福神様は、貧乏神様と一対の神様である。だから神童を選ぶときも貧乏神様の神童の中から福神様が福を授けて初めて福神様の神童となれるのだ。貧乏神様の神童で終わってしまう人間は一生貧乏で、それでいてねじまがった性格をしているのだ。故にそこまで同情することは無い。
そしてその一対の神様達は、とんでもなく仲が良いと言う。勿論の事、人がそう思っているなら事実そうなるのがこの神様たちの性質なのだ。
「御狐様がいらっしゃるとは~いや~めでたいめでたい!」
そう言って御狐様にお酌をしてくるふくよかで煌びやかな服を着、それでいて人の好さげな男性。
「ふんっ!用も無いのに来て持て成す等せんでも良いだろう!」
そう言って同じ部屋に居るボロボロの服を着たガリガリの御爺さんは自分で自分にお酌する。
「我はこの様なおもてなしされるために来たわけじゃないがな」
断るのも又一つの無礼として受けてはいるが、この一対の神様の仲を険悪にさせてしまうのも悪いと思う。頭を悩ませる御狐様に対して空けるたびにどんどん酒を注いでくる福神様。負けじと御狐様も注ぐが、なんだかんだ神様=酒豪のため潰すには三日位はかかるだろう。
「そう言えば御狐様はご存知かな?お主の社で今起こっている騒動を」
「騒動?我が居なくなったのだから一つや二つ起こってもおかしくないだろうが……」
そこで言葉を詰まらせた。あまりにも早すぎるのだ。物見遊山などを含めて各地の社を回り始めて早一月足らず、そんな期間で怪異が起こる等早すぎた。
「はん!御狐様は解ってない様じゃな!お主の社の周辺にはたくさんの物の怪が居ると言うのを!」
追撃して気分を下げようと言う魂胆が丸見えな貧乏神様の言いぐさに、御狐様は更に頭を悩ませる。考えてみれば簡単な事だったのかもしれない。
「神隠しと言われておってな、近々生贄も捧げられるそうじゃぞ」
酒を注ぎながら福神様は言った。含みのある笑顔は、人によっては恐怖を覚える事も有るだろう。
「人が捨てた。ならば我はそれに従うだけの事だったのだがな」
こんなにも早く呼び出されるなんて知りもしなかった御狐様は悪態をつく。彼にとっては人の望み通りに行動するのは結構本位な事だ。だけどその懐深さを利用したり良い様に扱っている事に対してイラつきを感じていた。
「そんな事いつもの事じゃろが!人間に生み出された我々の宿命とやらだ」
きっとそういう意味なのだろう。人の面倒事やその他不都合な事を押し付けるために造られた存在だ。それを貧乏神様は良く分かっているのだろうか。だからこのような捻くれた性格に作られてしまったのだろう。もしも彼が人の手から離れて独り歩きする生物に成ったらどうなるのだろう。
「仕方ない、我は社に帰る」
「そうですか、それではまた何時しか合いましょう」
福神様はどうもいろいろ抜けているのだろう。人の面倒事を見ない様にしているからそう成っているのだろうか。
福神様は、神にも福を授ける事が出来るのだろうか?それが出来るという事は、つまり貧乏神様も神に貧を与える事が出来ると言うモノ。それが現実ならば、御狐様は社に戻ってから見た光景を貧乏神様のせいにしてしまいたかった。
(やれやれ、本当に人間は)
小賢しくも愛らしい。そう思ったのだろうか?その真意は誰にも解らない。疑心暗鬼に満ちた人里を見て思う。他の妖怪、天狗や猫又が跋扈する人里。百鬼夜行でも出来そうなその量に、御狐様はため息をついた。
この地の人間は、どうやら物凄く思い込みが激しいらしい。
(我が居なくば、何も出来ぬくせに)
神主の話を聞く限りでは、生贄と称されてはいるが、殺されるのは自分を追い出した山伏という事らしい。御狐様がその話を聞いて、怨みを持つのは決して山伏に対してではないと言うのに。自分を見捨てた、信じてくれなかった第三者と、そしてそれを認めた神主であることに気が付いていないのだ。
「小賢しい」
言葉に出た言葉は、呪詛となり、黒い煙になり社の山と人里を上空から覆った。突如現れた黒雲に、人々はどよめき、不安を煽った。
その黒雲は、しばらくして閃光を抱えるようになった。人々の不安が徐々に大きくなり、辺りがどんどん暗くなっていく。
(例えるなら、これが貧。不幸に落とし、神罰として人への不安と畏怖を募る)
そして、御狐様は一気にその閃光を落とした。耳を劈く様な轟音と共に。
人々の叫びが木霊して、子供の鳴き声が人里に響く。数多の雷が人里の貧の元、妖たちを貫き浄化したと言うのに、だ。
(その効果は、後に来る日常を常に福と感じる事が出来る)
これで少しでも信仰の足しになればと、御狐様は思うのだった。
ちょっと短めですが。第七話でした。
さて、次で神託回は最後です。そうなったら軽く御狐様と協会、組織などとの付き合いが始まったきっかけなどを書いていきます。自分で言って何だけど、早く試験編が書きたい……
因みに映画のストーリーも入れていく予定です。そうじゃないと前々回が無駄になってしまう