念獣?神様?それとも稲荷?な御狐様奇譚   作:弥生月 霊華

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因果其の二 御狐様のかくれんぼ

試験会場にて、ゴン達が来る前の話。

 

キルアの見守りを任されたパイロは、付いてきた先で念能力者に見つからない様に息を潜めながら彼を見守っていた。見た限りでは現段階で使える人は試験管除き一人だけ。しかし、その一人がとんでもなくやばそうと言うのは、悪魔と言う種族柄いやでも伝わって来たのだった。

 

(ああ~、安請負しちゃったかなぁ)

 

御狐様と知り合いだと言う先輩に、命に関わらない様にとのことで任された見守りは、どうやら思ったよりもはるかにハードモードだったようだ。

 

(羽とか、しまっておいた方が良いのかな?でも見られた=ばれたじゃないし、でも雰囲気とかオーラで解るし)

 

きっと読者ならお分かりだろう。某道化師の恰好をした変態のせいで内心、テンパりまくりである。この後、御狐様が来るまでずっと緊張感が抜けなかったのは言うまでも無いだろう。来なければどうなっていた事か。

 

 

________

 

 

チーン!

 

エレベーターの到着する音が響いて、平均年齢を大きく下回る少年ら三人が入って来る。試験会場で隠れていたパイロは、取りあえずソレに憑いてきた気配に一安心した。

 

「お久しぶりです」

 

自分の存在に気が付いて、天井近くの隠れ場所に来た御狐様に声をかけた。注意、纏をしていないと聞こえません。

 

「久しいな、して、何故ここにいる?」

 

久しいと微塵も思っていない真顔で言われても正直言わない方が良いと思う以外他にない。

 

「あの子の保護神?に任されたんですよ」

 

「ふーん」

 

銀髪の、キルアの方を指さして言うと彼女は品定めするかのような目で見る。彼に憑いている神様のオーラを見極めると、大きくため息をついた。

 

(人の縁は妙と言うが、神の縁もそれなりじゃな)

 

人の世の中は結構狭い、これ世界の真理である。恐らく、主人公補正と言うか性格が御狐様や他神様の縁も引き寄せているのだろう。自然と人の好意が寄せられる所に近づいて行くのが彼ら彼女らの無意識的な本能なのだろう。

 

「ふーんて、そんな興味無さげに言わなくても」

 

「面倒が増えた以外に何も思わぬ」

 

後で挨拶だかに行かなければならない事を考えると、面倒事でしかない。しかも、必ず通信で会話をしなければならないだろう。平たく言うと、ジャポンを出ていくときにやらかした事に対して向き合うこと自体が頭痛の種である。人魚様については、大津波の事件が耳に入っていたのでお互い様として言わなかったのだろうけど。(頭痛に成る事は有りません)

 

「我と共に来た者らを見守っておいてくれ」

 

丸投げと言う名の責任転嫁行った御狐様に、パイロが半ば半泣きで縋って止めたのは、この時から役五分後の出来事である。

 

 

 

 

 

「流石、人魚が気に入るだけある」

 

あっという間にキルアと友達になったゴンを見て、御狐様はそうつぶやく。

 

「ああ、件の。それで、あの、いつまでこのまま何ですか?」

 

しどろもどろに言うパイロ。彼の手には普通サイズの狐が抱えられている。そう、節約モードの御狐様である。羽の無い御狐様が飛ぶのには羽が有るパイロが飛ぶよりも使用オーラが多くなってしまう。そんな建前と楽をしたいからと言う理由でパイロは御狐様を抱えて飛ぶ羽目になってしまうのだ。

 

「少なくとも、彼らに命の危機が来るまで、じゃな」

 

だらけモード全開、パイロはそれに対してため息を小さくついた。心境的には面倒な上司の世話をしている気分である。一方御狐様には有る程度の予防線が有っての事だった。

 

(気が付いている者が計三名。面倒なのは二人、否一人か)

 

某変態クラウンさんの事である。もう一人は有る程度のラインを護っていれば敵対することは無いだろう。パイロの子守を任された少年、キルアの兄の事である。面倒じゃないのは普通に試験管であるサトツさんの事だ。

変態にも薄っすらとだが堕落神の気配がするため、そっち方面の人間だと気が付いていたが故、自分が弱いと思わせておきたいと言う、合っても無くても同じような打算なのだが。

 

 

まぁ、ヒソカ目線、気が付かれているんですけどね。面白そうな存在に。

 

 

「あんの馬鹿!」

 

暫くして、抱えられていた御狐様が突然毒付いた。呆れる様な、怒っている様な声に一瞬体をこわばらせたパイロと、彼らの存在に気が付いた、人間に成りきっていた馬鹿、、、もとい鬼神様。角も無ければ忍者の恰好をしていて、明らかに294番、ハンゾーと同郷だと言うのを物語っていた。

 

「御狐様?」

 

それに気が付いてない、良く言えば完全的な鬼神様の擬態を裏付けるパイロは恐る恐る彼女に聞く。

 

「凝」

 

それですべて解ると、むしろ何故解らないのだと怒られている様な気分に彼は陥った。解らない僕が悪いのだろうかとも思った、だけど安心して欲しい。全ての元凶は鬼神様で、悪いのは八つ当たりをする御狐様なのだから。

 

凝をして、初めて鬼神様と言う、自分と同種な存在が自分たち以外にこの場に居る事に気が付いたパイロは、のんきに後で挨拶をしておこうとしか考えていない。

 

「後で説教じゃな」

 

しかし考えて見て欲しい。鬼神様は今、人間に擬態して一体何をしているのか。そう、試験を、ハンター試験と言う世界共通で使える身分証明書を貰える試験に参加しているのである。マジで何をしているのか。ただし、それを本人に問えば、自分の加護下にある人間を護るために憑いてきたと言うだろう。

 

(心意気や良し。しかし、やりようと言うモノが有るじゃろうに)

 

確かに守り易いだろう。念を知らない人間たちを守るために人型を取って人として守る。理に適っているどころか力を使った場合のつじつま合わせがどれだけ楽な事か。

 

「御狐様、どうしますか」

 

悪魔の様な(本物だけど)冷酷な声で、パイロは聞いた。冷たい、熱の無い声をいつの間に出せるようになったのかと聞く前に、御狐様はある種の不安を感じた。

 

(こやつ、もしもが起これば)

 

きっと彼は彼の生前の親友の矛となって親友の前に立つ者を穿つ事に成るだろう。心を殺してでも、尽してあげたいと思う狂愛の片鱗を、見てしまったから。

 

(まぁ、どうなろうと人が望むそのままに)

 

その時はその時だろうと思う。だから今だけは、止められる内は止めてあげようと思う。正しい知識を得たうえで己自らの未来を選べるその時まで。

 

「後で話し合う。今は放って置け」

 

パイロはきっと、クラピカの試験の邪魔を人外がするのであれば、それを押しのけ関係のない人さえも傷つけてでも、合格させたのだろうから。




書いている内に段々キャラが壊れたのか見失ったのか、そんなコンセプトでも形になって行きました。複雑そうで、案外そのまんまだったりするんですよね、御狐様たちって。

次回予告

試験が始まり、自身を見る事が出来る人間から隠れつつも沼地へと突入する御狐様たち。過酷な試練を簡単な物にしようとするパイロを、御狐様は止められるのか。
次回 御狐様の沼地探訪


パイロ君のキャラが安定しないです。そうなる様に作ったのは私なんですけど、御狐様が思ったよりも冷静過ぎたのが原因ですかね。
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