念獣?神様?それとも稲荷?な御狐様奇譚   作:弥生月 霊華

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因果其の三 御狐様が行く沼地探訪

湿地帯に出た時に、御狐様はパイロから降ろしてもらい今度は地上を駆けている。理由は単純明快、その方が目立たないからである。万が一にでも見えた時、狐が走っているのと浮いているのとどっちの方がやばいのかは一目瞭然なのだから。

 

「不穏じゃな」

 

「縁起の悪い事言わないで下さいよ」

 

「縁起の悪いモノ代表が何をほざく」

 

雲行きと言うよりも、とある死神の友達がいる事が問題なのだと、御狐様は続けた。死神の友達と言うのは、死神の加護を一生得る事に成るので、神童の上位互換という事に成る。

 

「合った事有るんですけどね。正直人間目線では理解しがたい性格でしたよ」

 

「安心せい、あ奴は我らの中でも特異な類じゃ」

 

安心できる要素が掻き消えた所で、かなり霧が濃く成って来た。前が見えにくくても気配で本来よりも周りの状況が確認しやすいので悪魔と言う性に多分初めてパイロは感謝した。そもそも自分が生きていたらと言うIFは、考えない。考えたくも無い、一度考えた事だってあるけれど、虚しさが増すだけだった。

 

「どうします?」

 

「関係なければ放っておくに限る。ただ、あ奴の性格を考えるにあの道化師は《今》は殺されないだろう」

 

今は、という事は、これからは解らないという事に他ならず、現段階での気休めにしかならない。

 

「性格、悪そうですね」

 

「そう思う事であ奴もあ奴の友達とやらもそう成って行く、余り深く考えるで無い」

 

余計タチが悪いとも言いまわせる言い方に、極力関わりたくないのだと伝わって来た。思い返せば厄介事しかないと言う事実に、パイロはそれ以上追及する事は出来なかった。

 

「でも、気にしないと危ないのでは?」

 

段々と殺気を隠すのに一苦労しているのだろうと、お預けを喰らっているせいで暴れたりない死神の友達が今にも暴れ出しそうなのである。気にかけていないと、何時誰が殺されてしまうか何て知れたものじゃない。

 

「死ぬことは無いだろう。我らに気に入られた御子が、才能を見極められない訳は無い」

 

暗にヒソカを、死神の友達を信用しての言葉である。性格が解っていないとここまで断言する事は難しいどころか、御狐様の性格的にももっと警戒するだろう。

 

「少なくともパイロ、お主が任された者は絶対に安全じゃ」

 

彼はこの時点では気が付いていなかった。何がって?龍神様の元神童がもう一人その場にいるという事を、だ。

けれど、彼の方は気が付いているようだ。自身の保護対象がその場にいる事に。

 

「しかし、福神様のは怪我程度は覚悟しなければな」

 

既に一番前を見失っている彼らの事を見て言う。それより前で殺伐といた空気が流れているのは、パイロも彼女も気が付いている。そして、血の匂いも漂い、それが濃くなっていく。

 

「あの道化師の好み次第だと思いますが」

 

例えば、未来有るモノの未来を閉ざすのが趣味だった場合には、彼らの命は直ぐに潰えるだろう。ただ、御狐様がそれを懸念しないのにだって、ちゃんと訳が有る。

 

「ならば、あ奴はこの近くに居なければならぬ」

 

死にほど近い所に居たいと望む死神だって、思い()が積み重なって出来た存在なのだから、思い()を取り込み続けなければ消えてしまう。だから、多くの死者を友達が出す時、才能を持った者が死者となるときには近くに居なければいけない。そうでなければ取り込めないのだから。

御狐様だってそうだ。むしろ、神童全般が大本死後に取り込むと言う予約に近しい物なのだ。横取りは、規定違反でしかない。

 

「そう言うモノですか」

 

「お主だって主な活動は自殺者の手伝いだろう?」

 

「それだけじゃないですよ」

 

納得しかねているパイロに、御狐様は諭す?話を逸らしたの方が正しいだろう。

 

「いじめの復讐の後押しとか、スパイまがいの事だってします」

 

そう言う事ではないと、御狐様は空を仰いだ。

 

 

 

 

 

 

「血が香って来たな」

 

一寸先が見えない位に霧が濃くなって、御狐様はそんな事を言い出した。クラピカとレオリオのちょい後ろを、気配を頼りに飛んでいる&走っている。ゴンとキルア?龍神様と人魚様の加護も有るし何とかなると先に行かせました。

 

「あちこちから悲鳴が聞こえますね。ちょっと前方確認してきます」

 

「待てパイロ。これ含めての試験だと言うのが解らないのか?」

 

彼が良い笑顔で前方の危機に成りえる生物を駆逐しに行こうとしたのを、御狐様も結構いい笑顔で止めた。子ぎつね状態で走るのもどうかと思ったので、人型に変化する。

 

「ええ、解ってます。解ってますよ?」

 

黒い笑顔の下に、とんでもない過保護が眠っていたのだと彼女は思う。解った上で開き直って守ろうとするその工場は見上げたものだと思った。

 

「獅子は子を千尋の谷へと突き落とすと言う。汝もそれを見習え」

 

そう言って諌めるが、パイロは諦める様子を見せない。そうこうしている間にレオリオの叫びが響いた。持ち前の運動能力だけでも、彼は十分人として並外れた物を持っていると思うのは私だけだろうか?

 

「やばっ!クラピカ!?っ痛い!」

 

その声を聴いて、クラピカにも何かあったのかと判断したパイロは全力でスタートダッシュを切った。しかし、御狐様に足を駆けられた末、拳骨を喰らう羽目になった。冷静なキャラの割に、周りが見えなくなる時が有るのは一体何故なのだろうか?

 

「死ぬことは無い。と、何度言えば理解する」

 

運動能力やその他諸々考えても、ここの沼地の住民たちに一撃でやられることは無い。そして、あの道化師にやられる事も、少なくとも今は、無いだろう。

 

レオリオが首長の怪物に振り回されている時、パイロはちょっぴりクラピカのジャンプ力に細工した。そして、

 

「手助けは無用と、申しているだろうが!」

 

と、御狐様に二度目の拳骨を喰らうのだった。

幸か不幸か、それに彼は疑問を持つことは無く、怪物の目を木刀で貫き華麗に着地。後にレオリオと共に逃げ去った。思えばそれが、彼らの縁の始まりだったのかもしれない。

 

 

以下、会話文が混ざるので、人外『』  人間「」で表示します。これから、聞こえないけれど会話が混ざるときは基本そうします。

 

「先頭集団を、見失ってしまった」

 

『パイロ』

 

クラピカの言葉に、彼は目を輝かせ、そして御狐様からの戒めを貰う。しゅんとしてその場限りは我慢すれど、きっとすぐにその事は忘れてしまうだろう。

 

「どっちに行けばいいんだ」

 

吐き捨てるように、レオリオが言った。

 

『でも』

 

『人間の世は、成る様に成る。その様に回って来た』

 

何とか自分の手を加えようとするパイロに、霧の奥を指さして伝える。レオリオも同時に気が付き、クラピカに伝える。

死神の様な道化師は、幾人ともいえる、今回の試験を諦めた集団に囲まれていた。

 

「去年から思っていた。貴様はハンターにはふさわしくないと」

 

『愚かしい。其の生自ら死に急ぐとは』

 

リーダーらしき男が言う。そして、御狐様は冷ややかな目でその《茶番》を眺めていた。彼女にとっては、今この光景は食にもならない、得も無ければ面白くも無い《茶番》でしかない。人の命のやり取りに、立ち入ってはならない決まりがある。

それでも守りとして彼らに引っ付いているのは、偏にその規定を護らない輩がいるからであって、必要以上に関わる事は良しとされない。

 

「二度とハンター試験を受けないと誓うなら見逃してやるぜ」

 

『これ、戦う利点無いですよね?』

 

ヒソカにとって、この試験自体は結構簡単な物。それでも受からなかったのは偏に我慢が足りなかっただけに過ぎない。故に、誓った所でヒソカに損はない。むしろ

 

『合理性を求めるなら、な』

 

自らの欲求を少しでも晴らそうと言うの成れば、話は別だ。

 

案の定、ヒソカの答えは今年で受かるから誓う。だった。

 

もしも、ヒソカを止めようと言う集団が一人でも念能力者だったのならと、パイロはIF物語を巡らせた。

 

『助けないんですか?』

 

そこまで考えて、止めた。そして何となく思った事を口にする。御狐様はこういう時、誰も助けないのかと。

 

『人が望んだ。我らは気まぐれで身勝手、それ故に人が見捨てられる時も有ると。成れば我はその思いを叶えるまで。人が望んだ姿のままに、性格のままに行動するだけじゃ』

 

意訳するならば、気に入らないから助ける意味も無いと言うモノだろうか。さらに言えば、自分から笑いの一つでも命を懸けて取ってくれればそれはそれで面白いとさえ思っていそうだ。

 

試験官を気取った両者が戦っているさなか、御狐様もパイロに聞いた。助けなくて良いのか、と。

 

『あんな食べても腹にたまらなそうな連中、助けても無駄、、』

 

そこまで言って、彼は閉まったと言う様な表情をした。ご丁寧に両手を上げてジェスチャーまでしていたが、その恰好で固まる。

 

(そこまで堕ちた、いや染まったのか。望まなくとも望まれるがまま変わって行くのは、さぞかし辛かろう)

 

一般的に、自分が殺されたとして、友達や家族に復讐を願う人物など、結構な屑だと言い切っていいだろう。志半ばでくじけたのなら、誰かにそれをついで貰いたいと思いこそすれ、自分を殺した強盗殺人を親友に殺して欲しいなどと思う人物はそうだと思う。そう望まれれているから、自分の命と相手の命を対等に扱えなくなっていくのだ。

たった一人の少年に固執しているが故に、特にその者の望みが繁栄されやすいのだろう。

 

(何の因果か。これでは両者共に救われまい)

 

しかし、片割れを失いこそすれ、久しぶりに作った自分の神童。彼はきっと死ぬ頃にはかなり大きな思い()を抱えている事だろうと、御狐様は舌なめずりを、誰にも悟られない様にしたのだった。

 

確かに、たった一人で多数の人間を円を描くように切り裂いた道化師と目を合わせながら。





次回予告、ヒソカに正体がばれてしまったが故、元々そこまで隠しいない情報を全て語る御狐様。そして神が説くは人の倫理、それは死神の友達が持つ価値観に通用するのか?

次回、因果其の四 倫理を説くは御狐様。



大まかなあらすじを書き出してみたら、とんでもなくカオスな事になりました。特に第一作映画の物語で。と言うよりも、ラスボスは変わらずエクストラボスが追加された様な感じ。

それ以外にも、物語とは別の所で人外同士過保護な争いが常時起こってるんですよ。どうしてこうなった?

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