ称賛の意込めてそう言葉を彼女に投げかける
「好奇じゃ……ないさ」
「では、何だというの?」
「娘を取り戻そうとした、だけ……よ」
「そう、だとしたら相手が悪かったわね」
Vectorはそれだけを聞いてから興味が失せたかのように命令通り証拠を全て処理して消えるように去っていった。それから組織は鉄血が壊滅したと同時に存在を消して、Vectorはグリフィンに保護される形で生き残ることになる
後にその娘が指揮官をしていると聞きVectorはこの司令部に来たのだがその時はその時でM1895と軽く一悶着あったのだが双方それは割りとどうでもいいと思ってることなので割愛
思い出から意識を戻せば煙草は殆ど燃え尽きていた、勿体無いなと思いつつそれをしっかりと処理して
「戻るわ、煙草ありがと」
「構わぬよ、わしはもう一本吸ってから戻るのじゃ」
吸いすぎないようにと一つ忠告を付けてから彼女は屋上を出る。一人残ったM1895は箱から一本出そうとして……深く溜息をついた
「まさかだと思うが、あやつあれが最後の一本だと知っておった訳ではあるまいな」
居ないはずのVectorのふふっと言う何時もの笑い声が聞こえたような気がした。
「ま、今日はもう寝ろって事じゃろな。ではな、次会う時はそうじゃな……あやつも連れてきてやろう」
まぁ、何を語るかは知らぬがなと空に向け呟いてからM1895も屋上から出ようと扉を開けた時
「娘を頼んだよ、ナガン」
居ないはずの、そして聞こえるはずのないそんな声がした、一瞬驚くM1895、だが直ぐにそれに答えるように軽く右手を上げ振ってから扉を締めた
くぅつか、これにて一旦はシリアスみたいな話お終いです、暫くはまたほのぼのだよ、次どうすっかなぁ、あとVector姉貴のこの過去話は別段必要じゃなかったなこれ……
Vector時計塔モードは銃を撃つより本体性能生かし接近して内蔵致命するヤーナム狩人系人形。銃はあくまで牽制とか言い出しちゃう今作品一番の改変のされ方をしてるけど許して?
25歳児が便利キャラ過ぎてIDWと同じくらいに出演数増えそうだなこれ