「おい、冥利」
「おっ、前回と全く同じ入りで来やがったな。で、なんだ?」
「なぜ俺が、いつの間にやら“風紀委員長”に抜擢されてるのだ」
影照は本日配られた、各委員会の一覧表が表記されたプリントを指さす。
「副委員長はお前になってるし、どういうことだ」
「影兄、よく聞いてくれ」
冥利が急に真面目な表情へと変わる。
「俺さ、やっぱり何だかんだ言っても、影兄に世話かけっぱなしじゃねぇか。こういう形でなんだけどさ、俺からのプレゼントだと思って、な?」
「冥利・・・・」
俺は、俺は良い弟を持った・・・・
ー風紀委員会室ー
「えー、本日から委員長にならせていただきますー」
「そこで俺がそいつらを叩きのめしてよぉ」
「雲仙君カッコイー!!」
「ねぇねぇ、雲仙君こっち向いてー!!」
「あ?これで良いか?」
「「キャー!!!」」
一つ上の呼子先輩の、たわわに実ったその胸の上に自らの頭を乗せて
冥利は女子達に囲まれてキャイキャイ騒がれている。
もう、絶対、絶対にあいつを許さない。
あんな、羨ま・・けしからん!!
呼子先輩のあの胸だって、冥加の何倍あると思ってるんだよ。
ーガッ!!
「はぁ、冥加。何でお前がここにいるのかはあえて聞かないけど、人の頭をグーパンしちゃ駄目だよ」
影照は頭に恐ろしい痛みを抱えながら、後方に何故かいる冥加に声をかける。
「85447965221312(影兄が私に失礼なことを考えてた)」
女の勘とは、かくも鋭きものなのか。
「081233457321(私だってDくらいはある)」
「嘘は駄目だよ、パット使ってもそこまで大きくはならないのに」
ーガッ!!
先ほどと全く同じ場所を殴られ、声にならない声を出しながら影照は床にうずくまる。
女の子に囲まれている冥利が、頭一つ出してこっちを向く。
「あれ、姉ちゃんが日の光を浴びるなんて珍しいな、どうしたんだ?」
「0043468894314109324058(昨日、影兄が私に「絶対お前と離れない」って言ってくれたから着いてきた)」
現在、妹の頭の中で記憶の改ざんがなされているようだ。
そしてそのまま、その意地悪な笑顔で冥利は影照の方に向く。
「どうだい影兄、会長席の座り心地は?ケケケ」
「冥利の座り心地の方が羨ましい限りどぅわっ!!」
影照の頭の上を、冥加の拳がかすめる。
「870025641277(影兄には教育が必要)」
「意味が分からんっ」
轟音の響くその拳を、辛うじて避けて・・・・
というか逃げる影照。
「影兄ってモテなさそうだよな、優しい友達とかで終わりそうなタイプだろ?」
影照に向かって指をさし、まるで「犯人はお前だ」みたいなポーズをとる冥利。
しかしその顔は、もう悪役顔負けの笑顔である、ちなみにこの顔は凄く機嫌の良い時の顔だ。
しかし、影照はこの言葉にカチンときた。
「俺だって告白されたことくらいあるわ!!」
ふと冥加の動きが止まり、冥利が「えっ!?」と驚いた顔をする。
だからと言って委員会室まで凍りつくことはないだろう。
「影兄、それマジで?」
「え、あぁ、まぁ一回だけ」
急に冥利が、役員のみんなに声をかける。
「あー、全員すぐに帰宅しろ。てか今からみんなでアリバイ作りに行こう」
そういって冥利を始め、みんながぞろぞろと部屋を出ていき
影照と冥加の二人だけになる。
「アリバイってどういうことだろうな、別にこれからこの部屋が大破しちゃう訳でもないんだし」
笑いながら冥加に顔を向けると
「えっと、冥加ちゃん?前にも行ったけどそれは振り回すものではなくて」
一つ100kgあろうかという鉄球を片手でブンブン振り回す冥加がいた。
「0547380211(私、その告白の話知らない)」
「何で言わなきゃならんのだ」
「82116902321(やっぱり影兄には教育が必要)」
十分に勢いのついた鉄の塊が、頬をかすめて壁にめり込む。
「いや、別にその告白も承諾してないし、てかその娘はすぐその後転校したしー」
「3644121(次は当てる)」
再び、鉄球がうなりをあげて振り回される。
「あのぉ、ちなみに教育というのはどういったことを?」
「6641258738021680(妹と小さい胸しか目に入らないようにしてあげる)」
「意味がわからんぞーっ!!!」
☆
大破したバイクが散乱し、ベコベコに折れ曲がった鉄パイプやバットが転がり、ざっと10人くらいのヤンキーが呻き声をあげうずくまっている。
その中のリーダーらしき人物はボロボロの状態で、近くの壁にもたれ掛かる。
そしてそんな彼を遙か高みから見おろす人が一人いた。
多少の傷がその巨体に刻まれていたが、腕についた「生徒会長」のマークだけは傷一つついて無かった。
「・・・・日之影、も、もう良いだろ?見逃してくれよ、な?」
彼は壁を背にしながら、目の前の人、空洞に許しを乞う。
「お前みたいなクズは、きっちり潰しとかなきゃならない。お前が傷つけた人々を思い出しながら目ぇ閉じろ!!」
一般の人間の顔くらいあろうかという拳が握られる。
そして目の前でおびえるその彼に、砲撃のような一撃が下された。
轟音と共に意識を失いぐったりとした彼を見おろす。
「・・・・」
誰に感謝される訳でもなく、誰に応援される訳でもなく
ただただ、みんなを守るために、傷つけられた人々を救う為に
己の拳で悪を払う。
現生徒会長、日之影空洞はその圧倒的な強さからみんなから目を反らされてきた。
そんな彼を人々は「
「お疲れ、生徒会長さま」
そんな中でただ一人
英雄を知り、英雄の影となってくれる人間がいた。
名前は些細無影照、先ほど空洞に話しかけてきた人物だ。
「影照、やっぱお前には気配を消してる俺が分かるんだな。ところで・・・・」
空洞は体についた砂や汚れを軽く叩く。
「なんでお前、そんなボロボロなんだ?」
「全くもって新しい、教育という名の拷問から逃げてきたところだ」
よく意味が分からないが、色々大変だな。と空洞は労う。
「あーぁ、また派手にやっちゃって」
影照は周りの惨状を見渡す。
まるで爆破事故でもあったのかという光景だ。
「ちょっとやりすぎじゃないか?」
バイクの破片を摘み、空洞に悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「こいつらは救う価値のないクズだった。集団暴行や器物破損など、犯罪にまみれたような連中だ。誰かがこいつらを潰さないと、被害者は決して報われない」
空洞は再びその大きな拳を握る。
影照は摘み上げた破片を近くの草むらに放る。
「ははっ、それでこそ
「うるせぇ。そうだ、これからラーメンでもどうだ?」
「そうだね、空洞のおごりで」
「まぁ、お前は風紀委員長に選ばれたらしいし良しとするよ、しかも学園長直々らしいじゃねぇか。一年のノーマルなのに、快挙だと学園中の噂になってるぜ」
笑顔で称える空洞に対し、影照はすこし遠い目をしていた。
影照と空洞が道を並んで歩く。
ちなみに空洞の
発動すると、空洞自身の存在感を消し去ってしまうというものだ。
故に見えないというより、気づかない。
「ねぇ空洞、何でお前ってさ、そんなに“正義”って感じなんだ?」
影照は気になっていた。
なぜ彼はこんなに圧倒的な強さを持ってるにも関わらず
自らの強さに溺れることなく、人に感謝されるわけでも無いのに
進んで褒美のない危険な仕事を請け負い、被害者を助けようとするのか。
「んー・・・・」
影照は、彼がどんな過去がきっかけで“正義”に目覚めたかが気になった。
しかし、彼の口からでた言葉は想像とは違う言葉だった。
「考えたこともなかったなぁ、強いものが弱いものを守る。強い奴が傷ついている奴を守る。だから俺が守る。まぁ、当たり前のことをしてるだけだ」
日之影空洞は、根っこから英雄だった。
影照はそのときに決心した。
このままだったら、一生この目の前の英雄は報われない戦いをするだろう
だから、本人は望まないだろうが彼を、命の恩人を
みんなの英雄にしようと、そのために自分は彼の影になろうと決めた。
そう、彼こそが主人公となるべきだ。
「空洞、今の生徒会ってお前一人だけだよね?」
「まぁ、そうだな」
彼の生徒会は一人だけで取り仕切っているので“一人生徒会”と呼ばれていた。
「やっぱり一人だけだと何かと大変だし、役員を探そうよ」
「いやいや、それは相手の人に対して申し訳ない、こんな地味な生徒会に入っても何も得は無いんだし」
「そうなんだよ、地味なんだ」
影照は得意気に人差し指を立てて、空洞の前にでる。
「だからこそ、メンバーを集める必要があるんだ。メンバーが集まれば個性が増える。個性が増えるということは、多様な支持者が生まれる。そうすれば業務も行いやすくなるし、学園も平和的になる。」
「そういうものかぁ?」
「そういうものだ、というか全役員集めないと校則違反だ。いつリコールされてもおかしくないぜ」
空洞は難しそうに腕を組んで、唸る。
「まぁ、確かにそうだ。でも、誰かめぼしい奴がもういるのか?」
「何かいぶし銀な人が欲しいよな。裏の世界のナンバー2みたいなね」
「つまり、まだ決まってないと」
「すみません」
道を歩く二人は、楽しそうに会話を交わしていた。
「空洞、俺がお前を英雄にしてやる」
もう受験辛いです
うん、ゴッドイーター2がやりた過ぎる。
誰か助けて(笑)