念獣?神様?それとも稲荷?な御狐様奇譚   作:弥生月 霊華

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具体的な年数は出さないで置きますが、取りあえず戦国時代モチーフという事を頭に入れておいてください。

また、自己解釈で言葉を使っていますが、この世界観ではそうなのだと思っていてください。


神託其の二 御狐様の初陣記

(最近、人間が騒がしい)

最近、社に参拝する人間が爆発的に増えた。見れば皆農村の女子供で、口々に父親や夫の無事を祈っている。時々税を負担できるだけの豊作を願う事も有る。たまに野の焼けた匂いが辺りを漂う事からも、戦が行われているのだろう。

「どうか~~~~~の国の~~~~~の命に勝利をもたらしたまえ」

神主も毎日のごとく同じことを、日に日に力強く唱え念じそして勝利と平穏を願う。皮肉かな、こんな時ばかり御狐様への信仰は高まるばかりだ。それも足軽などの一人一人ではどうしようもない権力を持たない者達ばかりから。死後の()を喰らうとされる妖狐と同一視されているのだから力が高まるのは当たり前の事でもあるのだが。御狐様も、所詮は人の空想や狐自体の概念の寄せ集めに過ぎないという事か。存在し始めてから随分と年月が経って手入れをしようともボロボロになっていく社に住まう御狐様は、考える。どうすれば更に信仰を集める事が出来るのかを。

(戦に赴くも面倒だが価値がある。もし負ければ人の心は移ろうだろうか。信仰の制限などされてはたまった物じゃない)

御狐様は人の子を見守っているだけの存在。何時までも我らの栄光を見守りたまえと祝詞にも記されているし、それが本来の有り方だった。それだけではいつかは途絶えてしまうだろうか?飴と鞭で上手く人心を掌握してきた御狐様は、判断を下した。合戦が行われているとされる、野が有る方向のずっと遠くを見つめた。今も人は死んでいるのだろう。近隣の住民の怯え具合からして負け続きなのだろうと予測して、人型のまま、人には見えない姿のまま合戦の場へと跳んでいく。

この時代には、まだ念能力は仙人や超人などの使える技として、世捨て人のみの力と権力者の中では通っていた。勿論この国、後のジャポンだからという事もあるが、明らかに人では無い力を使える物は少なかった。その分、力の強い者が多く、世捨て人を上手く取り込んだ国はそれだけで戦況を傾ける事が出来るほどには。

合戦を上から見れば、一回休戦。つまりは陣の引き直しを両陣営は行っていた。社の有る国の陣営は青色、敵陣である赤陣営よりも数が少し少ない様に見え、劣勢なのは明らかだった。

(青陣営に白い霧……どこぞの地仙の端くれの術か?それにしては大規模な)

白い霧が薄っすらと立ち込める自陣営、心なしか皆諦め絶望し生を諦めた様な位表情をしている。対極的に赤陣営は活気づいており終わっても居ない戦争の祝杯を挙げ得居る様だった。敵陣営の垂れ幕の中、そこから発せられる力を原因と見た御狐様は、自陣営勝利のために動き出したのだった。

 

 

念能力とは、様々な制約と誓約の元強力な技として昇華して行く物である。時の者達はそれを仙術だの妖術だの神通力だのともてはやしているが、実際に使えるのはほんの一握りと言って良いだろう。だから、才能が無くて破門された仙人もどきの技でも強固な制約を重ねたうえで戦況を傾ける事が出来るのである。

垂れ幕の中、人払いがされ簡易的な祭壇の上で術者は練を続ける。彼は放出系に属していたのだろうと後の御狐様は考える。大した効力も無いが霧を発生させ気分を最悪に、体調を物凄く悪化させる。この霧を広範囲に発生させるのであればそれこそこの戦争限定でも、日中しか効果が無くても、術中に着る服や周りの環境を定めていても、集中力が居るのだろう。だから気の散らない様に警護が完璧な垂れ幕の中で儀式をしていると権力者には言っているのだ。だからここには、人が来るはずなんてない。虫よけの香も焚いてるのだし、生命自体がこの膜の中に入る事など有り得なかった。

「ご苦労な事よのう」

御狐様は人の形のまま術者にその姿を見せたのだ。

「!何だお前は!どこから入って……、あっ、え、衛へ」

「静かにしいや」

術者は驚き、衛兵を呼ぼうとするも、御狐様に爪を首に充てられてしまう。殺気を浴びた事が有ったからとか無かったからとか、そんな経験の差があるから術者は固まった………訳でも無い。術者が固まったのは他でも無い、有り得ない、見た事が無いそれこそ妖の様なモノを見て、理解不能に陥ったのだ。

「おまっ、貴女は、一体?」

がくがくと震え、錬も切れ、無様にしりもちをついたまま後ずさろうとするも動けない術者。爪はもう首から離れているが、それに気が付いていない様に怯えている。

「神託を下そう。今すぐにその術を解け、そして山にこもるがいい」

ゆったりと抑揚のない声で命じるが、そんな事を聞き入れるだけの冷静さも失っている術者はただ怯えるだけだった。

(壊れたか?)

そして御狐様は姿を消した。神隠しの様に少しの煙と絶とかの演出で消えて見せた。

 

その脅しの効果は無かった。霧が止むことは無かったのだ。

脅しの二日後、丁度お昼時の事だった。赤陣営では頼みの綱の術者が死体で見つかった。明らかに獣の爪で喉元を掻っ切られたかの様な死体だった。一方青陣営では、御狐様が出現した話が出回り兵士たちの士気が爆上がりしていた。多くの足軽が空を舞う姿を見たのだった。

赤陣営では上層部の術者が死んだ事による無能っぷりが発覚し、士気はダダ下がり。その日の合戦で随分青陣営の勝利一歩手前まで追いつめる事が出来た。

 

 

 

 

(暇じゃ、御神酒も供え物も有るのに皆祭りでは無く宴会を開いてばかり。面白くないの)

勝利の宴会を村ごとに開き、御狐様のお守りが売れ社の改築が決まり、形ばかりの信仰しかない人間に悪態をつく御狐様。

(やはり飴だけでは人の心は集まらないのだろうな)

人と関わるのがいい加減面倒に成って来た御狐様。定位置である社の屋根から祭りと言う名の宴会を眺めている。もうすぐ夜に成ると言う時、父親が戦から帰って来た事を喜び祈りを捧げる子供がいた。

「ありがとうございます御狐様」

何度も何度も笑顔で繰り返す五歳位の童、一人だけ遊びもせずにずっとそうして居るものだからつい見入ってしまった。

(あの童、神童か)

神童とは、要するに前話の巫女に成った少女などの、念能力の才能が有る人間の事を指している。(御狐様にとって)

それと同時に、神に気に入られた者、つまり自分が気に入った人間の事としても御狐様は使っていた。

 

 

数日後、近隣の御狐様に良く参拝していた人は一人も死んでいないと言う事実が発覚して信者が倍増したそうな。




信心深き人の子は、御狐様から神童の名を頂いた。彼はそれを知らずとも教えどころで一番の成績を取り、そして面倒見のいい青年になって行くと言う。御狐様の見守る、信心深き平民の一生。

次回、神託其の三 御狐様と町民の一生   お楽しみに!












すいません、やって見たかったんです。 
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