陰を照らした時に出来る陰   作:俺の眼鏡

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12箱目 合法だよ

箱庭学園の旧校舎、別名軍艦塔(ゴーストバベル)

外見からしていかにも不気味で古いその建物に、実は人が居るのをご存知だろうか。

 

「真黒さーん、いらっしゃいますかー?」

影照はドアの内側から返事がなかなか聞こえないので、聞こえる前に錆び付いたドアを開ける。

ここにくるのは何回目だろうか、空洞とたまーに訪れたりしているが、一人で・・・・まあ、妹と訪れるのは初めてだ。

「おいおい、返事が聞こえる前に開けちゃ駄目だよ。君も男の子だったらわかるだろ?」

なぜか下着姿の真黒さんが、変態がいた。

 

ーーブンッ、グシャアア!!!!

本当に驚いたのだろうか、とっさに冥加は鉄球をその変態に振りおろした。

なんだか重ね重ね本当にもうしわけない。

 

「さて影照君、空洞君と一緒じゃないのは珍しいね。どういったご用件かな?」

しばらくして復活した真黒さんが影照の訪問の意図を聞く。

なお、冥加は身内以外の人と絡むのを極端に苦手とするから(さっきの下着姿のあれもあるからだろうが)、影照の背後に隠れていた。

「いやぁ、単刀直入に聞きますと。“フラスコ計画”をご存知ですか?」

相変わらず裏で何を考えてるのか分からない微笑みを浮かべる真黒。

「知ってるけど、教えない」

ニコニコしながらそう答えた。

あれ(・・)は君みたいな人間が関与していいものじゃない。僕の妹にならまだしも、君に教える義理もない」

もう話は終わったと言わんばかりに真黒は席を立ち、その場を後にしようとする。

 

黒神真黒、黒神グループの長男にして軍艦塔の管理人でもある。

彼はマネージメントにおいて非凡な才能を発揮し、黒神グループを始め、様々な企業の地位を築き上げてきた張本人。

年は影照の一つ上、何があったかは知らないが箱庭学園を中退している。

そして、シスコンの変態である。

 

「54119827580(影兄、あの変態はなんて言ってたの?)」

「知ってるけど教えないってさ」

「852112312(じゃあ、もう話は終わり?)」

「え、あ、そうだね。そうなりそうだな」

「211314765284ー(じゃあ今から私と遊びにー)」

 

ーバンッ!!!

いきなり振り向いて机を叩く真黒。

「影照君、気になってはいたんだが彼女は何者なんだい?」

その顔からは笑顔が消えて、言うなれば、彼の目は“一週間ぶりの獲物を見つけた狼”みたいな目をしていた。

「え?あ、俺の・・・妹ですけど・・・」

「そうだよね、僕もねそうじゃないかと思っていたんだよ、些細無影照君の妹、いや義妹と言った方がいいのかな?“義妹”素晴らしい響きだ、法に認められた真実の愛だ。邪魔するものなど何もない、だったら手を出さないわけにはいかないのが兄ってものだ。しかし恋には障害がついていた方がー」

 

一気にまくしたて始めた真黒を、ただただ唖然と見つめる影照と冥加。

影照ですらもう真黒が何を言ってるのか分からないのに

まして、普通の言語感がない冥加にいたってはチンプンカンプンな状況だろう。

 

「ーと思うんだよ僕は、君もそう思うだろ影照君」

途中から全く話を聞いてなかったので、影照は適当に返事を返す。

「決めたよ影照君、君に一つだけ条件をだそう。受けてくれたら何でも君の質問に答えよう。君と空洞君の探す、生徒会役員にふさわしい人物の情報もピックアップしてあげよう」

「え、本当ですか!?」

「あぁ、まぁそれは君次第だけどね」

そういって真黒の表情は、またあの微笑みに戻る。

 

「僕の出す条件は一つ、“一日だけ冥加ちゃんに僕の妹になってもらう”ことだけだ。一日だけで良いんだ、すごく良い交渉だと思わないかい?」

なんて自分の欲望に正直なのだろうか、影照は少し表情を引きつらせる。

何年か前にも、冥加を自分の妹にするとか言ってたやつもいたな・・・・

今度一緒におはらいに連れていってやろう、男難の相があるのかもしれない。

 

影照は少し考える、確かにこの交渉は凄く魅力的だ。

真黒さんも、変態だけど悪い人じゃない。むしろ凄く良い人だと思う。

冥加を預けるのに、十分に値する人間である事も分かっている。変態だけど。

「でも真黒さん、冥加は俺とか冥利の言葉以外は通じないですよ?」

「その点については問題ないさ、411213102833(冥加ちゃん、これで良いかな?)」

「211805082213(私の言葉が分かるのか、この変態)」

少し驚いた表情を見せる冥加。

「ね、問題ないだろ?」

さすが黒神真黒、その分析力(・・・)はたいしたものだ。

 

「これで問題は何もない、影照君。一日だけで良いんだ」

相変わらず微笑み喋る真黒。

でも、はっきり言ってこれは俺が決める事じゃないよな。本人に決めさせるのが一番だ。

 

影照は今までの流れを一通り冥加に説明して、改めて冥加に問う。

「冥加、これはお前の事だしお前が決めてくれないか?」

冥加は少し不安そうな顔を見せる。

「64112173021(・・・影兄はどうなの?)」

「さっきも言ったけど、これはお前が決めてくれ。俺的には交渉を呑んでくれた方がありがたいが、そんなことでお前が無理することなんてないんだし」

冥加は顔をうつむかせる。影照には見えなかったが、少し泣きそうな表情をしていた。

そして、もう一度顔を上げる。

「522136442171108(だったら影兄に決めて欲しい。私もそれなら悔いはないから)」

冥加は真っ直ぐに影照を見つめる。そうでもしないと、すぐにでも弱音が出てきそうだった。

 

影照は、その妹の目に気押された。

同時になぜそこまで俺に委ねるのだろうかと疑問も感じた。

しかし、冥加のあんな真剣な目をみた以上、正直に答えなければいけないとも思った。

 

影照は真黒の方に向きなおす。

「真黒さん」

影照の呼びかけに対し、真黒は返事をするでもなく、ただ微笑む。

「交渉の話は、やっぱり断らせていただきます」

真黒は特に驚いた顔を見せるのでもなく、そのまま尋ねた。

「どうしてだい、影照君?」

「たとえ義理とはいっても今までずっと俺の妹だったやつが、急に誰かの妹になるのはちょっと・・・」

「それが例え一日だけであろうと?」

「上手く言えないけど、・・・・そうですね」

 

影照は真黒から目をそらす。

絶対、機嫌を損ねてしまっただろうなぁと罰が悪くなったからだ。

しかし、当の本人は立ち上がって笑いながら影照の肩をバンバン叩いた。

「ハハハハ!そうだよ、それでこそ“お兄ちゃん”だ。ここで君が交渉を呑んでいようものなら、しっかり彼女に妹を一日してもらって、君との約束はおざなりにしてたところだったよ」

「あ、しっかり一日妹はしてもらう気だったんだ」

「いいだろう、僕にとったら年下の女の子は全て妹みたいなものだ。小学生以下なら男の子だって妹だ。今更、妹をしてもらえなくても、僕からすれば妹であることには変わりはない」

なぜだろう、言語の通じないはずの冥加が引いてるのが見て取れる。

実際、真黒さんが話してる内容が負け惜しみに聞こえるのは俺だけだろうか。

 

一通り語り終えた真黒が一息つく。

ちなみに冥加は影照の後ろに隠れている。

「影照君、君の質問には全て答えよう。というか、フラスコ計画の人間の中から役員候補を探してみるのも良いかもしれないよ」

なるほど、つまり一石二鳥というやつか。微妙に違うな。

「しかし、僕が知ってるのは計画の概要ぐらいなもので、今現在の十三組の十三人(サーティーンパーティー)についてはあまり知らないんだ」

十三組の十三人(サーティーンパーティー)?」

聞きなれない言葉を聞き返す。

「フラスコ計画に参加している十三人の総称さ。全員各学年の十三組でもトップクラスの異常者を集めているんだ」

ということは、やはり冥利もこれに入ってるよな。

 

そういえば、冥加が冥利から貰ってきた紙に、なんだか十三人の名前があった気がする。もしかしてそれって・・・・

影照は冥加の持っていた紙を真黒に渡す。

受け取った真黒は興味深そうにそれを眺めた。

「うん、僕がいたころとはだいぶメンバーが変わっているね。まあ、これは今のパーティーだと思って間違いなさそうだね。しかし、その中でも聞いたことのある名前も多くある、理事長はどうやってこんな異常者を集めたのだろう」

独り言のようにブツブツとつぶやく。

そして真黒はその紙を折りたたみ、影照にその紙を預からせて欲しいと頼んだ。

とくに必要性はなさそうだったので、影照と冥加は頷く。

 

「明日までには全員調べとくからまたおいでよ。役員候補はそっちで決めた方が良いだろう?」

「ありがとうございます」

影照は丁寧にお辞儀をして、軍艦塔を出た。

もうすでに日は傾き始め、まだ少し肌寒い風が吹く。

今日の夕飯はどうしようかと悩む。

 

「411302(ねぇ、影兄)」

「もう遊びには行かないからな、俺は夕飯の準備があるんだから」

そう行って影照は歩き出す、冥加の方に視線を移さずに。

そんな影照を見て、冥加は少し微笑む。

「02110233(影兄、ありがとう)」

「・・・・俺は何もしてないぞ」

「21748025114(大丈夫、私は合法だよ)」

「・・・・・・ちょっとお前も買い物に付き合え、荷物持ち係だ」

「211732587005(えっ、もうポ○モンが始まるのに)」

「知るか」

 

ふと携帯を開いて見ると、鬼のように冥利から着信が入っていたので

影照は電源を切った。

 




奄美「はい、眼鏡さんにもう出番は無いよと言われたので、ここでちょっと出演させていただきます」
眼鏡「やめてよ、ただでさえお前人気ないんだから」
奄美「泣きますよっ、俺だって俺だって・・・・」
眼鏡「で、何の用ですか?」
奄美「はい、質問なんですが影照君のスキルについて詳しく」
眼鏡「んー、簡単に言うと”集中力”を操るスキルですね。効力については物語の方で明らかにしていきますよ」

奄美「以上、奄美インタビューでした。第二弾は皆さんの反応で決まりますので、よ、よろしくですっ!!」
眼鏡「無理じゃね?」
奄美「ふへっ!?」
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