たゆう煙が薄くなり消える。赤い布で整えられた長椅子に男は座っていた。
「ほらよ、三色三本にみたらしい二本。いつも毎度あり」
「いつも世話になってるぞ、女将」
「やだよしてくれよ。あんたにそんなこと言われたら気味悪いったらありゃしない」
「長生きしてくれよ。この団子が消えたら寂しいからな」
「もう、そんなこと言っても何もやらないからね」
団子が五本乗った皿を隣に置くと、女将はお盆を持って店へと消えた。湯気がたった湯呑みを見ると茶柱が一本立っている。
「ーー一本、貰っていいかしら?」
「良いぞ」
「ありがと」
吸っていた煙管をひっくり返し、地面に灰を落とした。火種が消えるよう足で砂へと埋める。懐に戻すと、四本残った団子からみたらしを一本取った。
「紫から聞いたわ。あなたのこと」
「そうか」
「ええ。人間と暮らしていた変な奴だ、ってね」
「なるほどなぁ、八雲……。どう思った」
「別に。私も神社に鬼やら仙人、胡散臭い妖怪がいるのにどうも思わないわよ」
視界の先には寺子屋に行く途中なのか、子供たちが数人で歩いていた。どうやら日和の隣人に気付いたらしく大きく手を振っている。膝に肘をついて横を見て見ると絵に描いたような笑顔で振り返していた。
「……あなたはあなたなりに人と妖怪のことを考えてくれた」
「まぁ、そうさな」
「ご馳走さま。またたかりにくるわ」
傲慢に一度も口をつけていない茶も飲み干すと席を立った。
「ーー任せなさい。
「かかか、そりゃあ安心だ」
里に奇妙な妖がいた。
男は紺色の羽織にいつも首に高山笠をかけ、煙管を蒸かしながら歩いていた。それの風来坊姿から最初は流れの人間だと思われていたが、ついぞ妖者だとばれてしまう。だの里人は男を避けられる事なくまるで同じ人間だと言わんだけに笑い合った。水場に寄るので女と世間話を、酒を交わすので男と笑い合った。
しかし里人には知らないことがあった。男が何の妖かである。角が無いので鬼とは言えなく、羽が無いので天狗とも言えい。それでも皿があるかと問われるなら河童ではないのだろう。里人は言った、男は男。妖からもつままれたおかしなお方なのだろうと。なんとなく酒の席で話を男に伝えられると、男もそうだと言って笑った。男は妖だの好きなのは人間だ。人間が笑って騒いでいるのを見る、鼻摘まれ者なんだ。
月が明るく薄騒めく、雲間に妖が行く。かつて船頭に立ち舵を取った男はもういい。何は、
今は昔の百鬼夜行
で、あるからだ。
やっとこさ最終話を迎えました。なんというか、自身で終わった感がありません。その理由は書きたいことがまだまだあったため、弾丸が尽きていないからでしょう。
私はssを書く際、既存キャラや主人公との絡みに「言わせたい言葉」をメモって使おうと思ってるんですが、実はそれがまだ半分残っています。まだまだ書きたりない、お読みくださった方々が煮え切らない部分はおありと思いますが、補填も兼ねて後日解説を含めた登場人物解説を投稿します。むろん、追加設定等々は無いのでお読みならなくて大丈夫です。あの陰陽師は誰だぁとか、紫とはどれくらいの仲だぁとか気になる方はお読みくださるとありがたいです。
そこを描写しなきゃならねえだろぉ! っとおっしゃり私も思いますが、ここで最終とさせていただきます。
改めてまして。
お読みいただき、感想をくださりありがとうございます。
【神の筍の次回作にご期待くださいッ!】←一回言ってみたかった。
東方獣っ娘'sといちゃこらする惚けssでも書こうかな。どうしよう。