陰を照らした時に出来る陰   作:俺の眼鏡

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一応、センターも終わって一区切り。
書き溜め分をupしていこうかな

また次の一定期間更新は一ヵ月後になるかと←

それでは、14箱目です。


14箱目 初恋

「ねぇ名瀬ちゃん、さっき珍しく百町君と話してたけど、何の話?」

「ん?あー、最近の経済情勢とか?」

「とか?じゃないよ!私に隠し事するの?名瀬ちゃん」

「わりーわりー、怒らないでくれよ。でも本当に何でもない世間話をしてただけだって」

「ふーん」

 

「・・・・・・出し惜しみは無しだ。古賀ちゃんは俺が守るぜ」

 

 

「うあぁぁあぁあああぁあ!!!!」

冥加が飛び上がり、思い切り鉄球を百町に向かって振り下ろす。

しかし、百町は顔色一つ変えることなくかわして、冥加の間合いの外にでた。

 

ーーヒュン、ドッ

退き様に百町が放った矢が冥加の胸に突き刺さる。

「冥加っ!!」

影照は思わず叫んだ(・・・)

「安心してくださいお二人とも、その矢は私の異常(アブノーマル)初恋(ラブ)”を使ってますので、体に傷はつきませんよ」

確かに、刺さってる部分を見ても血が滲んでくる気配もなければ、痛みも感じない。

先ほど叫んだときも、息苦しさを感じたりもしなかった。

 

(これはマズいな)

真黒さんと交わした約束を、早速二つとも破ってしまう形となった。

百町破魔矢、異常の中でも異常な六人組“裏の六人(プラスシックス)”の一人だ。

真黒さんいわく、彼はその中でも異常度のモノが違うらしい。

絶対に戦ってはならない一人だ。

 

「その矢の、私の異常(スキル)初恋(ラヴ)”の説明をさせていただきます」

そういうと百町は、歩きながら影照に近づいてくる。

その様子がとても不気味だった。だから影照は百町から少し退こうとする。

しかし、動けなかった(・・・・・・)

 

また百町が一歩一歩近づいてくる。

その度に、影照は自分の体が思い通りに動かなくなる。

肺がヒューヒューと音をたて始め、鼓動が早くなる。声を出すことすらままならず、表情すら強ばってしまう。

(どういうことだ!?)

体全てが、まるで自分のものでは無いようだ。

 

「フフフ、不思議ですか?私の“初恋(ラヴ)”は相手の心に作用する異常(スキル)です。矢の刺さった相手は私が近づけば近づくほど、まるで“初恋をした純真無垢な少女”のように体の自由がきかなくなっていきます」

百町が影照の目と鼻の先くらいの位置まで近づく。

もうすでにこの位置で、影照は呼吸ができず。頭の中もよくわからなくなっていた。

「ちなみに、このまま私があなたに触れると・・・まぁ、総括さんには捕獲だけを頼まれてるんで」

そう言って百町は、タンッと後方に下がる。

それによりいくらか体の自由が戻った影照は、大きな息を繰り返す。

 

「そうですね、しかし彼女の捕獲は依頼されていませんし・・・とりあえず意識を無くしときましょう」

そういって、今度は冥加に近づき始める。

「ハァ・・・ハァ、やめろっ!」

影照は得意の飛び道具を使おうとするが、手足が痺れて指一本思い通りに動いてくれない。

異常(スキル)己の支配者(マイマイスター)」も発動することが出来ない。

 

影照のその異常(スキル)は、一夜で超レベルのハッキング技術を付け焼き刃的に覚えてしまえるくらいに集中力を高めれる代物だ。

しかし、逆にそれだけの異常でしかない。

ただ他の人より集中できるだけであり、他人の集中力を操る能力だって

例えば、テスト中になるとみんながみんな集中せざるを得ないような空気になるだろう、逆に騒がしい中で集中しようともそれは難しく感じることがあるだろう。

そういった空気感を一人で応用しながら作りだして、他人の集中力を操ってるに過ぎない。

 

一歩、一歩と百町は冥加に近づく。

すると、冥加の表情は強ばり始める。

しかし、影照はそんな妹の表情に違和感を覚えた。

あの強ばった表情は、真黒さんを見るときの、奄美を見るときのそれだ。

影照には分かる微妙な違い、決して冥加は苦しくて顔を歪めてるのではない。

 

しかし、百町はそんなことは露知らず、冥加に迫っていき、やがて目の前でその歩みを止める。

「さて、このままここに4~5分居させてもらいます」

冥加を見おろすような形で話しかける。

 

その時だった

「0211365823972(これ以上私に近づいて良いのは影兄だけだ)」

冥加は右腕の鉄球を降り上げ、本気で百町を潰さんばかりの勢いで振り下ろした。

「クッ!!!!」

反射的に体を反らして直撃を避ける百町。

しかし、鉄球が地面に叩き付けられたときの爆風と、飛び散る地面の残骸などが百町の体を吹き飛ばした。

 

「な、なんで?」

冥加のその動きに驚きを隠せない影照。

影照は、あの距離まで百町に近づかれたとき、呼吸すら出来ない状態になったというのに。

とうの冥加は呼吸ひとつ乱れていなかった。

 

勢いよく飛ばされた百町が、よろよろと立ち上がる。

「うっかりしていました、まさか彼女があの心(・・・)の持ち主だったとは」

「あの心?、どういうことだ」

たまらず影照が聞き返す。

「言いましたよね、私の異常(スキル)“初恋《ラヴ》”は心に作用する異常(アブノーマル)であると。では、その心が私の異常(スキル)すら介入する隙もない心であったなら」

百町は落とした眼鏡を拾い、かけなおす。

「・・・・・・もったいぶらずに早く教えろよ」

「・・・・いや、これ以上は止めておきましょう。女性のこういう心をベラベラと話す男ほど醜いものはありませんから」

 

「021147965(よそ見をするな)」

今度は真上から、その両腕についた鉄球を振りおろす。

百町は、こんどは軽く後方に下がるだけの動作で軽々とその鉄球をかわす。

「しかし、困りました。私の異常(スキル)が通用しないとなると」

そういって百町は新たに弓矢をつがえて、放つ。

見た感じ先ほどとは何ら変わりはない弓矢が、空気を切り割いて影照へ向かう。

やがてその弓矢は影照の肩を掠めて、後方の壁に突き刺さる。

 

影照の肩口の衣服は裂け、鮮血が滲み始めた。

「オーソドックスに傷つけあう(戦う)しかないようですね」

そういって、今度は弓矢をつがえて冥加に向く。

「21158763211(影兄は、私が守るっ)」

怯まず百町に向かって駆け出す冥加。

今度は鉄球を横凪に払い、百町に攻撃する。

しかし、いたってシンプルな冥加の戦い方にもう慣れたのであろう

完全に間合いをよみきった百町は軽く飛んで、鉄球をかわす。

 

その瞬間、影照は「負けた」と思った。

今、弓矢を放たれたら完全に冥加は貫かれる。

 

しかし、放たない。

 

今度は足についている鉄球を使い、空中にいる百町めがけて振りあげる。

だが、空中なので身動きが自由にできないにも関わらず、百町は華麗に身を翻し、冥加の鉄球をかわす。

そして弓矢をー

 

ーー放たない。

 

さすがに不自然に思った冥加はその動きを止めた。

それと同時に百町もつがえていた弓矢を外す。

「8211325465(なぜ戦おうとしない)」

「?」

あ、そういえば言葉が分からないか。

 

「何で戦おうとしないのか、って聞いてるよ」

影照が通訳を行う。

「何でとおっしゃられても・・・・」

百町は眼鏡の位置を直し、考える。

「彼女は依頼の対象外ですし、何より女性の肌を傷つけるなんて、男として最も恥ずべき行いです。影照さんを少し傷つけたら彼女は怖くなって、退いてくれるかなと思いましたが」

百町は冥加の方を向く。

「なるほど、そうですか。あなたの心を満たす人、そういう事でしたか。これ以上戦ってもジリ貧です、ここは私が退きましょう」

そう言って百町は指をならす。

その軽快な音が響くと同時に、影照に刺さっていた弓矢が霧散した。

 

「え?良いのか?その総括さんの依頼とやらを果たさなくても」

「はい。私が彼女(・・)に従う義理もありませんし、ここらへんで恩でも売っておこうかなという理由だけで行動していただけですので」

 

『おいおい、不抜けた事言ってんじゃねーぞナルシストメガネ』

天井に張り付けられたスピーカーから誰かの声が聞こえる。

「おや、これは総括さん」

『がっかりするぜ破魔矢くん、まさかお前が女一人傷つけられないようなあまちゃんだったとはな。じぇじぇじぇだぜ、まったくよー』

すると突然、通路の両側が遮断されて、百町と影照と冥加の三人だけの空間ができる。

『まぁ、いーや。所詮裏の六人(プラスシックス)なんて、鼻から信用してねーからよ。このまま催眠ガスを使うことにするわ』

百町は矢をシャッターに向かって放つ。

しかし、軽く傷が残っただけでなんの変化もない。

「私としたことが、抜かりましたね」

あれだけの強度を持つシャッターだ、冥加の鉄球で破壊するのも恐らく、結構な時間がかかるだろう。

「2113805211479(影兄、ハッキングじゃ無理?)」

「駄目だ、時間が足りない」

 

そうこう話してるうちに、天井から何本かの管が出てくる。

『それじゃ、お休みなさいだ。悪く思うなよ、悪いのは全部アンタだ、些細無影照さんよぉ』

先ほどから、なにやら影照ばかりを意識して話すスピーカーの向こう側の“総括”さん。

正直、この声の主を影照は知らなかったし、ましてや因縁や恨みなんてものは微塵も心当たりが無かった。

なにも分からず、ただされるがままに眠らされるのかと思ったそのとき

 

ーーゴゥンゴゥン・・・

 

なぜか両側のシャッターが上がり始めた。

『なっ、何っ!?』

“総括”さんが予想外の出来事に驚いている声が聞こえる。

そして、そのスピーカーからもう一人の声、影照にとって聞き覚えのある(・・・・・・・)声が聞こえてくる。

 

『些細無くん、今のうちに逃げて!』

『こっ、古賀ちゃん!入ってきたら駄目だって言っただろ?』

間違いない、この声は古賀いたみさんだ。

『名瀬ちゃんが隠し事なんてするからだよ!』

『お、俺は古賀ちゃんの為を思ってー』

『もう、今日の放課後にケーキを一緒に食べに行こうって約束無しにしちゃうよ!』

『それはあんまりだぜっ!』

なにやらギャーギャーと痴話喧嘩が放送されてくる。

先ほどまでの緊迫感はいずこへ。

 

「まぁ、破魔矢くん。今のうちに逃げよう」

影照は百町の肩に手を置いた。

「・・・・え?私、ですか?」

「そうだよ、他に誰がいるんだ?」

百町は心底間の抜けた表情をしている。

「え、いや。私はフラスコ計画組(こちら側)の人間ですし・・・・」

「違うんだよ破魔矢くん。逃げる相手はそっち(・・・)じゃない」

影照はため息混じりに、後方を親指で指さす。

 

「21146580233124(影兄、あの女とどんな関係なのか教えて)」

まさに悪鬼羅刹。前世は恐らく歴代最強の武将、呂布だったのではないかと疑ってしまうほどの気迫で

ブンブンと鉄球を振り回す妹がいた。

そういやあいつ、俺と冥利の言葉しか理解できないはずだったような。

 

「あぁ・・・・なるほど」

「ちゃんと靴紐は締めたか?それじゃあ行くぞっ!!」

影照と百町は同時にトップスピードで駆け出す。

「325812(逃がさない)」

一歩遅れて冥加も駆け出した。

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