念獣?神様?それとも稲荷?な御狐様奇譚   作:弥生月 霊華

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因果の序章後編 御狐様と悪魔の誕生

悪魔と形容するは、その頭から生えた禍々しい二本の角。本来人間ならば有り得ない悪魔の尾。そして背から生える羽。人間としての特徴にそれらが組み合わさっていて、それでも違和感が無いのは、偏に緋色に染まっている目のおかげだろう。

 

「同類、と言うべきか。言葉は解るか?」

 

一応理性が有るかの確認として声をかけた。御狐様は自分と同じ存在である悪魔が具現化された事に事に喜んでいた。しかし、悪魔は依然としてこちらを警戒しているようで、オーラを集中させている爪先を構えている。とても理性が有るようには見えなかった。

 

(何故じゃ?役目が解らぬゆえか?それとも悪魔とはこの様なイメージしか持たれていないのか?)

 

御狐様は考えた。様々な要因を。理性を持っているならこんな事はしないはず。ならばなぜ?それが悪魔たる所以とはとても考えられなかった。振りかぶる事も無く、奇襲に失敗した悪魔は御狐様をただ睨んでいた。そうして時が過ぎるうちに、御狐様は一つの答えを導き出した。それは、

 

「お主、パイロか?」

 

何となく、名前かも知れない単語をいう事。それがもし本当に悪魔を形作る思念(オーラ)の一人格だったらそれが主人格となるかもしれなかったからだ。もしそうでなければ、彼らが持つ≪パイロ≫へのイメージが悪魔の自我に成る。その二つに一つだった。もしもこれでだめならば、きっと何をしてもだめだろうと踏んでいた御狐様は構えた。

 

しかし、そんな心配はするまでも無かった。悪魔は、≪彼≫は少なくとも御狐様の神童だった面影の残る人物に変化して意識を失った。

 

(あの時の童、か)

 

もしも予想が外れたら、なんてことは無かっただろう。悪魔は殺されたクルタ族と呼ばれる民族の怨念と≪クルタ族の印象(緋目の悪魔)≫の寄せ集め。そうと決まれば名前を付ければそれは御狐様と同じように意思を持つ事が出来る。御狐様もそうだった。

最後、と言うか良く遊び?に来てた時よりも大きくなったパイロ?の顔を見て、それとはかなり不釣り合いに取れる悪魔の特色を見る。何よりも先に状況説明しないといけないこの光景を見て、御狐様はため息をついた。

彼が横たわっているところは、まさに血の海と形容できる場所。見回せば死体の確認もできるだろう。

 

「うう、」

 

意識を失ったのは一時的な物らしく、彼は呻いて体を起こす。そして目を開いて、絶叫した。声に成らない叫びで、それはそれは悲痛な叫びだった。

 

「あああぁぁぁぁぁああッ!ッあああ!」

 

絞り出すような声で、阿吽の混じった叫び。彼には意味が解らないだろう。目が見える事。それは緋色の視界な事。殺されたはずなのに生きている事。そして何よりも、、

 

 

 

自分が悪魔だという事を、本能が痛感させる事。

 

「大丈夫か?」

 

人が殺されたり苦しんだとしても哀れだとしか思えない御狐様でさえ、そう声をかける程度には。彼の目には見えていた。彼女が、幼い頃に遊んで?いた大狐だという事実が。

 

「はぁ、はぁッ」

 

うずくまってのたうち回って、そして方で息をする。その内に落ち着いてきたのか、ようやく彼は自分で立った。

 

「自分の事、解るか?」

 

文章に成らない言葉で、御狐様は聞く。そして、彼はそれに答えた。

 

「悪魔だと、いう事なら。名前は、……パイロ」

 

まだ頭が痛むのか、頭部を左手で抑えながら彼は彼女に目を合わせた。

 

「自分の正体、と言うか成り立ちは?」

 

彼は聡明だから、それが単に両親の事を聞いている訳では無い事くらい理解できた。今どうして存在できているのか理由を問うている事くらい、簡単に理解できてしまった。

 

「解り、ません」

 

「そうか、まぁ座れ。まず基本から教えてやる」

 

御狐様が行っているのは、所謂チュートリアル。まずは念の基本や、それらが生命エネルギーであること、そして制約と誓約。更には死後の念の事まで、つまりは一般のハンターに知られている事を教えた。

 

「……、と、ここまではいいか?」

 

「はい、それが有ってようやくハンターに成れるという事は」

 

そして次に説明すべきは、

 

「次に我らの事じゃ。先ほど職人なんかが集中して作った名作にはオーラが籠るといったろう。その意味が解るか?」

 

「オーラに目覚めていない人でもそれを扱う事は出来る」

 

「さよう。そして死後の念は除念が難しく、とても強い物だとも言った。つまり、お前は悪魔と言う人のイメー

ジや概念と、そこらに散らばる人間の死後の念(死霊)が合わさって出来た物だ」

 

彼の脳内で響くのは、緋の目に成ったクラピカを見て言われた、悪魔と言う罵り。耳に間違いが無ければ、石を投げつけられていたのだろう。無意識に握り拳を作り歯を食いしばっている。

 

「我はそれとは違うがな、何百年も同じモノに念を送られたらこうなる。……お主らも長い事悪魔と呼ばれ忌み嫌われていたのだろう?」

 

裏切られた事に対する恨みはなかった。ただ、彼にとって理不尽な行為は、彼にとって悲しみしか生み出さなかった。

 

「我は神と呼ばれ、そう有る様に望まれた。故に人に飴と鞭を与える。反対に、お主はこれから人を貶め、呪う行為を生業とせねばならぬ」

 

彼も、ハンターとして活躍したかった。幼馴染と共に、冒険や発掘、希少生物の保護をしていきたかった。人に誇れるように成りたかったのに、突きつけられるは反対の事。

見かねた御狐様は助け舟を出す。

 

「悪魔はな、時には神よりも必要とされる。その悪魔としての力の活かし様によっては、人も救えるさ」

それでも俯いて黙り込む彼に、御狐様はもう一度ため息をついた。

 

(ここまでか、成ればもう用は)

 

そう思いながら立ち上がった所で、パイロから待ったがかかる。

 

「人に化ける方法は有りますか?」

合いも変わらず俯いたままだが、その声には確かに意思が有った。そうなりたいと願う、断固たる意志が。

 

「有る。そう思うだけじゃ」

 

そう言うと実行したのか、彼の角や羽、尾が消えていく。目の色もこげ茶色へと変化した。

 

「僕は、生きなきゃいけない。僕には、まだやるべきことが有るから」

 

言葉の裏に、その為なら何でもすると感じ取れた。それほどまでに、慈愛に満ちた悲しげな眼をしていたのだ。その目を、顔を、決意を、御狐様は面白いと、美しいと思った。

 

「やるべき事を終えたら?」

 

「……どうしましょうね」

 

意地の悪い質問にも、困った笑いで返す彼には、何を言っても変わらないのだと思った。悪魔として生きる事、それはとっても暗い道に成るだろう。その中で彼が今の様に人を愛し、笑えるのかが気になった。

 

「まぁ、片割れに姿を見せるのは彼が念を取得してからの方が良い」

 

 

死後の念や、人のイメージするその≪思い≫が尽きない限り存在し続けなくてはならない、ナラズモノと成った彼に突きつけられたその永遠に近い時間。彼女は元からそう望まれたし、そうあるのが当たり前と思ってきた。それが通じない事に絶望するのだと、彼は悟っているだろう。それでも、今存在する理由として、絶対に生きている(何時か死ぬ)親友をあてがうのだった。

 

「ではこれでな、退治されぬよう気を付けろ」

 

「そちらこそ、お元気で」

 

元気も何もないだろうと思いながら、御狐様は本性で森から人型で出ていく彼を見送ったのだった。





段々ご都合主義が入ってきましたが、それも次回で消えます。ここまでが前提で、ようやく書きたかった所か書けます。

主人公が念を取得するまではシリアスやっている隣で場の雰囲気をぶっ壊す発言を連発(主人公達には聞こえない)していきます。

次話は普通に人外の登場人物まとめです。登場予定のキャラもまとめて紹介するので、その中に入っている以外で増やす予定は有りません。
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