念獣?神様?それとも稲荷?な御狐様奇譚   作:弥生月 霊華

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探索其の四 御狐様と蒼き影

(新年早々、血腥い物を見た)

 

血の海と形容できる光景と、今は懐かしいとも感じるジャポンの門松が同じ空間に存在しているという事自体が嫌な事であり、別に血の海事態は見慣れているしどうでも良い。ただ問題は、門松が血で汚れているという事。

 

(影と言ったか?協会が発足されてから変なのしか生まれないな)

 

手を下したのは影と言われたハンター協会裏の顔、つまりは汚れ役と言ったものだ。今回御狐様が目にしたのは、所謂お掃除後。変なのと言い切った御狐様も十分変なのだが、今はその話は関係ないので置いておこう。

 

「そこに居る奴!何者だ!」

 

後ろから声をかけられて、御狐様は振り合える事も無く気配を感じなかった事への違和感による思考を開始する。並行して、この状況を打開する解決策を練る。正直言って、無理やり逃げようと思えばできるのが恐ろしい。今更ながら、御狐様も死者の念に分類できるため、チート過ぎるがバトル漫画のお約束として一回死んだモノは総じて強いのだ。

 

「怪しい者では無い。ただの通りすがりの旅人じゃ」

 

絶対にこんな言葉では騙されてはくれないと思うが、言わないよりもましだ。

 

「有り得ないな、お前は、、言うなら化け物だ!」

 

(化け物、間違ってはいないが)

 

やっぱり気分が悪い、仕方ないだろう。念獣にも似つかない、未練が凝り固まった死後の念獣でもない、化け物。負の感情で出来た未練じゃない、善の方向で出来た未練の凝り固まった化け物。本来なら有り得ない、何故なら人間は負の感情と善の感情のどちらかでも欠けたら壊れてしまう生物だから。それに加え、執着が無ければ成りえない、そして執着は負の感情に属するからだ。

ある意味、影と一番近くて根本が違うともいえるかもしれない。

 

「間違っては無い、けどお主らに被害を与える気はない」

 

(今の所は、な)

 

後ろに銃を突き付けられたまま、相手の顔も知らないままで御狐様は相手に脅しをかけていく。威圧のある声は2000年来のモノなので、流石の貫録だ。相手もたじたじになってしまっている。

 

「その証拠がどこにある!?」

 

「無いな。けれど、我らには我らなりのルールと言うモノがある。仕方なかろう」

 

ハッタリだ、けれどそれを悟らせるほど、御狐様は耄碌していない。虚偽の威勢を張り巡らせた相手は、声からして女性らしい。女性戦士、かっこいいと思うし御狐様も今では女性の形をしているので何か言う気も無いが、珍しい事この上ない。

 

「まぁ、兎に角銃を下ろせ。さもなくばその手ごと、、いや、面倒だ」

 

一度言葉を止めた御狐様が言った事は、正直死刑宣告と等しい物がある。それが愛おしければ生かし、必要無ければ殺す。それは何時の世だろうがかわることは無い。

 

「ヒィ!」

 

面倒だから、そんな理由で人の腕を切り落とそうとするのは、神の所業では無い。と、この国の民は言うだろう。されど、彼女が生まれたジャポンでは、そうであれと望まれた。祟り神として、人の事を思い天罰を下す恐ろしくも慈愛深きモノ。まぁ、狐のイメージが加算されている時点で性格はズル賢く気まぐれに成るのだが。

それでも気分を損ねない様に人は彼女らと付き合ってきたのだ。

 

ガキンッ!

 

そんな音がした。爪を突き立てようとした銃を持つ腕に、結界のようなモノが張られていた。女性の怯えた表情から察するに彼女が張ったモノではないらしい。

 

(わらわ)の使いに触れるで無い」

 

煌びやかなドレスを着た、見るからに冷酷な眼つきをした女性。纏っている物は、銃を向けた女性と同じ、否、それ以上に禍々しいオーラの様な物だった。

 

(同類、この女性は神童では無い様じゃな。なれば、《神》では無いだけか)

 

失礼したと言いながら、結界に阻まれて少し煤の付いた手を、御狐様は右手で労わる様に撫で回復させる。突然現れた。

 

「汝何者じゃ?我は東洋の島国の稲荷狐なりて」

 

銃を向けた女性の意識を飛ばした、神では無いモノに向かって御狐様は聞く。

 

「妾は、夜叉。ヤクシニーとも称される財宝の神の使い。だが、主はとうに」

 

(そうか、我と同じように___)

 

きっと夜叉の主は、御狐様の様には行かなかったのだろう。それがきっと人に、万人に必要とされなくなった神の末路だったのだろう。夜叉と名乗ったお使い様?に同情を向けるでも無く安堵のため息を付く。こういう、自分と同じ輩にはこのように本心で接した方が良いと解っているためだ。

 

「夜叉、鬼の総称じゃな。お主が今存在すはそれ故か」

 

「妾とて、望んだわけでは無い」

 

「同意、されどお主は人に必要とされているだろう?」

 

所で皆様、現在の状況を覚えてだろうか?路地裏の血の海に、和装した狐の耳と尾の付いた金髪の女性と、大柄な黒いマントを着用する女性をちょっと小柄な蒼系統のドレスを着た女性が支えているのだ。そして、気絶しているその女性は銃を手に握ったまま。シリアスをする前に移動した方が良いと思われるのだが。

 

「悪くはない」

 

そう言って名も知れぬ彼女、影と呼ばれる一族の一員を抱えて何処かに立ち去ろうとする夜叉。

 

「これから先、生まれるかも定かではないが、我の神童には手を出すな」

 

腐っても祟り神、そして御狐様はまだ腐っていない。逆鱗に触れでもしたら土砂崩れが起きるとまで言われた彼女が本気で怒るとどうなるのか、それはまだ本人でさえ知る由も無い。

 

「善処する」

 

言い残して、血の足跡を残しながら歩き去った夜叉だった。

 

(当分、作る予定はないがな)

 

この事件から、丸々二百年が経過した後に、森の中でひっそりと暮らしている一族の子供二人が神童になるとは思いもしなかった御狐様は思うのでした。(御狐様の当分=1000年位)

 






次回予告!

ようやくキリスト郷を見つけた御狐様。彼と語り合うは自らの思想と民の望み、そして宗教間の違い。そして、自立した御狐様に語る、誰にも言えないキリストの本音(妄想です。あくまでこの世界観でのことです。事実の聖書などとは全く関係ありません。名前が同じだけの全く違う人物だとお考えください)
因みに、捜索章最終回です。

次々回、次々々回予告。

前々から散々言っていた、悪魔が生まれるまでの話です。リアルに土下座して、婆ちゃんに心配されました。
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